- 本足場と一側足場って、建地の数以外に何が違うの?
- 2024年から一側足場は使えなくなったって本当?
- 幅1メートルって、建物の壁からどこまでを測るの?
- 隣地との間が狭いけど、境界の外まで足場を出さないとダメ?
- 一側にする理由を説明できるようにしておけと所長に言われた
- 障害物のところだけ建地を1本にするのはあり?
- 一側足場でも作業床の幅40cmは要るの?
- 点検者の指名って、朝礼で名前を呼べば足りる?
- 二側足場と本足場って同じ意味?
上記の様な悩みを解決します。
厚生労働省委託の研修資料では、本足場は建地(支柱)を2列、一側足場は1列に設置して組み立てる足場と説明されています。労働安全衛生規則第561条の2により、令和6年4月1日から、幅が1メートル以上の箇所で足場を使うときは本足場を使わなければなりません。ただし、つり足場を使うときと、障害物の存在など場所の状況で本足場の使用が困難なときは、この限りではありません。
本足場と一側足場の違いは、建地の列という見た目の話で終わらず、2024年4月からは「どちらを使ってよいか」が条文で決まる話になりました。ところが今回確認した範囲では、「一側足場は禁止」と言い切る解説が多い一方で、条文のただし書や、幅1メートルの測り方を示した施行通達の文まで載せたものは少数でした。今回は2つの違い・改正の中身・例外といった基本を押さえた上で、足場会社のコラムでは触れられにくい「第561条の2の本文とただし書の読み方」「通達が示す幅の測り方と含まれない場合」「安衛則のほかの条での一側足場の扱い」「点検者の指名と氏名の記録」まで、施工管理の目線で整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、足場業者から「ここは一側で」と言われて、その理由を説明する立場になった方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
本足場と一側足場の違いとは?建地を2列で組むか1列で組むか
本足場と一側足場の違いとは、結論「建地(支柱)を建物の外壁面等に沿って2列立てるか、1列だけ立てるか」です。この説明は、令和8年度の厚生労働省委託事業「足場からの墜落・転落災害防止オンライン研修会 抜粋版」(主催:全国仮設安全事業協同組合)にあるもので、一側足場を「建築物の外壁面等に沿って、建地(支柱)を一列設置して組み立てる足場」、本足場を「建地(支柱)を二列設置して組み立てる足場」と書いています(同研修資料 §2)。
押さえておきたいのは、これが研修資料の説明であって、法令の定義文ではない点です。施行通達(基発0314第2号)の本文には本足場・一側足場の定義文がなく、労働安全衛生規則(2026年10月1日施行版)の全文を検索しても「二側足場」「ブラケット」「抱き足場」「一本足場」という語は出てきません。
現場で耳にする「二側足場」「ブラケット一側足場」は、厚生労働省の「足場先行工法に関するガイドライン」(平成8年11月11日策定・平成18年2月10日改正)の用語です。同ガイドラインは、二側足場を「建地に前踏みと後踏みがある単管足場のうち、住宅等の建築物の建設工事に用いる足場」、ブラケット一側足場を「建地にブラケット(持送り枠)を取り付けている一側足場」としています(足場先行工法に関するガイドライン 3)。研修資料の「本足場」とこの「二側足場」を同じものと言い切る資料は、今回確認した範囲にはありませんでした。
安衛則の条ごとに並べると、2つの扱いの違いは次のとおりです。
| 項目 | 本足場 | 一側足場 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 建地の列 | 2列 | 1列 | 厚労省委託の研修資料の説明(法令の定義文ではない) |
| 幅1m以上の箇所での使用 | 使用しなければならない | ただし書(つり足場・本足場の使用が困難なとき)に当たらなければ本足場にする | 安衛則 第561条の2 |
| 作業床の規定(幅40cm以上など) | 対象 | 柱書の括弧書きで「足場」から除かれている | 安衛則 第563条1項 |
| 壁つなぎ・控えの間隔(単管足場) | 垂直5m以下・水平5.5m以下 | 同じ | 安衛則 第570条1項五号 |
| 壁つなぎ・控えの間隔(丸太足場) | 垂直5.5m以下・水平7.5m以下 | 同じ | 安衛則 第569条1項六号 |
この表の範囲では、違いが出るのは「幅1m以上の箇所で使えるか」と「第563条の作業床の規定の対象か」の2点で、壁つなぎの間隔は同じ数字です。単管・わく組・くさび緊結式といった足場の種類そのものは足場の種類の整理に、一側でも本足場でも使われる単管の組み方は単管足場の解説にまとめています。
2024年4月1日から幅1m以上の箇所は本足場が原則|第561条の2を2つの柱で読む
改正の根拠は、労働安全衛生規則に新しく加わった第561条の2です。条文は「(本足場の使用)事業者は、幅が一メートル以上の箇所において足場を使用するときは、本足場を使用しなければならない。ただし、つり足場を使用するとき、又は障害物の存在その他の足場を使用する場所の状況により本足場を使用することが困難なときは、この限りでない。」です(労働安全衛生規則 第561条の2)。
この1条は、本文とただし書の2つの柱でできています。本文が「どこで何をしなければならないか」、ただし書が「その義務が適用されない場面」です。順に読んでいきます。
本文:事業者は、幅1m以上の箇所では本足場を使う
本文の主語は事業者で、条件は「幅が一メートル以上の箇所において足場を使用するとき」、求めている行為は「本足場を使用しなければならない」です。条件の書き方が「以上」なので、ちょうど1メートルの箇所も本文の対象に入ります。施行通達も、事業者は幅が1メートル以上の箇所において足場を使用するときは、原則として本足場を使用しなければならないことを規定した、と説明しています(基発0314第2号 第2 1(1))。
ただし書:本足場を使用する義務が適用されない2つの場面
ただし書は「この限りでない」で結ばれていて、次の2つの場面では本足場を使用する義務が適用されません。1つ目はつり足場を使用するとき、2つ目は障害物の存在その他の足場を使用する場所の状況により本足場を使用することが困難なときです(労働安全衛生規則 第561条の2)。つり足場の構造や作業床の考え方はつり足場の解説で扱っています。
厚生労働省のリーフレットも、つり足場の場合や、障害物の存在その他の足場を使用する場所の状況により本足場を使用することが困難なときは「本足場を使用しなくても差し支えありません」と書いています(厚生労働省リーフレット「足場からの墜落防止措置が強化されます」)。2つ目の「困難なとき」が具体的に何を指すかは、条文には書かれていません。そこを埋めているのが施行通達で、次の章で原文の言葉のまま確認します。
改正省令の番号と施行日
第561条の2を新設したのは、令和5年3月14日に公布された「労働安全衛生規則の一部を改正する省令」(令和5年厚生労働省令第22号)です。同日付の施行通達は、施行期日について「改正省令は、令和5年 10 月1日(1については令和6年4月1日)から施行することとしたこと」と書いています(基発0314第2号 第2 4)。
ここでいう「1」は、通達の第2の1「一側足場の使用範囲の明確化(第561条の2(新設)関係)」のことです。つまり本足場の原則は令和6年4月1日から、同じ省令に入っている点検者の指名と氏名の記録は半年早い令和5年10月1日から、という2段階の施行になっています(基発0314第2号 第2 4)。
厚生労働省のリーフレットも、改正のあらましを3つに分けて、施行日と条番号を並べています。1つ目の「一側足場の使用範囲が明確化されます」が令和6年4月1日・安衛則第561条の2(新設)、2つ目の「足場の点検時には点検者の指名が必要になります」が令和5年10月1日・第567条、第568条、第655条、3つ目の「足場の組立て等の後の点検者の氏名の記録・保存が必要になります」が令和5年10月1日・第567条、第655条です(厚生労働省リーフレット「足場からの墜落防止措置が強化されます」)。一側足場の話と点検の話は、同じ改正の中で施行日がずれている、と押さえておくと混乱しません。
同じ令和5年3月14日には、「足場からの墜落・転落災害防止総合対策推進要綱」も改正されています(基安発0314第2号)。条文・施行通達・推進要綱・リーフレットと、同じ改正について書いた文書が複数あるので、どの文書の言葉なのかを分けて読むことが、この改正を正確に説明するための前提になります。
改正の背景
通達は、建設業で今なお年間100人程度の労働者が墜落・転落災害によって死亡していることを、改正に至る経緯として挙げています(基発0314第2号 第1)。この100人程度は建設業の墜落・転落災害全体の数字で、一側足場や足場に限った件数ではありません。
そのうえで通達は、一側足場からの墜落・転落災害が発生していることから、一側足場の使用範囲を明確化するために必要な措置を規定した、と改正の趣旨を説明しています(基発0314第2号 第1(1))。令和8年度の厚生労働省委託事業の研修資料も、建設業では依然として墜落・転落災害が多発しており、建設業の労働災害による死亡者の約4割、死傷者の約3割を占める、と書いています(足場からの墜落・転落災害防止オンライン研修会 抜粋版 事業の概要)。
幅1m未満なら一側足場でよいのか
第561条の2の本文が対象にしているのは、幅1m以上の箇所です。幅1m未満の箇所について、通達は「なお、幅が1メートル未満の場合であっても、可能な限り本足場を使用することが望ましいこと」としています(基発0314第2号 第2 1(1))。リーフレットの書き方は「可能な限り本足場を使用してください」です(厚生労働省リーフレット「足場からの墜落防止措置が強化されます」)。
通達の語尾は「望ましい」なので、幅1m未満の箇所で本足場を使うことまで義務にした文ではありません。一方で、本足場を使わなくてよいと言い切る文でもなく、可能な限り本足場を選ぶ方向に寄せた書き方です。
正直なところ、「1m未満なら一側でいい」とだけ覚えてしまうと、この「望ましい」の一文と、次の章の幅の測り方の両方を落とします。同じ現場でも、どこを起点にどの向きで測るか、どの部分を幅に数えないかで、1m以上か未満かの判定は変わります。
「幅が1メートル以上の箇所」の測り方と、本足場にしなくてよい場合
第561条の2の条文には、幅をどこからどこまで測るのかも、「困難なとき」が何を指すのかも書かれていません。この2つを具体的にしているのが、施行通達 基発0314第2号の第2 1(2)〜(5)です。一側足場を選ぶかどうかを考えるときは、この通達の文を手元に置いて読むのが近道です。
幅は「建築物等の外面を起点としたはり間方向の水平距離」で測る
通達は「幅が1メートル以上の箇所」を、「足場を設ける床面において、当該足場を使用する建築物等の外面を起点としたはり間方向の水平距離が1メートル以上ある箇所をいうこと」としています(基発0314第2号 第2 1(2))。リーフレットにも同じ文が注として載っています。
この文から読み取れる要素は3つです。測る場所は足場を設ける床面であること、起点は足場を使う建築物等の外面であること、そして測るのははり間方向の水平距離であることです。斜めの距離や、建物から離れた位置を起点にした距離ではなく、外面を起点にした水平距離で判定する、という組み立てになっています。
公道・使用許可・管理の範囲外は「幅」に含まれない
同じ項の後半は、幅に数えない部分を示しています。「足場設置のため確保した幅が1メートル以上の箇所について、その一部が公道にかかる場合、使用許可が得られない場合、その他当該箇所が注文者、施工業者等、工事関係者の管理の範囲外である場合等にあっては、「幅が1メートル以上の箇所」に含まれないこと。」(基発0314第2号 第2 1(2))
外面から測った距離だけで判定が終わるわけではなく、そのうえで通達の「含まれない」場合に当たらないかを確かめる、という二段構えです。隣地との間が狭い現場で、境界の外の部分を幅に数えられるかどうかも、使用許可と管理の範囲の文に照らして判断することになります。
ただし同じ項は、最後に「なお、事業者は、足場の使用に当たっては、可能な限り「幅が 1 メートル以上の箇所」を確保すべきものであること」と付け加えています(基発0314第2号 第2 1(2))。ここの語尾は「望ましい」ではなく「確保すべきもの」です。含まれない場合の文だけを拾って一側足場の理由にするのではなく、まず確保できる幅を確保するよう求めている一文として、セットで読んでおく必要があります。
「本足場を使用することが困難なとき」の4つの例示
ただし書の「障害物の存在その他の足場を使用する場所の状況により本足場を使用することが困難なとき」について、通達は「以下の場合をいうこと」として次の4つを挙げています(基発0314第2号 第2 1(3))。
- ア:足場を設ける箇所の全部又は一部に撤去が困難な障害物があり、建地を2本設置することが困難なとき
- イ:建築物等の外面の形状が複雑で、1メートル未満ごとに隅角部を設ける必要があるとき
- ウ:屋根等に足場を設けるとき等、足場を設ける床面に著しい傾斜、凹凸等があり、建地を2本設置することが困難なとき
- エ:本足場を使用することにより建築物等と足場の作業床との間隔が広くなり、墜落・転落災害のリスクが高まるとき
通達の書き方は「とは、以下の場合をいうこと」で、ただし書の中身を4つ並べて示す形です。リーフレットも同じ4つを箇条書きで載せています(厚生労働省リーフレット「足場からの墜落防止措置が強化されます」)。一側足場を選ぶ理由を説明するときは、現場の状況がア〜エのどれに当たるのかを、この原文の言葉で照らし合わせるのが確実です。
4つのうち、エだけは向きが違います。ア〜ウが障害物・外面の形状・床面の状態という場所の事情を挙げているのに対し、エは本足場を使った結果として建物と作業床の間が広がり、かえって墜落・転落のリスクが高まる場合を挙げています。本足場にすれば安全側、と単純には決められない場面があることを、通達自身が書いているわけです。
建地の一部だけを1本にするとき
障害物が足場を設ける箇所の一部にだけある場合について、通達は「足場を設ける箇所の一部に撤去が困難な障害物があるとき等において、建地の一部を1本とする場合にあっては、足場の動揺や倒壊等を防止するのに十分な強度を有する構造とすること」としています(基発0314第2号 第2 1(4))。リーフレットは同じ内容を「十分な強度を有する構造としなければなりません」と書いています(厚生労働省リーフレット「足場からの墜落防止措置が強化されます」)。
この強度の要求は、通達とリーフレットが示している解釈で、第561条の2の条文そのものには書かれていません。とはいえ、建地を1本にした区間では足場の動揺や倒壊を防ぐ構造が求められている、という点は通達の文から外せないところです。
建物と作業床の間隔は「30センチメートル以内が望ましい」
通達は続けて「足場の使用に当たっては建築物等と足場の作業床との間隔が 30 センチメートル以内とすることが望ましいこと」としています(基発0314第2号 第2 1(5))。リーフレットの語尾も「望ましいです」です。
数字は「以内」、語尾は「望ましい」なので、この通達の一文だけで30cm以内を義務と読むことはできません。低層住宅向けのガイドラインにも30cmの数字が出てきますが、こちらは書き方と適用範囲が違うため、次の章で分けて扱います。
通達の文を判断の順番に並べ直す
ここまでの通達の文を、一側足場にするかどうかを決める順番に並べ直すと次のようになります。まず、足場を設ける床面で、建築物等の外面を起点にはり間方向の水平距離を測ります(基発0314第2号 第2 1(2))。次に、その幅のうち公道にかかる部分、使用許可が得られない部分、工事関係者の管理の範囲外の部分といった「含まれない」場合に当たらないかを確かめたうえで、1m以上あるかを見ます(同)。1m以上あれば第561条の2の本文がかかるので、本足場が前提です。
そのうえで、障害物・外面の形状・床面の状態・作業床との間隔の4つの例示のどれかに当たるなら、ただし書により本足場を使用する義務は適用されません(同 第2 1(3))。障害物が一部にだけあって建地の一部を1本にするなら、通達は十分な強度を有する構造とすることを求めています(同 第2 1(4))。どの場合も、建物と作業床の間隔は30cm以内が望ましく(同 第2 1(5))、1m未満の箇所でも可能な限り本足場が望ましい(同 第2 1(1))、という順に重ねて読むと、通達の文が1本の筋につながります。
一側足場にした理由をどう残すか
ここからは意見です。一側足場にするかどうかは、幅の測り方・含まれない場合・4つの例示という通達の言葉に当てはめて決まります。当てはめた結果は、後から見た人には分かりません。どの区間を一側足場にしたのか、通達の測り方で幅が何メートルだったのか、公道や管理の範囲外の部分をどう扱ったのか、ア〜エのどれに当たると判断したのかを、施工計画や足場業者との打合せ記録に一言ずつ残しておくのがよいと、僕は考えています。
これは法令が求める記録としてではなく、所長や元請から理由を聞かれたときに、同じ説明を同じ根拠で繰り返せるようにするための記録です。足場を含めた仮設の段取り全体は仮設計画の解説にまとめています。
一側足場を使うときに確認する安衛則の条文|作業床と壁つなぎ
労働安全衛生規則(2026年10月1日施行版)の全条を検索すると、「一側足場」という語が出てくるのは第563条・第569条・第570条の3か所だけです。
第563条:作業床の規定は柱書の括弧書きで一側足場を除いている
第563条1項柱書は「事業者は、足場(一側足場を除く。第三号において同じ。)における高さ二メートル以上の作業場所には、次に定めるところにより、作業床を設けなければならない。」です(労働安全衛生規則 第563条1項)。続く二号は、つり足場の場合を除き、作業床の幅は40センチメートル以上、床材間の隙間は3センチメートル以下、床材と建地との隙間は12センチメートル未満とする、と定めています(同条1項二号)。
柱書の「足場」から一側足場が括弧書きで除かれているので、この項に並ぶ作業床の号は、条文の構造上、一側足場を対象にしていません。ここから「一側足場には作業床が要らない」と読むのは条文の言い過ぎで、言えるのは「第563条1項の作業床の規定の対象から外れている」というところまでです。
低層住宅向けのガイドラインが示すブラケット一側足場の数値
安衛則とは別に、厚生労働省の「足場先行工法に関するガイドライン」がブラケット一側足場の数値を置いています。このガイドラインは「軒の高さ 10 メートル未満の住宅等の建築物(現場打設の鉄筋コンクリート構造の建築物を除く。)の建設工事に適用する。」もので(足場先行工法に関するガイドライン 2)、安衛則の条文ではありません。
同ガイドラインは、足場は二側足場とし、敷地が狭あいな場合等で二側足場の設置が困難なときはブラケット一側足場等としてよい、としています(同 5(1)イ)。作業床は40センチメートル以上の幅とし、ブラケット一側足場で40センチメートル以上の幅が困難な場合は24センチメートル以上の幅としてよい、床材間のすき間は3センチメートル以下とし、ブラケット一側足場は5センチメートル以下としてよい、作業床の手すりの高さは75センチメートル以上とする、という内容です(同 5(9)(10))。ブラケットという部材そのものはブラケットの解説で整理しています。
建物と作業床の間隔について、同ガイドラインは外壁施工後の足場について「建築物と足場の作業床との間隔は、30 センチメートル以下とすること。30 センチメートル以下とすることが困難な場合には、足場に手すりを設けること。」としています(同 5(2)ロ)。前の章の通達は「30センチメートル以内とすることが望ましい」でした。同じ30cmでも、出典・適用範囲・語尾がそれぞれ違うので、混ぜずに読み分けます。
第569条・第570条:壁つなぎの間隔は一側も本足場も同じ
残りの2か所は壁つなぎの条です。丸太足場の第569条1項六号と、鋼管足場の第570条1項五号は、どちらも「一側足場、本足場又は張出し足場であるもの」について壁つなぎ又は控えを設けることを定めています。
間隔は、丸太足場が垂直方向5.5メートル以下・水平方向7.5メートル以下です(労働安全衛生規則 第569条1項六号)。鋼管足場は、単管足場が垂直方向5メートル以下・水平方向5.5メートル以下、わく組足場(高さが5メートル未満のものを除く)が垂直方向9メートル以下・水平方向8メートル以下です(同 第570条1項五号)。一側足場にしたからといって、壁つなぎの間隔の数字が変わるわけではありません。わく組で本足場を組むときの部材の構成はわく組足場の解説が詳しいです。
同じ改正で変わった足場の点検|点検者の指名と氏名の記録
第561条の2を新設したのと同じ改正省令で、足場の点検の条文も変わりました。こちらの施行は令和5年10月1日です(基発0314第2号 第2 4)。通達は、足場からの墜落・転落災害が発生している事業場で、安衛則で義務付けられている足場の点検が行われていない事例が散見されていることを、この改正の理由に挙げています(基発0314第2号 第1(2))。
第567条:毎日の点検と、組立て等の後の点検を分けて読む
第567条1項が定めているのは、つり足場を除く足場で作業を行う日の、作業開始前の点検です。事業者は点検者を指名し、作業を行う箇所に設けてある足場用墜落防止設備について、取り外しと脱落が無いかを点検させ、異常を認めたら直ちに補修しなければなりません(労働安全衛生規則 第567条1項)。毎日の作業開始前の点検で条文が挙げている事項は、この1つです。
2項は、強風、大雨、大雪等の悪天候若しくは中震以上の地震又は足場の組立て、一部解体若しくは変更の後において足場における作業を行うときに、点検者を指名して、作業を開始する前に次の事項を点検させる、としています(同条2項)。
| 号 | 第567条2項の点検事項(条文の文言) |
|---|---|
| 一 | 「床材の損傷、取付け及び掛渡しの状態」 |
| 二 | 「建地、布、腕木等の緊結部、接続部及び取付部の緩みの状態」 |
| 三 | 「緊結材及び緊結金具の損傷及び腐食の状態」 |
| 四 | 「足場用墜落防止設備の取り外し及び脱落の有無」 |
| 五 | 「幅木等の取付状態及び取り外しの有無」 |
| 六 | 「脚部の沈下及び滑動の状態」 |
| 七 | 「筋かい、控え、壁つなぎ等の補強材の取付状態及び取り外しの有無」 |
| 八 | 「建地、布及び腕木の損傷の有無」 |
| 九 | 「突りようとつり索との取付部の状態及びつり装置の歯止めの機能」 |
3項は、2項の点検を行ったときに、当該点検の結果及び点検者の氏名と、その結果に基づいて補修等の措置を講じた場合は当該措置の内容を記録し、足場を使用する作業を行う仕事が終了するまでの間保存しなければならない、としています(同条3項)。氏名を記録するのは2項の点検、つまり悪天候・地震・組立て等の後の点検です。つり足場については第568条が、その日の作業を開始する前に、点検者を指名して、前条2項の一号から五号まで・七号・九号の事項を点検させる、と別に定めています(同 第568条)。
通達は、記録すべき点検者の氏名について「改正安衛則第 567 条第2項及び第 655 条第1項第2号の規定により指名した者のものとすること」としています(基発0314第2号 第2 3(1))。記録に書く名前は、実際に指名した人の名前です。
注文者が行う点検(第655条)
注文者の側にも点検の規定があります。第655条は、注文者が法第31条第1項の場合において請負人に係る作業従事者に足場を使用させるときの措置を定めていて、その1項二号は、悪天候若しくは中震以上の地震又は足場の組立て、一部解体若しくは変更の後においては、点検者を指名して、足場における作業を開始する前に点検させ、危険のおそれがあるときは速やかに修理すること、としています(同条1項二号)。2項は、その点検を行ったときに点検の結果及び点検者の氏名などを記録し、足場を使用する作業を行う仕事が終了するまでの間保存しなければならない、としています(同条2項)。第655条には、第567条1項にあたる毎日の作業開始前の点検の号はありません。
指名の方法と、点検者に指名する人
点検者の指名の方法について、通達は、書面で伝達する方法のほか、朝礼等に際し口頭で伝達する方法、メール、電話等で伝達する方法、あらかじめ点検者の指名順を決めてその順番を伝達する方法等が含まれる、としています。続けて「なお、点検者の指名は、点検者自らが点検者であるという認識を持ち、責任を持って点検ができる方法で行うこと」と書いています(基発0314第2号 第2 2(2))。
悪天候・地震や組立て等の後の点検(第567条2項・第655条の点検)の点検者について、通達は、足場の組立て等作業主任者であって、その能力向上教育を受講した者等、一定の能力を有する者を指名することが望ましい、としています(基発0314第2号 第2 2(3))。リーフレットは、事業者又は注文者が行う足場の組立て、一部解体又は一部変更の後の点検について、次のような十分な知識・経験を有する者を「指名することが適切」としています(厚生労働省リーフレット「足場からの墜落防止措置が強化されます」)。
- 足場の組立て等作業主任者であって、その能力向上教育を受講している者
- 労働安全コンサルタント(試験の区分が土木又は建築である者)等、労働安全衛生法第88条に基づく足場の設置等の届出に係る「計画作成参画者」に必要な資格を有する者
- 全国仮設安全事業協同組合が行う「仮設安全監理者資格取得講習」を受けた者
- 建設業労働災害防止協会が行う「施工管理者等のための足場点検実務研修」を受けた者
同じリーフレットは、あわせて「足場等の種類別点検チェックリスト」を活用することが望ましい、としています。作業主任者の選任や職務の範囲は足場の組立て等作業主任者で確認できます。
現場目線で言えば、指名の方法は書面に限られず、朝礼での口頭も通達に挙がっています。その一方で、3項の記録に書く氏名は指名した者のものとされているので、朝礼で呼んだ名前と点検記録の名前が一致しているかは、記録をまとめる側で確かめておきたいところです。
本足場と一側足場に関する情報まとめ
- 本足場と一側足場の違い:研修資料の説明では建地を2列か1列か。安衛則に定義文はなく、二側足場・ブラケット一側足場はガイドラインの用語
- 第561条の2:令和6年4月1日から、幅1m以上の箇所では本足場を使用しなければならない。つり足場と、本足場の使用が困難なときはこの限りでない
- 幅の測り方と例外:建築物等の外面を起点としたはり間方向の水平距離で測り、公道・使用許可なし・管理の範囲外は含まれない。困難なときは通達が4つを例示
- 安衛則のほかの条:第563条1項の作業床の規定は括弧書きで一側足場を除き、壁つなぎの間隔(第569条・第570条)は一側・本足場で共通
- 点検の改正:令和5年10月1日から点検者の指名が必要になり、組立て等の後の点検の記録に点検者の氏名が加わった
以上が本足場と一側足場に関する情報のまとめです。
幅1m以上の箇所で一側足場を使えるかどうかは、建地の本数の好みではなく、第561条の2のただし書と、それを具体化した通達の言葉に当てはまるかで決まります。狭い現場で一側を提案されたら、まず通達の測り方で幅を確かめ、1m以上ならア〜エのどれに当たるのかを足場業者と言葉にしてから計画に落とす。個人的には、この順番を踏んでおけば、所長に理由を聞かれても条文と通達の言葉で答えられるはずだと思います。
Q1:一側足場はもう禁止ですか?
令和8年度の厚生労働省委託事業の研修資料に転記された基安安発0330第1号(令和8年度における建設業の安全衛生対策の推進について)には、「幅が1メートル以上の箇所における一側足場の原則使用禁止」という語があります。ただ、第561条の2にはつり足場を使用するときと本足場の使用が困難なときのただし書があり、全面禁止ではありません。本文の対象も、幅が1メートル以上の箇所です。
Q2:幅1m未満なら一側足場でいいですか?
第561条の2の本文が本足場を求めているのは、幅が1メートル以上の箇所です。ただし通達は、幅が1メートル未満の場合であっても、可能な限り本足場を使用することが望ましい、としています(基発0314第2号 第2 1(1))。幅は建築物等の外面を起点としたはり間方向の水平距離で測り、公道にかかる部分や使用許可が得られない部分などは含まれないので、まず測り方から確かめてください。
Q3:二側足場と本足場は同じですか?
安衛則(2026年10月1日施行版)に「二側足場」という語はなく、二側足場は足場先行工法に関するガイドラインが「建地に前踏みと後踏みがある単管足場のうち、住宅等の建築物の建設工事に用いる足場」と定めた用語です(同ガイドライン 3)。研修資料の「本足場」(建地を二列設置して組み立てる足場)とは出どころが別で、同じものと言い切る資料は今回確認した範囲にはありませんでした。
足場の種類全体を見渡すなら足場の種類、動かして使う足場の決まりは移動式足場(ローリングタワー)に進むと、話がつながります。
