電気工事とは、建物や設備に電気を引き込み、配線し、機器を据え付けて使える状態にする工事です。ただし法律には物差しが2つあり、建設業法では許可の業種の1つ、電気工事士法では、資格が要る作業を決める土台になる工事の範囲を指します。照明やコンセントの工事に資格が要るかどうかは、後者で決まります。施工管理として電気業者と話すときの前提になる整理です。
- 電気工事って、結局どこからどこまでの工事のことを言うの?
- 電気設備工事と電気工事って、呼び方が違うだけ?
- コンセントを1個増やすくらいなら、資格なしでやっていいんじゃないの?
- 電気工事士じゃないと触れない作業って、具体的にどれ?
- 第二種を持っていれば、ビルや工場の電気もいじれるの?
- 建設業許可の「電気工事業」と、電気工事士の資格って関係あるの?
- LANの配線や太陽光パネルの設置は、電気工事に入るの?
- 電気工事を仕事として請けるには、何をそろえればいいの?
- 電気工事施工管理技士と電気工事士って、どっちが上の資格なの?
- 建築の施工管理だけど、電気の資格も取っておいたほうがいい?
上記の様な悩みを解決します。
電気工事は、照明やコンセントから受変電設備まで範囲が広く、現場では毎日のように耳にする言葉です。ところが法律の上では、建設業法と電気工事士法がそれぞれ別の目的で「電気工事」を定めていて、どちらの話をしているかで範囲も求められる資格も変わります。今回は意味・種類・資格といった基本を押さえた上で、調べた上位の解説記事ではどこも条文で示していなかった「資格なしでできる軽微な工事と軽微な作業の線引き」まで、施工管理の目線で整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、電気が専門ではない建築・設備の施工管理の方でも、条文に沿って順に読み進められるはずです。
それではいってみましょう!
電気工事とは?電気を使える状態にする工事で、法律の物差しは2つ
電気工事とは、建物や設備に電気を引き込み、配線し、機器を据え付けて使える状態にする工事のことです。ただし法律の上では物差しが2つあり、建設業法では「どの業種の許可で請ける工事か」、電気工事士法では「資格が要る作業」を決めるために、それぞれ電気工事という言葉を使っています。
1つ目の建設業法は、建設工事を種類ごとに分けて許可を与える法律です。条文には「前項の許可は、別表第一の上欄に掲げる建設工事の種類ごとに、それぞれ同表の下欄に掲げる建設業に分けて与えるものとする。」とあり、別表第一の上欄に「電気工事」、下欄に「電気工事業」が並んでいます(建設業法 第3条第2項・別表第一)。
2つ目の電気工事士法は、作業する人の側を見る法律です。目的は「電気工事の作業に従事する者の資格及び義務を定め、もつて電気工事の欠陥による災害の発生の防止に寄与することを目的とする。」と書かれています(電気工事士法 第1条)。そのうえで電気工事を「一般用電気工作物等又は自家用電気工作物を設置し、又は変更する工事をいう。ただし、政令で定める軽微な工事を除く。」と定めています(電気工事士法 第2条第3項)。
2つの物差しの違いを並べると、次のようになります。
- 建設業法の電気工事:建設業の許可を業種ごとに分けるための区分で、会社が「何の業種で請けるか」に効く
- 電気工事士法の電気工事:作業者の資格を決めるための定義で、現場で「誰が手を動かしてよいか」に効く
- 電気工事業法の電気工事:電気工事士法の電気工事を借りて、電気工事を営む事業者の登録などを定める
- 照明やコンセントの工事に資格が要るかどうか:2つ目の電気工事士法の条文で決まる
建設業法の側も、もう一方の法律を意識しています。国土交通省の建設業許可事務ガイドラインには「電気工事及び消防施設工事については、それぞれ電気工事士法、消防法等により電気工事士免状及び消防設備士免状等の交付を受けた者等でなければ、一定の工事に直接従事できないこととされているので、審査に当たって十分注意すること。」という一文があります(国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」実務経験証明書の項)。許可の審査をする側から見ても、2つの物差しは別物として扱われているわけです。
「電気設備工事」という呼び方を目にすることもあります。この記事では法令が使っている「電気工事」という言葉で話を進めますが、次の章で見るとおり、建設業許可事務ガイドラインが電気工事の例として並べているのも「変電設備工事」「照明設備工事」のような設備名の付いた工事です。言葉の差を気にするより、いまどちらの法律の話をしているのかを先に確かめるほうが、取り違えは減ると僕は考えています。
建設業法の電気工事は「許可の業種」の1つ。含まれる工事と隣の業種との境目
建設業法でいう電気工事は、「発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備等を設置する工事」です(昭和47年建設省告示第350号)。この定義に当てはまる工事を請けるときに見るのが、電気工事業の許可になります。
告示の定義だけでは抽象的なので、国土交通省は具体例を示しています。電気工事の例として挙がっているのは「発電設備工事、送配電線工事、引込線工事、変電設備工事、構内電気設備(非常用電気設備を含む。)工事、照明設備工事、電車線工事、信号設備工事、ネオン装置工事」の9つです(国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」【第2条関係】別表)。
現場では「外線」「内線」という呼び分けを耳にすることもあります。ただ、上の例示はそうした二分ではなく、送配電線工事・引込線工事・構内電気設備工事のように設備ごとの工事名で並んでいます。許可や契約の話をするときは、例示の工事名に置き換えて考えると取り違えが減ります。
迷いやすいのは、隣の業種との境目です。ガイドラインと告示で確認できる線引きは次のとおりです。
- 太陽光発電:「屋根一体型の太陽光パネル設置工事は『屋根工事』に該当する。太陽光発電設備の設置工事は『電気工事』に該当し、太陽光パネルを屋根に設置する場合は、屋根等の止水処理を行う工事が含まれる。」(建設業許可事務ガイドライン【第2条関係】(7)①)
- 電気通信工事:「有線電気通信設備、無線電気通信設備、放送機械設備、データ通信設備等の電気通信設備を設置する工事」と、電気工事とは別の工事として定義されている(告示第350号)
- 管工事:「冷暖房、空気調和、給排水、衛生等のための設備を設置し、又は金属製等の管を使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配するための設備を設置する工事」と、こちらも別の工事として定義されている(告示第350号)
- 機械器具設置工事:機械器具の設置が電気工事などと重なる場合は「原則として『電気工事』等それぞれの専門の工事に区分するもの」とされている(建設業許可事務ガイドライン【第2条関係】(7)②)
LANや電話の配線、空調機まわりの電源のように、どちらの業種か迷う工事もあるはずです。ガイドラインは「各工事の内容はそれぞれ他の工事の内容と重複する場合もあることに留意すること。」としていて(建設業許可事務ガイドライン【第2条関係】1.)、電気工事と電気通信工事・管工事を直接区分する一般規定は、確認できた範囲では見当たりません。だからこそ、工事の中身を上の定義文と例示に1つずつ当てはめ、それでも決めきれないときは許可の申請先に確認する、という順番で考えるのが確実です。
許可そのものの仕組みは、建設業許可の種類と取り方の全体像で整理しています。
電気工事士法の電気工事は「資格が要る範囲」を決める物差し
電気工事士法の電気工事は、一般用電気工作物等または自家用電気工作物を設置し、または変更する工事(政令で定める軽微な工事を除く)です(電気工事士法 第2条第3項)。そのうち、資格がなければ従事できない作業を第3条が決めています。どの資格で何に触れるかは、工事の対象が「一般用電気工作物等」か「自家用電気工作物」かで分かれます。
一般用電気工作物等は、「一般用電気工作物(…)及び小規模事業用電気工作物(…)をいう。」と定められています(電気工事士法 第2条第1項・括弧内は省略)。自家用電気工作物は、電気事業法の自家用電気工作物から、発電所や変電所、「最大電力500キロワット以上の需要設備」などを除いたものです(電気工事士法 第2条第2項)。省令で除かれているものを並べると、次の6つになります(電気工事士法施行規則 第1条の2)。
- 発電所
- 蓄電所
- 変電所
- 最大電力五百キロワット以上の需要設備
- 送電線路(発電所相互間などの電線路と、それに附属する開閉所その他の電気工作物)
- 保安通信設備
経済産業省の逐条解説は、この範囲について「本法の規制対象となるのは、主に最大電力500kW未満の需要設備であり、先に述べた中小ビル等の設備がこれに該当する。」と説明しています(経済産業省「電気工事士法の逐条解説(令和6年7月版)」第2条の解説)。これは条文ではなく行政の解説ですが、どんな建物を想定した線なのかをつかむには役に立ちます。同じ資料は、非常用予備発電装置も需要設備の範ちゅうに含まれるとしています。
この2つの区分に対して、資格ごとに作業できる範囲が割り当てられています。
| 資格 | 作業に従事できる範囲 | 根拠 |
|---|---|---|
| 第二種電気工事士 | 一般用電気工作物等の電気工事 | 電気工事士法 第3条第2項 |
| 第一種電気工事士 | 一般用電気工作物等と、自家用電気工作物(最大電力500kW未満の需要設備に限る)の電気工事。自家用のうち特殊電気工事は除く | 電気工事士法 第3条第1項・第2項・第2条第2項、電気技術者試験センター「電気工事士の資格概要」 |
| 特種電気工事資格者 | 特殊電気工事=ネオン工事・非常用予備発電装置工事 | 電気工事士法 第3条第3項、施行規則 第2条の2第1項 |
| 認定電気工事従事者 | 簡易電気工事=電圧六百ボルト以下で使用する自家用電気工作物に係る電気工事(電線路に係るものを除く。) | 電気工事士法 第3条第4項、施行規則 第2条の3 |
試験を実施する電気技術者試験センターも、第一種は「一般用電気工作物等及び自家用電気工作物(最大電力500kW未満の需要設備に限る。)の電気工事の作業」、第二種は「一般用電気工作物等の電気工事の作業」に従事できると説明しています(電気技術者試験センター「電気工事士の資格概要」)。
第二種でビルや工場の電気に触れるか
同じページは、イメージとして第一種を「第二種の範囲に加えて、高電圧で受電する小規模なビル、工場などの電気設備などの工事の作業に従事できます。」、第二種を「低圧で受電する一般家庭、商店等の屋内配線設備や小規模な太陽電池発電設備などの工事の作業に従事できます。」と書き分けています(電気技術者試験センター「電気工事士の資格概要」)。自家用電気工作物の工事は、第二種の免状だけでは作業できない側です。
ただし抜け道ではなく、制度として用意された道があります。同センターの説明では、第二種電気工事士は免状を取ったあとに認定講習を受けると、簡易電気工事の工事資格である認定電気工事従事者認定証を取得できます。第一種電気工事士試験の合格者も、免状に必要な実務経験を待たずに、産業保安監督部長への申請で同じ認定証を取得できるとされています(電気技術者試験センター「電気工事士の資格概要」)。認定電気工事従事者で何ができるかは、認定電気工事従事者の作業範囲と取り方で掘り下げています。
ネオンと非常用発電機は別の資格
ネオン工事と非常用予備発電装置工事は、自家用電気工作物の工事のうち「特殊電気工事」に当たり、第一種電気工事士であっても特種電気工事資格者の認定証がなければ作業に従事できません(電気工事士法 第3条第1項・第3項)。省令はネオン工事を「ネオン用として設置される分電盤、主開閉器(電源側の電線との接続部分を除く。)、タイムスイッチ、点滅器、ネオン変圧器、ネオン管及びこれらの附属設備に係る電気工事」と定めています(電気工事士法施行規則 第2条の2第1項)。2つの工事の資格の取り方は、特種電気工事資格者の2つの区分にまとめています。
第一種には5年ごとの講習がある
第一種電気工事士は、やむを得ない事由がある場合を除き、免状の交付を受けた日から5年以内に、自家用電気工作物の保安に関する講習を受けなければならず、講習を受けた日以降も同様とされています(電気工事士法 第4条の3)。第一種で自家用の現場に入り続けるなら、講習の時期は手帳に入れておく必要があります。
試験の中身や受験の段取りは、資格ごとの記事に譲ります。第二種は第二種電気工事士の試験と取得までの流れ、第一種は第一種電気工事士の試験と免状の条件で整理しています。
なお、経済産業省の従事範囲の資料には「電気工事士が従事する電気工事の範囲外は、電気主任技術者の監督の下で工事が実施される。」という注があります(経済産業省「電気工事士等の従事範囲」注)。この立場の役割は電気主任技術者の仕事と選任の考え方が詳しいです。
資格なしでできる「軽微な工事」「軽微な作業」と、資格が要る作業の線引き
資格がなくてもできるのは、電気工事士法施行令第1条の「軽微な工事」と、電気工事士法施行規則第2条の「軽微な作業」の2つです。名前は似ていますが、前者はそもそも電気工事に当たらないもの、後者は電気工事ではあるけれど資格が要らない作業で、法律上の位置づけがまったく違います。
経済産業省の資料も、資格が要る作業と軽微な作業の2つを「電気工事士法の対象(電気工事であるもの)」、軽微な工事を「電気工事でないもの」と、図の上で分けて示しています(経済産業省「電気工事士等資格が不要な『軽微な工事』とは」)。
3つの区分を、条文の号に沿って並べると次のとおりです。
| 区分 | 法律上の位置づけ | 根拠 | 中身(条文の号を短く言い換え) |
|---|---|---|---|
| 資格が要る作業 | 電気工事であり、電気工事士等でなければ従事できない | 施行規則 第2条第1項第1号イ〜ヲ(自家用)/第2項第1号イ・ロ(一般用電気工作物等) | 電線相互の接続/がいしへの電線の取付け・取外し/電線を造営材などに直接取り付ける・外す/電線管・線樋・ダクトなどに電線を収める/配線器具の取付け・取外しと電線の接続(露出型点滅器・露出型コンセントの取り換えを除く)/電線管の曲げ・ねじ切り・接続/金属製ボックスの取付け・取外し/貫通部の金属製防護装置/メタルラス張りなどへの金属製電線管などの取付け/配電盤の取付け・取外し/接地線・接地極の作業(自家用は最大電力500kW未満の需要設備で600V以下の電気機器を、一般用電気工作物等は600V以下の電気機器を除く)/600Vを超えて使用する電気機器への電線の接続 |
| 軽微な作業 | 電気工事ではあるが、資格がなくても従事できる | 施行規則 第2条第1項・第2項、第2条の2第2項 | 上の資格が要る作業以外の作業/電気工事士や特種電気工事資格者が従事する作業を補助する作業 |
| 軽微な工事 | そもそも電気工事から除かれている | 施行令 第1条第一号〜第六号 | 600V以下の接続器・開閉器にコード又はキャブタイヤケーブルを接続/600V以下の電気機器(配線器具を除く)・蓄電池の端子に電線をねじ止め/600V以下の電力量計・電流制限器・ヒューズの取付け・取外し/電鈴・インターホーン・火災感知器・豆電球などに使う小型変圧器(二次電圧36V以下)の二次側の配線/電線を支持する柱・腕木などの設置・変更/地中電線用の暗渠・管の設置・変更 |
表の1行目の「資格が要る作業」は、条文では「次に掲げる作業以外の作業」を軽微な作業とする書き方になっています(電気工事士法施行規則 第2条第1項第1号)。つまり、資格が要る作業が自家用(第1項)ではイ〜ヲの12の号で列挙されていて(一般用電気工作物等は第2項第1号のイ・ロ。イは前項のイ〜ヌ・ヲを引く)、そこに当たらない作業と補助作業が軽微な作業になる、という裏返しの構造です。なお、イ(電線相互の接続)・ロ(がいしへの電線の取付け)・ル(接地線)には、電気さくに関する除外の括弧書きがあります。
コンセントと照明まわりで取り違えやすい点
ここは取り違えやすいところなので、条文に沿って押さえておきます。
- 露出型コンセント・露出型点滅器の取り換え:配線器具の作業(ホ)の括弧書きで資格が要る作業から除かれているので、軽微な作業の側
- コンセントの増設:配線器具を造営材に取り付け、電線を接続する作業(ホ)に当たるので、資格が要る側
- ローゼットやソケットなどの接続器にコードをつなぐ:電圧六百ボルト以下の接続器にコード又はキャブタイヤケーブルを接続する工事として、軽微な工事の側(施行令 第1条第一号)
- 電気工事士の作業の手伝い:電気工事士が従事する作業を補助する作業は、軽微な作業の側(施行規則 第2条第1項第二号・第2項第二号)
3つ目には注意書きが付いていて、経済産業省は「電気工事士資格が不要となる作業は、上記の接続器や開閉器とコード又はキャブタイヤケーブルを接続する工事に限られます。コード又はキャブタイヤケーブル以外に接続する場合は、電気工事士等資格が必要となります。」としています(経済産業省「電気工事士等資格が不要な『軽微な工事』とは」)。同じ接続器でも、つなぐ相手がコードかどうかで区分が変わるわけです。
照明器具の交換のように、条文に作業名がそのまま出てこないものもあります。その場合は、作業の中で電線をどう扱うのか(電線相互をつなぐのか、配線器具に電線を接続するのか、接続器にコードをつなぐだけなのか)を、表の号に1つずつ当てはめて判断します。
個人的には、表の「資格が要る作業」に1つでも当たる手順が混ざるなら、その工事は丸ごと資格者に任せる前提で段取りを組むのが筋だと考えています。自家用では、資格が要る作業の号は電線の接続から600Vを超える機器への接続まで12に及ぶからです。
電気工事を仕事として請けるなら、建設業許可と電気工事業の登録を別々に見る
電気工事を仕事として請けるときは、建設業法の許可と、電気工事業法の登録(または通知)を、別の法律の手続きとしてそれぞれ確認します。前者は「どの業種で請けるか」、後者は「電気工事を事業として営むための登録・通知」を見るものです。
建設業法の側は、先に見たとおり許可が業種ごとに分かれ、電気工事は電気工事業の許可に当たります(建設業法 第3条第2項・別表第一)。どんな場合に許可が必要になるかは建設業許可の要否と業種の選び方で確認してください。
もう一方の電気工事業法(電気工事業の業務の適正化に関する法律)は、「電気工事業を営む者の登録等及びその業務の規制を行うことにより、その業務の適正な実施を確保し、もつて一般用電気工作物等及び自家用電気工作物の保安の確保に資することを目的とする。」法律です(電気工事業法 第1条)。この法律の電気工事は電気工事士法の電気工事をそのまま指しますが、「ただし、家庭用電気機械器具の販売に付随して行う工事を除く。」と1つだけ例外があります(電気工事業法 第2条第1項)。
条文で押さえておきたい骨組みは、次の3つです。
- 登録:電気工事業を営もうとする者は、営業所が2つ以上の都道府県にあれば経済産業大臣、1つの都道府県だけなら都道府県知事の登録を受ける(営業所は電気工事の作業の管理を行うもの)。「登録電気工事業者の登録の有効期間は、5年とする。」(電気工事業法 第3条第1項・第2項)
- 通知:自家用電気工事だけを営む場合は、登録ではなく、事業を始めようとする日の10日前までに経済産業大臣または都道府県知事へ通知する(電気工事業法 第17条の2第1項)
- 主任電気工事士:登録電気工事業者は、一般用電気工事の業務を行う営業所ごとに、第一種電気工事士か、第二種の免状交付後に電気工事の実務を3年以上積んだ第二種電気工事士を置く(電気工事業法 第19条第1項)。ただし、登録業者本人または役員がその要件を満たし、自ら主としてその業務に従事する営業所には適用されない(同 第19条第2項)
登録・通知の区分と手続きの全体像は、電気工事業の登録・通知の区分と手続きで扱っています。
施工管理から見た電気工事:作業の資格と管理の資格は別物
施工管理の目線で一番押さえておきたいのは、電気工事士は「作業」の資格で、電気工事施工管理技士は「施工の管理」の資格だという点です。どちらが上という関係ではなく、役割の軸が違います。
電気工事士法が対象にしているのは、実際に手を動かす人です。経済産業省の逐条解説は、「電気工事の作業に従事する者」を現場で自ら実地に作業を行う者としたうえで、「単に工事の監督のみを行う者は該当しない。」と説明しています(経済産業省「電気工事士法の逐条解説(令和6年7月版)」第1条の解説・行政解釈)。
一方の電気工事施工管理は、建設業法の技術検定の種目で、「電気工事の実施に当たり、その施工計画及び施工図の作成並びに当該工事の工程管理、品質管理、安全管理等工事の施工の管理を適確に行うために必要な技術」とされています(建設業法施行令 第37条)。等級の意味も条文にあり、「一級の技術検定は、検定種目ごとに、法第二十七条第一項に規定する者が監理技術者として必要な知識及び能力を有するかどうかを判定するために行う。」、二級は「主任技術者として必要な知識及び能力を有するかどうかを判定するために行う。」となっています(建設業法施行令 第37条第3項・第4項)。主任技術者は、建設業者が請け負った工事を施工するときに現場に置くものです(建設業法 第26条第1項)。
では、電気工事業の営業所技術者や主任技術者になれる資格はどれか。国土交通省の一覧(建設業法における配置技術者となり得る国家資格等一覧)と地方整備局の有資格コード一覧で、電気の列に載っている主な資格は次のとおりです(ほかに技術士、建築設備士なども載っています)。
- 1級電気工事施工管理技士:特定建設業の営業所専任技術者(又は監理技術者)となり得る資格
- 2級電気工事施工管理技士:一般建設業の営業所専任技術者(又は主任技術者)となり得る資格
- 第1種電気工事士:一般建設業の側。実務経験年数の記載なし
- 第2種電気工事士:一般建設業の側。【3年】=資格試験の合格後に3年の実務経験が必要
- 電気主任技術者(第1種〜第3種):一般建設業の側。【5年】=合格後に5年の実務経験が必要
【 】の年数について、北陸地方整備局の一覧は「当該欄に記載されている資格試験の合格後に必要とされている実務経験年数です。」と書いています(国土交通省 北陸地方整備局「別表(二)有資格コード一覧」備考)。第2種電気工事士を持っていればすぐに電気工事業の技術者になれる、という読み方はできません。
電気業者に何を確認するか
ここまでの条文を現場の確認事項に落とすと、施工管理が電気業者に確かめることは4つに絞れます。
1つ目は、作業に入る人の免状や認定証の種類が、工事の対象に合っているかです。一般用電気工作物等なのか、自家用電気工作物なのか、ネオンや非常用予備発電装置の特殊電気工事なのかで、必要な資格が変わります(電気工事士法 第3条)。2つ目は、業者が登録電気工事業者か通知電気工事業者かです(電気工事業法 第2条第3項・第3条・第17条の2)。3つ目は、一般用電気工事を扱う業者なら、営業所に主任電気工事士が置かれているかです(電気工事業法 第19条第1項)。4つ目は、建設業の許可の業種です(建設業法 第3条第2項)。
建築の施工管理も電気の資格を取るべきか
これは立場で答えが変わります。自分の手で配線や器具付けをするなら電気工事士、電気工事の主任技術者として配置される立場を目指すなら電気工事施工管理技士、と目的に合わせて選ぶものです。
僕は、建築の施工管理がまず身につけるべきなのは資格そのものより、この記事で見た「作業の資格」と「管理の資格」の線引きだと考えています。そこが分かっていれば、電気業者と話すときに確認すべきことがぶれませんし、もし電気の側へキャリアを広げたくなったときも、どちらの資格から手を付けるかを迷わずに決められます。電気工事施工管理技士を軸にした働き方は、2級電気工事施工管理技士を活かした転職の考え方でまとめています。
※本記事にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。
【PR】線引きが分かったら、電気系資格の対策講座も確認しておく
電気工事の範囲と資格の関係が分かると、自分は何から取るかを考える段階に入ります。能センの電気系国家資格向け対策講座という選択肢もあります。
- 電気工事士でないとできない作業を知り、資格取得を考え始めた人
- 独学で進めるか、講座を使うかで迷っている人
- 施工管理として、電気側の資格も押さえておきたい人
電気工事に関する情報まとめ
- 電気工事とは:電気を引き込み、配線し、機器を据え付けて使える状態にする工事。法律では建設業法と電気工事士法の2つの物差しがある
- 建設業法の電気工事:告示第350号の「発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備等を設置する工事」。太陽光発電設備の設置は電気工事、屋根一体型の太陽光パネルは屋根工事
- 電気工事士法の電気工事:第二種は一般用電気工作物等、第一種はそれに加えて自家用電気工作物(最大電力500kW未満の需要設備)。ネオン・非常用予備発電装置は特種電気工事資格者、600V以下で使用する自家用の簡易電気工事は認定電気工事従事者も作業できる
- 軽微な工事と軽微な作業:軽微な工事はそもそも電気工事でなく、軽微な作業は電気工事だが資格不要。露出型コンセントの取り換えは資格不要、コンセントの増設は資格が要る
- 許可と登録:建設業法の許可と電気工事業法の登録(自家用だけなら通知)は別の手続き
- 施工管理から見た電気工事:電気工事士は作業の資格、電気工事施工管理技士は主任技術者・監理技術者のための資格。建設業法の技術者要件では、第2種電気工事士に合格後3年の実務経験が付く
以上が電気工事に関する情報のまとめです。
電気工事という言葉が出てきたら、まず「許可の話か、作業者の資格の話か」を切り分けてください。それだけで、資格の要否も、業者に確認すべきことも、条文のどこを見ればいいかもはっきりします。施工管理として次にやるなら、担当する現場の電気工事が一般用電気工作物等か自家用電気工作物かを確かめ、作業に入る人の資格と業者の登録を照らし合わせておくのが確実だと思います。
制度の細部は、電気工事業の登録の区分や第一種電気工事士の取得条件から辿ってみてください。
