- 溶接欠陥ってどんな種類があるの?
- なんで欠陥が発生するの?
- どうやって検査するの?UTとRTって何?
- 合否はどう判定するの?
- 欠陥が見つかったらどうすればいいの?
- 現場監督として何を見ればいい?
上記の様な悩みを解決します。
「溶接欠陥」は、鉄骨工事で発生する不連続部や形状不良の総称。鉄骨造の梁・柱・接合部の品質を直接左右するので、施工管理者が一番気を使うポイントの1つ。ブローホール、スラグ巻き込み、アンダーカット、割れ、融合不良など多種多様で、それぞれ発生原因と検査方法が違います。検査結果の書類をそのまま「合格/不合格」で読み流さず、種類と数値から再発防止につなげるのがプロの仕事ですね。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
溶接欠陥とは?
溶接欠陥とは、結論「溶接によって作られた金属溶融部(溶着金属)と母材の中に発生する、強度・気密・外観上の不具合」のことです。英語では welding defect または weld imperfection。
溶接欠陥の発生は主に2つの要因で起きます。1つが溶接条件のバラつき(電流・電圧・速度・予熱不足・湿気)、もう1つが施工管理上の要因(開先の精度、表面の汚れ、無理な姿勢、技量)、というところ。
ここで重要なのが、「全ての不連続が欠陥(不合格)になるわけではない」点。JIS Z 3001(溶接用語)では「溶接部の不連続部のうち、規定値を超えるもの」を欠陥と定義しています。
つまり、JIS Z 3060(UT検査)やJASS 6(鉄骨工事標準仕様書)の合否基準を超えた不連続部だけが「欠陥」として扱われ、是正対象になる。検査書類の「指示界面1級」「2級」みたいな格付けは、この合否基準のレベルを表しています。
溶接欠陥の主な種類
代表的な6種類を整理します。
| 種類 | 概要 | 主な原因 |
|---|---|---|
| ブローホール | 溶接金属内部に気孔が点在 | 母材表面の油分・水分・湿気、シールドガス不足 |
| スラグ巻き込み | スラグが溶着金属に閉じ込められる | パス間清掃不足、層間温度管理の甘さ |
| アンダーカット | 母材ビード際の溝状欠損 | 電流過大、運棒速度過大、姿勢の問題 |
| 割れ(クラック) | 溶着金属または熱影響部にひび | 急冷、拘束応力、水素侵入、母材成分 |
| 融合不良 | 母材と溶着金属が融合しない | 入熱不足、開先の汚れ、運棒角度不良 |
| オーバーラップ | ビードが母材に乗り上げる形 | 電流低過、運棒速度低過、姿勢の問題 |
それぞれを掘り下げます。
1. ブローホール
溶着金属の中にガス気泡が残った状態。母材のさび・油・水分やシールドガスの流量不足が主因。検査ではUT・RTで容易に検出できる。
2. スラグ巻き込み
多層溶接で、層と層の間(パス間)のスラグを完全に取り切らなかった結果、後の層に閉じ込められる現象。チッピングハンマー・ワイヤブラシでの層間清掃を徹底することで防止。
3. アンダーカット
ビードと母材の境界に溝状の欠損ができた状態。断面欠損になるため強度低下に直結。深さ0.5mm以下なら許容されるケースもありますが、JASS 6では深さ0.5mm超は不合格が基本。
4. 割れ(クラック)
最も重大な欠陥。発生位置で 縦割れ・横割れ・余盛割れ・止端割れなどに分類される。水素脆化が原因の遅れ割れは溶接後数時間〜数日経って出るので、24〜48時間後の再検査で発見されることもあります。
5. 融合不良(lack of fusion)
母材と溶着金属が金属学的に結合していない状態。外観からは見えず、UT検査で初めて検出されるケースが多い。入熱不足・開先内の汚れ・電極角度のズレなどが原因。
6. オーバーラップ
母材表面にビードが乗り上げて段差ができた状態。応力集中の起点となり疲労寿命に影響。
ダイヤフラムの話はこちら(鉄骨工事の関連知識)。

スプライスプレートの話はこちら。

溶接欠陥の検査方法
実際に溶接欠陥を検出する方法を整理します。非破壊検査(NDT:Non-Destructive Testing)が基本です。
| 検査種別 | 略号 | 検出対象 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 外観検査 | VT | 表面欠陥 | 全溶接箇所が対象(基本中の基本) |
| 浸透探傷 | PT | 表面に開口する欠陥 | 表面割れ・ピンホール |
| 磁粉探傷 | MT | 表面・近傍の欠陥 | 強磁性体(鉄)に限る |
| 超音波探傷 | UT | 内部の欠陥 | 隅肉・突合せ溶接の現場検査の主役 |
| 放射線透過 | RT | 内部の欠陥 | 突合せ溶接、画像で記録できる |
1. 外観検査(VT:Visual Test)
目視+ビードゲージでの寸法検査。全溶接箇所が対象で、これに合格しないとそもそも次の検査に進まない。ビード幅・余盛高さ・脚長などをスケールで測定します。
2. 超音波探傷検査(UT)
現場で最もよく行われる内部欠陥検査。鉄骨建築の柱梁仕口部・大梁突合せ溶接部などに対して、JIS Z 3060に基づき抜き取り or 全数で実施。
JASS 6の標準的な検査率
JASS 6の標準的な検査率は、角形鋼管柱の現場溶接が30%(指示界面の長さ基準)、大梁の現場溶接が30%(梁数基準で抜き取り)、重要建物・特殊形状が100%全数、というあたり。
3. 放射線透過検査(RT)
X線・γ線で透過撮影し、フィルムに記録。画像として残せるのが強みで、橋梁・圧力容器など重要構造物で多用される。建築鉄骨ではUTより使用頻度は低めです。
4. 浸透探傷(PT)・磁粉探傷(MT)
PTは赤い染料を浸透させて表面欠陥を検出(ステンレス・アルミでも使える)。MTは磁粉を散布して磁気の乱れで表面・近傍欠陥を検出(炭素鋼・鋳鉄に有効)。
接合部の話はこちら。

JASS 6の合否基準と現場判定
検査結果をどう「合格/不合格」と判定するかを整理します。
1. UT検査の合否基準(JIS Z 3060準拠)
UT検査結果は 「指示界面の高さ」「指示界面の長さ」「指示界面のレベル比」で判定。一般的には1類が最も厳格(重要構造物)、2類が建築鉄骨でよく適用、3類が余裕のある部位向け、4類が参考扱い、という4等級。
JASS 6では原則「2類合格」を求めるのが標準。検査機関の検査報告書に「2類合格」と書かれていればOK、「3類」「4類」と書かれている場合は是正対応が必要なケースが多いです。
2. 外観検査の合否基準
JASS 6での標準的な許容値は、アンダーカットが深さ0.5mm以下、オーバーラップは原則認めない(要是正)、余盛高さがビード幅の1/4以下で上限3mm、ピット(表面孔)は直径1mm以上が不合格、割れはいかなる長さ・深さでも全て不合格、というあたり。
3. 検査書類の読み方
施工管理者として現場で見るのは「溶接部検査報告書」。記載内容は、検査箇所(部材記号・通り符号)、検査方法(VT・UT・RT等)、検査員資格(JIS Z 3410認証など)、指示界面の高さ・長さ・レベル比、合否判定(1類〜4類または合否)、是正指示の有無、というあたり。
4. 重要な指摘ポイント
重要な指摘ポイントは、「割れ」の指示があったら無条件で是正(深刻欠陥)、同一部位で複数の欠陥が指摘された場合は溶接条件・施工者の見直しが必要、検査員の資格レベル(JIS Z 3410 1〜3レベル)が業務難易度に応じているか、というあたり。
H鋼の話はこちら。

是正対応と再発防止
欠陥が見つかったときの対応プロセスを整理します。
1. 欠陥部の除去(はつり・グラインダー)
欠陥位置をマーキングし、カーボンアーク・グラインダーで欠陥部を完全に除去。母材の健全部まで削り込むのが原則。「削りすぎて板厚不足」にならないよう、深さの管理は重要。
2. 補修溶接(ガウジング後の再溶接)
除去した部分を、当初の溶接条件で再度溶接。補修溶接は熱影響を強く与えるので、予熱・後熱・パス間温度の管理が初回より厳しくなる傾向。
3. 再検査
是正後、再度UT・VT・必要に応じてRTで再検査。同じ検査員が再検査するのが原則で、合否は1類〜2類で判定。
4. 記録の整備
是正履歴は 施工体制台帳・施工記録として保管。「いつ・どの部材で・どんな欠陥が・どう是正されたか」を、施主・確認検査機関に提示できるよう書類で残します。
施工体制台帳の話はこちら。

5. 再発防止の打ち手
よくある対策
よくある対策は、溶接条件(電流・電圧・速度)の標準化と作業者への周知、母材表面(さび・油・水分)の事前清掃の徹底、パス間清掃のチェックリスト化、予熱温度の測定(特に厚板・低温時)、溶接技能者の有資格者比率を上げる、WPS(Welding Procedure Specification=溶接施工要領書)の遵守、というあたり。
現場監督としての着眼点
現場監督としての着眼点は、朝礼で「今日の溶接条件は前日と同じか?」を確認する、外気温・湿度が変動する日は補強体制を組む(雨上がりの溶接は特に注意)、同じ施工者・同じ部位で再発した場合は施工者の交替も含めて判断、溶接ヒュームの吸引対策(労安法改正)と作業環境の確認、というあたり。
施工要領書の話はこちら。

溶接欠陥に関する情報まとめ
- 溶接欠陥とは:JIS Z 3001の規定値を超える不連続部・形状不良。全ての不連続が欠陥になるわけではなく、合否基準を超えたものだけが対象
- 主な種類:ブローホール、スラグ巻き込み、アンダーカット、割れ、融合不良、オーバーラップの6つ
- 検査方法:VT(外観)、UT(超音波)、RT(放射線)、PT(浸透)、MT(磁粉)。建築鉄骨ではVT+UTが主役
- 合否基準:JASS 6で2類合格が原則。アンダーカット深さ0.5mm以下、割れは無条件で不合格、ピット1mm以上は不合格
- 是正対応:欠陥部除去→補修溶接→再検査→記録整備の流れ
- 再発防止:溶接条件の標準化、母材清掃、パス間清掃、予熱管理、WPS遵守、有資格者比率向上
以上が溶接欠陥に関する情報のまとめです。
溶接欠陥は「指摘されないこと」が目的ではなく、「指摘されたときに原因に遡って再発防止につなげる」のが現場監督の本領。検査書類を眺めて「合格」「不合格」だけ見て安心している人はまだ初心者レベルで、種類と数値・指示界面のレベル比まで読み解いて施工条件にフィードバックできる人が、鉄骨工事の品質をきちんと守れるレベルですね。
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