- トラス構造ってなに?
- どうして三角形なの?
- 種類はいくつくらいあるの?
- 計算ってどうやるの?
- どんな建物に使われてるの?
- トラス梁とは何が違うの?
上記の様な悩みを解決します。
トラス構造は、三角形を組み合わせて大スパンを軽量に構成する構造体系。体育館、駅舎、橋梁、工場、東京タワーまで、大空間が必要な建物のほぼすべてに使われている定番の工法です。施工管理として、形と仕組みを押さえておきたいキーワードですね。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
トラス構造とは?
トラス構造とは、結論「三角形のユニットを組み合わせて、軽量かつ大スパンを実現する構造形式」のことです。
英語では「Truss Structure(トラス・ストラクチャー)」。三角形を多数連ねたフレーム形状で、橋梁・体育館・駅舎・工場屋根などに広く使われています。
トラス構造の3つの特徴
- 三角形ユニットで構成される(四角形は不安定なので使わない)
- 各部材は軸力(引張・圧縮)のみを受ける(理想的には)
- 節点はピン接合として扱う
「三角形は変形しない」という幾何学的性質を最大活用した構造ですね。四角形のフレームは平行四辺形に潰れますが、三角形は3辺の長さが決まると形が一意に決まる=変形しないという性質を持ちます。
トラス梁(部材としてのトラス)についてはこちらで詳しく書いています。

トラス構造とトラス梁の違い
混同しやすいので整理しておきます。
トラス構造とトラス梁
- トラス構造:建物全体の構造方式としてトラスを使う考え方(屋根組、橋梁全体)
- トラス梁:トラス形式の梁部材(建物の中の1つの部材)
トラス構造は「全体の構造体系」、トラス梁は「個別の部材」という階層差があります。実務では両者をシームレスに使い分けています。
トラス構造の種類
トラス構造は配置パターンによって複数の名前がついています。
平面トラス(プラン)
主な平面トラスの種類
- プラットトラス:垂直材+斜材が圧縮を受ける形。鉄道橋に多用
- ハウトラス:プラットの逆。斜材が引張、垂直材が圧縮
- ワーレントラス:斜材だけで構成(垂直材なし)。シンプル
- K トラス:斜材がK字を成す。応力分布が良い
- ベルトラス:上弦材が曲線。意匠性が高い
- フィンクトラス:屋根組で多用。トラス梁としても普及
トラス梁の解説はこちらにもあります。

立体トラス(スペースフレーム)
3次元的に組まれたトラス。ドーム屋根や巨大空間に使用。代表例は東京ドームや、各地のドーム型体育館。
トラスドーム
球面状にトラスを配置したドーム構造。ジオデシックドーム(バックミンスター・フラー考案)が代表。
トラス構造が三角形を使う理由
「なぜ四角形じゃダメなの?」を物理的に解説します。
四角形フレームの問題点
- 4本の部材で囲まれた四角形は変形が自由
- 平行四辺形にゆがむと、形を維持できない
- 接合部に曲げモーメントが発生する
三角形フレームの強み
- 3辺の長さが決まれば形が一意に決定(剛体)
- 変形しないので、各部材は軸力(引張or圧縮)だけを負担
- 接合部に曲げモーメントが生じない
各部材が軸力だけを負担するというのが超重要。曲げモーメントを受ける梁構造より、はるかに少ない材料で大きな荷重に耐えられるんですね。
これが「トラスは軽量で大スパンに有利」と言われる根本理由です。
トラス構造の計算方法
構造計算の入り口として、トラスの解析方法を簡単に整理します。
1. 節点法(ジョイントメソッド)
各節点で力のつり合いを取る方法。
各節点で:
– ΣFx = 0(水平方向の力の和=0)
– ΣFy = 0(鉛直方向の力の和=0)
これを連立で解いて、各部材の軸力を求めます。節点1つあたり2式なので、未知数の数だけ節点を回せば解ける、というシンプルな手法。
2. 切断法(メソッド・オブ・セクション)
トラスをある断面で切って、片側だけのつり合いで解く方法。
特定の部材だけ知りたい場合に便利です。3本以下の部材を切ればモーメントのつり合いで一気に解けます。
3. マトリクス法(剛性法)
実務ではFEM(有限要素法)ベースの構造解析ソフトで一発計算。SS3、Midas iGen、ETABS、SAP2000など各種ソフトが使われています。
4. 簡易計算(実務感覚)
施工管理が現場でざっくり計算するレベルでは:
簡易チェックの目安
- 上弦材:圧縮力=モーメント/トラス高さ
- 下弦材:引張力=モーメント/トラス高さ
- 斜材:せん断力をトラス角度で換算
この程度の感覚があれば、設計者との打ち合わせでも話についていけます。
剛性率や偏心率の話はこちらで。


トラス構造の使い方(適用建物)
実際にどんな建物・場所でトラス構造が使われているかを整理します。
トラス構造の主な適用例
- 体育館・武道館:屋根の大スパントラス(30〜60m)
- 工場・倉庫:低コストの屋根組
- 駅舎:大屋根トラス(東京駅、京都駅)
- 空港旅客ターミナル:超大スパン屋根
- 競技場屋根:スタジアムの開閉屋根構造
- 橋梁:トラス橋(プラット橋、ワーレン橋など)
- 送電鉄塔:トラス構造の塔
- 東京タワー・スカイツリーの一部:トラス的な要素
「柱を建てずに広い空間を作りたい」というニーズがあるところは、ほぼ確実にトラスが使われていると思っていいレベルです。
屋根組でのトラス構造
施工管理の現場で一番出会うのが屋根トラスです。
屋根トラスの構成要素
- 上弦材(じょうげんざい):屋根勾配に沿った上側の部材
- 下弦材(かげんざい):水平な下側の部材
- 斜材(しゃざい):上弦と下弦をつなぐ斜めの部材
- 垂直材(すいちょくざい):上弦と下弦をつなぐ縦の部材
- 節点(ジョイント):部材が集まる接合点
戸建住宅の屋根組で言えば、和小屋(わごや)より洋小屋(ようごや)の方がトラス的な発想に近いです。洋小屋は真束+方杖+陸梁の組合わせで小屋裏空間を作るので、純粋なトラスではありませんが原理は近い。
工場・体育館の屋根トラスは、鉄骨ボルト接合+ガセットプレートで組まれるのが基本。
ガセットプレート関連の話はこちら。

施工管理として押さえるトラス構造のポイント
トラス構造の建物を担当した時の現場での注意点です。
トラス構造の施工管理ポイント
- 建て方計画の入念な検討:大スパンは1本の倒れが致命的
- 仮設サポート(仮支柱):完成形になるまで自立しない
- 接合部の精度:ボルト本数とトルク管理は通常以上にシビア
- 吊上げ揚重計画:1ピース重量がトン単位
- 歪み防止用のステー(仮締結)
- 耐火被覆の取り回し:節点周りは被覆が複雑
- 設備配管との取り合い:トラス間の隙間を活用するルート計画
特に大空間トラス屋根の建て方は、100tクラスの大型クレーンを使う一発勝負。当日の風速・天候判断、揚重順序、仮支柱の入れ方など、計画ミスが許されない作業です。
僕は電気の施工管理時代、地方の体育館改修で屋根トラス内のスポットライト配線を担当しました。トラスの上弦材・下弦材・斜材の隙間を縫って配線を通すんですが、点検通路(キャットウォーク)の位置と配線ルートがすぐ干渉する。建て方計画段階から「設備配線がここを通る」を共有しておかないと、後付けで配線がぐにゃぐにゃになって美観も保守性も最悪…という経験があります。トラス構造は意匠美が命なので、配線美にも気を遣いたいところ。
ブレースとの違いについてはこちら。

トラス構造に関する情報まとめ
- トラス構造とは:三角形ユニットを組み合わせて軽量・大スパンを実現する構造形式
- 三角形を使う理由:剛体性で変形しない、各部材は軸力のみ負担、軽量化に有利
- 平面トラスの種類:プラット/ハウ/ワーレン/K/ベル/フィンク
- 立体トラス・ドーム:スペースフレーム、ジオデシックドーム
- 計算方法:節点法/切断法/マトリクス法(FEM)/簡易計算
- 適用例:体育館/工場/駅舎/空港/競技場屋根/橋梁/送電鉄塔
- 屋根トラスの構成:上弦材/下弦材/斜材/垂直材/節点
- 施工管理の勘所:建て方計画/仮支柱/接合部精度/揚重計画/設備取り合い
以上がトラス構造に関する情報のまとめです。
一通りトラス構造の基礎知識は理解できたと思います。「三角形=剛体、軸力のみ」という基本原理を押さえておけば、トラス梁・トラス橋・大空間建築への理解が一気に深まりますね。
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