- RC擁壁って、普通の擁壁と何が違うの?
- L型と逆T型、どっちを選べばいい?
- 重力式とRC擁壁、どっちがいいの?
- 配筋やかぶり厚さってどうなってる?
- 施工手順を一通り知りたい
- 水抜き穴は何個・どこに必要?
- 高さ何mから確認申請がいるの?
- 施工や検査で失敗しやすいポイントは?
上記の様な悩みを解決します。
RC擁壁は、宅地造成や外構で土留めをするときの主役と言える擁壁です。重力式に比べて壁を薄くでき、土地を有効に使えるのが強みですが、そのぶん配筋・水抜き・法基準まで正しく押さえないと、傾きや崩壊のリスクを抱えることになります。今回は、RC擁壁の種類とL型・逆T型の選び方、配筋やかぶり厚さ、施工手順、水抜き処理、高さに応じた確認申請まで、設計と施工の両面から現場目線で整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
RC擁壁とは?
RC擁壁とは、結論「鉄筋とコンクリートを組み合わせて造る、鉄筋コンクリート造の土留め擁壁」のことです。RCはReinforced Concrete(鉄筋コンクリート)の略になります。
擁壁は、高低差のある土地で土が崩れるのを防ぐための壁です。そのうちRC擁壁は、コンクリートの中に鉄筋を組み込むことで、土が壁を押す力(土圧)に対して、壁の引張側を鉄筋で、圧縮側をコンクリートで負担する仕組みになっています。コンクリートだけの塊で支える重力式擁壁とは、力の支え方が根本的に違います。
土圧の基本的な考え方は、こちらが参考になります。

RC擁壁には、現場で型枠を組んで打設する「現場打ち擁壁」と、工場で製作したものを据え付ける「プレキャスト(PC)擁壁」の2種類があります。現場打ちは形状の自由度が高く高い擁壁に対応しやすい一方、プレキャストは品質が安定し工期が短いのが特徴です。土留めと擁壁の関係を整理したい場合は、こちらもどうぞ。

僕の感覚だと、RC擁壁は「鉄筋で土圧に踏ん張る薄い壁」と捉えると、重力式との違いがスッと入ります。重力式が自分の重さで踏ん張るのに対して、RCは鉄筋の力で踏ん張る。この発想の違いが、種類や配筋の理解の土台になります。
RC擁壁の種類
RC擁壁は、断面の形状によっていくつかの種類に分かれます。代表的なのは次の5タイプです。
- L型擁壁:たて壁の片側だけに底版が出たL字形。境界ぎりぎりまで土地を使える
- 逆T型擁壁:たて壁の前後に底版が出たT字を逆さにした形。安定性が高い
- 逆L型擁壁:底版が背面側だけに出た形。前面に余裕がない場合に使う
- 控え壁式擁壁:たて壁の背面に控え壁(リブ)を付けた形。高い擁壁向き
- 重力式擁壁:コンクリートの自重で支える形(無筋が基本だが低い擁壁向け)
L型・逆T型・逆L型は、いずれも「片持ちばり式擁壁」と呼ばれるグループです。底版から立ち上がったたて壁を、片持ち梁のように根元で支える構造で、たて壁の位置によって名前が変わります。片持ち梁の挙動はこちらが参考になります。

高さが高くなると、たて壁にかかる土圧が大きくなり、片持ちばり式だけでは断面が持たなくなります。そこで、たて壁の背面に控え壁を一定間隔で立てて補強したのが控え壁式擁壁です。控え壁が梁の役割を果たし、たて壁の曲げを分担してくれます。
重力式擁壁との使い分けは、こちらで詳しく解説しています。

僕の整理では、低い擁壁は重力式、標準的な高さはL型・逆T型、高い擁壁は控え壁式、という高さ軸での住み分けを頭に入れておくと、種類選定の見通しが一気に良くなります。
L型と逆T型の違いと選び方
RC擁壁で一番選択に迷うのが、L型と逆T型のどちらにするかです。両者の違いを下表で比べます。
| 項目 | L型擁壁 | 逆T型擁壁 |
|---|---|---|
| 底版の出方 | たて壁の片側(主に背面側)だけ | たて壁の前後両側 |
| 土地の使いやすさ | 境界ぎりぎりまで使える | 前面に底版が出るぶん不利 |
| 安定性 | 逆T型よりやや劣る | 底版が広く安定性が高い |
| 向いている場面 | 敷地境界が迫る宅地・狭小地 | 敷地に余裕がある・高めの擁壁 |
L型擁壁の最大の利点は、土地を有効活用できることです。底版がたて壁の片側だけに出るので、もう片側を敷地境界ぎりぎりまで寄せられます。宅地造成で「敷地を1cmでも広く使いたい」という場面では、L型が選ばれやすくなります。
一方の逆T型は、たて壁の前後に底版が広がるぶん、底版にかかる土の重さ(載荷重)で擁壁が安定しやすいのが強みです。背面側の底版に乗った土の重量が、擁壁の転倒や滑動を抑える「抵抗」として働きます。そのぶん前面に底版が出るので、前面に道路や隣地が迫る場所では使いにくくなります。
選び方の基本軸はこの3つです。
- 敷地境界が迫る・前面に余裕がない → L型
- 敷地に余裕がある・安定性を優先したい → 逆T型
- 背面側に底版を出せない → 逆L型
実務だと、宅地造成では「いかに敷地を広く取るか」が施主の最大関心事なので、L型が選ばれる場面が多い印象です。ただし、高さや地盤条件によっては逆T型でないと安定計算が成立しないこともあるので、最終的には構造計算と敷地条件の両にらみで決まります。
RC擁壁の配筋
RC擁壁の性能を左右するのが配筋です。鉄筋は、土圧でたて壁が曲げられるときに引張側へ配置し、コンクリートの弱点である引張力を負担させます。配筋の基本知識はこちらが参考になります。

RC擁壁の配筋で特に重要なのが、かぶり厚さ(鉄筋を覆うコンクリートの厚み)です。擁壁は常に土や水に接するため、一般の建築部材よりかぶりが大きく定められています。技術基準で示される目安をまとめました。
| 部位 | かぶり厚さの目安 |
|---|---|
| 土に接する部分 | 6cm以上(捨てコンクリート部分を除く) |
| その他の部分 | 4cm以上 |
かぶりが不足すると、鉄筋まで水や空気が届いて錆び、コンクリートを内側から押し割る「爆裂」につながります。土と水にさらされ続ける擁壁では、このかぶり確保が耐久性の生命線です。かぶり厚さの考え方はこちらが詳しいです。

鉄筋量(本数・径・ピッチ)は、感覚で決めるものではなく、擁壁の高さと土圧から構造計算で決定します。使う鉄筋もJIS G 3112に適合した異形鉄筋が原則です。たて壁は下に行くほど土圧が大きくなるので、根元側の鉄筋を密に、上端側を疎に配置するのが基本の考え方になります。
僕の考えでは、RC擁壁の配筋は「引張側はどこか」を意識できるかどうかで理解が変わります。たて壁は背面の土に押されて前へ倒れようとするので、引張が出るのは背面側。だから主筋は背面側に入る、という力の流れをつかむと、配筋図が読めるようになります。
RC擁壁の施工手順
RC擁壁(現場打ち)の施工は、基礎から順に積み上げていく流れになります。標準的な手順は、おおよそ次の流れです。
- 床掘り(根切り):擁壁の基礎を入れる深さまで地盤を掘削する
- 基礎砕石・転圧:底版の支持地盤を砕石で締め固める
- 捨てコンクリート:墨出しの基準と作業床のために薄く打設する
- 墨出し:底版・たて壁の位置を捨てコン上に出す
- 底版の配筋:底版(基礎)の鉄筋を組み立てる
- 底版の型枠・打設:底版コンクリートを打設する
- たて壁の配筋:底版から立ち上がる主筋を組む
- たて壁の型枠建て込み・打設:たて壁を打設する
- 養生・脱型:所定の強度が出るまで養生し型枠を外す
- 裏込め・水抜き・埋戻し:背面に透水層を入れ、水抜きを設けて埋め戻す
ポイントは、底版とたて壁を別々に打設するため、打ち継ぎ目(コンクリートの継ぎ目)が生じることです。この打ち継ぎ部はせん断力に対する弱点になりやすいので、底版から差し筋を立ち上げて一体性を確保し、打ち継ぎ面のレイタンス(脆弱層)を除去してから次を打設します。
捨てコンクリートの役割や規格は、こちらが参考になります。

現場目線で言えば、擁壁施工は「基礎と地盤が9割」です。支持地盤の転圧が甘いと、いくら上を丁寧に作っても不同沈下で傾きます。床掘り後の地盤確認と砕石転圧に手を抜かないことが、結局いちばん効きます。
RC擁壁の水抜き穴と排水処理
RC擁壁で配筋と並んで大事なのが、背面の排水処理です。理由は明確で、擁壁が崩れる原因の多くが「背面に溜まった水の圧力(水圧)」だからです。
擁壁の背面に地下水や雨水が溜まると、土圧に加えて水圧が壁にかかり、設計で想定した以上の力が作用します。これを防ぐために、水を背面から前面へ逃がす水抜き穴と、水を集める透水層(裏込め)を設けます。
水抜き穴の設置基準(技術基準の目安)はこうなっています。
- 壁面の面積3㎡以内ごとに1個以上設ける
- 内径75mm以上の塩化ビニル管などの耐水材料を使う
- 擁壁の下部表面近くや湧水箇所に重点的に配置する
- 排水方向に適当な勾配をとる
- 配置は千鳥(互い違い)にする
水抜き穴だけでなく、背面に砕石などの透水層(裏込め材)を入れて、水を水抜き穴へ導くのがセットの考え方です。透水層がないと、水抜き穴の手前で土が詰まって水が抜けず、せっかくの穴が機能しません。
正直なところ、水抜きは見た目が地味で軽視されがちですが、擁壁の寿命を決める最重要ポイントです。水圧を逃がせない擁壁は、設計が正しくても背面水圧でひび割れ・傾き・崩壊に至ります。水抜きと裏込めはワンセット、と覚えておくのが鉄則です。
RC擁壁に関わる法基準
RC擁壁は、高さによって法的な手続きが変わります。ここを押さえておかないと、無確認で造って是正指導を受けるリスクがあります。主な法基準を整理します。
高さ2mを超える擁壁は確認申請が必要
高さが2mを超える擁壁は、建築基準法上の「工作物」に該当し、工作物の確認申請が必要になります。申請にあたっては、構造計算による安全性の確認(転倒・滑動・支持力に対する検討)が求められます。逆に、高さ2m以下なら工作物確認は不要ですが、安全に造る責任がなくなるわけではありません。
盛土規制法(旧・宅地造成等規制法)
宅地造成にともなう擁壁は、盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)の規制対象になる場合があります。これは従来の宅地造成等規制法が改正・改称されたもので、規制区域内で一定規模の盛土・切土・擁壁を行う際には許可が必要です。区域や規模の基準は自治体ごとに運用されるため、計画段階で所管部署への確認が欠かせません。
構造の技術的基準
擁壁の高さ、配筋、かぶり、水抜きなどは、各自治体の擁壁構造の技術基準に細かく定められています。前述のかぶり6cm・水抜き3㎡ごとといった数値も、こうした技術基準に基づくものです。RC擁壁は原則として高さ5m以下とする自治体が多く、それを超える場合は特別な検討が必要になります。
法基準のポイントはこの3点に集約されます。
- 高さ2m超:建築基準法の工作物確認申請が必要(構造計算が前提)
- 宅地造成:盛土規制法の許可が必要な区域・規模がある
- 構造基準:自治体の技術基準(高さ・配筋・かぶり・水抜き)に従う
僕の整理では、まず「高さ2mを超えるかどうか」を最初のスイッチとして確認するのが実務的です。2mを境に手続きが大きく変わるので、計画の入口でここを押さえると、後の段取りが組みやすくなります。
RC擁壁の注意点
最後に、RC擁壁の設計・施工で押さえておきたい注意点を、現場でつまずきやすい順に整理します。
- 支持地盤の確認:軟弱地盤では不同沈下で傾く。地盤改良の要否を見極める
- 背面排水の徹底:水抜き・裏込めの不備が崩壊原因のトップ
- かぶり・打ち継ぎの管理:かぶり不足と打ち継ぎ処理の甘さが耐久性を落とす
- 既存擁壁の扱い:古い擁壁の上に増し積みするのは危険、原則やり替え
- 検査ポイントの把握:配筋検査でかぶり・本数・ピッチを確認する
特に多いトラブルが、地盤と排水に起因する傾き・崩壊です。擁壁そのものの配筋が正しくても、支持地盤が軟弱だったり、背面排水が機能していなかったりすると、数年後に傾き始めます。地盤の状態は、こちらも参考になります。

もうひとつ注意したいのが、既存の古い擁壁の扱いです。練積みなどの古い擁壁の上に新しい擁壁を積み増す「二段擁壁」や増し積みは、構造的に成立していないケースが多く、原則は安全な擁壁へのやり替えが必要です。見た目で判断せず、構造の連続性を確認することが大事です。
施工後は配筋検査が品質確保の要になります。かぶり厚さ・鉄筋径・本数・ピッチが図面どおりか、打設前に必ず確認します。配筋検査の進め方はこちらが参考になります。

僕としては、RC擁壁は「造ってしまえば中が見えない構造物」だからこそ、配筋検査と排水処理の段階での確認が命だと考えています。コンクリートを打ってしまえばやり直しは効きません。見えなくなる前のチェックに時間をかけるのが、結果的にいちばん安いリスク対策になります。
RC擁壁に関する情報まとめ
- RC擁壁とは:鉄筋コンクリート造の土留め擁壁。鉄筋で土圧の引張を負担する
- 種類:L型・逆T型・逆L型(片持ちばり式)、控え壁式、重力式。高さで使い分ける
- L型と逆T型:L型は土地を有効活用、逆T型は底版が広く安定性が高い
- 配筋:かぶりは土に接する部分6cm以上・その他4cm以上、鉄筋量は構造計算で決定
- 施工手順:床掘り→砕石→捨てコン→底版配筋・打設→たて壁配筋・打設→裏込め・埋戻し
- 水抜き:壁面3㎡ごとに内径75mm以上を1個、千鳥配置、裏込め(透水層)とセット
- 法基準:高さ2m超で工作物確認申請、宅地造成は盛土規制法、自治体の技術基準に従う
- 注意点:支持地盤・背面排水・かぶり・打ち継ぎ・既存擁壁の扱い・配筋検査
以上がRC擁壁に関する情報のまとめです。
RC擁壁は、種類の選定・配筋・施工・排水・法基準のどれを欠いても、傾きや崩壊につながる構造物です。L型と逆T型を敷地条件で選び、かぶりと水抜きを基準どおりに確保し、高さ2mを境に手続きを確認する。この流れを押さえておけば、設計でも施工でも大きく外しません。一通り基礎知識は理解できたと思います。見えなくなる前の確認を徹底することが、長持ちする擁壁づくりの近道です。
RC擁壁に関するよくある質問
Q1:RC擁壁と重力式擁壁はどちらを選べばいいですか?
高さと敷地条件で選びます。低い擁壁(おおむね2m程度まで)なら、コンクリートの自重で支える重力式がシンプルで経済的です。それ以上の高さや、敷地を有効に使いたい場合は、壁を薄くできるRC擁壁が向いています。RC擁壁は鉄筋で土圧に抵抗するため、重力式より断面を小さくでき、土地を広く使えるのが利点です。ただし配筋や型枠の手間でコストはやや高くなります。
Q2:L型と逆T型擁壁の違いは何ですか?
底版の出方が違います。L型はたて壁の片側だけに底版が出るL字形で、もう片側を敷地境界ぎりぎりまで寄せられるため土地を有効活用できます。逆T型はたて壁の前後に底版が出る形で、背面側の底版に乗る土の重量が抵抗となり安定性が高くなります。敷地境界が迫る宅地ではL型、敷地に余裕があり安定性を優先したい場合は逆T型が選ばれやすいです。
Q3:RC擁壁のかぶり厚さはどれくらい必要ですか?
擁壁は土や水に常に接するため、一般部材よりかぶりが大きく定められています。技術基準の目安では、土に接する部分は捨てコンクリートを除いて6cm以上、その他の部分は4cm以上です。かぶりが不足すると鉄筋が錆びてコンクリートを内側から押し割る爆裂につながり、擁壁の耐久性を大きく損ないます。配筋検査でかぶりを必ず確認します。
Q4:擁壁の水抜き穴は何個必要ですか?
技術基準の目安では、壁面の面積3㎡以内ごとに少なくとも1個、内径75mm以上の塩化ビニル管などの耐水材料で設けます。配置は千鳥(互い違い)にし、擁壁下部や湧水箇所に重点的に置き、排水方向に勾配をとります。水抜き穴だけでなく、背面に砕石などの透水層(裏込め)を入れて水を穴へ導くのがセットで、これがないと水が抜けず背面水圧で擁壁が崩れる原因になります。
Q5:RC擁壁は高さ何mから確認申請が必要ですか?
高さが2mを超える擁壁は、建築基準法上の工作物として確認申請が必要になり、構造計算による安全性の確認が求められます。さらに宅地造成にともなう擁壁は、盛土規制法(旧・宅地造成等規制法)の許可が必要な区域・規模に該当する場合があります。区域や基準は自治体ごとに運用されるので、計画段階で所管部署に確認するのが確実です。
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