引張応力とは?式、単位、計算、許容応力度とSS400の数値を解説

  • 引張応力って「引っ張る力」とどう違うの?
  • 式 σ=P/A の記号の意味と単位があやふや
  • 引張応力と引張強さ(引張強度)は別もの?
  • 許容応力度の長期と短期、何が違うの?なぜ長期は2/3?
  • SS400の数値(F=235とか156とか)、どれが何の値?
  • 板厚で基準強度Fが変わるって本当?
  • 構造計算書の「検定比」って何を見てるの?1を超えたらアウト?
  • 現場で引張がかかるのはどの部位?
  • RCで引張は鉄筋が受けるってどういうこと?
  • 書類チェックで引張応力度のどこを見ればいい?

上記の様な悩みを解決します。

引張応力は、構造計算書のチェックや鉄骨・配筋の検査で必ず出会う、施工管理にとって避けて通れない用語です。今回は定義・式・単位・許容応力度・SS400の数値といった基本を押さえた上で、施工管理目線で「現場で引張がかかる部位」「検定比による書類チェックの見方」「配筋・鉄骨検査で引張側を確認する理由」まで、書類と検査の実務に繋がる形で整理しました。

なるべく分かりやすい表現でまとめていくので、材料力学が苦手な方でも追える内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

引張応力とは?

引張応力とは、結論「材料を引っ張る方向にかかる、単位面積あたりの力(内力)」のことです。記号はσ(シグマ)で表します。

ロープを両端から引っ張ったとき、ロープの内部にはそれに抵抗する力が生まれます。この「単位面積あたりに換算した内部の力」が引張応力です。ポイントは、引張応力は「力そのもの」ではなく「断面積で割った力の密度」だという点です。同じ力で引っ張っても、断面が細いほど応力は大きくなり、壊れやすくなります。

用語 意味 単位
引張力(荷重) 引っ張る力そのもの N、kN
引張応力 断面積あたりの引張力(力の密度) N/mm²

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僕の感覚だと、引張応力は「同じ力でも、断面が細ければ危ない」を数字にしたもの、と捉えると現場感に合います。だからこそ部材を設計するときは、かかる力(荷重)だけでなく、それを受ける断面積とセットで考える必要があり、応力という”密度”の発想が生きてきます。

引張応力の式と単位

引張応力の式は、結論「応力=荷重 ÷ 断面積」とシンプルです。

σ = P ÷ A

記号 意味 単位
σ 引張応力 N/mm²
P 引張荷重(引っ張る力) N
A 断面積 mm²

単位はN/mm²が基本で、これはMPa(メガパスカル)と同じ値です(1N/mm²=1MPa)。古い資料ではkgf/cm²が使われることもあり、換算が必要になります。実務では「N/mm²=MPaは同じ」とだけ覚えておけば、ほとんどの資料に対応できます。

単位 関係
N/mm² 基準(建築の標準)
MPa 1N/mm²=1MPa(同じ値)
kgf/cm² 1N/mm²≒10.2kgf/cm²(古い資料で登場)

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僕の整理では、式は「力を面積で割るだけ」なので難しくありませんが、つまずくのは断面積Aの取り方です。ボルト穴がある部材では、穴を引いた「有効断面積」で計算する必要があり、ここを全断面のままにすると応力を小さく見積もってしまいます。式の単純さより、Aに何を入れるかの方が実務では重要です。

引張応力の計算方法と例題

実際に引張応力を計算してみます。手順は「荷重と断面積を揃える→式に代入」だけです。

例題:鋼板にかかる引張応力

  • 条件:引張荷重 P=120kN、断面積 A=600mm²
  • 単位を揃える:P=120kN=120,000N
  • 式に代入:σ=P÷A=120,000 ÷ 600
  • 結果:σ=200N/mm²

この200N/mm²という応力が、後述する許容応力度(SS400なら長期156N/mm²)を超えていれば、断面が不足しているという判断になります。この例では長期許容を超えているので、断面積を増やすか材料を見直す必要があります。

計算でのつまずきポイントは2つです。ひとつは単位(kNとNの取り違え)、もうひとつは断面積(ボルト穴の控除)です。どちらも応力の値を大きく狂わせるので、計算前に「荷重はN、断面積は穴を引いた有効断面積」を確認するのが鉄則です。

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実務だと、引張応力の計算そのものは構造計算ソフトが行いますが、概算の検算や、現場での「この断面で持つか」のオーダー確認では手で叩きます。そのとき単位と断面積の2点さえ外さなければ、見当違いの値が出ることはありません。

引張応力と引張強さ(引張強度)の違い

混同されやすい「引張応力」と「引張強さ(引張強度)」を切り分けます。ここを混ぜると、許容応力度の理解がぶれます。

用語 意味
引張応力 いま部材にかかっている、断面積あたりの引張力(状態)
引張強さ(引張強度) その材料が引張で壊れる限界の応力(材料の能力)

引張応力は「今かかっている力」、引張強さは「その材料が耐えられる限界」です。SS400で言えば、引張強さ(引張強度)は400〜510N/mm²程度で、これは材料が破断する限界です。一方、設計で使う許容応力度は、降伏点(後述)を基準にこれよりずっと低く設定します。つまり「引張強さ=壊れる限界」「許容応力度=安全に使える上限」「引張応力=今の状態」という3層構造で理解すると整理できます。

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個人的には、この3つを「壊れる限界(引張強さ)」「安全な上限(許容応力度)」「今の状態(引張応力)」と役割で覚えるのが一番混乱しないと思います。設計や書類チェックで見るのは、今の状態(引張応力度)が安全な上限(許容応力度)を超えていないか、という比較です。

引張の許容応力度(長期・短期)と安全率

許容応力度とは、結論「材料を安全に使える応力の上限」です。引張の許容応力度には、長期と短期の2種類があります。

区分 想定する荷重 許容引張応力度
長期 常時かかる荷重(自重・積載など) ft=(2/3)×F
短期 一時的な荷重(地震・台風など) ft=F(基準強度まで)

ここでFは基準強度(おおむね降伏点)です。長期は基準強度Fの2/3、短期は基準強度Fそのものまで許容します。長期が2/3に抑えられているのは、常にかかり続ける荷重に対しては余裕(安全率)を多く取るためです。逆に地震や台風のような一時的な荷重(短期)は、めったに起きない分だけ上限を引き上げてF(降伏点)まで許容します。

長期と短期の関係は「短期は長期の1.5倍」とも言えます(長期がFの2/3なので、短期Fはその1.5倍)。安全率の考え方は、降伏点や引張強さに対してどれだけ余裕を見るか、という発想です。

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僕の考えでは、長期と短期は「ずっとかかる力には慎重に、たまにしかかからない力には少し強気に」という、安全率のメリハリだと理解すると腹落ちします。常時の荷重で降伏点ギリギリまで使うのは危険なので2/3に抑え、地震のような稀な荷重では降伏点まで使い切る、という設計思想です。

SS400・SN材・SD345の引張の数値

代表的な鋼材・鉄筋の引張まわりの数値を整理します。書類チェックで「この値は何だっけ」となったときの早見表として使えます。

材料 基準強度F 長期許容引張 短期許容引張
SS400(板厚40mm以下) 235N/mm² 156N/mm² 235N/mm²
SS400(板厚40mm超) 215N/mm² 約143N/mm² 215N/mm²
SN400 235N/mm²前後 約156N/mm² 235N/mm²前後
SD345(鉄筋) 345N/mm² 215N/mm²(長期上限) 345N/mm²

ここで押さえたいのが、SS400は板厚でFが変わるという点です。板厚40mm以下はF=235N/mm²ですが、40mmを超えるとF=215N/mm²に下がります。厚い材ほど内部品質のばらつきが出やすいためで、厚板を扱うときは基準強度の低下を見落とさないよう注意が必要です。

SS400の各種数値はこちらで詳しく整理しています。

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正直なところ、SS400のF=235、長期156、短期235という3つの数字は頻出なので、ここだけは暗記しておくと書類チェックが速くなります。板厚40mm超でFが215に下がる点と、鉄筋(SD345)は鋼材より基準強度が高い点を合わせて押さえておくと、材料が混在する計算書でも迷いません。

応力の4種類(引張・圧縮・せん断・曲げ)の整理

引張応力を正しく位置づけるために、応力の4種類を整理しておきます。部材にかかる力の向きによって、応力の名前が変わります。

応力の種類 力の向き 代表的な部位
引張応力 引き伸ばす方向 ブレース、引張鉄筋、吊り材
圧縮応力 押し縮める方向 柱、圧縮側のコンクリート
せん断応力 ずらす(はさみ切る)方向 ボルト、梁の支点付近
曲げ応力 曲げる方向(引張+圧縮の組合せ) 梁、スラブ

注目したいのが、曲げ応力は引張と圧縮の組み合わせだという点です。梁が下にたわむと、上側は縮んで圧縮、下側は伸びて引張になります。だから梁の引張側(RCなら下側)に主筋を多く入れる、という配筋の考え方に繋がります。

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現場目線で言えば、応力の4種類を「力の向きの違い」で整理しておくと、部材ごとにどの応力を警戒すべきかが見えてきます。柱は圧縮、ブレースは引張、ボルトはせん断、梁は曲げ、というように、部位と応力が結びつくと検査や書類チェックの勘所がつかめます。

【現場】引張応力がかかる部位

引張応力が実際にどこにかかるのか、現場の部位で押さえておきます。ここは数値表だけの記事には出てこない、現場の話です。

部位 引張がかかる理由
ブレース(筋かい) 地震・風の水平力を引張で受ける
引張鉄筋(梁・スラブの下側) 曲げの引張側をコンクリの代わりに負担
高力ボルト 接合部で部材を引き合う方向に効く
吊り材・ハンガー 荷重を上から吊って引張で支える
アンカーボルト 柱脚の引抜き力を引張で受ける

特に重要なのが、RC(鉄筋コンクリート)では引張を鉄筋が負担するという点です。コンクリートは圧縮に強く引張に弱いため、引張がかかる場所には鉄筋を配置し、引張は鉄筋(鋼)に、圧縮はコンクリートに分担させます。これが鉄筋コンクリートの基本発想で、配筋検査で引張側の鉄筋を重点的に確認する理由でもあります。

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僕の整理では、「引張がかかる部位=壊れると一気に落ちる部位」という意識を持つと、検査の優先順位がつけやすくなります。圧縮はじわじわ効きますが、引張部材(ブレースや吊り材、引張鉄筋)は破断すると急に耐力を失うため、これらの部位は数量・位置・継手を念入りに確認する価値があります。

【書類】検定比で安全を確認する

構造計算書で引張の安全性を確認するときに使うのが検定比です。これを理解すると、計算書のどこを見ればいいかが分かります。

検定比とは、結論「いまかかっている応力度 ÷ 許容応力度」です。

検定比 意味
1.0以下 許容応力度の範囲内=安全(OK)
1.0超 許容応力度を超過=NG(断面不足)

検定比が1.0以下なら、その部材は許容応力度の範囲に収まっており安全です。1.0を超えると、かかる応力が許容を上回っているため、断面を大きくするか材料を見直す必要があります。たとえば引張応力度が140N/mm²、許容引張応力度が156N/mm²なら、検定比は140÷156≒0.90で、許容内(OK)と判断できます。

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実務だと、構造計算書のチェックで真っ先に見るのが検定比の一覧です。1.0を超えている部材が無いか、1.0ギリギリ(0.95以上など)の部材がどこかを拾うと、設計の余裕がどこに無いかが見えます。書類チェックでは「検定比が1を超えていないか」を最初の関門にすると効率的です。

【検査】配筋・鉄骨で引張側を確認する

書類の次は、現場の検査で引張をどう確認するかです。引張は「どの部材か」だけでなく「どの面か」まで見るのがポイントです。

配筋検査では、梁やスラブの引張側(曲げで伸びる側)に主筋が正しく配置され、本数・径・かぶり・継手位置が図面どおりかを確認します。引張側に主筋が足りなかったり、継手が引張力の大きい位置に集中したりすると、引張に対する耐力が不足します。

鉄骨検査では、ブレースや引張材の断面・接合部(高力ボルトの本数・締め付け)を確認します。引張材は破断すると急激に耐力を失うため、接合部のボルト不足やすべり係数の確認が重要になります。

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自分としては、検査での引張確認は「伸びる側・吊る側を疑う」と覚えておくと外しにくいです。梁なら下側(曲げの引張側)、ブレースや吊り材なら部材全体と接合部、柱脚ならアンカーの引抜き、というように、引張がかかる面・方向を意識して見ると、検査の精度が上がります。

引張応力に関する情報まとめ

  • 定義:材料を引っ張る方向にかかる、断面積あたりの力(記号σ)。力そのものではなく密度
  • 式:σ=P÷A(荷重÷断面積)。単位はN/mm²(=MPa)。ボルト穴は有効断面積で計算
  • 引張応力と引張強さ:今の状態(引張応力)・壊れる限界(引張強さ)・安全な上限(許容応力度)の3層
  • 許容応力度:長期はF×2/3、短期はF(基準強度)。短期は長期の1.5倍。常時は慎重、地震は強気
  • SS400:F=235N/mm²(板厚40mm以下)、長期156・短期235。40mm超はF=215に低下
  • 鉄筋SD345:F=345N/mm²。鋼材より基準強度が高い
  • 応力4種:引張・圧縮・せん断・曲げ。曲げは引張+圧縮の組合せ
  • 引張がかかる部位:ブレース、引張鉄筋、高力ボルト、吊り材、アンカー。RCは引張を鉄筋が負担
  • 検定比:応力度÷許容応力度。1.0以下でOK、1.0超でNG(断面不足)
  • 検査:梁は下側(引張側)の主筋、ブレースや吊り材は部材と接合部を確認

以上が引張応力に関する情報のまとめです。

引張応力は、式と数値だけ見ると無味乾燥ですが、構造計算書の検定比、配筋検査の引張側確認、鉄骨のブレース・接合部チェックといった、施工管理の書類・検査の実務に直結します。「引張応力度 ÷ 許容応力度=検定比」「引張がかかる部位は伸びる側・吊る側」という2つの軸を持っておけば、計算書のどこを見るか、現場のどこを疑うかが、同じ理屈で繋がるはずです。

引張応力に関するよくある質問

Q1:引張応力と引張力(荷重)は何が違いますか?

引張力(荷重)は「引っ張る力そのもの(単位はN・kN)」、引張応力は「その力を断面積で割った、単位面積あたりの力(単位はN/mm²)」です。同じ力で引っ張っても、断面が細いほど応力は大きくなります。つまり引張応力は「力の密度」で、部材が危ないかどうかは、力そのものではなく応力(密度)で判断します。設計では、かかる荷重と、それを受ける断面積をセットで考える必要があります。

Q2:引張応力の許容応力度で、長期と短期は何が違いますか?

長期は常にかかり続ける荷重(自重・積載など)に対する上限で、基準強度Fの2/3に抑えます。短期は一時的な荷重(地震・台風など)に対する上限で、基準強度Fそのものまで許容します。長期を2/3に抑えるのは、常時かかる力に対して余裕を多く取るためで、めったに起きない短期荷重では上限を引き上げます。「短期は長期の1.5倍」という関係になり、常時は慎重、地震時は強気、というメリハリの設計思想です。

Q3:SS400の引張の数値は具体的にいくつですか?

板厚40mm以下のSS400は、基準強度F=235N/mm²、長期許容引張応力度156N/mm²、短期許容引張応力度235N/mm²です。板厚が40mmを超えると、基準強度はF=215N/mm²に下がります。厚板ほど内部品質のばらつきが出やすいためです。なお引張強さ(破断の限界)は400〜510N/mm²程度で、許容応力度はこれよりずっと低く設定されています。F=235・長期156・短期235の3つは頻出なので、暗記しておくと書類チェックが速くなります。

Q4:構造計算書の「検定比」とは何ですか?

検定比とは「いまかかっている応力度 ÷ 許容応力度」です。1.0以下なら許容応力度の範囲内で安全(OK)、1.0を超えると許容を超過していてNG(断面不足)です。たとえば引張応力度140N/mm²、許容引張応力度156N/mm²なら、検定比は約0.90で許容内です。構造計算書のチェックでは、検定比が1.0を超えている部材が無いか、1.0ギリギリの部材がどこかを拾うと、設計の余裕がどこに無いかが見えます。

Q5:現場で引張応力がかかるのはどの部位ですか?

代表的なのは、ブレース(筋かい・水平力を引張で受ける)、引張鉄筋(梁やスラブの下側・曲げの引張側)、高力ボルト(接合部)、吊り材・ハンガー(荷重を吊る)、アンカーボルト(柱脚の引抜き)です。特にRC(鉄筋コンクリート)では、コンクリートが引張に弱いため、引張は鉄筋が負担します。これが配筋検査で引張側の鉄筋を重点的に確認する理由です。引張材は破断すると急に耐力を失うため、数量・位置・継手の確認が重要です。

Q6:なぜ梁の下側に主筋を多く入れるのですか?

梁が荷重で下にたわむと、上側は縮んで圧縮、下側は伸びて引張になります(曲げ応力は引張と圧縮の組合せ)。コンクリートは引張に弱いため、引張がかかる下側に鉄筋を入れて引張力を負担させます。これが「引張側に主筋を多く配置する」理由です。配筋検査では、この引張側の主筋の本数・径・かぶり・継手位置を重点的に確認します。なお片持ち梁では引張側が上になるなど、曲げの向きで引張側は変わるので、どちらが伸びる側かを意識する必要があります。

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