- 水圧ってなに?
- 単位や計算式は?
- 静水圧と動水圧の違いは?
- 給水ポンプの選定で水圧をどう使う?
- 地下水圧で建物が浮くって本当?
上記の様な悩みを解決します。
「水圧」は理科の教科書で学ぶ基礎概念ですが、建築・設備の現場では給排水・防水・土留め・浮力の各設計に直結する実務指標として常時登場します。電気施工管理として水中ポンプ・揚水機械の設計を見るときにも、水圧の知識がないとカタログ選定で判断ミスをします。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
水圧とは?
水圧とは、結論「水が単位面積あたりに及ぼす力」のことです。英語では water pressure。
水中にある物体や容器の内壁には、深いほど大きな圧力が水から作用します。これが水圧。原理はシンプルですが、建築の世界では配管・防水・浮力・土留めの4方向で活用される基本指標です。
水圧の基本式(静水圧の場合)
P = ρ × g × h = γw × h
- P:水圧(Pa)
- ρ:水の密度(1,000 kg/m³)
- g:重力加速度(9.81 m/s²)
- h:水深(m)
- γw:水の単位体積重量(≒ 9.81 kN/m³)
「深さが1m増えるごとに、水圧は約9.8 kPa(≒ 0.01 MPa ≒ 0.1 kgf/cm²)増える」というのが核心。10m潜ると 約1気圧分の追加圧力がかかる、という換算でも覚えられます。
ばね定数とフックの法則の話もこちらで触れています。
水圧の単位と計算
実務では水圧の単位がいろいろ出てきて混乱しがちなので整理しておきます。
主な単位と換算
| 単位 | SI/工学 | 用途 |
|---|---|---|
| Pa(パスカル) | SI基本 | 学問的・理論計算 |
| kPa | SI実務 | 構造設計・土圧計算 |
| MPa(メガパスカル) | SI実務 | 給水・空調・配管圧力試験 |
| kgf/cm² | 工学単位(旧) | 古い設計書・カタログ |
| mAq(メートル水柱) | 工学単位 | 給水ポンプの揚程・差圧計 |
| atm(気圧) | 慣用 | 大気圧基準 |
| bar(バール) | 工業 | 機械系・気圧 |
換算の暗算ポイント
- 1 MPa = 1,000 kPa = 約 10 kgf/cm² ≒ 約 100 mAq ≒ 約 10 atm
- 1 mAq ≒ 9.8 kPa ≒ 0.0098 MPa ≒ 0.1 kgf/cm²
- 水深 1m = 9.8 kPa の水圧
これを頭の中でサッと変換できると、現場のポンプカタログ・防水仕様書・圧力試験記録を読む速度が一気に上がります。
計算の例
例題:プール底面の水圧
水深 2m のプールの底面の水圧は?
P = γw × h = 9.81 × 2 = 19.6 kPa = 0.196 MPa = 約 2 mAq
例題:地下3階の地下水位での外壁水圧
地下3階(深さ約 9m)の建物外壁は、地下水位が地表面にあるとすると、
P = 9.81 × 9 = 88 kPa = 0.088 MPa
これに対して防水と耐圧構造の両方が機能していないと、外壁から水漏れする計算になります。
水圧の種類(静水圧・動水圧・浮力)
水圧と一括りに言っても、状況で3つに分けて考えます。
1. 静水圧(せいすいあつ)
止まっている水が及ぼす圧力。深さだけで決まるシンプルな水圧で、上で見た P = γw × h の式そのもの。
静水圧の特徴
- 深さに比例
- 全方向(上下左右)に等しく作用
- 水中にある面の向きに関係なく圧力は同じ
地下外壁・地下水槽・プール・防水の検討は基本これで計算します。
2. 動水圧(どうすいあつ)
水が流れているときの圧力。ベルヌーイの定理で、流速・位置エネルギー・圧力エネルギーの和が一定になります。
P + (1/2)ρv² + ρgh = 一定(ベルヌーイの式)
- v:流速(m/s)
配管内では流速が増えると圧力が下がるという関係。給水管の流量計算・抵抗損失計算で出てきます。
3. 浮力
水中に沈んだ物体が上向きに受ける力。アルキメデスの原理で説明できる現象。
浮力 F = ρ × g × V(V:物体が押しのけた水の体積)
地下構造物が地下水位以下にある場合、建物全体が浮かび上がる方向の力を受けます。これが「地下ピットの浮き上がり」問題で、設計時に必ず検討する論点です。
アルキメデスの原理についてはこちらで。
建築・設備での水圧の使い方
水圧を扱う実務シーンは多岐にわたります。代表的な使われ方を整理します。
1. 給水ポンプの揚程算定
給水設備の中核。ポンプの必要揚程 H は次の3要素の合計で決まります。
ポンプの必要揚程 H = 実揚程 Hr + 摩擦損失水頭 Hf + 必要吐出圧 Hp
例:5階建てビルの給水ポンプ
- 高さ揚程 Hr:5階分 = 約 18m
- 摩擦損失 Hf:管路と継手で約 5m
- 末端蛇口必要圧 Hp:0.05 MPa = 約 5m
- 合計:H = 28 m(mAq)
これを踏まえてポンプ選定すると 「揚程 30 m、流量〇〇 L/min のインバータポンプ」 のように決まります。
水道直結方式・受水槽方式・加圧給水方式などの方式選定はこちらで。

2. 給水管の圧力試験
給水管の施工後は水圧試験で漏水確認が必須。基準は配管種別で決まっています。
| 配管種別 | 試験圧力 | 保持時間 |
|---|---|---|
| 給水管(一般) | 1.75 MPa | 1時間以上 |
| 空調冷温水管 | 設計圧力の1.5倍 | 1時間以上 |
| 消火配管(屋内消火栓) | 1.4 MPa | 30分以上 |
| スプリンクラー配管 | 1.4 MPa | 30分以上 |
施工管理として、試験圧力が設計圧力の1.5〜2倍で設定されるのが標準と覚えておくと、各種配管の試験要領が把握しやすくなります。
スプリンクラーや消火設備の話はこちらで。

3. 地下構造物の防水耐圧
地下水位以下の構造物外壁は、静水圧 P = γw × h が常時作用するので、防水+耐圧の二重設計が標準。
地下外壁の防水水圧設計
- 地下1階深さ3m → 約30 kPa(一般防水で対応)
- 地下3階深さ9m → 約90 kPa(耐圧防水・止水板要)
- 地下5階深さ15m → 約150 kPa(高耐圧仕様・複合防水)
水圧が大きいほど防水仕様のグレードと止水材が複雑化します。シート防水・アスファルト防水・止水板・水膨張ゴムなどを組み合わせて多重に守る形。
シート防水の選定はこちらで。
4. 排水ポンプ・揚水ポンプ
ピット内の排水・湧水・湧き水を建物外に排出するための水中ポンプも、水圧の知識が必須。
排水ポンプの選定要素
- 揚程:ピット深さ+外部排出管までの高さ
- 流量:流入予測量×安全率
- 自動運転:水位センサー連動
- 電源:単相100V/三相200V/三相400V
- 非常電源:火災時・停電時の動作
ピット深さ 4m で地上3階の管路(高さ8m)に排水するなら、必要揚程は12m+摩擦損失2〜3m=15m前後。これに合わせてポンプを選定。
排水ポンプの詳細はこちらで。
5. 土留めの地下水圧
地下掘削時の山留め設計では、土圧+水圧の両方を考えます。地下水位以下では水圧が壁面に直接作用し、土圧と相加わって大きな力が発生。
壁面の合計圧 = 土圧(水中重量で計算)+ 静水圧(地下水位以下)
地下水位を見落とすと壁面圧の計算が大幅に小さくなり、最悪は山留め崩壊事故。地下水位の実測と排水(井戸点排水・ウェルポイント工法)の検討が必要です。
土留めの話はこちらで。
水圧に関する施工管理の注意点
実務でつまずきやすい論点を整理します。
圧力試験での誤検出と要確認事項
水圧試験では0.1MPaの違いが大きく扱われるので、以下のポイントを押さえます。
圧力試験のチェック項目
- 試験前に配管全体の空気を抜く(エア抜き不十分だと圧力降下を誤検出)
- 圧力計は試験圧の2倍程度のレンジを選ぶ(精度確保)
- 試験中の温度変化を記録(温度低下で見かけ上の圧力降下)
- 30分目・60分目で複数回読み取り
- 圧力降下が許容値を超えたら継手から徐々に水漏れ点検
「実は気温下降での見かけ降下だった」というオチもあるので、試験中の周囲温度の記録も同時に行います。
浮力対策(地下ピットの浮き上がり)
地下水位の高い敷地では、地下ピット・地下水槽が浮力で持ち上がる問題が発生します。
浮き上がり力 = γw × V(水中体積) > 構造物の自重 + 上載荷重
浮力対策の手段
- アンカーボルトで地下構造物を地盤に拘束
- 上載荷重を増やす(土被り・コンクリート増し打ち)
- 浮き上がり防止板(フットプレート)
- 水抜き孔を設けて静水圧を逃す(撤去可能なら)
- 地下水位を恒久的に下げる(ドレナージ工法)
設計図に「浮力検討」の項目があるかどうかを必ず確認しないと、完成後の梅雨時に地下ピットがバキッと持ち上がる事故になり得ます。
給水設備での水撃(ウォーターハンマー)
弁の急閉鎖で発生する水撃圧は、定常水圧の数倍〜10倍に達することがあります。
水撃圧 ΔP = ρ × c × Δv(c:圧力波伝播速度 ≒ 1,300 m/s)
水撃対策
- 緩閉鎖弁(モーター駆動式 / 緩閉鎖逆止弁)
- ウォーターハンマー防止器の設置
- 配管設計で流速を2 m/s以下に抑える
- ポンプ停止時のサージタンク設置
「ガッ!」と音がして配管が揺れるアレが水撃。気付かず放置すると配管疲労破壊・継手リーク・蛇口破損につながります。
凍結による水圧上昇
冬季の凍結では水→氷で約9%体積膨張し、密閉配管内では水圧が異常上昇して破裂します。
凍結対策
- 屋外配管・露出配管の保温
- 不凍液(エチレングリコール水溶液)の循環
- 凍結予知ヒーターの巻き付け
- 冬季長期不在時は水抜き
特にスプリンクラー配管・湯張り設備は凍結破損で水損事故を起こすと数百万円規模の保険沙汰になり得ます。
水圧に関する情報まとめ
- 水圧とは:水が単位面積に及ぼす圧力。深さに比例
- 基本式:P = ρgh = γw × h(水深1mで約9.8 kPa)
- 単位:Pa/kPa/MPa/kgf/cm²/mAq/atm。1 MPa ≒ 100 mAq ≒ 10 kgf/cm²
- 3種類:静水圧(止水)/動水圧(流水・ベルヌーイ)/浮力
- 建築での用途:給水ポンプ揚程/圧力試験/地下防水/排水ポンプ/土留め
- 施工管理での要点:圧力試験管理/浮力対策/水撃防止/凍結対策
以上が水圧に関する情報のまとめです。
水圧は設備設計・防水設計・土留め・電気ポンプ選定の各分野でずっと使い続ける基本指標。「1mで約10 kPa」の換算と、静水圧・動水圧・浮力の3区分を押さえておけば、現場での議論にスムーズに入れるようになります。
合わせて読みたい関連記事を貼っておきます。



