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風荷重とは?計算式、速度圧、風力係数、地域係数などを解説

  • 風荷重ってなに?
  • どうやって計算するの?
  • 地震荷重との違いは?
  • どっちが大きいかどう判断するの?
  • 仮設や養生でも風荷重を気にするべき?
  • 施工管理として何を意識すればいい?

上記の様な悩みを解決します。

風荷重は構造計算で地震荷重と並んで検討される水平荷重。低中層の建物では地震荷重が支配的なケースが多いんですが、高層・軽量・剛性の低い建物では風荷重が支配荷重になることもあります。施工管理として、設計時の風荷重の意味仮設工事での風荷重管理の両軸を押さえると、現場運営の精度が上がります。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

風荷重とは?

風荷重とは、結論「風によって建物に作用する水平荷重」のことです。

英語では Wind Load。建築基準法施行令第87条で定義され、構造計算の中で水平荷重として扱われます。

ざっくりイメージすると

風は空気の流れ。流れている空気が建物にぶつかったときに、建物は押される側(風上)には正圧離れる側(風下)には負圧を受けます。さらに屋根面には吹き上げの力もかかる。

風 →→→  [建物]   →→→
        ↑風上面に正圧(押される)
        ↑風下面に負圧(吸われる)
        ↑屋根面に上向き圧(吹き上げ)

風荷重の特徴

  • 水平方向に作用する(地震と同じく)
  • 建物の形状・面積に比例(重さに比例する地震とは違う)
  • 建物の高さで大きくなる(上空ほど風が強い)
  • 地域・地表面の粗さで大きさが変わる
  • 持続的にかかり続ける(地震は瞬間的)

地震荷重との違い

項目 風荷重 地震荷重
比例する量 受風面積 建物の重さ
持続性 持続的(数分〜数時間) 瞬間的(数秒〜数十秒)
方向 風向で決まる 全方向(任意)
大きい建物の特性 高層・大面積で支配 重い建物・低層剛建物で支配

→ ざっくり言うと、重い・低い建物は地震荷重支配軽い・高い建物は風荷重支配になりやすい。

地震荷重は別記事に詳しくまとめています。風荷重と並べて理解すると分かりやすいです。

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風荷重の計算式

建築基準法施行令第87条の風荷重の計算式は次の構造になっています。

①基本式

W = q × Cf × A
  • W:風荷重(kN または N)
  • q:設計用速度圧(N/m²)
  • Cf:風力係数(無次元)
  • A:受風面積(m²)

→ 「風で押される圧力 × 風を受ける向きの係数 × 風を受ける面積」のシンプルな掛け算。

②設計用速度圧 q

q = 0.6 × E × V0²
  • 0.6:定数(空気密度・係数の組み合わせ)
  • E:環境係数(地表面粗度・建物高さで決まる)
  • V0:基準風速(地域で決まる、m/s)
E = Er² × Gf
  • Er:平均風速の高さ方向分布係数
  • Gf:ガスト影響係数(突風による割増)

③風力係数 Cf

建物の形状・部位ごとに、風がどのくらい押すかを表す係数。

部位 Cfの目安
風上壁面 約0.8(押される)
風下壁面 約−0.4(吸われる)
風上屋根 約−1.0(吹き上げ)
風下屋根 約−0.5
妻壁 約−0.8

→ プラスは「押す」、マイナスは「吸う・吹き上げる」を意味します。

④基準風速 V0

地域ごとに決められた、再現期間50年の10分間平均風速

地域例 V0(m/s)
東京・大阪・名古屋 34
沖縄・台風常襲地域 36〜46
内陸の風が穏やかな地域 30〜32

→ 沖縄・南西諸島は台風で風が強い→V0が大きい、内陸は風が弱い→V0が小さい。

ガスト影響係数Gfの詳細(平成12年建告1454号の表の読み方)は別記事にもあります。

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速度圧と地表面粗度区分

風荷重の計算で核心となるのが速度圧 q と、それに影響する地表面粗度区分

①地表面粗度区分の意味

地面の凸凹(建物・木・地形)が風を遅くする。地面が滑らかなら風は速いまま、凸凹があると遅くなる。これを4区分で表します。

区分 状況
海上・海岸線(裸) 海岸からの風
まばらな建物 田園地帯・郊外
中層建物 一般的な市街地
高層建物が密集 大都市中心部

粗度区分が高いほど(Ⅳに近いほど)、風が遅くなって風荷重が小さくなる。海沿いの建物は粗度Ⅰ・Ⅱで風荷重が大きく出ます。

②建物の高さと風速

地面に近いほど風は遅く、上空に行くほど速くなる「べき乗則」が一般的。

ある高さZの風速 ∝ (Z / Zg)^α
  • α:粗度区分で決まる指数(0.10〜0.27)
  • Zg:勾配風高度(粗度区分で決まる、250〜450m)

高い建物ほど風荷重が大きくなります。これが高層建物では風荷重が支配的になる理由のひとつ。

③設計者がやっている計算の流れ

  1. 建物所在地の基準風速V0を確認
  2. 地表面粗度区分を判定(周辺地形・建物状況)
  3. 建物高さごとにEr・Gfを計算
  4. q = 0.6 × Er² × Gf × V0² を算出
  5. 各部位のCfを選定
  6. W = q × Cf × A で各部位の風荷重を算出

施工管理が直接計算することはほぼないですが、「どうしてこの建物の風荷重がこの値なのか」を構造図書で読み解けると、施工計画の質が上がります。

風力係数Cfと部位別の挙動

風荷重で意外と見落とされやすいのが、部位別のCfの違い

①平面的な分布

風 →→→  [建物]
       ↑    ↑    ↑
      風上 妻壁  風下
       Cf=0.8 Cf=-0.8 Cf=-0.4

→ 風上は押され、風下は吸われ、妻壁(風と平行な側面)も吸われる。全部が押されるわけではないのがポイント。

②高さ方向の分布

建物が高くなると、風速が高さで変わるため、

  • 上層階:風が強い→Cf×qが大きい
  • 下層階:風が弱い→Cf×qが小さい

各階でレベル別の風荷重を計算する。

③屋根面の挙動

屋根面は吹き上げ(マイナスCf)が支配的。これは、

  • 屋根の形状(フラット・片流れ・寄棟)
  • 風の角度
  • 屋根勾配

で大きく変わります。陸屋根(フラット屋根)の隅部は局所的にCf=−2.0以上になるので、屋根葺き材の留め付けが要注意部位。

④高層建物の風揺れ

高層・超高層では、風による振動・横揺れが居住性能に影響。居住性のためのアスペクト比・粘性ダンパーなどの対策が必要。

⑤風洞実験

特殊形状・超高層では、風洞実験を行って実物大の風圧を測定し、規定の計算式より精緻な値で設計するケースもあります。

風荷重に関する施工管理視点

風荷重は構造設計のテーマと思われがちですが、施工管理にも直結する場面が複数あります。

①地震荷重との支配比較

設計者は地震荷重と風荷重を両方計算して、大きい方を支配荷重として採用

  • 低層・剛な建物(戸建住宅・低層RC)→ 地震荷重支配
  • 中高層・柔な建物(マンション・オフィスビル)→ どちらも検討、場合により支配が変わる
  • 高層・超高層 → 風荷重支配が増える
  • 大屋根・倉庫・工場 → 風荷重支配(吹き上げ)

剛性率・偏心率の話と合わせて読むと、構造設計の全体像が見えてきます。

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②仮設足場・シートの風荷重

工事中の仮設足場はメッシュシートを張ると風を受ける。

  • 養生シート:Cf×q×Aで仮設構造への風荷重が計算される
  • 設計風速(仮設の場合):地域・期間で決まる短期風速を採用
  • 強風時にメッシュシートを巻き上げる運用ルールを施工計画書に記載

シート巻き上げの判断基準(風速10m/s超で巻き上げ等)は、現場ごとに事前ルール化しておくと事故防止につながります。

③タワークレーン・揚重機の風対応

タワークレーンは強風時の運用停止基準が厳格。

風速(m/s) 運用ルール
〜10 通常運用
10〜15 慎重運用・荷振れ注意
15超 作業中止
30超(台風時) クレーン頭部を風向に向けて固定(ウェザーベーン)

タワークレーン本体は当然構造計算で風荷重を見込んでいますが、作業中の安全運用は別の話。

④外装材・看板の留め付け

完成後の建物でも、外装材(ガラス・アルミパネル・タイル)は風荷重で剥がれる可能性。施工時の留め付け(アンカー・シール)の精度管理が重要。

⑤足場の倒壊リスク

低層工事の単管足場・くさび緊結式足場でも、強風時に風荷重で倒壊する事例が毎年複数発生。

  • 壁つなぎの間隔(垂直方向5.5m以下、水平方向7.5m以下)
  • メッシュシートの開口
  • ジャッキベースの根入れ

これらの基本ルールを守ることが、事故防止の最低ライン

ブレース構造(風・地震時の主要抵抗要素)は別記事に詳しくまとめています。

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風荷重に関する注意点

最後に、現場で誤解しやすいポイントを整理します。

①「風荷重=地震荷重より小さい」とは限らない

「日本は地震国だから地震荷重が支配だろう」と思い込んでしまうと、沿岸部の中高層建物・大屋根建物で痛い目に。両荷重の比較表を構造図書で確認するクセを。

②工事中と完成後で風荷重の扱いが違う

完成建物は外装が完成して風を受ける形になっていますが、工事中は仮設の防護柵・シートが風を受ける。完成時より工事中の方が荷重条件が厳しいケースもあります(メッシュシート全張りの足場など)。

③地表面粗度区分の判定

周辺の建物・地形は時間とともに変わる(再開発・新築など)。設計時の粗度区分が、現実と合っているかは確認が必要。海岸・山地・大型造成地での建物は要注意。

④台風時の運用

台風が来る前に、

  • メッシュシートを巻き上げる
  • 足場の緊結を再確認
  • クレーン頭部のウェザーベーン化
  • 仮設物の飛散防止

を一連の運用として施工計画書に明記。過去の事故事例を見ると、ほぼすべて事前ルールの不徹底が原因。

⑤局所的な強風(隅部・突起部)

建物の隅部・突起部・屋根の縁部は、Cfが急に大きくなります。屋根の縁の留め付け不良で「屋根が吹き飛んだ」事例は珍しくない。

⑥近隣建物のビル風

高層建物の風下では、ビル風(風の集中)で局所的に強風が出る現象。隣接の高層建物がある現場では仮設の風荷重評価で配慮を。

風荷重に関する情報まとめ

最後に、風荷重の重要ポイントを整理します。

  • 風荷重とは:風によって建物にかかる水平荷重。受風面積×風圧
  • 基本式:W = q × Cf × A
  • 設計用速度圧:q = 0.6 × E × V0²、E = Er² × Gf
  • 地表面粗度区分:Ⅰ(海上)〜Ⅳ(高層密集都市)の4区分。粗度が高いほど風が遅くなる
  • 風力係数Cf:風上+0.8/風下−0.4/屋根−1.0などの部位別の係数
  • 基準風速V0:地域で決まる(東京34、沖縄36〜46)
  • 地震荷重との支配判定:低層は地震、高層・大屋根は風が支配しやすい
  • 施工管理視点:仮設足場のシート風荷重、タワークレーン風対応、外装の留め付け、台風時運用
  • 注意点:粗度区分の現状確認、工事中と完成後の差、隅部の局所的強風、ビル風

以上が風荷重に関する情報のまとめです。

風荷重は地震荷重とセットで構造計算の水平荷重を構成する基本荷重。設計の世界の話に思えますが、施工現場でも仮設・養生・揚重の場面で直接ぶつかる物理量です。一通り風荷重の基礎知識は理解できたと思います。

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