- 塗装の下地処理ってなんで必要なの?
- どんな種類があるの?
- ケレンって何?1種・2種・3種・4種って?
- コンクリートの下地処理ってどうやるの?
- シーラー、フィラー、プライマーの違いって?
- 下地処理を手抜きするとどうなる?
上記の様な悩みを解決します。
塗装の下地処理とは、結論「塗膜が正しく密着するために、塗る前に下地を整える作業」のことです。塗装は塗料の品質×下地の状態で仕上がりが決まり、実は下地処理が全工程の7割と言われるほど重要な作業。下地処理を手抜きすると、どんなに良い塗料を使っても1〜2年で剥離するという残念な結果になります。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
塗装の下地処理とは?
塗装の下地処理とは、結論「塗料が正しく密着・発色するように、塗装前に下地表面を整える一連の作業」のことです。
下地処理がやろうとしていることは、突き詰めると次の3つに集約されます。
- 清掃:油・汚れ・埃を取り除いて、塗料が直接下地に乗るようにする
- 脆弱層の除去:浮いている塗膜・サビ・レイタンス・粉化層など、剥がれやすい層を取り除く
- 密着性の確保:吸水率の調整、足付け(細かい傷で表面積アップ)、シーラー塗布などで、塗料と下地を化学的・物理的に結合させる
このどれが欠けても、塗膜の寿命は一気に短くなります。
下地処理の方法は、下地材料(鋼材・コンクリート・木材)によって全然違います。共通点は「塗料と下地の間にトラブル要素を残さない」ということ。順に見ていきましょう。
塗装と密接な関係にある防水工事はこちら。
鋼材の下地処理(ケレン)
鉄骨造の塗装で必ず登場するのがケレンです。語源は英語の「Clean」が訛ったもので、サビや旧塗膜を取り除く作業を指します。
ケレンの4区分
ケレンには1種〜4種の区分があり、JASS18(日本建築学会・建築工事標準仕様書)で定義されています。
| 区分 | 状態 | 主な工法 | 用途 |
|---|---|---|---|
| 1種ケレン | サビ・旧塗膜を完全除去 | ブラスト処理(サンドブラスト・ショットブラスト) | 海洋構造物、橋梁、重防食 |
| 2種ケレン | 著しいサビ・旧塗膜を電動工具で除去 | ディスクサンダー、ワイヤーホイール | 工場、屋外鉄骨 |
| 3種ケレン | 浮いているサビ・塗膜を除去(活膜は残す) | スクレーパー、ワイヤーブラシ | 一般建築(最も多い) |
| 4種ケレン | 軽微な汚れ・粉化物を除去 | サンドペーパー、布拭き | 屋内、健全な既存塗膜 |
数字が小さいほど厳しい処理で、コストもかかります。「鉄骨外部の防錆塗装は3種ケレン」が一般建築の標準。重要構造物や塩害地域では2種・1種を使います。
ブラスト処理
1種ケレンは現場では難しく、鉄骨ファブで工場ブラストして搬入するのが普通です。鋼材表面に研磨材(鋼粒・ガーネット)を高速で吹き付け、サビ・黒皮・旧塗膜を全部剥がします。
ブラスト後は金属光沢のある状態(白色金属面)になり、すぐに錆び始めるため、4時間以内にプライマー(さび止め)を塗布するのが鉄則。
電動工具ケレン
2種・3種は現場でディスクサンダーやワイヤーホイールを使って実施します。
- ディスクサンダー:研削砥石で削る。サビが厚い箇所に有効
- ワイヤーホイール:細いワイヤーで叩き落とす。広い面積に有効
- スクレーパー:手作業で削る。狭い箇所・細部用
電動工具は騒音と粉塵対策が必須。粉塵は集塵機を併用し、近隣に配慮します。
サビ止め塗装(プライマー)
ケレン後すぐに塗るのがさび止め塗料(防錆プライマー)。
- JIS K 5621:一般用さび止め(屋内向け、安価)
- エポキシ樹脂系:屋外・湿気の多い場所に
- エッチングプライマー:金属との密着が特に強い、ステンレスや非鉄金属用
選定は使用環境(屋内・屋外・海岸・工場)と耐用年数で決まります。
塗装と関連の深い溶接の知識はこちら。

コンクリート・モルタルの下地処理
RC造の外壁塗装、モルタル仕上げ床の塗装などで実施する下地処理です。
高圧洗浄
最初の工程は高圧洗浄。100〜150kgf/cm²(10〜15MPa)の水圧で外壁を洗浄し、
- 表面の汚れ・カビ・コケ
- 浮いている既存塗膜
- 粉化(チョーキング)した塗膜
を一気に落とします。築10年以上の外壁で塗替えする場合は必須工程。
クラック補修
ヘアクラック(0.3mm以下)から構造クラック(1mm超)まで、ひび割れの大きさに応じて補修方法を変えます。
- ヘアクラック:シーラー擦り込み・微弾性フィラーで充填
- 0.3〜1mm:Uカット後シーリング充填
- 1mm超:エポキシ樹脂注入
クラック補修を飛ばすと、塗装後に塗膜にクラックが透けて出るので、ここを丁寧にやれるかで仕上がりが決まります。
クラックや爆裂などの欠損補修は、こちらでも触れています。

段差・凹凸の調整
タイル剥がし跡やジャンカ(豆板)など、表面の凹凸はモルタル左官や下地調整材(フィラー)で平滑化します。
- モルタル左官:大きな欠損補修
- 微弾性フィラー:1〜3mm程度の凹凸調整、ヘアクラック対策
- 下塗りフィラー:軽微な凹凸を均す
ジャンカについてはこちら。

シーラー塗布
最後にシーラー(または下塗り材)を塗ります。シーラーの役割は、
- 下地の吸い込みを止める:上塗り塗料を均一に乗せる
- 下地と上塗りを密着させる:プライマー的な働き
- 粉化層を固める:旧塗膜の劣化部を強化
の3点。「下地が水で湿るくらい吸い込む」場合はシーラーを2回塗りすることもあります。
シーラー・フィラー・プライマーの違い
混同されやすい3つを整理しておきます。
| 名称 | 主な目的 | 厚み |
|---|---|---|
| シーラー | 吸い込み止め・密着 | 薄膜(透明系) |
| フィラー | 凹凸の調整・微小クラック充填 | 厚膜(白色系) |
| プライマー | 下地と上塗りの接着・防錆 | 薄膜(金属用が多い) |
「シーラー=Sealer(封止する)」「フィラー=Filler(埋める)」「プライマー=Primer(下塗り)」と覚えると区別しやすいです。
木材の下地処理
木造住宅の外装木部・屋内造作の塗装で必要な下地処理です。
研磨(サンディング)
サンドペーパー(80〜400番)で木材表面を磨きます。
- 80番:粗削り、塗膜剥がし
- 180〜240番:仕上げ前研磨(一般的)
- 320〜400番:高級仕上げ用
木目の方向に沿って研磨するのが鉄則。逆目で削ると毛羽立ちが出てしまいます。
節止め
無垢材には節があり、節からヤニ(樹脂成分)が出てくることがあります。塗装後にヤニが浮き出ると見栄えが悪いので、節止めシーラーを節の周辺に塗って封じます。
ヒノキ・スギ・パイン材は節が多いので、節止め必須と覚えておきましょう。
目止め(オイルステイン仕上げ等)
オーク・ナラ・タモのような導管(木の繊維方向の穴)が大きい木材は、塗料が穴に吸い込まれて表面がボコボコになることがあります。これを防ぐのが目止め。
- 水性目止め剤を塗布
- 数分後にウエスで木目に沿って拭き取る
- 乾燥後にサンディング
これで導管が埋まり、上塗りが平滑に乗ります。
防腐・防虫処理
屋外の木部は、塗装前に防腐・防虫処理を行います。クレオソート油・キシラデコールなどの木材保護塗料を、塗装の下地として塗布する場合が多いです。
下地処理の不具合と原因
下地処理を間違えると、塗装後に必ず不具合が出ます。代表的なものを押さえておきましょう。
剥離(ハクリ)
塗膜が下地から剥がれる現象。原因は、
- ケレン不足:旧塗膜の浮きを残したまま塗装
- 油分残留:脱脂が不十分
- シーラー塗り忘れ
- 下地が湿っていた:含水率が高い状態で塗装
「下地が乾いていない状態で塗装するのが、剥離原因の半分以上」と言われるほど、含水率管理は重要です。
ピンホール
塗膜にゴマ粒大の小さな穴が空く現象。原因は、
- 下地の細孔から空気が抜けてピンホールに
- シーラーで吸い込み止めをしていない
- 塗装時の気温が高すぎ・低すぎ
シーラーをしっかり塗ることで大半は防げます。
色ムラ
塗膜の色が均一にならない現象。原因は、
- 下地の色が透けている(隠蔽不良)
- 下地の吸い込みムラ(パッチ補修部分だけ吸い込みが違う)
- 乾燥不良
下地全体にシーラー+フィラーで吸い込みを均一化することで、色ムラはほぼなくせます。
白華(エフロレッセンス)
コンクリート下地の塗装で、白い結晶が塗膜表面に出てくる現象。コンクリート内部のカルシウム成分が水と一緒に表面に染み出して結晶化したものです。
- 下地の含水率が高い状態で塗装した
- コンクリート打設後の養生期間が短い(28日未満)
防止策は、コンクリート打設後28日以上の養生と下地含水率8%以下の確認です。
塗装に関連する仕上げ材、例えば耐火被覆材はこちらで解説しています。

塗装の下地処理に関する情報まとめ
- 下地処理とは:塗料が密着・発色するように下地を整える作業
- 3つの目的:①清掃②脆弱層除去③密着性確保
- 鋼材:ケレン1〜4種+さび止め塗装が標準
- コンクリート・モルタル:高圧洗浄→クラック補修→シーラー
- 木材:研磨→節止め→(必要なら)目止め
- シーラー:吸い込み止め・密着
- フィラー:凹凸の充填
- プライマー:下塗り(金属用が多い)
- 不具合:剥離・ピンホール・色ムラ・白華の原因はほぼ下地処理ミス
- 重要度:塗装工事の7割は下地処理で決まる
以上が塗装の下地処理に関する情報のまとめです。
塗装は仕上げ工事の最後の砦で、ここで手を抜くと「塗ったばっかりなのに2年で剥がれる」みたいな悲しい結末になります。下地処理に工程の半分以上の時間を割いてもらえる業者を選び、施工管理側もケレンや高圧洗浄の状況を立会い確認するのが、長持ちする塗装のキモですね。「塗料の良し悪しよりも下地のきれいさ」と覚えておくと、トラブルが減るかなと思います。
合わせて読みたい関連記事を貼っておきます。







