- 軸力図ってどんな図?
- M図・Q図と何が違うの?
- 書き方の手順が知りたい
- 例題で計算の流れが見たい
- 実務でいつ軸力図を見るの?
- 引張と圧縮、+と−はどっち?
上記の様な悩みを解決します。
構造力学ではN図(軸力図)/Q図(せん断力図)/M図(曲げモーメント図)の3図セットを書く問題が頻出。M図とQ図はよく目にしますが、軸力図(N図)は梁の問題では「全部ゼロ」になりがちで存在感が薄く、ラーメン構造やトラスで急に主役になる、というギャップに戸惑う学生さんが多い印象です。
この記事では軸力図の書き方を「3図セット」の中で位置付けながら、求め方の手順・例題・実務での使い所まで整理します。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
軸力図(N図)とは?
軸力図とは、結論「部材軸方向にかかる力(軸力 N)の分布を、部材の長さ方向に沿って図示したもの」のことです。「N図」とも呼びます。
「軸力」というのは、部材の長手方向にかかる力。引張られるか圧縮されるかのどちらか、という単純な話で、鉛直荷重・水平荷重を受けた構造の中で各部材がどれだけ縦方向に押されているか/引かれているかを示します。
軸力 N の符号ルール(建築・土木の標準)
- 引張力(部材が伸びる方向):N > 0(プラス)
- 圧縮力(部材が縮む方向):N < 0(マイナス)
引張がプラスというのは「部材が外側に向かって伸びる=外向き正」の発想に基づきます。土木と建築でも基本同じ約束です。
応力の概念全般はこちらで深掘りしています。
3図セット(N図・Q図・M図)の関係
構造力学ではN図/Q図/M図を1セットで書きます。それぞれの役割を整理。
| 図 | 表すもの | 何の話か |
|---|---|---|
| N図(軸力図) | 軸方向の力 | 引張・圧縮 |
| Q図(せん断力図) | 部材直交方向の力 | せん断力 |
| M図(曲げモーメント図) | 曲げモーメント | 部材の曲がり |
3つは全部「ある断面に作用する内力」を表しています。1つの構造に対して3つの図がそれぞれ存在し、設計ではすべてを使って部材を決めます。
部材の種類と図の主役
| 部材タイプ | 主役の図 |
|---|---|
| 梁(曲げ部材) | M図・Q図が主役、N図はゼロが多い |
| 柱(圧縮部材) | N図が主役、M・Q図も併存 |
| トラス(軸力部材) | N図のみ(M・Q図は理論上ゼロ) |
| ラーメン構造 | 3図とも存在(柱はN大、梁はM大) |
トラスは「ピン接合で軸力しか伝えない」ように作られるのでN図だけでOK。一方ラーメン構造は剛接合なので3図全部が必要、という棲み分けになります。
トラス構造の話はこちらで。



Q図・M図との関係式
3図は数学的に関係しています。
dM/dx = Q(モーメント図の傾きがせん断力)
dQ/dx = -w(せん断力図の傾きが分布荷重の符号反転)
軸力 N は単独で決まるので、Q・Mとは独立に求めます。水平荷重がない梁ではN=0で、軸力図は地味に真横に0の線を描くだけになる訳です。
軸力図の書き方(求め方)の手順
軸力を求める手順を5ステップで整理します。
Step 1: 反力を求める
つり合い条件(ΣX=0、ΣY=0、ΣM=0)から、支点反力を計算。これが計算の出発点。
Step 2: 切断面を仮定する
求めたい位置で部材を仮想的に切断します。切断面に作用する内力(N、Q、M)を未知数として描く。
Step 3: 切断片のつり合いから軸力を求める
切断したどちらかの片(普通は左側)について、部材軸方向(X方向)のつり合いを取り、軸力 N を解きます。
ΣX = 0
(左側の外力 X方向成分の和) + N = 0
→ N を計算
Step 4: 区間ごとに繰り返す
部材に荷重が変わる点(集中荷重・分布荷重の境目・支点)があるごとに区間を分けて軸力を計算。
Step 5: 軸力図を描く
部材軸に沿って軸力の値をプロット。プラス(引張)は上側 or 下側に統一して描き、符号も明記。
軸力図の描き方の慣例
- 部材軸の上下どちらかに値をプロット
- 引張+ をプラス側、圧縮- をマイナス側に
- 大きさは比例で描く(1kN=1cm 等)
- 区間ごとの値を書き込む
- 符号 (+/-) を明記
トラスの場合は節点法や断面法で各部材の軸力を求めます。
軸力図の例題
実例で手順を確認します。
例題1: 単純梁(水平荷重あり)
条件
- スパン L = 4m の単純梁
- 左端A点:ピン支点(H方向と V方向に反力)
- 右端B点:ローラー支点(V方向のみ)
- 中央C点に水平荷重 P = 10kN(右向き)
反力計算
- ΣY = 0:VA + VB = 0
- ΣX = 0:HA + 10 = 0 → HA = −10 kN(左向き)
- ΣM(A) = 0:分布荷重なし、水平荷重のみなので VA = VB = 0
軸力図
A〜C間:左から見て、HA = −10 kN(左向き)が梁を引っ張る形 → N = +10 kN(引張)
C〜B間:C点で水平荷重 +10 kN が加わるので、それより右側は N = 0
軸力図(N図)
A ─────10kN(+引張)─────C ──── 0 ──── B
例題2: 単純梁(鉛直荷重のみ)
条件:スパン L=4m、中央に集中荷重 P=10kN 下向き
反力:VA = VB = 5 kN、HA = 0
軸力図:水平荷重がないので、全区間 N=0。軸力図は0の線のみ。
これがよく言う「梁では軸力図がゼロ」の例。ですが柱を含むラーメンになれば一気に主役に変わります。
例題3: 簡単なトラス
条件:3角トラスで、上弦材・下弦材・斜材の単純なやつ。下弦両端をピンとローラーで支え、頂点に荷重 P = 10kN 下向き。
節点法で各部材の軸力を求めると(典型例)
| 部材 | 軸力 |
|---|---|
| 上弦材 | -10 kN(圧縮) |
| 下弦材 | +5 kN(引張) |
| 斜材 | 様々 |
トラスはこのように部材ごとに軸力が決まるので、軸力図というよりも部材一覧表で整理することが多い。
軸力図の実務での使い方
学校の演習問題と思いがちな軸力図ですが、実務でも要所で見ます。
1. 鉄骨建方時のジャッキ計画
鉄骨建方でサポート(仮設支柱)の本数を決めるとき、各柱が支えるべき軸力を把握する必要があります。長期荷重時の軸力図を読んで、ジャッキ容量を選定します。
鉄骨建方の話はこちらで。

2. 柱の座屈チェック
柱は軸力の大きさで座屈リスクが決まります。設計の軸力図で最大圧縮軸力を読み取り、オイラー座屈式で耐力を確認するのが基本フロー。
座屈の話はこちらに繋がります。
3. 基礎の支持力検討
基礎にかかる軸力は、上部構造の柱軸力の総和。地耐力 vs 軸力で基礎形式(直接基礎 / 杭基礎)を決定します。
地耐力・基礎の話はこちらで。


4. PC鋼材・引張部材の選定
引張部材(ブレース・タイバー・PC鋼材)の必要強度は軸力(+)から逆算します。降伏点・引張強さから安全率込みで断面選定。
引張強さの話はこちらで。

5. 鉄骨ボルト数の算定
接合部の高力ボルト本数は、軸力をボルトのせん断耐力で割って決めます。設計図で軸力が読めると、ボルト本数の妥当性が判断できます。
高力ボルトの話はこちらに繋がります。

軸力図を描く際の注意点
1. 符号ルールを統一する
引張+/圧縮−は学校・テキスト・実務のいずれも標準。途中で符号を逆転させない。プラスを上側に描くか下側に描くかだけは演習問題のクセに合わせて選びます。
2. 集中荷重・支点ごとに区間分け
同じ部材でも、外力の作用点で軸力が変わります。区間を分けて計算しないとミスの原因。
3. ラーメンでは柱と梁を別扱い
ラーメン構造の柱は圧縮が主、梁はほぼゼロになりがち。N図は柱と梁を別々に描き、節点での連続性を確認します。
4. トラスは部材ごとに求める
トラス部材は節点法または断面法で1本ずつ計算。図というよりも表で整理する方が分かりやすいケースが多い。
5. 単位を間違えない
kN と N、m と mm を混在させない。設計の軸力は kN 単位が標準で、応力計算に入るときに mm² と組み合わせるので注意。
6. M図・Q図と整合チェック
3図は連動しているので、Q図やM図と矛盾していないかを必ず確認。ΣX、ΣY、ΣM が全部0になっているかが整合チェックの基本です。
軸力図に関する情報まとめ
- 軸力図(N図)とは:部材軸方向の力の分布図。引張+/圧縮−
- 3図セットの関係:N図/Q図/M図。トラスはN図のみ、ラーメンは3つとも
- 書き方の手順:反力計算→切断→軸方向つり合い→区間ごと計算→図示
- 梁の特徴:水平荷重がなければ N = 0
- 実務での使い所:建方ジャッキ/柱座屈/基礎検討/引張部材選定/ボルト本数
- 注意点:符号統一/区間分け/柱と梁を別/単位整合/3図整合
以上が軸力図に関する情報のまとめです。
軸力図は「演習問題では地味、実務では主役」という不思議な存在で、特にラーメン構造・トラス・基礎・PC鋼材の世界に入った瞬間に必須知識に変わります。M図・Q図とセットで考えるクセを付けると、構造図面がぐっと読めるようになります。
合わせて読みたい関連記事を貼っておきます。





