- TIG溶接って具体的に何?
- 普通のアーク溶接と何が違うの?
- メリット・デメリットは?
- どんな材料・現場で使われるの?
- 必要な機材や資格って?
- 注意点はある?
上記の様な悩みを解決します。
TIG溶接は、ステンレスやアルミなど キレイな仕上がりが求められる溶接 で多用される手法。建築鉄骨でメインに使われる被覆アーク溶接や半自動溶接とはキャラクターが違い、「薄物・意匠材・配管」などの特定シーンで強さを発揮します。施工管理者として工場検査や現場立会で「TIG」という言葉に遭遇する機会は多いので、特徴を一度押さえておくと話が早くなります。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
TIG溶接とは?
TIG溶接とは、結論「タングステン電極とアルゴンガスを使い、母材を直接溶かして接合する精密溶接の手法」のことです。
正式名称は Tungsten Inert Gas welding(タングステン・イナートガス溶接)。タングステン(融点約3,400℃)でできた 消耗しない電極 からアークを飛ばし、その熱で母材自体を溶かして接合する仕組み。アーク周りには アルゴンガス(不活性ガス) を流して、空気中の酸素・窒素から溶融池を守ります。
JIS呼称では 「ガスシールドアーク溶接」の一種。ティグの名前は通称ですが、現場でも図面でも「TIG」「ティグ」で通じるので、こちらで覚えておけばOKです。
溶接という大カテゴリの基礎については別記事で整理しています。

TIG溶接の仕組み
ざっくり「電極・ガス・溶加棒」の3点セットで成立しています。
| 構成要素 | 役割 |
|---|---|
| タングステン電極 | アークを出すだけで自分は溶けない(非消耗式) |
| アルゴンガス | 溶融池を空気から保護する |
| 溶加棒(フィラーロッド) | 必要に応じて手で送り込み、肉盛り材になる |
被覆アーク溶接(手溶接)は 電極自身が溶け落ちて溶加材になる のに対し、TIGは 電極は溶けない/溶加材は別途棒で手送り するという違いがあります。「アークの熱源」と「溶加材」が分離されているのが最大の特徴。
これにより、
- アーク電流と溶加材の量を独立コントロールできる
- 母材だけ溶かすこと(溶加材なし)も可能
という、繊細な作業ができるようになります。だからこそ「薄板・精密溶接の王道」と呼ばれるんですね。
TIG溶接のメリット
1. 仕上がりが圧倒的にきれい
スパッタ(飛び散る火花の粒)がほぼ出ないので、ビード表面が滑らかで、銀色のキレイな仕上がりになります。意匠材・ステンレス配管・装飾鉄骨などで重宝される理由はここ。スパッタの一般的な発生メカニズムは別記事で解説しています。

2. 薄板でも穴が開きにくい
電流コントロールが繊細にできるので、0.5mm前後のステンレス薄板 など、半自動や手溶接では穴が開いてしまう板厚も問題なく接合できます。
3. ほぼあらゆる金属に対応
ステンレス・アルミ・チタン・銅・マグネシウム合金まで、特殊金属への対応力が幅広い。アルミは交流TIGで酸化皮膜を破りながら溶接できるのも強み。
4. 後処理がほぼ要らない
ビードがキレイなので、グラインダーがけや酸洗いなどの 後処理工数が少なくて済む のが大きい。仕上げ込みの総コストでは意外と安くなることがあります。
5. 溶接姿勢の自由度
手送りで溶加材の量を調整できるため、全姿勢溶接(下向き・横向き・立向き・上向き) に対応しやすい。
TIG溶接と他の溶接との違い
代表的な溶接方法と比較しておきます。
| 項目 | TIG溶接 | 被覆アーク溶接(手溶接) | 半自動溶接(CO₂/MAG) | MIG溶接 |
|---|---|---|---|---|
| 電極 | 非消耗(タングステン) | 消耗(被覆棒) | 消耗(ワイヤ) | 消耗(ワイヤ) |
| シールド | アルゴンガス | 被覆材(フラックス) | CO₂またはCO₂+Ar | アルゴン等 |
| スパッタ | ほぼ無し | 多い | やや多い | 少ない |
| 仕上がり | 非常にキレイ | 普通 | やや粗い | キレイ |
| 速度 | 遅い | 速い | 速い | 速い |
| コスト | 高い | 安い | 安い | 中程度 |
| 主な用途 | 薄物・ステンレス・意匠 | 鉄骨・現場全般 | 鉄骨・厚物 | アルミ・大型構造 |
ざっくり覚え方は 「キレイで遅くて高い=TIG」「速くて安い=半自動・手溶接」「アルミ大型=MIG」。それぞれ役割が違う、というのが結論です。
建築鉄骨の主構造はほぼ半自動溶接(CO₂)が主役で、TIGの出番は仕上げ材・配管・特殊部材という棲み分けですね。鉄骨と鉄筋の違いについてはこちら。

TIG溶接の使用例・適用材
施工管理として遭遇する典型的なシーンを並べます。
ステンレス配管(衛生・厨房・薬品配管)
医薬品工場・食品工場・厨房・半導体工場のステンレス配管はほぼ100%TIG。裏波(うらなみ:内側のビード) をキレイに出すために、内側にもアルゴンガスを流す「バックシールド」という追加処置をすることもあります。配管工事の全体像はこちら。

アルミの建築意匠材
アルミの手すり・建材・サッシ周りの追加加工。アルミは熱伝導が大きく、TIGの精密制御が活きる素材です。アルミサッシそのものについてはこちら。
薄板ステンレスの内装意匠
階段の手すり、ステンレス装飾パネル、エレベーター周りの仕上げ材など、見える部分の溶接はTIG指定が多いです。
鉄骨の補修・グラインダー後の補修溶接
主構造は半自動でもいいんですが、ガセットプレート脇の小さな補修や、意匠的に見える部分の補修ではTIGに切り替えることがあります。ガセットプレートそのものはこちら。
配電盤・制御盤の筐体溶接
ステンレス筐体や箱物の溶接はTIGが基本。電気施工管理として工場立会で目にする機会が多いですね。制御盤そのものはこちら。

TIG溶接の注意点
1. 作業速度が遅い
被覆アーク溶接の 1/3〜1/5の速度。「TIG指定の図面が出てきたら工期を取り直す」が施工管理の鉄則。コストも上がるので、本当にTIGが必要かどうかを設計者と確認する場面もあります。
2. 風があると失敗する
シールドガスのアルゴンが風で吹き飛ばされると、溶融池が酸化して ブローホール が発生。屋外現場で行う場合は 風防の設置 が必須。風速2m/s以上では原則屋外TIGはNGとされています。
3. 技能者の技量差が大きい
両手を使って電極と溶加棒を別々に動かす必要があり、習熟に時間がかかります。「TIGがキレイに引ける溶接工は重宝される」と言われる理由はここ。
4. アルゴンガスの管理
ガスボンベの残量管理を怠ると、途中でガスが切れて溶接がダメになる。施工管理として工場検査に入った時は、ガスボンベの圧力計 を見るクセを付けておきます。
5. 必要な資格
TIG溶接にも JIS Z 3821(ステンレス鋼の溶接技術検定) などの技能資格があります。法的にTIGが資格必須というわけではありませんが、公共工事や品質要求の高い案件では 資格保有者の手配 が条件になることが多いです。
TIG溶接に関する情報まとめ
- TIG溶接とは:タングステン電極+アルゴンガス+溶加棒で母材を溶かす精密溶接
- 仕組み:非消耗電極でアーク/不活性ガスでシールド/溶加材は手送り
- メリット:仕上がり美麗・薄物対応・特殊金属対応・後処理少・全姿勢
- 他溶接との違い:「キレイで遅くて高い=TIG」「速くて安い=手溶接・半自動」
- 主な使用例:ステンレス配管/アルミ意匠材/意匠ステンレス/鉄骨補修/盤製作
- 注意点:作業速度遅/屋外は風防/技能者育成に時間/ガス管理/資格手配
- 適用材:ステンレス・アルミ・チタン・銅など、ほぼ全金属
以上がTIG溶接に関する情報のまとめです。
TIG溶接は「速さでは半自動に勝てないが、キレイさと精密さでは別格」。鉄骨主構造より、意匠材や設備配管・盤製作で出てくる溶接です。施工管理者は「TIG指定が出たら工期と金額が変わる」と知っているだけで、見積・工程の精度がぐっと上がります。鉄骨・配管・電気盤系の関連記事もあわせて読んでおくと、現場のつながりが見えてくるかなと思います。






