- 三角形分布荷重ってなに?
- 等分布荷重とどう違うの?
- 合力の位置(作用点)はどこ?
- 反力・モーメントはどう計算する?
- 現場のどこに出てくるの?
- 公式が思い出せない
上記の様な悩みを解決します。
「三角形分布荷重」は、構造力学の教科書では水圧や土圧の例で必ず出てくるのに、現場で「これが三角形分布の話だな」とピンと来る人は意外と少ないです。深さに応じて荷重が大きくなる現象は、擁壁・水槽・山留め・水中構造物のすべてに出てくる超頻出パターン。等分布(=屋根の雪・床の積載)と何が違うのか、合力をどこに置くのか、反力とモーメントはどう変わるのかを、現場の実例と一緒に整理します。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
三角形分布荷重とは?
三角形分布荷重とは、結論「位置によって直線的に大きさが変わる(=三角形の形をした)分布荷重」のことです。
英語では triangular distributed load。記号は w(x) で、xに対して1次式で変化する荷重(線荷重なら N/m、面荷重なら N/m²)。
ざっくりイメージすると
水を満たしたコップの側面を想像してください。
- 水面付近(上端):水圧ほぼ0
- 底面付近(下端):水圧最大
- 上から下に向かって深さに比例して直線的に増加
→ この「深さ0〜hで直線的に大きくなる」分布が三角形分布荷重。グラフに描くと右下がりの直角三角形になります。
等分布荷重との違いを並べる
| 項目 | 等分布荷重 | 三角形分布荷重 |
|---|---|---|
| 大きさ | 全長で一定(w=const) | 直線的に変化 (0 → wmax) |
| 形状 | 長方形 | 三角形(または直角三角形) |
| 合力(全荷重) | W = w×L | W = (1/2)×wmax×L |
| 合力の位置 | 中央(L/2) | 大きい方から1/3の位置 |
| 代表的な現場 | 床荷重・屋根荷重 | 水圧・土圧・山留め背面圧 |
→ ポイントは2つ。①合力は半分(三角形の面積=底辺×高さ÷2)、②合力の位置は中央ではなく重心位置(底辺から1/3)。この2つを押さえれば計算で迷わない。
なぜ建築で三角形分布が重要か
土木・建築の構造物のうち、深さや高さに比例して圧力が増える要素はすべて三角形分布として扱います。
- 擁壁・地下外壁:背面の土圧(主働土圧)
- 水槽・プール:側板の水圧
- 山留め壁:掘削深さに応じた背面土圧
- 水中構造物:水深方向の水圧
- 地盤の支持力分布(浅い基礎の解析)
→ つまり「重力下で液体・土を相手にする構造物は全部三角形分布」。等分布荷重しか習わない学生は、現場で「なぜ等分布にしないのか」と戸惑うことが多い。
土圧についてはこちらの記事も参考にしてください。

なぜ水圧・土圧は三角形分布になるのか
これは液体・土の性質に由来する基本原理。難しい話ではないです。
①水圧の場合:深さ×単位重量で直線増加
水圧の式は中学物理の範囲で説明できます。
水圧 P = ρ × g × h
= γw × h (γw=水の単位体積重量=9.8 kN/m³)
- 深さh=0 → P=0
- 深さh=1m → P=9.8 kN/m²
- 深さh=2m → P=19.6 kN/m²
- 深さh=10m → P=98 kN/m²
→ 深さに完全に比例するため、グラフは原点を通る直線=三角形分布。水深10mのプール側板にかかる水圧の合力は98×10/2=490 kN/m(幅1mあたり)。
②土圧の場合:水圧と似た形(係数Kがかかる)
土圧は土の自重で発生し、水圧の式と似た構造を取ります。
主働土圧 Pa = Ka × γ × h (Ka=主働土圧係数、γ=土の単位体積重量)
- 砂質土:γ≈18 kN/m³、Ka≈0.33 → 深さh=5mでPa≈30 kN/m²
- 粘性土:γ≈17 kN/m³、Ka≈0.5 → 深さh=5mでPa≈42 kN/m²
→ 水圧と同じく深さhに比例するので三角形分布。係数Kaが掛かるだけで形は同じ。
③等分布荷重と混在するケース
実務では三角形分布だけで終わらず、等分布+三角形の組合せが多いです。
- 擁壁:背面に上載荷重(等分布)+土圧(三角形分布)が同時に作用
- 山留め:地表の積載荷重(等分布)+土圧(三角形分布)
- 地下水位以下:有効土圧(三角形)+水圧(三角形)+水位以浅の土圧(三角形)
→ こうなるとそれぞれの分布を分解して合力ごとに足し合わせる(重ね合わせの原理)のが王道。等分布と三角形を別々に計算してから合算します。
水圧試験はこちらの記事も参考にしてください。

三角形分布荷重の合力と作用点
計算で一番大事なのが「合力の大きさ」と「作用点」です。これを押さえれば、あとは普通の集中荷重として扱える。
①合力(全荷重)の計算
三角形の面積=底辺×高さ÷2、と同じ計算。
分布が長さL、最大値wmaxの直角三角形のとき:
全荷重 W = (1/2) × wmax × L
例:水深3mの水槽側板(幅1mあたり)
– wmax = γw × h = 9.8 × 3 = 29.4 kN/m²
– L = 3m
– W = 0.5 × 29.4 × 3 = 44.1 kN/m
②作用点(合力の位置)
三角形の重心の位置にあります。直角三角形の重心は、底辺から高さの1/3、頂点から高さの2/3の位置。
分布の最大側からL/3、最小側から2L/3の位置に合力が作用
→ 例:深さ3mの水圧分布で、水面下0mが最小、3mが最大。合力の作用位置は底面から1m上(=最大側から1/3=1m)。
③等分布との違いを並べる
| 項目 | 等分布(L、w) | 三角形分布(L、wmax) |
|---|---|---|
| 合力 W | wL | wmaxL/2 |
| 作用位置 | 中央(L/2) | 大きい側から1/3 |
| 全体重さ感 | フル | 半分 |
| 偏り | なし | 大きい側に寄っている |
→ 「合力は半分、位置は1/3」と暗記してしまうと早い。三角形は等分布の半分だけど、力が片寄っているので端部のモーメントは思ったより大きくなる、というのが特徴。
④斜めの三角形(逆三角形)の場合
逆向きに増える(上端で大きい)分布の場合も計算は同じ。重心の位置だけ「大きい側から1/3」がどちらかを間違えないように注意。
- 擁壁の主働土圧:下に行くほど大きい(=底からL/3上)
- 風圧の高さ依存:上に行くほど大きい(=上からL/3下)
→ 「大きい側に1/3寄った点」と覚える。
支点反力の求め方はこちらの記事も参考にしてください。

反力・モーメント・たわみの代表公式
合力と作用点が分かれば、反力・モーメント・たわみは普通の集中荷重として計算可能。代表ケースを並べます。
①片持ち梁・三角形分布(固定端で大きい)
擁壁・煙突・看板・山留め壁などの代表モデル。固定端が下(または背面)、自由端が上のイメージ。
全荷重 W = wmaxL/2
固定端で:
反力Va = W = wmaxL/2
モーメントMa = W × (2L/3) = wmaxL²/3
→ ポイントは「合力が最大側から1/3=固定端から2L/3」の位置にあること。固定端からの距離が長いので、固定端モーメントは大きく出ます。
②片持ち梁・三角形分布(固定端で小さい)
逆向きの三角形(自由端が大きい)場合。風圧・建物上部の偏荷重などで出てくる。
合力位置:固定端からL/3
固定端で:
モーメントMa = W × (L/3) = wmaxL²/6
→ 同じ三角形分布でも向きが逆だと固定端モーメントは半分。「負担側が遠いと厳しい」というのが基本ルール。
③単純梁・三角形分布
両端単純支持で全長に三角形分布が乗る(片端が大きい)場合。
A ━━━━━━━━━━━━━━━━ B
↘ 分布(B側で最大)
↑ ↑
Ra=wmaxL/6 Rb=wmaxL/3
最大M:Mmax ≈ 0.064 × wmaxL²(中央付近)
→ 反力は「大きい側を多く負担」(比2:1)。最大Mの位置は中央ではなく、大きい側に寄ったところ(L≈0.577から)。
④擁壁の代表計算例
実務でよく出る擁壁の検討。高さ3m、背面砂質土(γ=18 kN/m³、Ka=0.33)、幅1mあたり。
- wmax(底面の土圧) = Ka × γ × h = 0.33 × 18 × 3 = 17.8 kN/m²
- 合力 W = wmaxL/2 = 17.8 × 3 / 2 = 26.7 kN/m
- 作用位置 = 底面から3/3 = 1m
- 底面で受けるモーメント = 26.7 × 1 = 26.7 kN·m/m
→ この値が転倒モーメント。これに重力(自重)による安定モーメントを比較して安全率を出すのが擁壁設計の基本。
L型擁壁(RC擁壁)についてはこちらの記事も参考にしてください。

施工管理での着眼点(現場視点)
ここからは現場で三角形分布荷重を意識すべき場面の話。
①擁壁・地下外壁の打設順序と仮支保
擁壁の型枠に三角形分布の土圧がかかると考えると、型枠の支保工(サポート・パイプ)の本数や位置が見えてきます。
- 高さ3mの擁壁打設:バイブレータで詰めるとさらに液状化して圧力UP
- 圧力分布:底面が最大、上端ほぼゼロ
- だからサポートは下方ほど密に入れる必要がある(等間隔ではない)
→ 「型枠崩壊した」という事故は、等間隔のサポート配置で下部の圧力に負けるパターンが多い。三角形分布の意識があると、計画段階で配置を変えられる。
②水槽の側板補強
ステンレスタンクや消火水槽の側板も三角形分布で押される。
- 水深に応じた補強リブの配置:下部ほど密
- 縦リブ・横リブの組合せで圧力を分散
- 板厚を均一にせず下部だけ厚くする設計もあり
→ メーカー製の水槽でも、現場での据付前に「リブの間隔が均等か、下部が密か」を見るとそのメーカーの設計思想が読めます。
③山留め壁の腹起し配置
山留め(SMW、シートパイル等)も背面の土圧が三角形分布。
- 腹起し(横材):掘削深さに応じて段数を増やす
- 上の段は軽負担、下の段ほど重負担
- 切梁(支保材)も下に行くほど大きく
→ 山留め計画書で「なぜ切梁が下方ほどH鋼サイズが大きいか」を聞かれたとき、「三角形分布だから」と答えられる。
山留め(SMW工法)はこちらの記事も参考にしてください。

④建物の風圧との対比
建物に作用する風荷重は高さに対して三角形に近い分布(正確には対数的だが教科書では三角形扱い)。
- 高層建物:上層階の風圧が大きい
- 低層建物:全高ほぼ等分布扱いでもOK
→ 高層になるほど三角形分布の影響が支配的になり、最上階の柱・梁の風荷重設計が厳しくなる。
風圧力についてはこちらの記事も参考にしてください。

三角形分布荷重に関する情報まとめ
最後に、三角形分布荷重の重要ポイントを整理します。
- 定義:位置に対して直線的に大きさが変化する分布荷重(線形変化)
- 代表例:水圧・土圧・山留め背面圧・風荷重
- 合力:W = (1/2)×wmax×L(等分布の半分)
- 作用点:大きい側から1/3、小さい側から2/3の位置(=三角形の重心)
- 片持ち梁の固定端M:固定端で最大の三角形なら wmaxL²/3、自由端で最大なら wmaxL²/6
- 単純梁の反力比:大きい側が小さい側の2倍を負担
- 施工管理視点:擁壁支保配置・水槽補強・山留め切梁配置・高層建物の風荷重ぜんぶ三角形分布
以上が三角形分布荷重に関する情報のまとめです。
三角形分布荷重は「等分布の半分の合力だけど、偏っているから端部に厳しい」という二面性のある荷重。水・土を相手にする構造物は基本これで考えるので、現場で擁壁・水槽・山留めを見たら「下が大きい三角形分布」のイメージが瞬時に湧くようにしておくと、サポート配置や補強位置の意図がスッと読めるようになりますよ。一通り三角形分布荷重の基礎知識は理解できたと思います。
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