- ひずみって応力と何が違うの?セットで出て混乱する
- 単位が無いってどういうこと?%とμɛ?
- 縦ひずみ・横ひずみ・せん断ひずみ、種類が分からん
- 計算式 ε=Δl/l₀ は結局何を計算してる?
- フックの法則 σ=Eε は何を意味してる?
- 応力ひずみ曲線の見方が分からん
- 降伏点を超えると元に戻らないってこと?
- ポアソン比って何に使うの?
- 建築の構造計算でひずみってどう使われてるの?
- 鋼材(SS400)の降伏点・数値が知りたい
- 溶接の「残留ひずみ」「ひずみ取り」って何?
- 地震時の建物の変形とひずみは関係ある?
上記の様な悩みを解決します。
ひずみは、材料力学や構造計算の入口で必ず出てくる基本用語ですが、「応力」とセットで登場するせいで混乱しやすい概念です。検索しても出てくるのは機械設計・製造業向けの教科書的な解説ばかりで、建築・施工管理の人間が「自分の現場や試験にどう関係するのか」が見えづらいのが正直なところです。
今回は意味・種類・単位・計算・フックの法則・応力ひずみ曲線といった基本を押さえた上で、現役の施工管理目線で「建築の構造計算(許容応力度設計)でのひずみの使われ方」「鋼・コンクリート・鉄筋の挙動の違い」「溶接の残留ひずみ・ひずみ取り」「地震時の変形」まで、現場と試験に結びつけて整理しました。
なるべく分かりやすい表現でまとめていくので、構造を学び始めた方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
ひずみとは?
ひずみとは、結論「材料に力が加わったとき、元の寸法に対してどれだけ変形したかを表す『変形の割合』」のことです。
たとえば長さ100mmの棒を引っ張って101mmになったとき、伸びは1mm。これを元の長さ100mmで割った 1mm ÷ 100mm = 0.01(=1%)がひずみです。「伸びた量そのもの」ではなく「元の寸法に対する割合」なので、大きい部材でも小さい部材でも同じ尺度で変形を比べられます。
ここで混乱しやすいのが「応力」との違いです。整理すると、応力は「材料の内部に生じる単位面積あたりの力(外力への抵抗)」、ひずみは「その結果として生じた変形の割合」です。つまり、力をかける(応力が生じる)と、変形する(ひずみが生じる)という因果関係で、ペアで使われます。
応力そのものの整理はこちらが詳しいです。

僕の感覚だと、ひずみは「変形の割合(結果)」、応力は「内部に生じる力(原因)」と役割で覚えると、両者が混ざらなくなります。試験でも実務でも、この「応力=力、ひずみ=変形」の対応を最初に頭に入れておくと、あとの式や曲線がスッと入ってきます。
ひずみの種類
ひずみは変形の方向や性質で種類が分かれます。建築構造で出てくる主なものは次の通りです。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 縦ひずみ(垂直ひずみ) | 力の方向(長さ方向)の伸び縮みの割合 |
| 横ひずみ | 縦ひずみと直交する方向の変形の割合 |
| せん断ひずみ | 材料がずれるように変形する角度変化 |
| 体積ひずみ | 体積の変化の割合(圧力下の評価など) |
引張・圧縮で生じるのが縦ひずみ(垂直ひずみ)、その直交方向に生じるのが横ひずみです。後述するポアソン比は、この縦ひずみと横ひずみの比のことです。
一方、せん断ひずみは材料が平行にずれるような変形で、角度の変化として表されます。ボルト接合部や溶接部のように「ずれる力(せん断)」がかかる箇所で重要になります。
実務だと、建築構造でまず押さえるべきは「縦ひずみ(引張・圧縮)」と「せん断ひずみ」の2つです。柱や梁の軸方向の伸び縮みが縦ひずみ、接合部のずれがせん断ひずみ、と部位ごとにどのひずみが効くかをイメージできると、構造の理解が一段深まります。
ひずみの単位
ひずみは、結論「単位を持たない無次元量」です。「変形量 ÷ 元の寸法」で、長さ ÷ 長さになるため、単位が打ち消し合ってゼロ次元になります。
ただし実務では、扱いやすさのために次の表記が使われます。
| 表記 | 意味 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 無次元(小数) | 0.01 など | 計算・理論 |
| % | 0.01=1% | 変形の大きさを直感的に示す |
| μɛ(マイクロストレイン) | 1μɛ=10⁻⁶ | ひずみゲージ計測など微小変形 |
たとえば0.001%のひずみは10μɛと表せます。せん断ひずみは角度変化を表すため、γ(ガンマ)で示し、小さい変形では近似的に無次元として扱われます。
個人的には、単位で混乱したら「ひずみは割合だから本来単位なし、現場の計測ではμɛで読む」と覚えておけば十分だと感じます。構造計算で出てくるのはほぼ無次元か%、ひずみゲージのデータシートで出てくるのがμɛ、という住み分けです。
ひずみの計算方法
ひずみの計算は、種類ごとに式が決まっています。基本の2つを押さえます。
縦ひずみ(垂直ひずみ)εは、変形量Δl を元の長さ l₀ で割って求めます。
- ε = Δl ÷ l₀
- 例:元の長さ200mmが202mmに伸びた → ε = 2 ÷ 200 = 0.01(1%)
- 引張は正(+)、圧縮は負(−)
せん断ひずみ γ は、ずれの角度(または高さhに対する横ずれΔx)で求めます。
- γ = Δx ÷ h(微小変形では γ ≒ θ)
なお、大きな変形を扱う塑性加工などでは「真ひずみ(対数ひずみ)」という考え方も使いますが、建築構造で日常的に扱うのは元の寸法を基準にした「工学ひずみ」です。
正直なところ、計算式そのものは「変形量 ÷ 元の寸法」と覚えればほぼ事足ります。試験で問われるのもこの基本式が中心なので、まずは縦ひずみの ε = Δl ÷ l₀ を確実に押さえ、せん断はずれ角で表す、と整理しておくと迷いません。
応力とひずみの関係(フックの法則とヤング率)
応力とひずみは、弾性範囲内では比例関係にあります。これを表したのがフックの法則です。
- フックの法則:σ = E × ε
- σ:応力/E:縦弾性係数(ヤング率)/ε:ひずみ
この式は「応力(力)とひずみ(変形)が比例し、その傾きがE(ヤング率)」という意味です。中学で習った y = ax と同じ形で、a に当たるのがヤング率と考えると分かりやすいです。
ヤング率(縦弾性係数)は材料固有の値で、大きいほど「同じ力でも変形しにくい=硬い(剛性が高い)」材料です。代表的な値は、鋼が約200GPa、アルミニウムが約70GPa。鋼の方が約3倍変形しにくい、ということです。
| 材料 | ヤング率の目安 | 傾向 |
|---|---|---|
| 鋼 | 約200GPa | 剛性が高く変形しにくい |
| アルミニウム | 約70GPa | 鋼より変形しやすい |
| コンクリート | 約20〜30GPa | さらに変形しやすい(圧縮で使う) |
現場目線で言えば、ヤング率は「その材料が同じ力でどれだけ変形するか」を決める数字です。鉄骨は剛性が高いから細い部材でも変形が小さく、コンクリートはヤング率が低いので変形しやすい。だからこそコンクリートは引張に弱く、鉄筋で補う、という構造の基本にもつながっていきます。
応力ひずみ曲線の見方
応力ひずみ曲線は、材料を引っ張ったときの応力(縦軸)とひずみ(横軸)の関係をグラフにしたものです。材料の性質を読み取る最重要のグラフで、鋼材なら次のポイントを押さえます。
| 部分 | 意味 |
|---|---|
| 比例限度 | フックの法則が成立する上限。ここまでは直線 |
| 弾性限度 | 力を除けば元に戻る限界 |
| 降伏点 | 塑性変形が始まる点。ここを超えると元に戻らない |
| 引張強さ | 材料が耐えられる最大応力 |
| 破断点 | 最終的に破断する点 |
初期の直線部分が弾性域で、力を除けば元の形に戻ります。降伏点を超えると塑性域に入り、力を除いても変形が残ります(元に戻らない)。さらにひずみが進むと引張強さに達し、くびれて破断します。
鋼材(SS400など)の数値や曲線の詳しい読み方はこちらが参考になります。

降伏後の挙動(加工硬化・ひずみ硬化)についてはこちらが詳しいです。

僕の整理では、この曲線で施工管理が押さえるべきは「降伏点」です。建築の構造設計は基本的に「降伏点を超えない範囲(弾性域)」で使うことを前提に組まれているので、降伏点=元に戻る/戻らないの境目、という理解が、次の許容応力度設計の話にそのまま効いてきます。
ポアソン比
ポアソン比とは、結論「縦ひずみと横ひずみの比」のことです。
材料を引っ張ると、引っ張った方向には伸び(縦ひずみ)、それと直交する方向には縮み(横ひずみ)が生じます。このときの「横ひずみ ÷ 縦ひずみ」の絶対値がポアソン比で、ν(ニュー)で表します。
鋼ならおよそ0.3、コンクリートならおよそ0.2前後が目安です。ポアソン比は、応力やひずみを2方向・3方向で考える「組合せ応力」や、地盤・コンクリートの変形解析などで使われます。
自分としては、ポアソン比は「引っ張ると横は細る、その縮み具合の比率」と直感的に押さえておけば、まずは十分だと感じます。試験で数値(鋼0.3など)を問われることがあるので、代表値だけは覚えておくと安心です。
建築の構造計算でひずみはどう使われるか
ここからが、機械設計向けの解説では触れられない建築・施工管理の文脈です。「ひずみは知ったけど、建築の構造計算でどう効くの?」という疑問に答えます。
建築の構造設計(許容応力度設計)は、結論「部材に生じる応力を、材料が降伏しない範囲(弾性域)に収める」という考え方が基本です。ここでひずみと応力の関係が効いてきます。
- 部材に荷重がかかると応力が生じ、フックの法則に従ってひずみ(変形)が生じる
- 弾性域内(降伏点未満)なら、荷重を除けば元に戻る=安全
- 許容応力度は、材料の基準強度(F値)に安全率を見込んで降伏点より低く設定される
- つまり「降伏=大きなひずみ・元に戻らない変形」を避ける設計をしている
許容応力度設計の詳しい手順はこちらが参考になります。

材料によるひずみ挙動の違い
建築で使う主要材料は、ひずみの出方が違います。
| 材料 | ひずみ・変形の特徴 |
|---|---|
| 鋼(鉄骨・鉄筋) | ヤング率が高く変形しにくい。降伏点が明確で、引張・圧縮どちらも強い |
| コンクリート | ヤング率が低く変形しやすい。圧縮に強いが引張に弱い |
| 鉄筋コンクリート | コンクリートの圧縮+鉄筋の引張で、互いの弱点を補う |
鉄筋コンクリートが成立するのは、引張に弱いコンクリートの引張側を、ひずみ挙動の異なる鉄筋が受け持つからです。ひずみと応力の関係を材料ごとに理解すると、なぜこの組合せなのかが腑に落ちます。
現場目線で言えば、構造計算書に出てくる「応力度」「変形」「検定比」といった言葉は、すべて根っこにこの応力とひずみの関係があります。計算書の数字を「降伏させない範囲に収まっているか」という視点で見られるようになると、構造の意図が読めるようになります。
現場で出るひずみの話(溶接・熱・地震・計測)
ひずみは机上の用語ではなく、現場でも形を変えて頻繁に出てきます。施工管理が実際に出会うひずみを整理します。
溶接の残留ひずみ・ひずみ取り
鉄骨の溶接では、加熱と冷却の過程で部材が縮み、「残留ひずみ(残留応力)」や変形(曲がり・反り)が生じます。これを矯正する作業を現場や工場で「ひずみ取り」と呼びます。
- 溶接の入熱で局部的に膨張・収縮し、変形や内部応力が残る
- 過大な残留ひずみは、寸法精度の不良や応力集中の原因になる
- 加熱矯正やプレスなどで「ひずみ取り」を行う
残留応力の発生原因や低減方法はこちらが詳しいです。

熱によるひずみ(熱ひずみ)
温度変化でも材料は伸縮し、これも一種のひずみ(熱ひずみ)です。長大な鉄骨や配管、床・外装などでは温度伸縮を逃がす伸縮目地やエキスパンションジョイントが設けられます。「温度で伸び縮みする=拘束されると内部応力が出る」という点で、構造・納まりの両面で意識する話です。
地震時の変形(層間変形角)
地震で建物が水平に変形する度合いを「層間変形角」と呼びます。これは各階の水平変形を階高で割った値で、まさに「変形の割合=ひずみ的な指標」です。構造設計では、この層間変形角を一定以下に抑えることで、内外装の損傷や倒壊を防ぐ設計をします。ひずみの考え方が、耐震設計の根っこにもつながっているわけです。
現場・工場でのひずみ計測
実構造物や試験体のひずみは、ひずみゲージ(貼り付けて電気抵抗の変化で検出)で測定します。載荷試験や長期モニタリング、応力集中部の確認などで使われ、データはμɛ(マイクロストレイン)単位で読みます。
僕の考えでは、ひずみが「現場で本当に効く」のは溶接のひずみ取りと耐震の変形です。机上の ε = Δl/l₀ がピンとこなくても、「溶接で部材が縮んで反る」「地震で建物が変形する」を同じひずみの話として捉えられると、用語が一気に自分ごとになります。
ひずみに関する情報まとめ
- 定義:力が加わったときの「元の寸法に対する変形の割合」。応力(力)に対してひずみ(変形)はペアの結果
- 種類:縦ひずみ(垂直)・横ひずみ・せん断ひずみ・体積ひずみ。建築では縦とせん断が中心
- 単位:本来は無次元。実務では%やμɛ(マイクロストレイン)で表記
- 計算:縦ひずみ ε=Δl/l₀、せん断ひずみ γ=Δx/h。引張は+、圧縮は−
- 応力との関係:弾性域では σ=E×ε(フックの法則)。Eがヤング率で材料の硬さを示す
- 応力ひずみ曲線:比例限度・弾性限度・降伏点・引張強さ・破断点。降伏点が元に戻る境目
- ポアソン比:縦ひずみと横ひずみの比。鋼は約0.3、コンクリは約0.2
- 構造計算:許容応力度設計は降伏させない弾性域で使う前提。材料でひずみ挙動が違う(RCは圧縮コンクリ+引張鉄筋)
- 現場のひずみ:溶接の残留ひずみ・ひずみ取り、熱ひずみ(温度伸縮)、地震の層間変形、ひずみゲージ計測
以上がひずみに関する情報のまとめです。
ひずみは「変形の割合」というシンプルな概念ですが、応力・フックの法則・応力ひずみ曲線とつながり、さらに建築では許容応力度設計・材料挙動・溶接・耐震まで一本の線で結ばれています。機械設計の教科書だけ読むと「製造業の話」に見えますが、降伏点を超えない設計、溶接のひずみ取り、地震時の変形と、施工管理の現場のあちこちにひずみは顔を出します。応力=力、ひずみ=変形という対応を軸に、関連用語と一緒に押さえておくと、構造計算書も試験問題も読み解けるようになるはずです。
ひずみに関するよくある質問
Q1:ひずみと応力の違いは何ですか?
応力は「材料の内部に生じる単位面積あたりの力(外力への抵抗)」、ひずみは「その結果として生じた変形の割合」です。力をかけると応力が生じ、変形してひずみが生じる、という原因と結果の関係でペアになっています。応力は力なので単位はPa(N/mm²)、ひずみは割合なので本来は無次元、という違いも押さえると混乱しません。
Q2:ひずみに単位がないのはなぜですか?
ひずみは「変形量 ÷ 元の寸法」で計算され、長さ ÷ 長さになるため単位が打ち消し合い、無次元量になります。ただし実務では分かりやすさのために%(0.01=1%)やμɛ(マイクロストレイン、1μɛ=10⁻⁶)で表記されます。構造計算では無次元か%、ひずみゲージの計測ではμɛ、という使い分けが一般的です。
Q3:フックの法則(σ=Eε)は何を意味していますか?
弾性範囲内では、応力(σ)とひずみ(ε)が比例し、その比例定数がヤング率(E)であることを表しています。式の形は中学で習った y=ax と同じで、グラフの傾きがEです。Eが大きい材料ほど同じ応力でもひずみが小さく、変形しにくい(剛性が高い)材料を意味します。鋼は約200GPa、アルミは約70GPaです。
Q4:降伏点を超えるとどうなりますか?
降伏点を超えると、応力とひずみの比例関係(弾性)が崩れ、塑性変形が始まります。塑性域に入ると、力を除いても変形が元に戻らなくなります。建築の構造設計は、基本的にこの降伏点を超えない弾性域で使うことを前提にしており、許容応力度は降伏点(基準強度F値)に安全率を見込んで、それより低く設定されています。
Q5:建築の現場でひずみはどんな場面で出てきますか?
代表的なのが溶接です。鉄骨溶接では加熱・冷却で部材が縮み、残留ひずみや反り・曲がりが生じるため、「ひずみ取り(加熱矯正など)」で矯正します。ほかにも、温度変化による伸縮(熱ひずみ)に対する伸縮目地、地震時の建物の変形を表す層間変形角(変形の割合=ひずみ的指標)などがあります。実構造物のひずみはひずみゲージでμɛ単位で計測します。
Q6:施工管理として、ひずみは何を分かっていればいいですか?
まず「応力=力、ひずみ=変形(割合)」の対応と、フックの法則(σ=Eε)、応力ひずみ曲線の降伏点の意味を押さえれば、構造計算書や資格試験の基礎は読めます。その上で、現場では溶接のひずみ取り、温度による伸縮、地震時の変形(層間変形角)を「同じひずみの話」として捉えられると、用語が実務に直結します。深く計算するより、概念と現場の結びつきを押さえるのが施工管理には有効です。
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