- 耐震壁ってなに?普通の壁とどう違うの?
- 図面で耐震壁ってどう描かれてるの?
- 配筋にルールはある?
- 耐震壁に窓やスリーブを開けてもいい?
- 現場で「これ耐震壁?」と聞かれたとき何を見れば分かる?
- 意匠側から「ここを撤去したい」と言われたらどう答えればいい?
上記の様な悩みを解決します。
耐震壁は、RC造の建物で地震に耐える役割を最も多く受け持っている壁。配筋検査でも開口の取り合いでも、「これは絶対に動かせない壁なのか?」を即答できないと、現場が止まる場面が結構あります。施工管理として、構造図の耐震壁記号と「普通の壁(雑壁)」の見分け方くらいは反射神経で出せるようにしておきたいところ。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
耐震壁とは?
耐震壁とは、結論「地震時の水平力(横揺れの力)を主に負担するために設計された壁」のことです。
RC造の建物の壁には、大きく分けて2種類あります。1つが耐震壁(構造壁)で、構造計算で「地震力に抵抗する」と位置づけられた壁。もう1つが雑壁(非構造壁)で、構造計算上は荷重を負担しない、間仕切り目的の壁。同じ厚さ150mmのRC壁でも、片方は地震に効く構造体、もう片方はただの間仕切り、ということが普通に起きます。「壁=全部構造」ではない、というのが意外と知られていないポイントです。
耐震壁は、柱と梁で囲まれた領域(ラーメン構造の中の1コマ)に、面として配置されることで「地震の横揺れを面で受け止める」役割を果たします。柱・梁だけでも地震には耐えられるんですが、耐震壁を入れたほうが圧倒的に効率が良く、変形量も抑えられる、というイメージ。
「耐力壁」との違い
似た用語の「耐力壁」と混同しがちなので整理しておきます。耐震壁は主にRC造・SRC造での呼び方で、柱・梁に囲まれた壁が水平力を負担するもの。耐力壁は主に木造での呼び方で、壁倍率で性能を表し、4分割法で配置を判定するもの。意味するところは「地震に耐える壁」で共通ですが、業界・構造種別で言い回しが分かれると覚えておけばOKです。
耐力壁の話はこちら。

地震時の水平力に対する仕組みは、層間変形角や壁量計算と直結します。


耐震壁と普通の壁(雑壁)の違い
実務上、耐震壁と普通の壁の違いは「構造図で耐震壁マークが付いているかどうか」で判定するのが基本。ただし内容的には以下のような差があります。
| 項目 | 耐震壁 | 雑壁(非構造壁) |
|---|---|---|
| 役割 | 地震力を負担 | 間仕切り・遮音 |
| 配筋 | ダブル配筋が基本 | シングル配筋でOKな場合あり |
| 厚さ | 150〜200mm以上 | 100〜150mm |
| 柱・梁との接合 | 一体打ち、定着長さ確保必須 | 隙間あり可(耐震スリットで縁切りする場合も) |
| 開口の扱い | 厳しい制限、補強筋必須 | 比較的自由 |
| 撤去・変更 | 構造設計者の承認必須 | 比較的容易 |
「耐震壁か雑壁か」で、開口を空けられるサイズも、撤去できるかも、施工の手間も全部変わってくるわけです。施工管理が一番気にすべきは、配筋検査時の主筋量・スリーブ位置の妥当性・開口補強筋の3点ですね。
耐震スリットの話はこちら。
耐震壁の配筋ルール
耐震壁の配筋には、建築基準法・JASS5・公共建築工事標準仕様書などで決められた基本ルールがあります。
最小厚さ
最小厚さは建築基準法で120mm以上が下限。実務では180〜200mmが標準で、地下階や1階の主要耐震壁では250〜300mmになることもあります。
配筋の種類
配筋は壁の両面に縦筋・横筋を入れるダブル配筋が基本です。シングル配筋は厚さ200mm以下の限定的なケースのみ。縦筋は壁筋の端部・開口縁部を補強し、横筋は階高方向に間隔を確保(@200程度が標準)するというかたち。
鉄筋径と間隔の目安
| 部位 | 主筋(縦筋) | 配力筋(横筋) |
|---|---|---|
| 一般部 | D10〜D13 @200 | D10〜D13 @200 |
| 開口補強部 | D13〜D16(隅部に追加) | D13〜D16 |
| 柱・梁との接合部 | 定着長さ40d以上 | 定着長さ40d以上 |
特に重要なのが「定着長さ」。耐震壁は柱・梁に40d(鉄筋径の40倍)以上の定着長さで一体化させる必要があり、これが不足すると地震時に壁が抜け出して耐震性能が出ません。配筋検査では壁筋の柱・梁への定着フックの形状・長さを必ず実測。
主筋・あばら筋・かぶり厚さの基本はこちら。

耐震壁の開口(窓・スリーブ)の扱い
施工管理の現場で一番もめるのが「耐震壁に開口を空けたい」問題。電気・空調・給排水のスリーブ位置がしょっちゅう絡んできます。
開口を空けられる条件(一般則)
一般的な目安としては、開口面積が壁面積の30%以下、開口の高さ・幅がそれぞれ壁の高さ・幅の60%以下、開口周囲に補強筋を入れる、構造設計者の事前承認を得る、というあたりが基本ルール。これを超える開口を空ける場合は、構造再計算が必要になります。「現場でちょっと配管を通したい」レベルなら、事前に構造設計者へ相談しないと、後から保有水平耐力不足で是正、というケースも。
開口補強筋の例
開口の四隅には、斜め補強筋(D13〜D16、長さ1m前後)を45度方向に2本ずつ入れるのが標準。さらに開口縁の縦・横方向に補強筋を追加します。
| 開口サイズ | 補強筋の目安 |
|---|---|
| 300×300以下(小スリーブ) | 縦横にD10×4本 |
| 300〜600(中サイズ) | 縦横にD13×4本+斜めD13×4本 |
| 600〜900(大開口) | 縦横にD16×4本+斜めD13〜D16×4本 |
| 900以上 | 構造設計者と個別協議 |
「壁スリーブの位置を変えたい」と現場から相談されたとき、雑壁ならその場で対応できることも多いですが、耐震壁の場合は必ず構造図と照らし合わせて、スリーブ径と位置が補強範囲内か確認してから返答するのが鉄則です。
スリーブ施工のルールはこちら。

構造図・施工図での耐震壁の見分け方
施工管理として、図面を開いた瞬間に耐震壁か雑壁かを判別できるようにしておきましょう。
構造図での表記
構造図での耐震壁の表記は、塗りつぶし(黒・グレー)が最も一般的。さらに「W」「W1」「W2」などの符号が壁符号として耐震壁を区別する形で付き、構造図の凡例に「W1=t180 ダブル配筋」のように厚さ・配筋仕様が記載されます。構造図の最後には耐震壁リスト(壁リスト)として、壁ごとの配筋詳細をまとめた表が付くのが定番。
施工図(躯体図)での表記
施工図(躯体図)には、構造図のW符号がそのまま転記され、厚さの寸法(150、180、200など)が明示されます。開口(W、SW、CWなどの建具符号)が明記され、開口補強筋もしばしば併記されている、というかたち。
現場で「これ耐震壁?」と聞かれたとき
現場で「これ耐震壁?」と聞かれたときの確認手順は、まず構造図の壁伏図か壁リストで該当壁の符号を確認、符号が「W〇〇」で塗りつぶされていれば耐震壁、符号がなく単に「t150」のような厚さ記載だけなら雑壁の可能性が高い、判別がつかない場合は構造設計者に確認、という流れです。
意匠図と構造図で食い違うときは、原則として構造図優先。意匠図には構造的な耐震壁という概念がないので、意匠図の壁=耐震壁とは限りません。
躯体図の読み方はこちら。

現場で耐震壁を扱うときの注意点
施工管理の実務で耐震壁にまつわる注意点を整理します。
配筋検査での重点ポイント
配筋検査でのチェックは、ダブル配筋の両面の鉄筋本数・径が図面通りか、縦筋・横筋の定着長さ(柱・梁への食い込み40d以上)が確保できているか、開口補強筋の本数・位置(特に斜め補強筋を忘れていないか)、かぶり厚さ(壁内側の被りが薄いと爆裂・耐久性低下の原因)、というあたりが重点項目。
配筋検査の段取りはこちら。

コンクリート打設時の注意
打設時は、耐震壁はバイブレーターを十分に効かせる(ダブル配筋で締固め不足が起きやすい)、打継ぎ位置を構造設計者と事前に確認(耐震壁の中間で打ち継ぐと弱点になる)、打設速度を落とし、横方向に流さない(材料分離防止)、というあたりが要注意ポイント。
コンクリート打設の手順はこちら。

設備工事との取り合い
設備工事との取り合いでは、配管スリーブ・電線管・ボックス類は事前に位置を構造図で照合しておく、耐震壁を貫通する設備配管は原則スリーブ補強筋付き、配管経路の変更要望が来たら「まず構造図、次に構造設計者」の順で動く、という流れが基本です。
防火区画貫通処理が絡む場合の話。

意匠変更要望への対応
「この壁を撤去したい」「ここに窓を新設したい」と意匠側から要望が来たときは、まず構造図で耐震壁か雑壁かを判定。雑壁なら比較的容易ですが、耐震壁の場合は構造設計者の検討・承認待ちになります。「やってから後で報告」は絶対NG。耐震壁を勝手に変更すると、確認申請の変更手続きまで遡及することがあるので注意。
改修・リフォーム時
既存建物の改修で耐震壁の撤去・開口新設を行う場合は、構造再評価が必須。確認申請の対象になることもあるので、設計者と早めに連携しておくのが安全です。
改修工事全般の話はこちら。

耐震壁に関する情報まとめ
- 耐震壁とは:地震時の水平力を主に負担するために設計された壁
- 雑壁との違い:構造計算での扱い、配筋(ダブル配筋)、厚さ、接合、開口の扱いが全部違う
- 最小厚さ:120mm以上(法)、実務は180〜200mmが標準
- 配筋:ダブル配筋+柱・梁への定着40d以上
- 開口の制限:壁面積の30%以下、補強筋必須
- 構造図での見分け方:塗りつぶし+W符号、壁リスト参照
- 現場の注意:配筋検査での定着長さ・補強筋、打設の締固め、設備配管の事前照合、意匠変更要望は必ず構造設計者へ
- 改修時:撤去・開口新設は構造再評価必須
以上が耐震壁に関する情報のまとめです。
耐震壁は、「地震時に建物の命を守る最重要の構造体」だと意識しておくのが第一歩。普通の壁と見た目が同じでも、配筋検査・開口・撤去の判断は全く別物です。「迷ったら構造設計者に確認」のクセを付けておけば、現場で大きく踏み外すことはまずありません。図面の壁符号を即読みできる目を養って、設計と施工の橋渡し役を務めていきましょう。
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