- 手袋に「4X42C」みたいな記号が印字されてるけど、どこを見ればいいの?
- 前はレベル5って言ってたのに、今はアルファベット。どっちが上なの?
- 耐切創と防刃って同じもの?防刃のほうが強いんじゃないの?
- 耐切創手袋を着けてれば、刃物でも切れないって思っていい?
- ビスや針金が刺さるのにも強いの?
- 金属板やガラスを扱う職人には、どんな手袋を指定すればいい?
- ドリルやグラインダーを使うときも、着けたままで大丈夫?
- KYの記録に「耐切創手袋」って書くとき、レベルまで書くべき?
上記の様な悩みを解決します。
結論、耐切創手袋は「レベル表示」を読めば作業に合う一枚を選びやすくなります。耐切創手袋とは、刃物やエッジで手を切るリスクを減らす手袋のことで、性能は数字や記号のレベル表示で示されます。表示の読み方や防刃手袋との違い、回転する刃物を使う作業では手袋そのものを使えない場面まで、現場で手袋を指定する前に知っておきたい点を、僕の視点で整理しました。
耐切創手袋を調べると、手袋メーカーや通販サイトの商品紹介と、調理や護身の用途まで一緒くたにしたランキングが目立ちます。職人に配る手袋を指定する側から見ると、肝心の「印字をどう読むか」「どこまで手袋で守れて、どこから手袋を外すべきか」が抜け落ちているんですよね。そこでこの記事では、手袋に印字された記号を1文字ずつ読む手順、「防刃」という呼び方が規格の名前ではないこと、回転する刃物に手が巻き込まれるおそれのある作業では手袋自体を使わせてはいけない決まり(労働安全衛生規則第111条、e-Gov法令検索で2026年9月確認)まで扱います。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、安全指示書やKYの記録に保護具の指定を書く役目を任されたばかりの方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
耐切創手袋とは?切れないのではなく、切れにくい手袋
耐切創手袋とは、結論「繊維部分に切れにくい素材を使い、刃物や鋭いエッジで手を切るけがを減らすための手袋」のことです。
名前から「刃物を当てても切れない手袋」と受け取られがちですが、作っている側の説明はもっと控えめです。手袋メーカーのショーワグローブは、よくある質問の「耐切創手袋は本当に切れないのですか?」という問いに、「刃物で切ろうと思って力を加えれば、切れることがあります。」と答えています。同じ回答の中で、手袋の繊維部分に切れにくい素材を使うことで、綿・ナイロン・ポリエステルなどの通常の繊維に比べると簡単には切れにくくなっている、とも説明しています(ショーワグローブ「よくある質問」、2026年9月確認)。
職人から「軍手と何が違うの?」と聞かれたときも、比べる相手は綿やナイロンといった通常の繊維の手袋で、違いは繊維部分の切れにくさだ、と返せば話が噛み合います。切れないことを約束している手袋ではない、という前置きもセットで伝えておきたいところです。
では、どんな相手に対する切れにくさを見ているのか。日本規格協会の規格詳細ページでは、手袋を含む防護服の材料に適用するTDM型切創抵抗性試験方法としてJIS T 8052:2026が載っていて、その試験の目的を「ナイフ,金属薄板部品,金属切りくず,ガラス,刃のある工具,鋳造物などの鋭利物による切断に対する抵抗性の測定」としています(日本規格協会 JSA GROUP Webdesk「JIS T 8052:2026」規格概要、2026年9月確認)。
PanasonicのDENZAI TERASUにあるTERASU辞書でも、切創防止手袋を、工場や建設現場、ガラス加工など鋭利な刃物を使う作業で手を切ってしまう事故を防ぐための手袋として説明しています(Panasonic「TERASU辞書」切創防止手袋、2026年9月確認)。
ショーワグローブと日本規格協会の資料から、手袋を配る前に職人とそろえておきたい前提を拾うと、次の4つになります。
- 切れない手袋ではなく、通常の繊維の手袋より切れにくい手袋である
- 刃物に力を加えれば切れることがある、とメーカー自身が書いている
- 想定している相手はナイフ、金属薄板部品、金属切りくず、ガラスなどの鋭利物
- 切れにくさは製品ごとに違い、それを示すのがレベル表示
僕としては、耐切創手袋を渡すときの一言は「これで切れない」ではなく「切れにくくなるだけ」にしておくのが大事だと思っています。手袋を過信して刃物の通り道に手を近づけるようになったら、配った意味が薄れてしまうからです。手のけががどれくらい多いかを議論するより、自分の現場にナイフや金属薄板、ガラスのような鋭利物がどれだけ出てくるかを数えるほうが、手袋を用意する判断には直結します。
耐切創手袋のレベル表示の読み方|数字・アルファベット・Xの意味
「印字された記号が読めない」「前はレベル5だったのに今はアルファベット」という混乱は、表示のもとになっている欧州規格の項目と、改正で何が増えたかを知るとほぼ解けます。この記事でいちばん厚く書くのがここです。
記号は欧州規格EN 388の項目順に並んでいる
ショーワグローブは、産業用手袋に印字された「4X42C」などの数字とアルファベットについて、ヨーロッパ(EU)で制定された保護手袋の機械的物性強度を評価する規格基準「EN 388」の値を表示していると説明しています。この規格には「摩耗、切創(回転刃)、引裂、突刺、切創(平刃)、衝撃の計6項目」が規定されていて、衝撃は任意です(ショーワグローブ「よくある質問」、2026年9月確認)。
項目の数は改正で増えました。おたふく手袋の説明では、EN388:2003は「摩擦」「切創(回転刃)」「引裂」「突刺」の4項目で、改正されたEN388:2016で「切創(平刃)」と「衝撃」の試験が加わり6項目になっています(おたふく手袋株式会社「特殊手袋」、2026年9月確認)。数字だけの印字に見慣れていた人ほどアルファベットに戸惑うのは、この改正で平刃の試験が増えたためです。
実物の読み方は、ショーワグローブのよくある質問に載っている「4X42C」(例:DURACoil 546W)の図が分かりやすいです。図の見出しに沿って左から1文字ずつ読むと次のとおりで、6文字目の衝撃は、株式会社シモンの資料で合格ならP、不合格もしくは未試験ならマーキング無しとされています(ショーワグローブ「よくある質問」掲載の図/シモン「手袋の欧州規格 EN 388:2016、機械強度ピクトグラムについて」、いずれも2026年9月確認)。
- 1文字目「4」:耐摩耗性(目盛は0〜4)
- 2文字目「X」:耐切創性の回転刃試験(目盛は0〜5、またはX)
- 3文字目「4」:耐引裂性(目盛は0〜4)
- 4文字目「2」:耐突刺性(目盛は0〜4)
- 5文字目「C」:耐切創性のTDM試験(目盛はA〜F、またはX)
- 6文字目:衝撃(合格ならP。この例は5文字で終わっていて衝撃の欄は無い)
回転刃のクープテストは1〜5、平刃のTDM試験はA〜F
切創の欄が2つあるのは、試験のやり方が2種類あるからです。ショーワグローブは、耐切創レベル表示の左側が回転刃試験(クープテスト)、右側が平刃試験(EN ISO 13997 TDM試験)の値だと説明しています(ショーワグローブ「よくある質問」、2026年9月確認)。
試験機関のカケンテストセンターによると、クープテストは試験用の丸刃が回転しながら50mmの移動距離を往復し、試料を貫通するまで切り続ける試験です。TDM試験は、試験用刃物にかける荷重を変えて複数回測り、その近似曲線から、刃物が20mm移動して試験片を貫通するのに必要な切創力(N)を推定する試験です(一般財団法人カケンテストセンター「耐切創性試験(Coupe test)」「耐切創性試験(TDM test)」、2026年9月確認)。
摩耗・切創(回転刃)・引裂・突刺の4項目は、カケンテストセンターがEN 388:2016(ISO 23388)4.1 Table1から示している値を並べると次のようになります。摩耗・引裂・突刺の段階は4まで、回転刃の切創だけが5まであります(カケンテストセンター「耐切創性試験(Coupe test)」「EN 388:2016(ISO 23388)機械的リスクに対する防護手袋」、2026年9月確認)。
| EN 388のレベル | 摩耗回数(回) | 切創指数(回転刃) | 引裂強さ(N) | 突刺強さ(N) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 100以上 | 1.2 | 10以上 | 20以上 |
| 2 | 500以上 | 2.5 | 25以上 | 60以上 |
| 3 | 2000以上 | 5.0 | 50以上 | 100以上 |
| 4 | 8000以上 | 10.0 | 75以上 | 150以上 |
| 5 | — | 20.0 | — | — |
さきほどの「4X42C」を上のカケンテストセンターの表に当てはめると、摩耗はレベル4で8000回以上、引裂もレベル4で75N以上、突刺はレベル2で60N以上という読み方になります(数値はカケンテストセンター「EN 388:2016(ISO 23388)機械的リスクに対する防護手袋」の表、2026年9月確認)。
平刃のTDM試験のレベルは、同じくカケンテストセンターがEN 388:2016 4.1 Table2から示している次の値です。「4X42C」の最後の「C」は、10N以上の段にあたります(カケンテストセンター「耐切創性試験(TDM test)」、2026年9月確認)。
| TDM試験のレベル | A | B | C | D | E | F |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 切創力(N) | 2以上 | 5以上 | 10以上 | 15以上 | 22以上 | 30以上 |
平刃の試験が加わった理由について、おたふく手袋は、従来のクープテストでは耐切創強度の高い素材に対して刃を鈍化させる結果となり、正確な測定値が出にくい傾向にあったと説明しています。そのためEN388:2016から平刃を用いる「EN ISO13997 TDM 試験」が加わり、耐切創レベルの表記も従来の5段階評価(1-5)に6段階評価(A-F)が加わりました(おたふく手袋株式会社「特殊手袋」、2026年9月確認)。
ここで気をつけたいのが、数字とアルファベットを横に並べて読み替えないことです。ショーワグローブは「回転刃試験(クープテスト)と平刃試験(EN ISO 13997 TDM試験)は異なる試験のため、相関性がありません。」と明記しています(ショーワグローブ「よくある質問」、2026年9月確認)。数字の何番がアルファベットの何段目にあたる、という言い方は、職長同士の会話でも持ち込まないほうが安全です。
「EN 388とISOとJIS、どれを見ればいいのか」という疑問にも触れておきます。日本規格協会の規格詳細ページによると、TDM型の切創抵抗性試験方法を定めた日本の規格はJIS T 8052:2026(2026-03-25改正)で、対応国際規格はISO 13997:2024(IDT、つまり一致)です(日本規格協会 JSA GROUP Webdesk「JIS T 8052:2026」、2026年9月確認)。これは試験のやり方を定めた規格なので、手袋を手に取ったときに目で追うのは、あくまで手袋に印字された表示の欄になります。
左側の「X」は0ではなく「参照不可」
ショーワグローブは、耐切創レベルの左側に表示される「X」を、回転刃試験(クープテスト)が「参照不可」という意味だと説明しています。同社の図では、耐切創性が高く試験の過程で円刃が鈍化して正確な測定値が出ない場合や、試験未実施の場合に「×:参照不可(N/A = Not Applicable)」となり、そのときはEN ISO13997 TDM試験の耐切創レベルを参照するよう書かれています。右側のTDM試験の欄は、試験未実施なら「×:No Data(試験データ無し)」です(ショーワグローブ「よくある質問」と掲載の図、2026年9月確認)。
株式会社シモンの資料では、回転刃が鈍化したと判断する条件として、試験片での試験後の回転刃で標準布が切断されるまでの往復回数が鈍化前の回転刃の3倍以上となる場合と、試験片上での往復回数が60を超えた場合を挙げています。あわせて、回転刃試験の結果を参照できる場合はEN ISO 13997 TDM試験は任意で、試験を行わない場合の表記は「×」になるとしています(シモン「手袋の欧州規格 EN 388:2016、機械強度ピクトグラムについて」、2026年9月確認)。
実物では、東和コーポレーションの「NEOカットレジスト®インナーファイブ」の仕様に「カットレベルX/C」とあり、同じページの材質欄には高強力ポリエチレン繊維、ナイロン、ポリエステル、ガラス繊維が並んでいます(東和コーポレーション「NEOカットレジスト®インナーファイブ」、2026年9月確認)。ただし、このページには、斜線の左右がそれぞれ何の試験の値か、Xが付いた理由、材質とXの関係のどれも書かれていません。この記事では材質からXの理由を推し量ることはしません。
改正後は同じ手袋でも数値が低く表示されることがある
東和コーポレーションの「NEOカットレジスト」の製品ページには、ゲージ数13・カットレベル2/Aという仕様とあわせて、「※EN388規格は2003年版から2016年版に改正されました。改正により、耐切創性の数値が従来より低く表示される事がありますが、手袋の仕様自体に変更はございません。」という注記があります(東和コーポレーション「NEOカットレジスト」、2026年9月確認)。
「2/A」も「X/C」も斜線の左右に2つの値を置いた形です。ショーワグローブが自社の「X/F」のような表示について、左側が回転刃試験、右側がTDM試験の値だと説明しているのと同じ形です(ショーワグローブ「よくある質問」、2026年9月確認)。ただ、東和コーポレーションのページには左右の意味の説明が無いので、どちらの試験の値かを確実に知りたいときは販売元に確かめてください。同じ品番を買い続けているのに表示の数字が下がって見えたら、品質が落ちたと早合点する前に、この種の注記を探してみてください。東和コーポレーションは「NEOカットレジスト」のページで、2003年版から2016年版への改正によって耐切創性の数値が従来より低く表示されることがあっても、手袋の仕様自体に変更は無いと書いています(東和コーポレーション「NEOカットレジスト」、2026年9月確認)。
米国のA1〜A9はEN 388のA〜Fとは別の表示
手袋によっては「A1」「A4」のような表示もあり、これは米国のANSI/ISEAの耐切創レベルです。興和グローブの「規格について」のページでは、3つの表示を次のように比べています(興和グローブ株式会社「規格について」、2026年9月確認)。
| 項目 | ANSI/ISEA(TDM) | ISO(TDM) | EN388(Coupe) |
|---|---|---|---|
| 表示されるレベル | A1〜A9(9段階) | A〜F(6段階) | 1〜5(5段階) |
| 試験結果の単位 | G(グラム) | N(ニュートン) | I(インデックス) |
| 試験刃の種類 | 直線刃 | 直線刃 | 丸刃 |
同じページでは、ANSI/ISEAの耐切創試験のレベルがA1からA9までの9段階で評価され、単位はG(グラム)で表示されるとして、次の範囲を示しています。あわせて「※ISOとANSI/ISEAの耐切創試験について、試験方法は同じですが、単位の表示方法が異なるため、結果は同一とはなりません。」とも注記しています(興和グローブ株式会社「規格について」、2026年9月確認)。
| ANSI/ISEAのレベル | グラム(G) |
|---|---|
| A1 | 200-499 |
| A2 | 500-999 |
| A3 | 1000-1499 |
| A4 | 1500-2199 |
| A5 | 2200-2999 |
| A6 | 3000-3999 |
| A7 | 4000-4999 |
| A8 | 5000-5999 |
| A9 | 6000+ |
頭の「A」が同じでも、EN 388やISOのA〜Fと、ANSI/ISEAのA1〜A9は、段階の数も単位も違う別の表示です(興和グローブ株式会社「規格について」/カケンテストセンター「耐切創性試験(TDM test)」、2026年9月確認)。個人的には、手袋を比べるときは数字や英字を読む前に「これはどの表示か」を先に確かめるのが、読み違いを防ぐいちばんの近道だと考えています。
表示を1つずつ読んで保護具を選ぶ流れは、目を守る保護メガネやゴーグルでも変わりません。そちら側の規格の読み方は、この記事にまとめています。

防刃手袋と耐切創手袋の違い|「突き刺し」は切創とは別の項目
「防刃って書いてあるほうが強そう」「耐切創ならビスが刺さっても平気?」という疑問は、切ることと刺すことを分けて考えると整理できます。
EN 388では、切創(回転刃・平刃)と突刺は別々の項目として規定されています(ショーワグローブ「よくある質問」、2026年9月確認)。突刺強さのレベルは1〜4で、20N以上・60N以上・100N以上・150N以上と段階が決まっています。この試験は、試験片に対して一定の速度で試験錘を突き刺し、突き刺すのに要する強度(N)を測るものです(カケンテストセンター「EN 388:2016(ISO 23388)機械的リスクに対する防護手袋」、2026年9月確認)。
突き刺す相手の形については、EN 388:2016の試験を案内しているボーケン品質評価機構が、耐突刺性試験を「クギや針のような鋭利な物体での突刺に対する抵抗性を評価します。」と説明し、鋼針を用いて試験片に力を加えるとしています(ボーケン品質評価機構「機械的リスクに対する防護手袋試験 EN388:2016(ISO 23388:2018)」、2026年9月確認)。
逆に、平刃のTDM試験は刺す力を見ていません。カケンテストセンターのTDM試験のページには、試験用刃物の移動する速度が1分間に150㎜とゆっくりで衝撃性の要素は含まれないこと、そしてこの試験方法が「錐(きり)や釘などのように先端の尖った形状をしている刃物による貫通性の要素を含まない」ことが書かれています(カケンテストセンター「耐切創性試験(TDM test)」、2026年9月確認)。切創のレベルが高い手袋でも、突き刺しへの強さは突刺の欄を別に見ないと分からない、ということです。
では「防刃手袋」は何を基準にした呼び方なのか。手袋の性能に関わる規格の名前を並べてみると、EN 388は保護手袋の機械的物性強度を評価する規格基準(ショーワグローブ「よくある質問」)、JIS T 8052:2026の名称は「防護服-機械的防護性能-鋭利物に対する切創抵抗性試験方法」(日本規格協会 JSA GROUP Webdesk)、米国の表示はANSI/ISEA(興和グローブ「規格について」)で、いずれも、2026年9月に確認したこれらの資料での規格の名称や説明に「防刃」の語は入っていません。
今回確認した4社のページ(ショーワグローブ「よくある質問」、おたふく手袋株式会社「特殊手袋」、東和コーポレーション「NEOカットレジスト」「NEOカットレジスト®インナーファイブ」、興和グローブ株式会社「規格について」)では「耐切創」の語が使われていて、「防刃手袋」という呼称への言及はありませんでした(2026年9月確認)。
ハンドナイフによる切りきず・刺しきずを防護する規格のうち、今回確認したISO 13998:2003は、名称が「Protective clothing — Aprons, trousers and vests protecting against cuts and stabs by hand knives」で、対象はエプロン・ズボン・ベストです。これに対応するJIS T 8120:2006(対応国際規格はISO 13998:2003、MOD)も「防護服―ハンドナイフによる切りきず及び刺しきずを防護するためのエプロン,ズボン及びベスト」で、名称のとおり手袋の規格ではありません(日本規格協会 JSA GROUP Webdesk「ISO 13998:2003」「JIS T 8120:2006」、2026年9月確認)。
商品名や売り場で「防刃」と書かれた手袋を見かけたら、名前ではなく、EN 388の印字のうち次の点を確かめると判断を誤りにくくなります(印字の並びはショーワグローブ「よくある質問」掲載の図、A1〜A9の表示は興和グローブ株式会社「規格について」、2026年9月確認)。
- 切創の表示が、回転刃の数字か、平刃のアルファベットか
- ビスや針金のように刺さる相手がある作業なら、突刺の欄(左から4文字目)の数字
- A1〜A9の表示なら、EN 388のA〜Fと混ぜずに読む
- 規格の表示が見当たらないなら、何の試験で「防刃」と呼んでいるのかを販売元に確かめる
僕の考えでは、「防刃」は強さの段階を表す言葉でも規格の名前でもない呼び方として受け止めるのが、いちばん誤解が少ないです。防刃だから耐切創より上、あるいは下と決めつけず、表示されている項目とレベルで比べる。これなら職人に聞き返されても説明がぶれません。
作業に合わせた耐切創手袋の選び方|対象物・作業性・滑り止め・素材
レベル表示が読めるようになったら、次は「どの作業に、どの表示の手袋を当てるか」です。ここで伝えたいのは、作業ごとに推奨レベルの記号を決め打ちするのではなく、作業内容・対象物・作業性の3つを並べて選ぶ手順です。
メーカー自身がレベル以外も見るよう書いている
ショーワグローブのよくある質問には「耐切創レベルが「4」や「5」の商品を探しているが見つからない。」という問いがあり、同社は現在、回転刃試験で「4」や「5」と表示している商品の取扱いは無く、平刃試験(EN ISO 13997 TDM試験)を実施した商品を推奨していると答えています。そのうえで「手袋の選定に関しては、耐切創レベルの他に、作業内容や対象物、作業性などを考慮する必要があります。」と続けています(ショーワグローブ「よくある質問」、2026年9月確認)。
同社の図の欄外にも「※作業内容によっては、手袋の強度が満たない場合があるため、事前に十分ご確認の上、ご使用ください。」とあり、表示を読んだうえで、実際の作業に照らして確かめることが前提になっています(ショーワグローブ「よくある質問」掲載の図、2026年9月確認)。
もう1つ見落としやすいのが、手のひらと手の甲の違いです。ショーワグローブは、切創試験に使う試験片を手のひら部分から採取しているため、手のひら側(コーティングあり)と手の甲側(コーティングなし)で耐切創レベルは必ずしも同じではない、と説明しています(ショーワグローブ「よくある質問」、2026年9月確認)。ダクトの内側に手を差し込むように、手の甲がエッジに触れやすい作業があるなら、この点は職長に先に伝えておきたいところです。
金属板・ダクト・ガラス・鉄筋の端部で確かめること
建設現場で手を切りやすい相手を、JIS T 8052の規格概要に挙がっている鋭利物(ナイフ、金属薄板部品、金属切りくず、ガラス、刃のある工具、鋳造物など)に照らしてみると、確認の順番を決めやすくなります(日本規格協会 JSA GROUP Webdesk「JIS T 8052:2026」規格概要、2026年9月確認)。
金属サイディングや板金、ダクトの切断面は、概要にある「金属薄板部品」に近い相手です。PanasonicのTERASU辞書は「薄板ガラス・板金の加工」について「滑り止めつき切創レベルの高いものは必要。」としています(Panasonic「TERASU辞書」切創防止手袋、2026年9月確認)。どこまで高ければよいかの記号は書かれていないので、切創の欄が回転刃の数字かTDMのアルファベットかを確かめたうえで、作業性とのかね合いで決めることになります。
ガラスは、概要にそのまま名前がある相手です(日本規格協会 JSA GROUP Webdesk「JIS T 8052:2026」規格概要、2026年9月確認)。TERASU辞書の記述は「薄板ガラス」の加工についてのもので(Panasonic「TERASU辞書」切創防止手袋、2026年9月確認)、搬入や取付けでガラスを持つ作業を指したものではありませんが、滑り止めと切創の両方を見るという考え方は当てはめやすいと思います。強化ガラスそのものの特徴は、こちらの記事で整理しています。

鉄筋の端部は、JIS T 8052の規格概要の例示には名前が挙がっていません(日本規格協会 JSA GROUP Webdesk「JIS T 8052:2026」規格概要、2026年9月確認)。それでも現場目線で言えば、切断した端部で手を切る場面は切創の欄、端部が当たる向きによって刺さる形になる場面は突刺の欄で、それぞれ表示を確かめるのが筋です。この記事で確認した資料には、作業ごとの推奨レベルの記号までは書かれていなかったので、ここでも記号は決め打ちしません。
金属の端材や切りくずの片付けについては、TERASU辞書の「ごみ収集作業」の項に「金属の廃棄物などの作業には、ステンレスワイヤータイプやアラミドタイプが良い。」という記述があります(Panasonic「TERASU辞書」切創防止手袋、2026年9月確認)。現場で金属くずをまとめて片付ける場面を考えるときの手がかりになります。
作業性と滑り止めは試し着けで見る
「厚い手袋だとビスがつまめない」という声は、表示のレベルからは判断できません。製品ページには、東和コーポレーションの2製品のように「ゲージ数13」といった仕様が載っていることもありますが(東和コーポレーション「NEOカットレジスト」「NEOカットレジスト®インナーファイブ」、2026年9月確認)、実際の作業でどう感じるかは着けてみないと分からない部分です。僕なら全員分をまとめて手配する前に、職長に何枚か試してもらい、ビスや結束線をつまむ、図面をめくるといった動作ができるかを見ます。
滑り止めは、前の節で触れた手のひら側のコーティングと一緒に確かめます。油が付く作業でどんなコーティングが向くかは、今回確認した資料には書かれていなかったので、製品ごとの説明で用途を確認するのが確実です。
素材はメーカーの説明と評価方法をセットで読む
素材について、東和コーポレーションは「NEOカットレジスト」の製品ページで、高強力ポリエチレン繊維は繊維材料として優れた強度・弾性率を持ち、耐切創性でもパラアラミド繊維を上回ると説明していて、その比較には「評価方法:クープテスト法(EN388)」と添えられています(東和コーポレーション「NEOカットレジスト」、2026年9月確認)。同社の「NEOカットレジスト®インナーファイブ」は、材質に高強力ポリエチレン繊維・ナイロン・ポリエステル・ガラス繊維を使っています(東和コーポレーション「NEOカットレジスト®インナーファイブ」、2026年9月確認)。
金属を使った素材については、カケンテストセンターのTDM試験のページに「金属繊維を使用した材料ですと、測定が出来ない可能性がございます。」という記述があります(カケンテストセンター「耐切創性試験(TDM test)」、2026年9月確認)。ステンレスワイヤーのような金属を含む手袋を選ぶときは、表示の欄がどうなっているかをいつも以上に丁寧に見ておきたいです。どの素材が一番かを一般論で決めるより、メーカーが何の試験でそう言っているのかを読み、最後は表示の欄で比べるほうが確実です。
ここまでの内容を、手袋を指定する前に並べておく項目として整理すると次の6つです。
- 作業内容:切る、運ぶ、片付けるなど、その作業で手が何をするか
- 対象物:金属薄板、ガラス、切りくず、鉄筋の端部など、何に触れるか
- 表示の欄:切創は回転刃の数字か平刃のアルファベットか、刺さる相手なら突刺の欄
- 作業性:細かい部材をつまめるかを、試し着けで確かめたか
- 手のひらと手の甲:コーティングの有無と、エッジが当たるのはどちら側か
- 素材:メーカーの説明が、どの評価方法での比較か
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【PR】耐切創手袋、記号の読み方や選び方で迷っていませんか?
レベル表示と作業内容を照らし合わせてから手配すると、選び間違いが減ります。
- レベル表示の記号が読めず、自分の作業に必要な強さが分からない
- 金属板・ガラス・鉄筋の端部など、作業内容に合った手袋を選び分けられない
- 突き刺しへの強さと切創への強さの違いが分からず不安
回転する刃物に巻き込まれるおそれがある作業では手袋を外す|労働安全衛生規則第111条
「ドリルを回すときも、耐切創手袋なら着けたままでいい?」「切れにくい手袋なら巻き込まれても平気?」。ここは手袋の性能の話ではなく、そもそも手袋を使ってよい作業かどうかの話で、根拠は法令にあります。
条文は手袋の種類を分けていない
労働安全衛生規則第111条は、見出しが「(手袋の使用禁止)」で、第1項に「事業者は、ボール盤、面取り盤等の回転する刃物に作業中の労働者の手が巻き込まれるおそれのあるときは、当該労働者に手袋を使用させてはならない。」、第2項に「労働者は、前項の場合において、手袋の使用を禁止されたときは、これを使用してはならない。」と定めています(e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第百十一条、2026年9月確認)。
読むときのポイントは、労働安全衛生規則第111条が禁じている対象がただ「手袋」と書かれていて、軍手か耐切創手袋かを分けていないことです(e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第百十一条、2026年9月確認)。耐切創手袋も手袋である以上、この条文の条件に当てはまる場面では、使わせてはいけない側に入ります。繊維が切れにくいことと、回転しているものに引き込まれないことは、別の話です。
例示はボール盤と面取り盤、工具の名前だけで線を引かない
第111条の条文に書かれているのはボール盤と面取り盤で、そのあとに「等」が付いています(e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第百十一条、2026年9月確認)。ディスクグラインダーや電動ドリル、丸のこがこれに当たるかどうかを、この記事では断定しません。工具の名前で一律に決めるのではなく、その作業で回転する刃物に手が巻き込まれるおそれがあるかどうかを見て判断する、というのが条文の書き方に沿った考え方です。
ディスクグラインダーと電動ドリルの扱い方は、それぞれの工具の記事で整理しています。


厚生労働省の災害事例にある軍手の巻き込み
厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」には、「CNC施盤に巻き込まれて死亡」という労働災害事例(No.101174)が載っています。業種はその他の金属製品製造業で、建設業の事例ではありません(「施盤」は原文の表記)。原因として「軍手を着用して回転する加工物を研磨する作業を行ったこと」が挙げられ、軍手を着けてサンドペーパーを持って研磨したため「回転する施盤の刃等機械部品に軍手が引っかかり、そのまま巻き込まれた。」と書かれています。対策は「高速で回転する刃等の機械部品に直接または接近して行う作業については、手袋を使用することによって巻き込まれるおそれがあるので、その使用を禁止する。」です(厚生労働省「職場のあんぜんサイト」労働災害事例No.101174、2026年9月確認)。
この対策の文も、労働安全衛生規則第111条と同じく手袋の種類を分けずに「手袋」と書いています(厚生労働省「職場のあんぜんサイト」労働災害事例No.101174、2026年9月確認)。正直なところ、「耐切創だから大丈夫」という感覚は、ここを読むと根拠がないことが分かります。
KYや安全指示に手袋を書くときの順番
安全指示やKYの記録に「耐切創手袋着用」と書く前に、作業を2つに分けるところから始めるのがよいと考えています。先に「回転する刃物に手が巻き込まれるおそれがある作業か」を分け、手袋を使う作業についてだけ、表示のどの欄を見るかを書く順番です。
なお、厚生労働省や中央労働災害防止協会の資料で、建設業に限って耐切創手袋の着用を勧める明文は、今回確認した範囲では見つかりませんでした(2026年9月確認)。耐切創手袋を指定するときは、現場のどの相手で手を切るおそれがあるのかを理由として具体的に書いたほうが、職人にも通りやすいはずです。
書く順番を並べると、次のとおりです。
- その日の作業を洗い出し、回転する刃物に手が巻き込まれるおそれがあるかで分ける
- おそれがある作業は「手袋を使わない」と書き、耐切創手袋も例外にしない
- 手袋を使う作業は、触れる相手(金属薄板、ガラス、切りくず、鉄筋の端部など)を書く
- 見る欄を書く:切創は回転刃の数字か平刃のアルファベットか、刺さる相手なら突刺
- レベルの記号を書くなら、どちらの試験の欄かを必ず添える
レベルの記号だけを書いた指示だと、数字とアルファベットの取り違えや、A〜FとA1〜A9の混同がそのまま現場に伝わりかねません。ショーワグローブは、回転刃試験(クープテスト)と平刃試験(TDM試験)は異なる試験のため相関性が無いと説明しています(ショーワグローブ「よくある質問」、2026年9月確認)。興和グローブも、ISOとANSI/ISEAの耐切創試験は単位の表示方法が異なり、結果は同一にならないと注記しています(興和グローブ株式会社「規格について」、2026年9月確認)。なので、記号は欄とセットで書くのが安全です。朝のTBM-KYで作業ごとの手袋の扱いを確認するなら、進め方はこちらを手引きにしてください。

耐切創手袋に関する情報まとめ
- 耐切創手袋とは:通常の繊維より切れにくい素材を使った手袋で、力を加えれば切れることがある(ショーワグローブ「よくある質問」、2026年9月確認)
- レベル表示の読み方:ショーワグローブの説明では、印字はEN 388の値で、摩耗・切創(回転刃)・引裂・突刺・切創(平刃)の順に並び、左側のXは回転刃試験が参照不可という意味。数字とアルファベット、A〜FとA1〜A9は読み替えない(ショーワグローブ・興和グローブの資料、2026年9月確認)
- 防刃手袋との違い:「防刃」は規格の名前には無い呼び方で、突き刺しは切創とは別の突刺の欄で見る(ショーワグローブ・カケンテストセンター・日本規格協会の資料、2026年9月確認)
- 選び方:推奨レベルを決め打ちせず、作業内容・対象物・作業性をそろえ、手のひらと手の甲、素材の評価方法まで確かめる(ショーワグローブ「よくある質問」・東和コーポレーション「NEOカットレジスト」、2026年9月確認)
- 手袋を使わない作業:回転する刃物に手が巻き込まれるおそれのあるときは手袋の使用が禁じられ、耐切創手袋も手袋に含まれる(労働安全衛生規則第111条、e-Gov法令検索で2026年9月確認)
以上が耐切創手袋に関する情報のまとめです。
耐切創手袋選びでつまずく原因の多くは、手袋の性能そのものより、印字の読み違いと、手袋を使ってはいけない作業との混同にあると僕は見ています。次に手袋を手配するときは、まず作業を「回転する刃物に巻き込まれるおそれがあるか」で分け、手袋を使う作業だけ、印字の切創と突刺の欄を読んでから品番を決めてみてください。数字とアルファベットを取り違えずに指定できれば、職人への説明もずっと通りやすくなります。
手の切り傷のヒヤリハットが続いている現場なら、報告の集め方と活かし方から見直すのも一つの手です。

耐切創手袋の表示と使いどころで迷いやすい質問
Q1:レベル5とレベルFは、どちらが上ですか?
数字の1〜5は回転刃のクープテスト、A〜Fは平刃のTDM試験のレベルで、試験そのものが違います。ショーワグローブのよくある質問(2026年9月確認)でも両者は相関性が無いとされているので、上下を比べず、どちらの欄の値かを分けて読みます。
Q2:耐切創手袋なら、ビスや針金が刺さっても平気ですか?
平気とは言えません。EN 388では切創と突刺が別の項目で、カケンテストセンターの説明(2026年9月確認)ではTDM試験は錐や釘のような先端の尖った刃物による貫通性の要素を含みません。刺さる相手がある作業では、突刺の欄を別に確かめます。
Q3:米国表示のA4と、EN 388のDは同じくらいですか?
同じ物差しではありません。興和グローブの「規格について」では、ANSI/ISEAはA1〜A9の9段階でグラム、ISOのTDM試験はA〜Fの6段階でニュートンです。EN 388のA〜Fもカケンテストセンターの説明ではニュートンのTDM試験レベルで、段階も単位も違います(いずれも2026年9月確認)。
Q4:ドリルを使うときも、耐切創手袋なら着けたままでいいですか?
工具の名前ではなく、回転する刃物に手が巻き込まれるおそれがあるかで判断します。労働安全衛生規則第111条(e-Gov法令検索、2026年9月確認)は、そのおそれがあるとき手袋を使わせてはならないとし、手袋の種類を分けていません。当てはまる作業なら耐切創手袋も例外になりません。
Q5:同じ品番なのに、耐切創の数値が前より低いのはなぜですか?
東和コーポレーションは「NEOカットレジスト」の製品ページ(2026年9月確認)で、EN388規格の2003年版から2016年版への改正により耐切創性の数値が従来より低く表示されることがあるが、手袋の仕様自体に変更は無いと注記しています。数字だけで品質が落ちたと決めつけず、注記を確認します。
