- 図面に「ふかし」って書いてあるけど何のこと?
- 壁ふかし、コンクリートのふかし、ふかし筋…全部違う意味なの?
- 何のためにわざわざ「ふかす」の?
- 配管や電気を仕込むときに「ふかし」が関係するって本当?
- 施工管理として何をチェックすればいい?
上記の様な悩みを解決します。
「ふかし」は建築現場でよく使う言葉ですが、意味が場面によって微妙に変わるので、若手施工管理者を悩ませる用語のひとつ。結論から言うと「本来の寸法より厚みを増す(厚く作る)」という意味で、これを壁・コンクリート・配筋それぞれの場面に当てはめた言い方が「壁ふかし」「コンクリートのふかし」「ふかし筋」です。設備配管の隠蔽、躯体寸法の調整、定着長確保など目的は様々ですが、用語の本筋を押さえておくと現場で迷わなくなります。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
ふかしとは?
ふかしとは、結論「本来必要な寸法より、厚み(または高さ・幅)を増して仕上げる手法・部分」のことです。漢字で書くと「吹かし」と表記されることもありますが、現場では完全にひらがなで「ふかし」が定着しています。
英訳すると「furring」「padding」が近く、欧米建築でもRC壁の前に下地材を立てて空間を作る手法は「furring wall」と呼ばれます。建築の場面では、本来の構造体や仕上げ面から「もう一段ふかして(厚くして)」何かを成立させる、というニュアンスで使われます。
ふかしが必要になる代表的な状況は次の3パターン。
| 種類 | 何を「ふかす」か | 主な目的 |
|---|---|---|
| 壁ふかし(ふかし壁) | 既存壁または躯体壁の前に新しい壁を立てる | 配管・配線の隠蔽、見切り、防音、断熱、不陸調整 |
| コンクリートのふかし | 構造躯体の本来寸法より、断面を大きくしてコンクリートを打つ | 仕上げ厚の確保、設備機器の納まり、見切り |
| ふかし筋(ふかし配筋) | 本来必要な配筋に加えて補足的に入れる鉄筋 | コンクリートかぶり厚さ確保、定着長確保 |
「ふかし」と一口に言っても、誰がどの図面の文脈で言っているかで意味が違うので、図面の場所(平面図か断面図か、壁か梁か)を確認すると判断がつきやすくなりますね。
壁ふかしの目的と種類
最もよく出てくる「ふかし」が壁ふかし。本来の躯体壁(RC壁・S造の鉄骨柱・鉄骨胴縁など)の前に、軽量鉄骨(LGS)または木下地を立てて、もう一枚仕上げ面を作る手法です。

壁ふかしの代表的な目的
①配管・配線の隠蔽
設備配管(給排水管・電線管・エアコン冷媒配管・ダクト)を壁内に通したいときに、躯体壁の前に下地を立てて配管スペースを作る。これがいちばん多いパターン。
例えばRC外壁の内側に、電線管や給水管を通したい場合、コンクリートに直接埋め込むのは難しい。ベタ付けで配管を露出させると見栄えも悪い。そこで「100mmふかし」「150mmふかし」と図面指定して、躯体壁の前に下地を立て、その中に配管を通して仕上げ面でフラットに見せる。

②不陸の調整
既存の躯体壁が変形・うねっている場合、薄い仕上げを直接貼ると歪みが目立つ。下地をふかして真っすぐな下地面を作ると、仕上げの精度が出ます。

③防音・断熱層の確保
RC壁単体では遮音性能や断熱性能が不足する場合、ふかしの空間にグラスウール・ロックウールを充填して性能を上げる。住宅・ホテル・スタジオでよく見られる手法ですね。


④見切り・取り合いの調整
異なる仕上げ材の取り合い部や、設備機器(PSパイプスペース、洗面化粧台、キッチン)の周辺で、奥行きを揃えるためにふかしを入れる。
壁ふかしの種類(下地別)
| 下地 | 用途 | 特徴 |
|---|---|---|
| LGSふかし(軽量鉄骨ふかし) | 一般内装、不燃区画内 | 不燃・軽量・施工性◎、最も標準的 |
| 木下地ふかし | 住宅、改修、納まり調整 | 加工自由、ただし不燃区画では使えない |
| RCふかし | 構造躯体上の上塗り増厚 | 後述(コンクリートのふかし) |
壁ふかしの一般的な厚みは、配管が入るかどうかで決まります。電線管とボックス類のスペースなら100mm、給排水管が入るなら150〜200mm、ダクト・大型配管なら300mm以上といった目安。図面の壁断面に「ふかし W=○○」と寸法が書かれていることが多いので、施工管理は配管担当者と必ず事前に確認します。
コンクリートのふかしとは
コンクリートのふかしは、構造設計上の躯体寸法より、コンクリートを大きく打つこと。スラブや梁、壁の一部に「ふかし」と記載されている場合、その部分は構造寸法より厚く(高く)コンクリートを打設するという指示です。

主な目的
①仕上げ厚の確保
スラブ上に段差仕上げ(タイル仕上げ、フリーアクセスフロア、防水押え)を施す場合、躯体スラブを部分的に下げる(ふかし下)または上げる(ふかし上)ことで、最終仕上げレベルを揃えます。
例:浴室のFRP防水部分は、防水層と仕上げ厚を考慮してスラブを20mm下げる→「20mmふかし下」

②設備機器の固定面確保
エレベーター機械室や、屋上の設備架台、配管スリーブの周辺などで、機器固定用に基礎をふかしてコンクリートを増し打ちする場合があります。
③見切り・段差処理
エキスパンションジョイント部、玄関アプローチ、屋上パラペットなどで、見切り段差として躯体寸法をふかすケース。

コンクリートのふかしは「躯体図」「伏図」で寸法と範囲が指示されます。施工管理としては、型枠施工時に「どこをふかすか」「ふかし範囲の境界(出隅・入隅)の処理」を必ず把握しておく必要があります。型枠を組み終わった後で「ここふかし忘れてる」と気づくと、はつり戻しや増し打ちといった手戻りになりかねません。
ふかし筋(ふかし配筋)とは
ふかし筋は、コンクリートをふかした部分に追加で入れる鉄筋のこと。または、規定の配筋に追加して補強的に入れる鉄筋を指す場合もあります。
主なケース
①ふかし部分の補強筋
コンクリートを部分的にふかすと、本体の鉄筋がふかし表面から見ると深い位置にくる。ふかし側のコンクリートかぶり不足や、収縮ひび割れに対する補強として、ふかし表面側に追加の配筋を入れます。

②定着・継手の確保
梁端部や壁端部で定着長が足りない場合、フックを設けて折り曲げる代わりに「ふかし」をつけて定着長を確保する手法もあります。
③開口部周りの補強
スラブやコンクリート壁の開口部周りで、応力集中を緩和するためにふかして補強筋を追加。
ふかし筋は構造図に詳細が記載されることが多く、配筋検査の際には「ふかし筋の本数・径・かぶり厚さ」を必ず確認します。

ふかし筋の入れ忘れは構造耐力に直結するので、配筋検査でいちばん気をつけるところ。コンクリート打設後では取り返しがつかないので、検査前に必ず構造図と現物を1本ずつ照合しましょう。
ふかしの施工方法と注意点
施工タイプ別の主な注意点を整理します。
壁ふかしの施工
- 図面で「ふかし範囲」「ふかし厚」「下地種別」を確認
- 床・天井・既存壁にランナー/ベース取付け、墨出し
- LGSスタッドを建て込み、開口・補強位置を調整
- 配管担当(電気・衛生・空調)にスタッド建込み完了を連絡し、配管・配線を仕込む
- 配管完了後、ボード貼り(プラスターボード、ケイカル板など)
- 仕上げ(クロス、塗装、タイル)
特に重要なのは「配管・配線が下地内に確実に納まるか」。下地厚100mmで配管外径50mmは入りますが、ジョイントボックスや継手部の凸を考えると余裕を見たい。図面段階でふかし厚と配管サイズを照合しておくのが理想です。

コンクリートふかしの施工
- 躯体図でふかし位置・寸法を確認
- 型枠を「ふかし対応形状」に加工して組む
- ふかし筋(必要な場合)を配筋
- コンクリート打設時、ふかし部分まで確実に充填
- 養生後、型枠脱型して寸法確認
ふかし部分は型枠形状が複雑になりやすく、コンクリートが回りにくい場合があります。バイブレーターでの締固めをしっかり行い、ジャンカ(豆板)を発生させないことが重要。

ふかし筋の施工
- 構造図でふかし筋の本数・径・配置を確認
- 主筋に対する位置関係(外側/内側、上端/下端)を間違えない
- かぶり厚さを確保するためのスペーサーを正しく配置
- 配筋検査で全数確認
特にかぶり厚さの不足は爆裂・腐食につながるので、ふかし筋についても通常の配筋と同じ基準でかぶり管理します。
施工管理としてのふかしチェックポイント
施工管理として「ふかし」が出てきたら見るべきポイントを5つに整理します。
①図面でふかしの種類を判別
「ふかし」と書かれていたら、まず壁か、コンクリートか、配筋かを判別。場所(平面図、断面図、躯体図、構造図)で文脈を読みます。意匠図と構造図で「ふかし」の意味が違うこともあるので、両方を並べて確認するのが基本。


②寸法と範囲の明確化
ふかし厚(W=100、200など)、ふかし範囲(柱から○○mmまで等)を図面から拾い、現場で型枠工・LGS工・配管工に明確に指示。図面が曖昧なら、設計者に質疑書(質疑応答書)で確認します。
③配管・配線スペースとの整合性
壁ふかしの場合、ふかし内に何を通すかを設備担当と必ずすり合わせ。電線管・給排水管・空調冷媒管・ドレン管などが集中するふかしでは、配管経路を立体的に検討しないと納まらないことがあります。

④型枠施工前の最終確認
コンクリートのふかしは、型枠ができてしまうと修正が大変。型枠施工前と組立完了時の2回、ふかし範囲・寸法を躯体図と照合します。
⑤配筋検査でのふかし筋確認
ふかし筋は数を数えるだけでなく、位置(主筋に対する内外)と定着長も確認。構造図と現物を照らし合わせ、写真で記録に残します。
ふかしに関する情報まとめ
- ふかしとは:本来必要な寸法より、厚み・高さ・幅を増して仕上げる手法・部分
- 主な種類:①壁ふかし(LGS下地・木下地)、②コンクリートのふかし(躯体寸法より大きく打設)、③ふかし筋(補強的な追加配筋)
- 壁ふかしの目的:配管・配線の隠蔽、不陸調整、防音・断熱、見切り調整
- コンクリートふかしの目的:仕上げ厚確保、設備機器固定面、見切り段差処理
- ふかし筋の目的:かぶり厚確保、定着長確保、開口部補強
- 施工管理ポイント:①種類判別、②寸法・範囲確認、③設備配管との整合、④型枠前確認、⑤配筋検査
以上がふかしに関する情報のまとめです。
「ふかし」という言葉は、建築の現場で文脈によって意味が変わる、ちょっと厄介な用語。でも本質は「本来寸法に追加で厚みを足す」という単純な概念です。図面で「ふかし」を見たら、まず壁か躯体か配筋かを判別して、寸法と範囲を確認する流れを身につけると、若手のうちから現場で混乱しなくなりますね。電気設備の配管経路を考える上でも、ふかし厚は通せる配管サイズを左右する大事な情報なので、意匠・構造・設備の3点をクロスして見られると一段レベルアップできます。







