- 年次点検って毎年やるんじゃないの?
- 何を点検するの?絶縁抵抗だけ?
- 停電させずに点検できる?
- 当日の流れはどんな感じ?
- 事業者側として何を準備すればいい?
- 月次点検と何が違うの?
上記の様な悩みを解決します。
電気の年次点検は、キュービクルを置いている自家用電気工作物の事業者にとって法的義務である重要な保守作業。テナントビル・工場・スーパー・病院など、6,600V受電で電気を使っている施設はだいたい対象です。停電を伴う作業のため、テナントへの周知や代替電源の手配など、点検そのもの以外の段取りが意外と多いんですよね。電気施工管理として施主側の保安管理に関わる立場でも、流れを掴んでおくと話が早くなります。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
電気の年次点検とは?
電気の年次点検とは、結論「自家用電気工作物について、電気主任技術者が年に1回(または3年に1回)実施する停電を伴う詳細点検」のことです。
電気事業法第43条・第44条に基づき、6,600V以上の受電設備を持つ自家用電気工作物の設置者は、保安規程に従って定期的に点検を行う義務があります。点検は
- 月次点検:毎月の通電状態での目視・計器確認
- 年次点検:年1回または3年に1回の停電を伴う詳細点検
の二段構成になっていて、停電作業を伴うほうを「年次点検」と呼ぶのが一般的です。月次点検と年次点検の組み合わせで保安管理を回す、というのが日本の自家用電気工作物の標準。
電気主任技術者の選任パターンとしては、
- 自社で選任(外部選任)
- 電気保安法人に委託(外部委託承認制度)
の2通りで、中小規模の施設は電気保安協会・電気管理技術者協会など第三者機関に委託しているケースが多いです。
年次点検の法的根拠と頻度
年次点検の頻度は、設備規模・受電方式・停電の可否で変わります。
法的根拠
- 電気事業法 第43条(電気主任技術者の選任義務)
- 電気事業法 第44条(保安規程の作成・届出義務)
- 経済産業省「電気設備の技術基準の解釈」
- 電気管理技術者協会・電気保安協会の点検基準
保安規程に「年次点検は1年に1回以上実施する」と書かれているのが原則ですが、外部委託承認制度の対象設備は、所定の条件を満たせば3年に1回でも可という運用が認められています。
一般的な頻度
| 設備区分 | 標準的な頻度 |
|---|---|
| 自社選任の自家用電気工作物 | 1年に1回 |
| 外部委託(一定条件あり) | 3年に1回(隔年運用) |
| 大規模ビル・工場 | 1年に1回が多い |
| 学校・病院など重要施設 | 1年に1回(停電影響大なら計画的) |
3年に1回の場合は、停電を伴う詳細点検を3年ごとに実施し、間の年は連続運転中の絶縁監視装置(絶縁監視レコーダー)と月次点検でカバーします。
年次点検で行う点検内容
具体的に何を測定・確認するかを工種別に整理します。
年次点検の主要項目
- 絶縁抵抗測定(高圧・低圧の各回路)
- 接地抵抗測定
- 保護継電器試験(OCR・GR・OVR・UVRなど)
- 高圧機器の外観・接触部点検
- キュービクル内清掃
- 動力盤・分電盤のネジ増締め
- 非常用予備電源の運転試験
絶縁抵抗測定
電気回路の絶縁状態を確認する測定。メガー(絶縁抵抗計)を使い、対地・線間の抵抗値を測ります。
- 6,600V回路:1,000V以上のメガー、5MΩ以上
- 低圧三相200V回路:500Vメガー、0.4MΩ以上(200V以上、絶縁基準値)
- 低圧100V回路:500Vメガー、0.1MΩ以上
絶縁抵抗測定の手順や基準は以下に詳しくまとめています。

接地抵抗測定
接地(アース)の抵抗値を測定して、A種・B種・C種・D種それぞれの基準値を満たしているか確認。
- A種接地:10Ω以下
- B種接地:計算値に基づく
- C種接地:10Ω以下(漏電遮断器付きで500Ω)
- D種接地:100Ω以下(同上)
A〜D種の詳細はこちらをどうぞ。




保護継電器試験
OCR(過電流継電器)・GR(地絡継電器)・OVR(過電圧継電器)・UVR(不足電圧継電器)など、保護継電器の動作試験を実施。整定値(動作値・動作時間)が設計通りに動くかを継電器試験器で確認します。
OCR・GRなど主要保護継電器は以下に解説があります。



絶縁耐力試験(必要時)
新規受電や大規模改修の年は、定格電圧の1.5倍などを10分間印加する絶縁耐力試験も実施します。これは年次点検の通常メニューには入りませんが、稀に設備更新時に組み合わさるので頭に置いておくと良いです。

停電・復電の手順
年次点検は停電作業のオンパレード。手順を間違えると感電・短絡事故や設備破損につながります。
標準的な停電・復電フロー
- 区分開閉器(PAS/UGS/LBS)を開放
- 受電盤の主遮断器(VCB)を開放
- 検電(高圧検電器・低圧検電器)
- 短絡接地器具を取り付け
- 各分岐遮断器を開放(負荷側)
- 点検作業を実施
- 接地器具撤去
- 各機器の復電(負荷側→電源側の逆順)
- 区分開閉器を投入
- 動作確認・電圧電流確認
停電前の確認
停電させる前に、まず「現状で生きている回路」を確認するのが最初の儀式。漏電による地絡電流が常時発生していると、停電→復電のときに保護継電器が動作してしまうので、月次点検データの絶縁抵抗値を事前に確認しておくのが定石です。
検電と接地
停電後の検電は省略禁止。「絶対に止めたから大丈夫」と思っても、検電器で目視確認するまで手を出さない、というのが電気保安の最初のルールです。
検電器・絶縁抵抗計の使い方は以下。


復電時の突入電流
復電時にトランス励磁突入電流・キャパシタ突入電流が発生して保護継電器が動作することがあります。これを避けるため、復電は負荷側から順番に入れていくのが基本。突入電流が想定される設備(大型コンプレッサー・冷凍機)は最後に投入。
事業者側の事前準備
電気主任技術者・保安法人が動く一方で、事業者側にも結構な準備事項があります。
事業者側の事前準備(1か月前)
- 入居テナントへの停電通告(書面)
- サーバー・ICT機器のシャットダウン手順確認
- 冷蔵・冷凍庫の保管品移動計画
- 仮設電源(発電機)の手配
- 警備会社・消防への事前連絡
- 自動ドア・エレベーターの停止対応
テナントへの停電通告
ビル・商業施設では最低2週間前、できれば1か月前にテナントへ書面で通告するのが標準。当日の停電開始時刻・復電予定時刻・連絡先を明記し、特に飲食テナント・データセンター系テナントには個別フォローが必須です。
仮設発電機
サーバールーム・冷凍冷蔵庫・エレベーターなど、停電不可の設備は仮設発電機で電源確保するのが普通。受電前にレンタル発電機を仮設で接続し、点検後に切替で復電、という二段階運用です。
仮設発電機の容量・燃料・設置場所は事前に発電機リース会社と協議。100kVAクラスでも1日10〜20万円程度かかるので、コストインパクトも事前に伝えておくと良いです。
当日朝の儀式
僕は電気施工管理時代に、商業施設の年次点検立会いを何度か経験したことがあります。当日の朝7時に建物前に集合して、保安協会の主任技術者と「停電開始時刻と復電目標」を口頭で再確認、テナント代表者にも電話で「予定通り開始します」と一報入れる、という地味な段取りが意外と効くんですよね。書面の通告だけでは「あれ、今日だっけ?」みたいな取りこぼしが必ず出るので、当日朝の電話確認は省略しないのが肝心。
年次点検に関する注意点
最後に実務でつまづきやすいポイントを4つ。
年次点検の注意点
- 月次点検データは点検前に必ず引き継ぎ
- 古い設備は接続不良で復電できないリスク
- 絶縁不良が見つかった場合の交換部材手配
- 報告書(点検記録)の保管義務
古い設備の復電リスク
築20年以上のキュービクル・古い高圧機器は、停電→復電の温度サイクルで接触部の緩み・端子焼損が顕在化することがあります。「停電させたら二度と通電できなかった」という最悪のケースもゼロではないので、事業継続計画(BCP)として代替電源の準備は重要です。
絶縁不良発見時の対応
年次点検で絶縁抵抗が基準値を下回った回路を発見したら、当日その場で改修できるかどうかで、復電可否が決まります。当日改修できない場合は、該当回路を切り離して残部復電→後日工事、という運用が基本。
報告書の保管
年次点検の点検記録は、電気事業法上保安規程に従って保管義務があります。一般的には3年保管が最低ライン、長期は10年・恒久保管も。電気主任技術者の選任が外部委託の場合でも、設置者側でも控えを保管しておくのが安全です。
電気の年次点検に関する情報まとめ
- 年次点検とは:自家用電気工作物の年1回(外部委託は3年に1回)の停電点検
- 法的根拠:電気事業法 第43条・第44条と保安規程
- 主な内容:絶縁抵抗測定/接地抵抗測定/保護継電器試験/清掃・増締め
- 停電フロー:開放→検電→接地→点検→撤去→復電(負荷側から順)
- 事前準備:テナント通告(最低2週間前)、仮設発電機、警備消防連絡
- 注意点:古い設備の復電リスク、絶縁不良発見時の即応、点検記録の保管
以上が電気の年次点検に関する情報のまとめです。
年次点検で一番大事なのは「点検そのものより事前根回し」と言ってもいいくらい、テナント連絡・仮設電源・当日の段取りで成否が分かれます。点検作業は電気主任技術者がきっちりやってくれるので、事業者側は「停電させて困る人・モノ」を全部洗い出すところに集中するのが、結果的に点検成功への近道なんですよね。
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