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マトリクス法とは?基本、剛性マトリクス、構造解析での使い方など

  • マトリクス法って何をしてる手法?
  • 剛性マトリクスってどう作るの?
  • たわみ角法と何が違う?
  • 有限要素法(FEM)と同じもの?
  • なぜ実務ソフトがこれを使ってるの?
  • 施工管理として知っておく価値はある?

上記の様な悩みを解決します。

マトリクス法は、現代の構造解析ソフトが内部で実行している計算手法そのもので、別名直接剛性法剛性マトリクス法とも呼ばれます。手計算の世界から離れて、行列で一気に解く方式に切り替えたのが大きな転換点ですね。施工管理として「ソフトの結果を妥当か判断する目」を養うためにも、概念を押さえておきたい手法です。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

マトリクス法とは?

マトリクス法とは、結論「構造の節点の変形と荷重を行列(マトリクス)でつなげて、一気に解く構造解析の手法」のことです。

正式には直接剛性法(Direct Stiffness Method)と呼ばれ、構造物全体を1つの大きな剛性マトリクスにまとめて、

【荷重ベクトル】=【全体剛性マトリクス】×【変位ベクトル】

という連立方程式を解くアプローチ。

イメージで言うと、たわみ角法を行列形式で書き直して、節点の自由度(並進・回転)をすべてまとめた巨大な連立方程式に整理する、という発想です。手計算でやろうとすると地獄ですが、コンピュータには非常に向いている形式で、現代の一貫構造計算プログラムや汎用構造解析ソフトはほぼすべてマトリクス法ベースで動いています。

似た名前の有限要素法(FEM、Finite Element Method)と混同されやすいですが、マトリクス法は梁・柱・トラスなどの「線材」を扱う手法で、有限要素法は「面材・立体」を細かく分割して扱う発展形、という違いがあります。

たわみ角法・固定モーメント法との関係はこちらの記事で確認しておくと、流れが分かりやすくなります。

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剛性マトリクスの基本概念

マトリクス法の中心になるのが「剛性マトリクス(Stiffness Matrix)」です。

1部材の剛性マトリクスとは

ある1本の梁または柱の両端に、変位(並進u、回転θ)が生じたとき、それに対応する力(軸力N、せん断力Q、モーメントM)を出すための行列。

平面骨組(2次元)では、1節点に3自由度(X方向、Y方向、回転)あるので、両端で6自由度。1部材の剛性マトリクスは6×6の行列になります。空間骨組(3次元)になると12自由度(並進3+回転3が両端で6×2)で12×12の行列

剛性マトリクスの中身

教科書では「梁要素の剛性マトリクス」が公式として与えられていて、要素ごとにEA/L、12EI/L³、6EI/L²、4EI/L、2EI/Lなどの組み合わせが並んでいます。E(ヤング率)、A(断面積)、I(断面二次モーメント)、L(部材長)の関数として決まる、という形ですね。

ヤング率や断面の話はこちらも参照。

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全体剛性マトリクスへの組み立て

各部材の剛性マトリクスを「節点の番号で対応させて足し合わせる」と、構造物全体の剛性マトリクスができあがります。これが「マトリクス組立て(アセンブリ)」と呼ばれる工程。

例えば10節点・15部材の構造なら、平面で全体剛性マトリクスは30×30(10節点×3自由度)になり、3次元なら60×60。実務の建物では数千〜数万次元の行列を扱うことになるので、コンピュータパワーがあって初めて成立する手法ですね。

マトリクス法を解く流れ

実際にマトリクス法で解く手順は、ざっくり以下の流れ。

手順①:要素ごとの剛性マトリクスを作る

各部材(要素)について、その部材の剛性マトリクスを作成。教科書の公式に部材定数(E、A、I、L)を代入する形で機械的に作れます。

手順②:座標変換

各要素は部材の方向に沿った「部材座標系」で剛性マトリクスを作っていますが、これを構造全体の「全体座標系」に揃える必要があります。回転角度を使った座標変換行列を掛け算して、全体座標系の剛性マトリクスに変換する。

手順③:全体剛性マトリクスを組み立てる

座標変換した各要素の剛性マトリクスを、節点番号に従って大きな全体剛性マトリクスに足し合わせる。プログラム的にはfor文で機械的に処理できる工程。

手順④:境界条件(支点条件)を入れる

固定支点・ピン支点・ローラー支点などの境界条件で、変位がゼロになる自由度を行列から削除(または特殊な扱いをする)。これで残った自由度だけの方程式になります。

手順⑤:荷重ベクトルを作る

外力(節点荷重・分布荷重などを節点荷重に換算したもの)を荷重ベクトルとしてまとめる。

手順⑥:連立方程式を解く

【荷重】=【剛性】×【変位】の連立方程式を解いて、各節点の変位を求める。これが計算の核心部分で、行列の逆行列を求めるか、ガウス消去法・LU分解などの数値計算法を使います。

手順⑦:要素ごとの応力を再計算

求まった節点変位から、各部材ごとに応力(軸力・せん断力・モーメント)を計算。これで応力図(M図、Q図、N図)が描けるようになります。

手順⑧:結果のチェック

節点ごとの釣り合い(変形した形での力の釣り合い)を確認して、計算ミスがないかをチェック。

この一連の流れを、現代の構造解析ソフトは数秒〜数分で処理しています。

マトリクス法と他の手法(たわみ角法・固定モーメント法)との関係

3つの手法の関係を整理しておきます。

項目 たわみ角法 固定モーメント法 マトリクス法
計算方式 連立方程式 反復計算 行列計算で連立を一気に解く
手計算 できる(小規模) できる(連続梁向き) 不可能(コンピュータ前提)
適用範囲 線材構造 線材構造(節点移動なし向き) 線材構造の全般
理論的な親戚関係 元になる発想 別アプローチ たわみ角法を行列化したもの
実務での使われ方 学習・概算用 学習・概算用 実務ソフトの内部計算

「たわみ角法を行列化=マトリクス法」

驚くかもしれませんが、マトリクス法はたわみ角法と理論的には等価で、要は「未知数が増えても扱えるように行列で書き直したバージョン」と言えます。

たわみ角法では「節点が増えると連立方程式が手に負えなくなる」ことが課題でしたが、マトリクス法では行列で書き直すことで節点が何百個・何千個になっても定型的に処理できる。手計算限界を突破した手法、という位置づけです。

有限要素法(FEM)との違い

マトリクス法と有限要素法(FEM)は混同されがちですが、対象が違います。

  • マトリクス法:梁・柱・トラスなどの「線材(1次元要素)」を対象
  • 有限要素法:壁・床スラブ・基礎マットなどの「面材(2次元要素)」や「立体(3次元要素)」も含めて、構造物を有限の要素に分割して解く

ただし、有限要素法も中身は「全体剛性マトリクスを作って解く」という構造なので、マトリクス法の発展形と捉えることもできます。実務的には「線材だけならマトリクス法、壁や床も含めるならFEM」という使い分けが多いです。

実務でマトリクス法が使われている場面

「マトリクス法は構造解析ソフトの内部計算」と言われても、実感が湧かないと思うので、具体的な実務との接点を整理しておきます。

一貫構造計算プログラム

BUS、SS3、SEINなどの一貫構造計算プログラムは、すべて内部で全体剛性マトリクスを組み立てて解いている。「立体解析」と呼ばれている機能はまさにマトリクス法そのものです。

汎用構造解析ソフト

MidasGen、SAP2000、ETABS、Lyraなどの汎用ソフトもマトリクス法(および有限要素法)を採用。これらは大規模建築物・橋梁・タワーなど、一貫プログラムでカバーしきれない複雑な構造の解析にも使われています。

Excelで簡易マトリクス計算

実は中規模ぐらいまでなら、ExcelのMINVERSE関数(逆行列)とMMULT関数(行列積)でマトリクス法の計算が手作りできます。学習用にやってみると、剛性マトリクスの仕組みが一気に腹落ちしますね。

FEMで床スラブやマットの応力解析

地下室の底盤マット、不整形なスラブの応力検討などはFEM(有限要素法)で解くのが一般的。境界条件を細かく設定できるので、マトリクス法(線材)では扱えない応力分布も把握できます。

施工管理がマトリクス法を意識する場面

施工管理の立場でマトリクス法を直接計算することはまずありませんが、ソフトの計算結果を読む立場として、知っておくと役立つ場面があります。

応力結果の妥当性判断

構造計算書に出てくる応力図やたわみ計算は、すべてマトリクス法の計算結果。「ここのモーメントがやけに大きいな」「このスパンのたわみが大きすぎる気がする」といった違和感が湧いたときに、剛度のバランス(剛性マトリクスの中身)を疑える知識があると、構造設計者と建設的な議論ができます。

モデル化の妥当性チェック

ソフトに入力された構造モデルが、実際の建物を正しく表現しているかは、結構大きな問題。柱脚の固定/ピンの設定、剛床仮定の有無、境界条件などが間違っていると、出力される応力が現実とズレます。

僕も電気施工管理として鉄骨造の建物に関わったとき、設計者が「柱脚は半固定で解析している」と言っていたのを聞いて、「なるほど、マトリクス法のモデルでバネ要素を入れているんだな」と理解できたのを覚えています。設計者と話す上で、計算手法のイメージがあると意思疎通が早いです。

剛性のバランス感覚

剛度の大小が応力に直結するというのは、マトリクス法でもたわみ角法でも変わりません。「ここの剛度を上げるとここに応力が集まる」という感覚は、剛性率・偏心率・層間変形角などの実務概念と直結しています。

剛性率・偏心率・層間変形角の話はこちらも参照してください。

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マトリクス法に関する情報まとめ

  • マトリクス法とは:節点の変形と荷重を行列でつなげて、一気に解く構造解析手法
  • 別名:直接剛性法、剛性マトリクス法
  • 基本式:【荷重】=【全体剛性】×【変位】の連立方程式
  • 剛性マトリクス:1部材で6×6(平面)または12×12(立体)の行列
  • 解く手順:要素剛性→座標変換→全体剛性組立→境界条件→荷重ベクトル→連立解く→応力再計算
  • たわみ角法との関係:たわみ角法を行列化したのがマトリクス法(理論的には等価)
  • 有限要素法との違い:線材を扱うのがマトリクス法、面材や立体まで扱うのがFEM
  • 実務での使われ方:一貫構造計算プログラム、汎用構造解析ソフトの内部計算
  • 施工管理としての意味:ソフトの結果の妥当性判断、設計者との議論ツール

以上がマトリクス法に関する情報のまとめです。

マトリクス法は手計算する手法というより「現代の構造解析ソフトの中身」を理解するための知識で、たわみ角法を行列化して大規模化したもの、と捉えるのが分かりやすいですね。実際にExcelで小さな構造を解いてみると、剛性マトリクスの組立てから境界条件の処理まで全部見えるので、興味があれば手を動かしてみると一気に理解が進みますよ。

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