- 静定構造ってなに?不静定構造ってなに?
- 違いがイマイチ分からない
- どっちか判別する方法は?
- 不静定次数ってどう数える?
- 設計上どっちが好ましいの?
- 実物の建物はどっち?
上記の様な悩みを解決します。
静定/不静定の違いは構造力学の最序盤で出てくる概念ですが、ここを曖昧にしておくと「この構造はなぜ手計算で解けないのか」「ラーメン構造はなぜ複雑なのか」が腹落ちしないまま進んでしまいます。施工管理として図面を読むとき、「この建物は何重に不静定なのか」を意識できると、構造体の冗長性(フェイルセーフ)の話まで踏み込めるようになります。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
静定構造と不静定構造とは?
静定構造と不静定構造とは、結論「釣り合い式だけで解けるか、変形条件まで必要か」の違いのことです。
- 静定構造:3つの釣り合い式(ΣH=0、ΣV=0、ΣM=0)だけで応力・反力がすべて求まる構造
- 不静定構造:釣り合い式だけでは未知数が解けず、変形の条件式(変位の連続性など)を追加して解く構造
身近な例で言うと、シーソー(中央1点支持、両端は自由)は静定、テーブル(4本脚)は不静定。シーソーは支えが1ヶ所だから「両端の重さの差で釣り合う」と単純に分かりますが、テーブルは脚が4本もあるので「どの脚が何kg負担しているか」は床の歪みや脚の長さのバラつきまで見ないと決まりません。これがまさに静定/不静定の違いそのもの。
支点の話と直結する概念なので、合わせて読むと理解が深まります。

不静定次数の数え方(判別方法)
ある構造が静定か不静定かを判別する基本式が、不静定次数(不静定度)です。
平面構造(2次元)の場合
不静定次数 = 反力数 + 部材数 × 3 − 節点数 × 3 − ヒンジ数
少しややこしいので、教科書でよく使われる簡略式で覚える人も多いです。
不静定次数 = (反力数 + 部材数 + 節点条件) − 節点数 × 3
または、もっとざっくり:
不静定次数 = 反力数 − 3(単純な梁・トラスの場合)
判別のコツ:
- 不静定次数 = 0 → 静定
- 不静定次数 > 0 → 不静定(その数の分だけ「余分な拘束」がある)
- 不静定次数 < 0 → 不安定(崩れる構造、設計成立しない)
簡単な例で確認
| 構造 | 反力数 | 不静定次数 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 単純梁(ピン+ローラー) | 2+1=3 | 0 | 静定 |
| 片持ち梁(固定支点) | 3 | 0 | 静定 |
| 両端固定梁 | 3+3=6 | 3 | 3次不静定 |
| 連続梁(3支点、両端ピン+中央ローラー) | 2+1+1=4 | 1 | 1次不静定 |
| 門型ラーメン(柱脚2固定) | 6 | 3 | 3次不静定 |
| 多層ラーメン(10階×3スパン) | 4×6+多数 | 数十次 | 高次不静定 |
実際の建築物(多層ラーメン構造)は、不静定次数が数十〜数百になります。手計算で解けるレベルではなく、マトリクス法(コンピュータ計算)が必須になる理由ですね。
マトリクス法・たわみ角法・固定モーメント法の話はこちらをどうぞ。


静定構造と不静定構造の違い
設計面での違いも整理しておきます。
| 項目 | 静定構造 | 不静定構造 |
|---|---|---|
| 解き方 | 3つの釣り合い式だけで解ける | 釣り合い式+変形条件が必要 |
| 計算難易度 | 易しい(手計算で解ける) | 難しい(連立方程式・反復計算) |
| 応力分布 | 部材長や剛度に依存しない | 部材の剛度比で応力が変わる |
| 温度応力 | 発生しない(変形を吸収する) | 発生する(拘束による熱応力) |
| 冗長性(フェイルセーフ) | 低い(一部材壊れたら崩壊) | 高い(応力の再配分が起きる) |
| 代表例 | 単純梁、片持ち梁、トラス | 連続梁、両端固定梁、ラーメン構造 |
| 学習段階での扱い | 構造力学の入り口 | 構造力学の中盤以降 |
応力分布が剛度に依存するかどうか
静定構造では、部材の剛度(EI)に関係なく応力が決まります。スパンと荷重で応力が一意に決まるんですね。
一方、不静定構造では剛度の大きい部材ほど応力を多く負担する性質がある。これが「剛度比が応力分布を支配する」と言われる所以で、たわみ角法や固定モーメント法の核心部分です。
温度応力が発生するかしないか
これが意外と実務に効いてきます。静定構造は温度変化で部材が伸び縮みしても、変形を吸収できるから応力は発生しない。橋梁の片側にローラー支点を設けるのは、まさにこのため。
不静定構造は両端を拘束されているので、伸びたくても伸びられず、内部応力(温度応力)が発生します。マスコンクリートのひび割れや、コンクリートと鉄骨の取り合い部の応力なども、この発想で考える話。
マスコンクリートの話はこちらで触れています。

冗長性(フェイルセーフ性)の違い
これは現代建築で重視されるポイント。不静定構造は、一部材が損傷しても応力が他の部材に再配分されて、いきなり崩壊しない性質があります。地震や火災で部材が一部損傷したとき、不静定構造のほうが粘り強く持ちこたえる、ということ。
逆に静定構造は冗長性がないので、1ヶ所が壊れたら全体が崩壊する。トラス構造を見ると分かりやすいですが、1本の部材を抜くと一気に不安定になりますよね。
静定構造の代表例
代表的な静定構造を見ておきましょう。
単純梁(たんじゅんばり)
両端をピンとローラーで支持した、最も基本的な梁。反力は3つ(H、VA、VB)で、釣り合い式3本で解ける。木造住宅の床梁・小梁の多くは静定的に扱える単純梁。
片持ち梁(かたもちばり)
一端を固定支点で支え、他端を自由端にした梁。反力は3つ(HA、VA、MA)で、これも静定。バルコニー、看板、軒の出(庇)などが該当。
トラス(静定トラス)
部材の各節点をピン接合とみなして組まれた構造。支点反力+部材軸力を釣り合い式から求める。屋根組や橋梁トラスの基本形は静定構造になる場合が多い。
トラスの詳細はこちら。

3ヒンジラーメン
ラーメン構造の中央にもう1つヒンジを入れて、未知数を3つに収めた特殊な形式。橋梁などで使われる、静定で扱える数少ないラーメンタイプです。
不静定構造の代表例
実際の建物のほとんどが、こちらのカテゴリに入ります。
両端固定梁
両端の柱に剛接合された梁。反力は6つ(両端でH、V、Mが3つずつ)あるので3次不静定。RC造ラーメンの梁はほぼこの形。
連続梁
3支点以上で支えられた一本通しの梁。中間支点があるたびに不静定次数が増える。マンション住戸の床スラブの梁などが連続梁として設計される。
門型ラーメン
両端の柱脚が固定支点の門型。反力は6つで3次不静定。鉄骨造工場・倉庫の典型的な形式。
多層多スパンラーメン
中高層建築のメイン構造形式。不静定次数が数十〜数百になり、コンピュータ計算が必須。RC造・S造・SRC造のオフィスビルやマンションなどが該当。
耐震壁付きラーメン
ラーメンに耐震壁を加えた構造。耐震壁は剛性が極端に高いので、地震力の大半を耐震壁が負担する応力分配になります。これも不静定構造。
設計上どちらが好まれるか
「どちらが優れているか」と聞かれると、設計上は不静定構造が圧倒的に好まれます。
不静定構造が好まれる理由
- 冗長性が高い(フェイルセーフ):1ヶ所が損傷しても応力が再配分される
- 剛性が高い:たわみが小さく、使用感が良い
- 部材を細くできる:応力が分散するので断面が小さくて済む
- 地震に強い:塑性ヒンジを複数の場所に配置することで、エネルギー吸収量を稼げる
静定構造が選ばれる場面
- 意匠的にすっきり見せたい:不要な部材を排除した3ヒンジアーチや単純梁構造
- 温度変形を許容したい:長大橋梁の片側ローラー支点
- 基礎の不同沈下が予想される:単純梁化することで応力発生を抑える
- 計算をシンプルにしたい:解析に時間をかけたくない仮設構造など
実務的な感覚
僕が現場で見てきた限り、鉄骨造の倉庫や工場は3次不静定の門型ラーメン、RC造のオフィスやマンションは数十次以上の高次不静定ラーメン、というのが基本パターン。鉄骨造の柱脚がピン柱脚(露出型)か固定柱脚(埋め込み・根巻き)かで、不静定次数が変わってきます。柱脚条件で建物の挙動が変わるのは、まさに静定/不静定の違いを実物で見ているのと同じこと。
柱脚関連の話はこちら。

施工管理として静定/不静定をどう意識するか
施工管理の立場では、「この構造は何次不静定か」を直接計算することはほぼないですが、現場での判断に関わる場面があります。
仮設構造の安定性チェック
足場や仮設架構を設計するとき、「ブレースを抜くと崩壊するか」は静定/不静定の感覚で判断できます。3次不静定の足場ならブレース1本抜いても安定(一時的に2次不静定)、静定の足場ならブレース1本抜いた瞬間に崩壊、というイメージ。
鉄骨建方の安全管理
鉄骨建方の途中段階では、構造体が「最終的な不静定構造になる前の不安定な状態」を経由します。柱が立った直後・梁が架かる前・ブレースが付く前など、仮の支保(仮ブレース)を計算で入れているからこそ、その瞬間に不安定にならない。建方計画書の中身をしっかり読み込むと、こうした静定/不静定の話が随所に出てきます。
コンクリートのひび割れと拘束
不静定構造のコンクリートは温度収縮や乾燥収縮で内部応力が発生し、ひび割れの原因になります。「逃げ場のない構造」だからこそ収縮ひび割れが入るわけで、静定的に動ける範囲を確保する誘発目地なども、この発想から来ています。
増改築時の構造変更
既存建物に開口を開けたり梁を抜いたりする工事では、不静定次数が変わることになります。これにより応力分布が変わるので、構造設計者の事前検討が必須。施工管理として「この梁を抜くと建物の不静定度が下がる」と意識できると、構造的なリスクを察知できます。
静定/不静定に関する情報まとめ
- 静定構造とは:3つの釣り合い式だけで解ける構造
- 不静定構造とは:釣り合い式+変形条件で解く構造
- 判別方法:不静定次数 = 反力数+部材数×3−節点数×3−ヒンジ数(簡略式:反力数−3)
- 静定の代表例:単純梁、片持ち梁、静定トラス、3ヒンジラーメン
- 不静定の代表例:両端固定梁、連続梁、門型ラーメン、多層ラーメン、耐震壁付きラーメン
- 応力分布:静定は剛度無関係、不静定は剛度比で決まる
- 温度応力:静定は発生しない、不静定は発生する
- 冗長性:静定は低い、不静定は高い(フェイルセーフ)
- 設計上:不静定が好まれる(強度・冗長性・地震性能)
- 現場での意味:仮設の安定性、建方の不安定状態、ひび割れの原因、増改築時の応力変化など
以上が静定構造と不静定構造に関する情報のまとめです。
静定/不静定の違いは「力で解けるか、変形まで考えるか」という単純な区別ですが、実物の建築構造はほぼ全部不静定で、しかも数十次以上の高次不静定。手計算で解けないからこそコンピュータ解析が当たり前で、現代の構造設計者が知っておくべき発想がここに詰まっているわけですね。施工管理として「この構造は何次不静定か」と聞かれて即答できる人はほぼいませんが、概念だけでも持っておくと、構造設計者との会話の解像度が上がります。
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