酸素欠乏危険作業主任者とは?種類、講習、費用、職務、選任など

  • 酸素欠乏危険作業主任者って、どんな作業で必要になるの?
  • 第一種と第二種って何が違うの?硫化水素?
  • どっちの講習を受ければいいのか分からない
  • 資格試験なの?講習を受けるだけ?
  • 講習は何日で、いくらかかるの?
  • 作業員がやる「特別教育」とは別物なの?
  • 主任者は現場で結局なにをすればいいの?
  • ピットやマンホールに入るだけでも必要?

上記の様な悩みを解決します。

酸素欠乏危険作業主任者は、ピット・マンホール・タンク内・地下ピットといった「酸素が薄くなる/有毒ガスがたまる密閉空間」で作業するときに、法律で選任が義務づけられている作業主任者です。酸欠や硫化水素中毒は、一度倒れると助けに入った人まで二次災害で命を落とす、建設現場でもっとも怖い事故の一つで、だからこそ主任者の選任と職務がきびしく決められています。今回は定義・選任義務・第一種と第二種の違い・職務・技能講習(受講資格・日数・費用)といった基本を押さえた上で、現役の施工管理目線で「どちらの講習を受けるべきか」「作業員向けの特別教育との切り分け」「測定のタイミングや二次災害の防止」まで、現場で本当に迷うポイントを整理しました。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

酸素欠乏危険作業主任者とは?

酸素欠乏危険作業主任者とは、結論「酸素が欠乏する(または硫化水素が発生する)危険場所での作業で、酸素濃度などを管理し作業員を指揮して中毒・酸欠を防ぐために選任される責任者」のことです。労働安全衛生法第14条にもとづく作業主任者の一つで、酸素欠乏症等防止規則(酸欠則)で職務が細かく定められています。

対象になるのは「酸素欠乏危険場所」での作業です。具体的には、地下ピット・マンホール・下水道・暗渠・タンクや槽の内部・穀物サイロ・冷蔵庫内・地下室など、労働安全衛生法施行令の別表第6に挙げられた場所が該当します。建設現場だと、地下ピット内の配管作業、マンホールや汚水槽の中での作業、長く閉め切っていた地下室での作業などが典型です。「入るだけ」であっても、その場所が酸素欠乏危険場所に該当し労働者が作業するなら、事業者は作業主任者を選任しなければなりません。

酸欠危険場所の代表例であるマンホールと、混同されやすいハンドホールの違いはこちらで整理しています。

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選任するのは、後述する技能講習を修了した人の中から、です。酸欠・硫化水素中毒は「無色無臭で気づかないうちに意識を失う」のが怖いところで、見た目では危険が分かりません。僕の感覚だと、この資格は「危なそうに見えない場所ほど怖い」という酸欠の本質を理解している人を現場に一人立てるための制度で、施工管理として地下・ピット系の作業を段取りするなら、選任の要否を必ず頭に入れておく必要があります。

第一種・第二種・特別教育の違い

この資格で一番ややこしいのが「第一種と第二種」「主任者と特別教育」という2つの区別です。ここを整理すると全体像が一気にクリアになります。

第一種と第二種の違い(硫化水素の有無)

酸素欠乏危険作業は、硫化水素の危険があるかどうかで第一種と第二種に分かれます。

区分 危険の種類 主な場所の例
第一種酸素欠乏危険作業 酸素欠乏のおそれのみ 乾いたタンク内、一部の地下室など
第二種酸素欠乏危険作業 酸素欠乏+硫化水素中毒のおそれ 下水道、汚水槽、し尿・海水がたまる場所など

そして選任できる主任者も、講習の種類によって変わります。技能講習には「酸素欠乏危険作業主任者技能講習(第一種向け)」と「酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習(第二種向け)」の2つがあります。第一種の作業にはどちらの修了者でも主任者になれますが、第二種の作業には「酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習」の修了者でないと主任者になれません。

主任者と特別教育の違い

もう一つの区別が、作業主任者と特別教育です。これはレイヤーが違います。

  • 作業主任者:作業員を指揮し、酸素濃度などを管理する「責任者」の資格(技能講習)
  • 特別教育:酸素欠乏危険場所で作業してよい「作業員本人」の資格

つまり、現場では「作業員全員が酸素欠乏危険作業の特別教育を修了していること」+「その中の指揮役として作業主任者が選任されていること」の両方が必要になります。特別教育(作業員向け)にも第1種・第2種があり、こちらの区別も硫化水素の有無で分かれます。特別教育の位置づけは、アーク溶接など他の特別教育と考え方が同じです。

僕としては、「第一種か第二種か」は場所(硫化水素が出るか)で決まり、「主任者か特別教育か」は役割(指揮するか作業するか)で決まる、と2軸で整理すると迷わないと感じます。下水・汚水系を触る現場は基本的に第二種、と覚えておくと大きく外しません。

酸素欠乏危険作業主任者の職務

酸素欠乏危険作業主任者の職務は、酸欠則で明確に決められています。命に直結するので、他の作業主任者より測定の義務がきびしいのが特徴です。

  • 作業員が酸素欠乏(第二種は硫化水素中毒も)の空気を吸わないよう作業方法を決め、直接指揮する
  • その日の作業開始前・中断して再開する前・異常があったときに、酸素濃度(第二種は硫化水素濃度も)を測定する
  • 換気装置などの設備を点検する
  • 空気呼吸器や安全帯などの保護具の使用状況を監視する

特に重要なのが「測定のタイミング」です。作業開始前だけでなく、昼休みなどで一度全員が出た後に再開するときも、また換気装置に異常があったときも、そのつど測定し直す必要があります。「朝測ったから大丈夫」ではなく、空気の状態は時間とともに変わる、という前提で管理するのが酸欠対策の基本です。

実務だと、この職務で一番効くのは「測定を省略させない」ことです。作業が順調に進んでいるときほど、再開時の測定が形骸化しがちですが、酸欠事故は「昨日まで平気だった場所」で起きます。作業主任者が測定記録をつけて、換気を止めない・測ってから入る、を徹底できるかどうかが、そのまま作業員の命に直結します。

酸素欠乏危険作業主任者の技能講習(受講資格・日数・費用)

酸素欠乏危険作業主任者になるには、技能講習を修了する必要があります。難関の国家試験ではなく、講習を受けて修了試験に合格するタイプの資格です。

受講資格

受講資格は比較的ゆるく、満18歳以上であれば実務経験がなくても受講できるのが一般的です。型枠支保工や足場の作業主任者のような長い実務経験要件がないので、これから地下・ピット系の作業を管理する人でも受けやすい資格です。

日数・科目・修了試験

第二種向けの「酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習」は、学科に加えて実技(濃度測定・救急蘇生)があるため3日間で行われるのが一般的です。学科では酸素欠乏症・硫化水素中毒・救急蘇生の知識、発生原因と防止措置、保護具、関係法令などを学び、実技では酸素・硫化水素濃度の測定方法と救急蘇生(心肺蘇生)を実習します。最後に学科・実技それぞれの修了試験があります。第一種向けの講習は硫化水素の内容がない分、これより短い日数(2日間程度)で行われます。

費用の目安

費用は受講料とテキスト代を合わせて、第二種でおおむね2万2千〜2万5千円ほどが目安です(実施機関によって差があります)。参考として、ある労働基準協会では受講料19,800円+テキスト2,310円=合計22,110円という設定でした。会社負担になることが多いですが、申込前に確認しておくと安心です。

僕としては、実技で救急蘇生をやるのがこの講習の一番の意味だと感じます。酸欠は「助けに入った人が二次災害で倒れる」のが典型パターンなので、いざというときに空気呼吸器を着けて救助し、心肺蘇生ができる人が現場にいることの価値は大きいです。

酸素欠乏危険作業主任者の現場での注意点

制度を知っていても、運用でつまずくポイントがあります。施工管理として押さえておきたい注意点を整理します。

  • 作業主任者の氏名と職務内容を作業場の見やすい場所に掲示する(掲示義務がある)
  • 選任するのは実際にその作業を行う事業者=原則として作業する下請
  • 作業員全員が「酸素欠乏危険作業特別教育」を修了しているかも合わせて確認する
  • 換気を止めない、測定してから入る、を作業計画に明記する
  • 倒れた人を見ても素手で助けに入らない(救助者は空気呼吸器を装着)

一番怖いのが二次災害です。酸欠事故の死亡例は、最初に倒れた作業員を助けようと、防護なしで飛び込んだ同僚や職長までまとめて倒れる、というパターンが繰り返されています。「人が倒れていたら、まず助けに入る前に応援と換気・空気呼吸器」という手順を、作業主任者が事前に全員へ徹底しておくことが命を分けます。

選任の主体も現場で曖昧になりがちです。作業主任者を選任するのはその作業を行う事業者なので、実際にピットやマンホールに入って作業する下請が、自社の修了者から選任するのが原則です。元請は各下請が選任・掲示できているか、作業員の特別教育が済んでいるかを統括的に確認する役回りになります。この役割分担は職長の体制と合わせて理解しておくと現場で回しやすいです。

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近年は熱中症対策のように「現場の環境リスクを事前に管理する」流れが強まっています。酸欠管理も同じで、環境をあらかじめ測って手を打つ発想が求められます。

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僕の感覚だと、施工管理がやりがちなミスは「短時間だから」「ちょっと覗くだけだから」と測定や換気を省くことです。酸欠危険場所は入って数十秒で意識を失う濃度になり得るので、時間の長短は関係ありません。段取りの段階で「この作業は酸欠危険場所か?主任者は?特別教育は?測定は?」を作業間連絡調整で必ず確認する習慣をつけると、重大事故はほぼ防げます。

酸素欠乏危険作業主任者に関する情報まとめ

  • 定義:酸素欠乏・硫化水素の危険場所での作業を管理・指揮する労働安全衛生法上の作業主任者
  • 対象作業:地下ピット・マンホール・タンク内・暗渠など施行令別表第6の酸素欠乏危険場所
  • 第一種と第二種:硫化水素の危険があるかで区分、下水・汚水系は基本的に第二種
  • 講習の種類:第一種向けと、硫化水素も含む第二種向け(酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習)がある
  • 主任者と特別教育:主任者は指揮する責任者、特別教育は作業してよい作業員本人の資格
  • 職務:作業前・再開前・異常時の酸素濃度(第二種は硫化水素も)測定/換気・保護具の管理/指揮
  • 受講資格:満18歳以上なら実務経験なしでも受講できるのが一般的
  • 日数・費用:第二種は実技を含み3日間、費用は合計おおむね2万2千〜2万5千円が目安
  • 現場の注意点:掲示義務、下請が選任、作業員の特別教育確認、二次災害の防止(素手で助けに入らない)

以上が酸素欠乏危険作業主任者に関する情報のまとめです。

酸素欠乏危険作業主任者は、「危険が目に見えない」「二次災害で被害が拡大する」という酸欠事故の特性を理解して、測定と換気を省かせないための役割です。第一種と第二種は場所(硫化水素の有無)で、主任者と特別教育は役割(指揮か作業か)で切り分ける、この2軸さえ押さえれば制度で迷うことはなくなります。地下・ピット系の作業を段取りするときに、選任と特別教育と測定をセットで確認できるようになると、施工管理として現場の命を守る力が一段上がるはずです。

酸素欠乏危険作業主任者に関するよくある質問

Q1:第一種と第二種、どちらの講習を受ければいいですか?

迷ったら第二種(酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習)を受けておくのが無難です。第二種の講習を修了すれば、第一種・第二種どちらの作業でも主任者になれます。第一種向けの講習だけだと、硫化水素の危険がある第二種の作業(下水道・汚水槽など)では主任者になれません。建設現場は下水・汚水系を触ることが多いので、実務上は第二種を取っておくとつぶしが効きます。

Q2:ピットやマンホールに少し入るだけでも作業主任者は必要ですか?

その場所が酸素欠乏危険場所に該当し、労働者が作業するなら必要です。酸欠は入って数十秒で意識を失う濃度になり得るので、作業時間の長短は関係ありません。「短時間だから」「覗くだけだから」と省略するのが一番危険です。作業計画の段階で、その場所が施行令別表第6の酸素欠乏危険場所に当たるかを確認し、当たるなら主任者の選任・測定・換気をセットで手配してください。

Q3:作業主任者を選任すれば、作業員の特別教育は不要ですか?

不要にはなりません。作業主任者(指揮する責任者)と特別教育(作業する作業員本人)は別の制度です。酸素欠乏危険場所で作業するには、作業員全員が「酸素欠乏危険作業特別教育」を修了している必要があり、そのうえで指揮役として作業主任者を選任します。両方がそろって初めて、法令上その作業を行える状態になります。

Q4:講習は難しいですか?試験に落ちることはありますか?

修了試験はありますが、講義と実技をきちんと受けていれば合格できる難易度で、極端な対策は不要です。第二種は実技(濃度測定・救急蘇生)があるので、その場で手を動かして覚えます。受講資格も満18歳以上なら実務経験がなくても受けられるのが一般的で、比較的取得しやすい資格です。

Q5:酸欠で人が倒れていたら、すぐ助けに入っていいですか?

すぐに素手で助けに入ってはいけません。酸欠事故の死亡例の多くが、防護なしで救助に飛び込んだ人まで倒れる二次災害です。人が倒れているのを見たら、まず応援を呼び、換気を行い、救助者は空気呼吸器(送気マスク等)を装着してから入るのが鉄則です。この救助手順を作業前に全員へ周知しておくことも、作業主任者の重要な役割の一つです。

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