- 通しボルトってなに?
- 「通し」ってどういう意味?
- 豆ボルトと何が違うの?
- 胴縁の取付けでなぜ必要?
- 緩み止めはどうする?
- 施工管理として何を見ればいい?
上記の様な悩みを解決します。
「通しボルト」は鉄骨造の胴縁・小梁などで、部材を貫通させて両側から締めるボルトのことです。「通し」=部材を貫通するという意味で、両側からナットで挟んで固定するのが特徴。胴縁の取付けで「通しボルトと豆ボルトの使い分け」を施工管理として押さえないと、胴縁の支持性能や仕上げ材の取合いでトラブルになります。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
通しボルトとは?
通しボルトとは、結論「鉄骨部材を貫通させて両側から締めるボルト」のことです。
「通し(とおし)」は「貫通する」という意味で、部材を完全に貫通させて、両側からナットで挟む形で固定します。鉄骨工事では、胴縁・小梁・ガセットプレートなどを取付ける際に頻繁に使われ、特にS造の外壁下地である胴縁の取付けで標準的に登場する用語です。
→ ざっくり、「鉄骨を貫通して両側からナットで挟むボルト」が通しボルト、というイメージです。
基本仕様と呼ばれ方
通しボルトの基本仕様は、形態が頭付きボルト+座金+反対側からナット、取付けは母材を貫通=両側に頭・ナットが露出、長さは母材厚+締代+ナット高さ、使用箇所は胴縁・小梁・ガセットプレート・補助部材、規格はJIS B 1180(六角ボルト)等、というあたり。
「通しボルト」と呼ばれるのは、母材を完全に通し抜けるから「通し」、反対側でナットで締める形式、「通り抜けボルト」「スルーボルト」とも呼ぶ、というのが理由です。典型的な使用場面は、胴縁の取付け(S造胴縁を主架構〔柱・梁〕に取付ける)、小梁の取付け(補助小梁・受け小梁)、ガセットプレートの両面取付け、クレーンガーターの補助金物取付け、アングルプレートの両面締付け、というシーン。
豆ボルト・高力ボルト・他形状との違い
通しボルトと豆ボルトの違いを表で整理しておきます。
| 項目 | 通しボルト | 豆ボルト |
|---|---|---|
| 取付け形式 | 母材を貫通、両側ナット | 母材内側のみ、片側ねじ |
| ボルト径 | M12〜M16が多い | M8〜M12(小径) |
| 用途 | 胴縁の本接合 | 胴縁の補助・仕上げ材取付け |
| 緩み止め | ロックナット・割ピン | スプリングワッシャー |
| 施工性 | 両側からアクセス必要 | 片側のみで作業可 |
→ 通しボルトは両側から締める=強度・確実性◎、豆ボルトは片側から締める=施工性◎・耐力△、という違いです。
高力ボルト(摩擦接合で軸力を導入、本接合用)と通しボルト(せん断接合や引張接合で機械的に固定、補助接合用)も区別が必要で、通しボルトは高力ボルトほどの軸力管理は不要だが緩み止めは必要、というのが基本。フックボルト(J字型、片側がフック)、Uボルト(U字型、配管支持用)といった他形状とも、通しボルトは両端がねじ+頭で最も一般的、というポジションです。
流れと設計図書での表記
鉄骨工事の流れの中での通しボルトは、鉄骨製作工場で母材製作 → 通しボルト用の穴あけ加工 → 鉄骨建方で母材を建てる → 胴縁・小梁を取付ける → 通しボルトを母材を貫通させて挿入 → 反対側からナットで締付け → ロックナット・座金で緩み止め、という位置づけ。
設計図書では「M16通しボルト」「M12通しボルト 緩み止めナット併用」のように表記され、詳細図で位置・本数・締付トルクを明記、ボルト長さの指定(ねじ部・締付代を考慮)、を行います。
「ボルト」は機械要素全般の総称、「通しボルト」はその中の取付け形式の1つ、という関係です。

通しボルトの役割
通しボルトの役割を整理します。強度ある機械的接合と両側固定の確実性がメインです。
胴縁・小梁の主架構取付けと両側固定
最大の役割は胴縁の主架構への取付けです。S造胴縁を柱・梁の側面に取付け、通しボルトで両側から挟み込み、胴縁のせん断・引張荷重を伝達。両側固定による高い接合信頼性として、片側ねじだと振動で緩むリスク、両側ナットなら互いに緩み防止、重要部位での標準仕様、というのが構造的特徴です。
せん断・引張・仕上げ材支持
せん断荷重の伝達では、母材を貫通したボルト軸がせん断力を受ける、母材厚分のせん断耐力を確保、鉄骨のせん断接合で多用、という機能。引張荷重の伝達では、ボルト軸方向の引張力を伝達、両側ナットの軸力で母材を圧着、摩擦・機械的固定の併用、という働き。
外壁仕上げ材の支持基盤確保として、胴縁を確実に取付けることで外壁仕上げ材(ALC・サイディング・押出成形セメント板等)の支持、胴縁の緩み=外壁全体の不具合、という重要性。施工時の繰返し荷重対応(工事中の振動・衝撃に耐える、工程後半まで緩まない、引渡し後の長期使用にも対応)、補助小梁・受け金物の取付け(主架構に補助小梁、設備配管支持のための受け金物、ガセットプレート・接合金物の固定)、と多用途です。
施工性・メンテ性・補助接合の標準
現場での組立て性として、工場製作で通しボルト穴を事前加工、現場では部材を建ててボルトを通すだけ、高所作業の安全性に直結、というメリット。点検・更新時の取外し性として、ナットを外せば取外し可能、改修・更新工事の柔軟性、溶接接合よりもメンテ性◎、という長期目線のメリットも。
補助接合の標準仕様として、鉄骨工事の補助接合は通しボルトが多い、高力ボルトは主架構の本接合、通しボルトは胴縁・小梁などの二次接合、という棲み分けです。
役割を表で整理すると次のようになります。
| 役割 | 具体的な機能 |
|---|---|
| 主架構への取付け | 胴縁・小梁を主架構に固定 |
| 両側固定 | 緩み防止と接合信頼性 |
| せん断・引張伝達 | 機械的接合 |
| 仕上げ材支持基盤 | 外壁・天井下地の確保 |
| メンテ性 | 取外し可能 |
→ 通しボルトは「鉄骨工事の標準的な機械的接合金物」で、胴縁・小梁・補助金物の取付けで強度・施工性・メンテ性のバランスを取った選択肢ですね。
通しボルトの種類と規格
通しボルトの種類と規格を整理します。径・長さ・材質・頭の形状で仕様が決まります。
ボルト径と強度区分
ボルト径の代表的なサイズと耐力(参考)を表で整理しておきます。
| 径 | 用途目安 | 引張耐力(参考) |
|---|---|---|
| M10 | 軽量胴縁・小型補助金物 | 約20kN |
| M12 | 一般胴縁・小梁 | 約28kN |
| M16 | 中規模胴縁・受け金物 | 約53kN |
| M20 | 大型胴縁・補助小梁 | 約83kN |
| M24 | 重量物・特殊用途 | 約120kN |
→ 上記耐力は強度区分4.6を想定した参考値で、設計値は強度区分・安全率・断面欠損で変動します。
強度区分は、4.6(一般用・最も普及)、6.8(中強度)、8.8(高強度)、10.9(高張力・高力ボルト相当)、と段階があり、設計図書で強度区分指定があります。
材質・頭形状・ナット・座金
材質は、SS400(一般用、最普及)、SCM435(高張力用)、ステンレス(SUS304・SUS316・耐食用)、というラインアップ。屋外使用は亜鉛めっき or ステンレスが基本。
頭の形状は、六角頭(最も一般的)、キャップ頭(CAP・内六角、デザイン重視)、皿頭(埋込み用)、と用途で選びます。ナットの種類は、六角ナット(標準)、ロックナット(緩み止め)、スプリングナット、ナイロンインサートナット(緩み止め内蔵)、とバリエーション豊富。
座金(ワッシャー)は、平座金(母材保護)、スプリングワッシャー(簡易緩み止め)、歯付き座金(強い緩み止め)、大型座金(分散荷重用)、を組み合わせます。ワッシャーの基本については別記事も参考にしてください。

長さ・表面処理・規格・図書表記
長さの決定は、母材厚+座金厚×2+ナット高さ+締代、例えば母材厚20mmならボルト長60〜80mm、設計図書または現場計測で決定、というのが計算。表面処理は、黒皮(無処理・屋内・短期)、三価クロメート(標準的処理)、溶融亜鉛めっき(屋外・長期)、ステンレス(高耐食仕様)、と選択肢があります。
規格類は、JIS B 1180(六角ボルト)、JIS B 1181(六角ナット)、JIS B 1186(高力ボルト・高張力タイプ)、JIS B 1256(座金)、というラインアップ。設計図書では「M16×60 SS400 黒皮」「M12 通しボルト ロックナット併用」のように表記され、詳細図で位置・本数・締付トルクを明記します。
組合せ仕様と用途別の選定
1つの胴縁に通しボルト+豆ボルトを併用するケースもあり、通しボルトは主接合、豆ボルトは補助・仕上げ、設計図書で役割分担を明記。特殊な通しボルトとして、アンカーボルト(基礎部の通しボルト的役割)、接合金物用ボルト(金物メーカー指定品)、特殊頭ボルト(意匠重視の場合)、もあります。
用途別の代表的な仕様例を整理しておきます。
| 用途 | 推奨仕様 |
|---|---|
| 一般胴縁の主接合 | M12 SS400 ロックナット併用 |
| 中規模胴縁・小梁 | M16 SS400 座金併用 |
| 受け金物・補助小梁 | M16〜M20 SS400 |
| 屋外露出 | M16 溶融亜鉛めっき |
選定は構造設計者・鉄骨業者の協議で決定し、鉄骨製作工場で穴あけ加工→出荷されます。
通しボルトの施工方法
通しボルトの施工方法は、母材の穴あけ → 部材取付け → ボルト挿入 → ナット締付け → 緩み止め、の流れです。
製作前準備・現場搬入・取付け順序
鉄骨製作前の準備は、設計図書でボルト位置・径・本数を確認、鉄骨製作工場で穴あけ加工(位置精度±1mm程度)、母材出荷前の穴あけ位置検査、という流れ。
現場搬入・保管は、ボルト本体は屋内・乾燥保管、種類・長さごとに袋詰め整理、部位ラベルで識別、を行います。鉄骨建方時の取付け順序は、主架構(柱・梁)の建方完了 → 胴縁・小梁を所定位置に配置 → 母材のボルト穴に通しボルトを挿入 → 反対側でナット仮締め → 全本のボルトが入ったら本締め → ロックナットで緩み止め、というステップ。
ボルト挿入の実務は、反対側から手を入れてボルト先端を支える、母材のバリ・歪みでボルトが入らないことが多い、入らない時はリーマー処置 or 工場戻し、というあたり。
締付け・緩み止め・両側アクセス
締付け方法は、トルクレンチで所定トルクまで締付け、強度区分・径ごとに標準トルクあり、M12(4.6)目安で約60Nm、M16(4.6)目安で約180Nm、設計図書の指定トルクを厳守、というのが基本ルール。
緩み止めの種類は、ロックナット(標準的な緩み止め、ナット2重)、スプリングワッシャー(簡易緩み止め)、ナイロンインサートナット(内側ナイロンで緩み防止)、割ピン(絶対緩み防止・特殊用途)、ペイントマーキング(緩み確認可能化)、と多彩。
両側からのアクセス確保では、通しボルトは両側に作業空間が必要、高所作業時は両側に作業員配置、アクセス困難な場合は設計時点で見直し、を考慮します。現場での施工誤差対応として、ボルト穴のズレは現場でリーマー対応、大幅なズレは鉄骨業者と協議、「現場で穴を勝手に追加」は禁止、というルール。
胴縁・補助小梁取付けの実例
胴縁取付けの実例は、主架構の柱・梁に胴縁取付け穴が事前加工 → 胴縁を所定高さに仮設 → 通しボルトを柱フランジを貫通して挿入 → 反対側でナット締付け → ロックナットで緩み止め、という流れ。
補助小梁取付けの実例は、主架構の梁ウェブにガセットプレートを取付け → 補助小梁を所定位置に吊り込み → 通しボルトでガセットプレートと小梁を接合 → ナット締付け+緩み止め、というステップ。
検査・塗装・施工管理者の視点
検査項目は、取付け位置(図面通りか)、本数・径(仕様通りか)、締付けトルク(指定値か)、緩み止め(ロックナット・座金の状態)、塗装(仕上げ塗装の完了)、というあたり。塗装・防錆処理は、工場製作時に錆止め塗装または亜鉛めっき、取付け後に現場仕上げ塗装、ナット周辺の塗装注意(緩み・締め直し対応)、を意識します。
施工管理者の視点では、製作前(設計図書のボルト仕様・位置の確認)、製作中(穴あけ位置の検査)、建方時(取付け順序・両側作業の確保)、締付け時(トルク管理・緩み止めの確認)、検査時(写真記録・トルク記録・緩み止め確認)、と工程を見ます。
工場の鉄骨建方現場で胴縁の取付け作業を見ていた時、「通しボルトを通すのに反対側から鉄骨工が支えてた」のが印象に残っています。「片側だけだと先っぽが落ちて入らない」と棟梁が説明してくれて、両側からの息合わせ作業が通しボルト取付けの要点なんだなと実感しました。両側に作業員配置できる工程組みが施工管理者の見せ所ですね。
通しボルトの注意点
通しボルトは鉄骨補助接合の主役ですが、注意点を整理します。
トルク・緩み止め・穴位置・両側アクセス
締付けトルクの厳格管理は、強度区分・径ごとの標準トルクを厳守、締めすぎはねじ部の塑性変形・破断、緩めすぎは接合不良、というあたり。緩み止めの確実な施工は、ロックナット・スプリングワッシャー等の併用、「緩み止めなし」は中長期で必ず緩む、ペイントマーキングで緩み確認可能化、を徹底します。
穴あけ位置の精度は、ボルト穴のズレは取付け不能につながる、工場製作時の位置精度±1mm程度、現場補正はリーマーまで、というのがルール。両側アクセスの確保では、通しボルトは両側に作業空間が必要、アクセス困難な場合は設計時点で再検討、高所作業の安全帯フック先確保、を意識します。
ボルト長・座金・腐食・異種金属
適切なボルト長の選定は、短すぎはねじ込み不足で接合不良、長すぎは美観・干渉問題、母材厚+座金×2+ナット+締代を正確計算、を心がけます。座金の適切な使用として、平座金で母材保護、スプリングワッシャーで簡易緩み止め、大型座金で応力分散、適切な座金組合せが接合品質を左右、というあたり。
腐食対策では、屋外露出は亜鉛めっき or ステンレス、屋内でも結露・薬品環境注意、塗装の剥がれ・補修、を行います。異種金属の組合せ(ステンレスボルトと普通鋼母材)は電食リスクがあり、屋外での湿潤環境では特に注意、同質材料 or 絶縁ワッシャー、というケア。
高強度ボルト・締付け順序・点検・混同
高強度ボルトとの混用注意で、強度区分10.9等の高張力ボルトは専用仕様、通常の通しボルト感覚で扱うと過大締付けでねじ部破壊、設計図書通りの強度区分を使用、を守ります。ナット締付けの順序は、複数ボルトの締付けは対角順で均等化、一気に1本だけ強く締めない、段階的締付け(仮→本)が原則、というルール。
点検・補修のサイクルは、引渡し後のロックナット緩み点検、塗装の補修サイクル、異常発見時の早期対応、を仕組み化。類似部材との混同注意(通しボルト・豆ボルト・高力ボルト・アンカーボルトはそれぞれ役割が異なる)、設計図書通りの正しい部材を取付ける、不明な場合は設計者・鉄骨業者に確認、というのが基本姿勢です。
胴縁取付け・安全・記録・施工管理者の視点
胴縁取付けでの注意は、胴縁は外装仕上げの基盤、通しボルトの緩みは外装ガタつきにつながる、仕上げ材取付け前の最終確認、というあたり。安全管理は、高所作業時のフルハーネス・親綱、工具落下防止(ストラップ等)、TBM-KYで当日の作業確認、を徹底します。

記録管理として、締付けトルクのチェックシート、緩み止めの写真記録、検査記録の長期保管、を整備。
施工管理者の視点では、施工計画書(ボルト仕様・締付け手順・緩み止め・検査基準)、作業手順書(両側作業・トルク管理・記録様式)、品質管理(トルク記録・緩み止め写真・塗装確認)、不適合管理(締付け不良・緩み発見時の是正手順)、を見ます。
→ 通しボルトは「鉄骨工事の補助接合の主役」なので、標準的な部材だからこそ油断せず、トルク管理・緩み止め・記録管理を徹底するのが、鉄骨工事の品質を安定させるコツですね。
通しボルトに関する情報まとめ
最後に、通しボルトの重要ポイントを整理します。
- 通しボルトとは:鉄骨母材を貫通させて両側から締めるボルト(胴縁・小梁・補助金物の取付けに多用)
- 役割:胴縁の主架構取付け、両側固定、せん断・引張伝達、仕上げ材支持基盤
- 代表サイズ:M10・M12・M16・M20・M24(用途で選定)
- 強度区分:4.6・6.8・8.8・10.9(一般は4.6)
- 頭形状:六角頭が標準、キャップ頭・皿頭もあり
- 緩み止め:ロックナット・スプリングワッシャー・ナイロンインサートナット
- 施工:母材穴あけ→部材取付け→ボルト挿入→ナット締付け→緩み止め
- 豆ボルトとの違い:通しボルトは両側固定で強度・確実性◎、豆ボルトは片側で施工性◎
- 検査項目:位置・本数・径・締付けトルク・緩み止め・塗装
- 施工管理者の役割:施工計画書・作業手順書・品質管理・引渡し点検計画
以上が通しボルトに関する情報のまとめです。
通しボルトは「鉄骨母材を貫通させて両側から締める標準的な接合金物」で、胴縁・小梁・受け金物の取付けで強度・施工性・メンテ性のバランスを取った選択肢です。両側からのアクセス確保が施工性の要点で、トルク管理・緩み止め・両側作業を施工管理者が押さえれば、鉄骨工事の補助接合の品質を安定させられます。「豆ボルトと使い分けて、適材適所で配置する」のが、鉄骨工事の経済性と安全性を両立させるコツですね。
合わせて読みたい関連記事はこちら。







