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薬液注入工法とは?種類、注入材、適用地盤、施工手順、注意点など

  • 薬液注入工法ってそもそも何?
  • どんな種類の工法があるの?
  • 注入材は何を選べばいいの?
  • どんな地盤に効くの?
  • 深層混合や高圧噴射との違いは?
  • 施工管理として何に気をつければいい?

上記の様な悩みを解決します。

地下工事で湧水を止めたい軟弱地盤を一時的に固めたい既設構造物の隣で工事しても沈下させたくない——こういう悩みに応える代表的な選択肢が薬液注入工法です。

公共のインフラ工事だけでなく、ビルの建て替え工事の山留め・トンネル坑口・既設の配管を残したまま掘る工事など、民間の建築現場でも結構な頻度で出てくる補助工法だったりします。地盤改良の仲間ではあるんですが、深層混合(CDM)や高圧噴射撹拌(JSG)とは効きどころが違うので、選び方を間違うと「お金をかけたのに効いてない」となりがちです。

この記事では、薬液注入工法の意味・工法の種類・注入材の種類・適用地盤・施工手順・施工管理の注意点まで、施工管理視点で網羅的に整理します。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

薬液注入工法とは?

薬液注入工法とは、結論「地盤の中に薬液(液状の固化材)を圧入し、土の隙間を埋めて地盤を固化または止水する工法」のことです。

砂や礫の隙間(間隙)に水ガラスやウレタンを注入し、土の粒子同士をくっつけて地盤強度を上げ、同時に水の通り道を塞いで止水します。地盤改良工法の中では「間隙浸透型」の代表格に当たります。

期待できる効果は主に次の3つ。

薬液注入工法の3つの目的
1. 地盤強化(強度を上げて山留めの負担を減らす)
2. 止水(湧水を止める、漏水経路を遮断)
3. 沈下防止(既設構造物の周辺地盤を抑える)


ここがポイントなんですが、薬液注入は本設の地盤改良ではなく、補助工法・仮設の意味合いが強いのが特徴です。強度の発現は数日〜数週間寿命は数か月〜数年のオーダー(薬液の種類による)で、永久構造の主たる強度を担うことは原則ありません。

代表的な施工対象は次のような場面です。

施工対象 期待効果
山留めの根入れ部 地盤強化+ヒービング・ボイリング対策
シールドトンネルの坑口 止水+切羽の安定
開削工事の床付け面 湧水止水
既設構造物の近接施工 周辺地盤の沈下防止
路盤・路体の空洞補修 空洞充填

ボイリングの話はこちらが詳しいです。

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薬液注入工法の種類

工法は注入方式で大きく2系統に分かれます。

1. 二重管ストレーナ工法

地盤に先端から薬液を吐出するロッドを所定深度まで挿入し、引き上げながら一定間隔で薬液を注入する方式。比較的低圧で広範囲に注入できるのが特徴で、砂質地盤の止水・地盤強化で広く使われます。

  • 1.5ショット方式:A液とB液を地盤手前で合流させてから注入
  • ダブルパッカー併用:注入区間をパッカーで仕切って区間注入

2. ダブルパッカー工法(袋詰めパッカー注入)

注入孔の中に2段のパッカー(ゴム製の袖)を入れて区間を仕切り、その間にだけ薬液を浸透させる方式。注入精度が高く、必要な層だけ注入できるので、改良効果の確実性を求める場面で採用されます。周辺構造物への影響を抑えたい近接施工で出番が多いです。

工法の選定軸

ザックリと、次の表で当たりを付けます。

工法 適した地盤 強み 弱み
二重管ストレーナ 砂質土・砂礫 大量注入が早い 注入精度はダブルパッカー劣後
ダブルパッカー 砂質土〜シルト混じり 区間注入で精度が高い 工程・コストが上がる
地表面注入 浅い透水層 設備がシンプル 深度が取れない

周辺の類似工法との関係

地盤改良の他工法と並べて整理しておきます。

工法 改良の原理 改良範囲 強度の出方
薬液注入 間隙に浸透固化 間隙の水と薬液を置換 中〜低(仮設向き)
深層混合(CDM) セメントと土を機械撹拌 円柱体(径Φ1m級) 高(本設の柱状改良)
高圧噴射撹拌(JSG/CCP) 高圧噴射で土を切り崩し撹拌 円柱体(径Φ1〜3m級) 高(本設にも)
表層改良 表層をセメントと撹拌 浅層全面 中(住宅基礎下など)

「土の隙間に薬液をしみ込ませる」薬液注入と、「土を機械で撹拌する」深層混合・高圧噴射は、根本的に原理が違うんですね。シルト分が多くて隙間が少ない地盤は薬液が通らないので、その場合は深層混合や高圧噴射が候補になります。地盤改良の選択肢全体は次の記事を参考にしてみて下さい。

薬液注入の注入材の種類

注入する薬液には大きく水ガラス系ウレタン系の2系統があります。さらに細分化されますが、現場で覚えるべきは次の比較です。

1. 水ガラス系(無機系)

主成分はケイ酸ナトリウム(いわゆる水ガラス)。これに反応剤を混ぜて、地中でゲル化させて固める仕組みです。

種類 特徴 主な用途
酸性水ガラス系 ゲルタイム短い、強度高め 一般的な地盤強化・止水
アルカリ性水ガラス系 ゲルタイムやや長い、浸透性◎ 細かい砂への浸透注入
特殊シリカ系 環境配慮型、永続性も期待 飲料水源近傍、長期止水

水ガラス系のメリットは、コストが安く、環境への影響が比較的小さいこと。デメリットは、経年で強度が低下しやすい(数年スパン)、極端なpH変化で再溶出する可能性、など。仮設の主役です。

2. ウレタン系

イソシアネートを主成分とする反応性樹脂系。地下水と反応して急激に発泡・固化する水反応型と、A液B液を混ぜて固化する2液型があります。

種類 特徴 主な用途
水反応型ウレタン 水と反応して発泡・即時止水 緊急止水、湧水箇所
2液型ウレタン 強度発現が大きい、寸法安定 高強度・長期改良
疎水性ウレタン 低収縮で長期安定 トンネル覆工裏など

ウレタン系は反応スピードが速く、止水力が圧倒的なのが武器。一方、価格は水ガラスの数倍反応の制御が難しい有機溶剤の環境配慮が必要、というデメリットがあります。

「環境基準」と注入材選び

薬液注入は地下水汚染への懸念から、過去に問題を起こした歴史があり、現在は1974年通達(建設省)と各種環境基準注入材の選定・施工管理がガッチリ規定されています。水ガラス系のうち環境基準を満たすものしか公共工事では原則使えません。急結剤としての劇物・有機系を勝手に使うのは厳禁です。

薬液注入工法の適用地盤と効果

どの地盤に効くのか」は工法選定の核です。

適用しやすい地盤

地盤 透水係数の目安 注入の効き方
粗砂・中砂 10⁻²〜10⁻³ cm/s ◎ 浸透が早く均質に固化
細砂 10⁻³〜10⁻⁴ cm/s ○ 浸透するが時間がかかる
砂礫 10⁻¹〜10⁻²cm/s ◎ ただし大量に必要

適用が難しい地盤

地盤 透水係数の目安 困難な理由
シルト 10⁻⁴〜10⁻⁶ cm/s 浸透しにくい、注入逸走
粘土 10⁻⁶ cm/s 以下 ほぼ浸透しない
巨礫地盤 薬液が大空隙を抜けてしまう

間隙の小さすぎる粘性土は薬液が浸透せず、間隙の大きすぎる玉石混じりは薬液が逸走(流出)してしまう、というのがポイント。砂質地盤がストライクゾーンで、シルト分が10〜20%を超えると効果がガクッと落ちます。

地盤調査で粒度分布を確認した上で、透水係数と土質区分から工法選定するのが定石です。

地盤調査の流れはこちらが詳しいです。

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改良の効果指標

効果 目安
強度上昇 qu = 100〜2000 kN/m²程度(薬液による)
透水係数の低下 1/100〜1/1000のオーダー
改良半径 0.5〜1.0 m程度(注入孔1本あたり)

改良半径が1m前後なので、改良範囲を確実にカバーするには1〜1.5 mピッチで注入孔を配置するのが一般的。設計改良範囲と注入孔の配置計画は工事写真にも記録します。

薬液注入工法の施工手順

二重管ストレーナ工法を例に、現場での流れを整理します。

Step 1: 削孔(さっこう)

注入予定深度まで削孔機(ボーリングマシン)でケーシング付き削孔。削孔と同時にベントナイトなどで孔壁を保持し、孔の崩壊を防ぎます。

Step 2: 注入管の挿入

削孔機を引き抜き、二重管の注入管を挿入。先端のストレーナ部から薬液が地中に吐出される構造になっています。

Step 3: パッカーで区間を仕切る(ダブルパッカー時)

ダブルパッカー工法の場合は、注入区間を上下2段のパッカーで仕切り、その間にのみ薬液が出る状態にします。

Step 4: 薬液の注入

A液(水ガラス)とB液(反応剤)をミキサーで混合し、ポンプで圧入。注入圧・注入量・流量を注入記録計でリアルタイムにモニタリングします。

注入の標準的な管理項目
- 注入圧(管理上限値以下を維持)
- 注入量(区間ごとの計画量を確認)
- 流量(時間あたりの注入レート)
- ゲルタイム(温度・薬液濃度で調整)


Step 5: 区間ごとに引き上げて再注入

ロッドを所定の引き上げピッチ(例: 0.33 m)で引き上げ、深さ方向に連続的に注入していきます。

Step 6: 効果確認

注入終了後、事後の地盤調査で改良効果を確認。

確認方法 内容
N値の上昇 標準貫入試験で改良前後を比較
透水試験 改良後の透水係数を測定
室内試験(一軸圧縮) コアを採取して強度確認
現場ベーン試験 簡易的な強度確認

標準貫入試験の話はこちらが詳しいです。

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薬液注入工法における施工管理の注意点

施工管理として押さえておきたいポイントを整理します。

1. 環境基準(1974年通達)の遵守

地下水汚染を防ぐため、1974年7月の建設省通達で「薬液注入工事に係る環境保全について」が定められています。水ガラス系で環境基準を満たすもの以外は原則禁止で、施工後の水質モニタリング(井戸水・湧水)も求められます。通達の内容は事前に必ず通読しておきます。

2. 注入逸走(ロス)への対応

注入した薬液が想定外の経路から漏れ出ることを「逸走」と言います。地表面に薬液が噴き出す(地表噴出)、隣の地下構造物に流れ込む、空洞や旧井戸に流れ込むなど、いろいろなパターンがあります。

逸走の兆候は次の数値で察知できます。

  • 注入圧の急低下:地中の空洞・既存クラックに流れ込んだ
  • 注入量の急増:同じ圧力でドンドン入る=想定外の経路
  • 地表面の隆起:注入が過剰、想定深度より浅い場所で広がっている

注入圧と量の管理上限値を事前に設定し、超えたら即停止→協議する運用が基本です。

3. 地盤の隆起・沈下への配慮

注入による地盤隆起は、近接構造物・道路の沈下を打ち消すための意図的な使い方もありますが、過度な隆起は構造物を損傷させます。1mm単位の沈下計測を周辺で実施し、許容値(例: ±5 mm)を超えたら停止判断を行います。

4. 注入材の温度管理

水ガラス系のゲルタイムは温度に大きく依存します。冬場と夏場で同じ薬液を同じ濃度で使うとゲルタイムが大きく違ってくるので、現場で温度測定→濃度調整が必要。「マニュアル通りの濃度で使ったら全然固まらない」は冬場の典型的な失敗パターンです。

5. 施工記録の残し方

薬液注入は目に見えない地中の改良なので、注入記録が最大の品質証拠です。

最低限残すべき記録
- 注入孔位置の出来形図
- 削孔深度・注入深度
- 注入圧・注入量・流量の自動記録チャート
- 薬液配合・温度・ゲルタイム
- 現場検測員の立会記録


地中だから誰も見てない」と手を抜くと、後で効果検証ができなくなります。注入記録は出来形・品質の両面で監督員が必ず確認する書類なので、設備の選定段階から記録機能を確認しておきます。

6. 仮設だからこその寿命管理

薬液注入は仮設の補助工法であることを忘れない。本設の地盤強度として永続的に当てにできるものではないので、「いつまで効いていればいいか」の寿命設計を最初に明確にします。水ガラス系は3〜5年で強度低下ウレタンでも10年スパン、と思って設計するのが安全側です。

薬液注入工法に関する情報まとめ

  • 薬液注入工法とは:地盤の隙間に薬液を圧入して固化・止水する補助工法
  • 工法の種類:二重管ストレーナ/ダブルパッカー/地表面注入
  • 注入材:水ガラス系(コスト安・仮設向き)/ウレタン系(高強度・止水力◎)
  • 適用地盤:砂質土・砂礫が◎、シルト・粘土はNG(透水性で決まる)
  • 改良効果の目安:強度100〜2000 kN/m²、透水係数1/100〜1/1000、改良半径0.5〜1m
  • 施工手順:削孔→注入管挿入→区間注入→引き上げ→効果確認
  • 施工管理の注意点:環境基準遵守/注入逸走対応/隆起沈下計測/温度管理/記録/寿命設計

以上が薬液注入工法に関する情報のまとめです。

薬液注入工法は「地盤改良の万能薬」のように見えて、砂質地盤しか効かない仮設の寿命環境基準のしばり逸走リスクなど、ちゃんと押さえていないと痛い目に遭う工法でもあります。深層混合・高圧噴射との適材適所を理解した上で、地盤調査の段階から「ここは薬液注入が効くか」を考えるクセをつけておくと、現場での改良工法選定が的確になりますね。

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