- ローリングタワーと移動式足場って、同じもの?
- 何段まで組んでいいのか、職人に聞かれても根拠が言えない
- H≦7.7L-5のHとLって、どこの寸法?
- アウトリガーを付けたら、そのぶん高く組んでいいの?
- 上に乗ったまま、ちょっとだけ横にずらすのもダメ?
- 手すりは何cm?作業床の上で脚立を使うのはアウト?
- 組み立てる人に特別教育は要る?作業主任者は?
- 朝の点検って、誰が何を見ればいいの?
上記の様な悩みを解決します。
移動式足場(ローリングタワー)は、作業床と、それを支えるわく組と脚輪、はしご等の昇降設備と手すり等で構成される、動かせる足場です。数値は昭和50年に公表された「移動式足場の安全基準に関する技術上の指針」にまとまっていて、脚輪の下端から作業床までの高さHは主軸間隔LからH≦7.7L-5で決め(壁つなぎ又は控を設けた場合を除く)、労働者を乗せて移動してはならない、としています。
ローリングタワーは天井や内装、設備の工事でおなじみの道具ですが、「何段まで」「乗ったまま少しなら」といった現場で聞く目安と、文書に書いてあることがずれやすい道具でもあります。今回は基本を押さえた上で、レンタル会社や足場会社のコラムでは混ざりがちな「技術上の指針と安衛則の書き分け」「高さの式の読み方と公表された計算例」「移動時の決まりの全項目」「手すりが外れた死亡事例」まで、施工管理の目線で整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、職人さんにローリングタワーの使い方を聞かれて言葉に詰まった経験のある方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
移動式足場(ローリングタワー)とは?脚輪で動かせるわく組の足場
移動式足場とは、結論「作業床をわく組で支え、その下に脚輪を付けて、組んだまま動かせるようにした足場」のことです。ローリングタワーと移動式足場は同じものを指していて、厚生労働省のパンフレットも「ローリングタワー(移動式足場)」と並べて書いています(厚生労働省「はしごや脚立からの墜落・転落災害をなくしましょう!」H29.3)。
定義の出どころは、昭和50年10月18日の技術上の指針公示第6号「移動式足場の安全基準に関する技術上の指針」です。移動式足場を「作業床、これを支持するわく組構造部及び脚輪並びにはしご等の昇降設備及び手すり等の防護設備より構成される設備」と定め、対象から「動力駆動により移動させるものを除く。」としています(移動式足場の安全基準に関する技術上の指針 1-1・1-2)。
この指針は、労働安全衛生法第28条第1項の規定に基づいて公表された技術上の指針です。同条第4項は、指針を公表した場合において必要があると認めるときは、事業者又はその団体に対し必要な指導等を行うことができる、としています(労働安全衛生法 第28条第1項・第4項)。安衛則の条文とは別に公表され、国が必要があると認めるときに指導等を行える根拠になる文書、という位置づけです。
脚立との使い分けでは、同じパンフレットが「まず、代わりとなる床面の広いローリングタワー(移動式足場)や作業台などの使用を検討しましょう。」と書き、墜落の危険性が相対的に低い道具として可搬式作業台や高所作業車と並べています(厚生労働省 H29.3)。脚立や足場台との境目は足場台と脚立の違い、足場全体の地図は足場の種類の整理で扱っています。
構造の数値は技術上の指針にある|高さの式・脚輪・作業床・手すり
「何段まで組んでいい?」「手すりは何cm?」と聞かれたときに戻る先は、結論「技術上の指針の第2章と第3章」です。強度・安定性・高さ・作業床・脚輪・昇降設備・防護設備の数値がここに並んでいます。原文の語に沿って一覧にしました。
| 項目 | 指針の規定(原文の語・数値) | 番号 |
|---|---|---|
| 設計に用いる積載荷重 | A≧2の場合 W=250/A<2の場合 W=50+100A(A=作業床の床面積・単位m2、W=積載荷重・単位kg) | 2-2-1 |
| 荷重試験 | 強度について荷重試験を行う場合は、できる限り通常の使用状態に近い状態で行い、安全率を2.5以上とする | 2-2-4 |
| 転倒の余裕 | 自重と、作業床の中心から辺長の4分の1だけ偏心した位置に作用する積載荷重が同時に作用する状態で、6度の転倒余裕角度 | 2-3-1 |
| 高さと脚輪の間隔 | H≦7.7L-5(H=脚輪の下端から作業床までの高さ・単位m、L=脚輪の主軸間隔・単位m)。ただし、壁つなぎ又は控を設けた場合は、この限りでない | 3-1-1 |
| 控わくがある場合のL | 控わくを有する構造では、控わくの条件に応じて2通りのLの取り方がある | 3-1-2 |
| 中間の布わく | 脚輪の下端から作業床までの高さが、外かくを形成する脚輪の主軸間隔の3倍を超えるときは、脚輪と作業床との中間の位置に布わく | 3-3-8 |
| 作業床 | 床付き布わく、又は足場板(透き間が3cm以下となるよう全面に敷き並べ、支持物に確実に固定) | 3-2 |
| 車輪 | 直径125mm以上 | 3-4-3 |
| ブレーキ | 不意の移動を防止するためのブレーキを設ける。250kg・cmの回転力に対し、車輪の回転を防止できること | 3-4-4・3-4-5 |
| 昇降設備 | 踏さんの長さが30cm以上で、踏さんが40cm以下の等間隔に設けられたはしご、又はこう配が50度以下で幅が40cm以上の階段(わく組構造部が前者のはしごの要件を満たす建わくで構成されている場合は、この限りでない) | 3-5 |
| 防護設備 | 作業床の周囲に、高さ90cm以上で中さん付きの丈夫な手すりと、高さ10cm以上の幅木(手すりと作業床との間に丈夫な金網等を設けた場合は、中さん及び幅木を設けないことができる) | 3-6 |
出典はいずれも、移動式足場の安全基準に関する技術上の指針(昭和50年10月18日 技術上の指針公示第6号)の各番号です。ここから、現場で取り違えやすいところを順に読んでいきます。
H≦7.7L-5のHとLはどこの寸法か
高さの式は、指針3-1-1で「脚輪の下端から作業床までの高さと、移動式足場の外かくを形成する脚輪の主軸間隔とは、次の式によること。」と定められています(指針 3-1-1)。Hはタワーのてっぺん(手すりの上端)ではなく、脚輪の下端から作業床までの高さです。Lは外かくを形成する脚輪の主軸間隔で、縦横で間隔が違う場合について、仮設工業会のQ&Aは「L=狭い方の主軸間隔」と書いています(一般社団法人 仮設工業会 Q&A 技術基準)。縦横で間隔が違うタワーなら、短いほうの間隔で式に当てはめる、という読み方になります。
また3-1-1には「ただし、移動式足場に壁つなぎ又は控を設けた場合は、この限りでないこと。」というただし書があります(指針 3-1-1)。式は、壁つなぎも控も無い自立の状態を前提にした決まりだということです。
式の当てはめ方は、仮設工業会のQ&Aに公表された例があります。Q&Aは、指針は「移動式足場用の建わく」を使用する前提だとした上で、標準わく・簡易わくを式に当てはめると「幅900mmの標準わくを使用した場合はH=1.93m」「幅700mmの簡易わくを使用した場合はH=0.39m」となり、「特に簡易わくは移動式足場として不向きであることがわかります。」と答えています(仮設工業会 Q&A 技術基準)。
「何段まで」は指針に書かれていない
職人さんからいちばん聞かれる「何段まで」ですが、指針の原本全文・労働安全衛生規則・同施行令を確認した範囲では、移動式足場の段数を定めた規定はありません。指針が決めているのは段数ではなく、H≦7.7L-5という高さと脚輪の間隔の関係です。
「5段まで」という数字の出どころとして確認できたのは、建設業労働災害防止協会(建災防)の外国人建設就労者向け教材です。ローリングタワーの点検項目の1つに「制限高さ以下となっているか?(5段まで)」とあります(建災防「外国人建設就労者のための安全衛生教育映像教材 Ⅱ-5.ローリングタワー」p.15)。これは団体の教材の点検項目で、指針や安衛則の規定ではありません。段数で覚えている人には、「段数ではなく、脚輪の主軸間隔との関係(H≦7.7L-5)で高さが決まる。壁つなぎ又は控を設けた場合は別」と伝えるのが筋です。
控わく(アウトリガー)を付けると高くできるか
控わくを有する構造の移動式足場では、3-1-1の式のLを、3-1-2の式から得られる値に置き換えてよい、とされています。指針3-1-2は、控わくの高さが控わくの幅の3倍以上で、かつ控わくが回転しないように建わくに取り付けられている場合と、それ以外の場合の2通りに分けて、Lの取り方を定めています(指針 3-1-2)。つまり、控わくの付け方によってLの数え方が変わり、その結果として許される高さも変わる、という仕組みです。なお、3-1-1のただし書の「控」と3-1-2の「控わく」の関係は、確認した資料からは言い切れません。
ここで注意したいのが移動のときです。仮設工業会のQ&Aは「移動式足場の高さ(H=7.7L-5)は移動時の安定性を確保する目的で算出します。控え枠使用により計算して高さを増やした場合、そのままの高さで移動するには控え枠を機能させたまま移動できるようにするなどの条件が必要となります。」と答えています(仮設工業会 Q&A 技術基準)。控わくで高さを稼いだタワーは、そのまま転がしてよいタワーではない、という点は次の章の移動の決まりにもつながります。
積載荷重の250は「載せてよい重さ」ではない
2-2-1のWは「設計に用いる積載荷重」で、強度を計算するための値です(指針 2-2-1)。使うときの決まりは別にあって、指針4-1-2は「最大積載荷重は、2-2-1の積載荷重以下となるように定め、かつ、その旨を移動式足場の見やすい箇所に表示すること。」としています(指針 4-1-2)。さらに4-4-1で、最大積載荷重を超えた荷重をかけてはならない、と定めています(指針 4-4-1)。
現場目線で言えば、確かめるべきは式の数字ではなく、そのタワーに表示されている最大積載荷重です。表示が見当たらないタワーは、何kgまで載せてよいかを誰も答えられない状態なので、使い始める前に表示の有無を確認しておきたいところです。
ブレーキ・手すり・昇降設備の読み方
ブレーキについて指針が書いているのは、不意の移動を防止するためのブレーキを設けること、そして250kg・cmの回転力に対して車輪の回転を防止できること、の2つです(指針 3-4-4・3-4-5)。使うときの決まりとしては、4-2-2は「すべての脚輪のブレーキを解除した後に」移動すること、4-3-2は移動中を除き脚輪のブレーキを常に作動させておくことを求めています(指針 4-2-2・4-3-2)。建災防の教材の点検項目にも「ブレーキは4輪ともあるか?」があります(建災防 Ⅱ-5 p.15)。
手すりは高さ90cm以上で中さん付き、幅木は高さ10cm以上です(指針 3-6)。手すりと作業床の間に丈夫な金網等を設けた場合は、中さんと幅木を省ける、というただし書がセットになっています。
昇降設備は、数字の取り違えが起きやすいところです。30cmは踏さんの長さで、40cmは踏さんの間隔の上限です(指針 3-5)。階段にする場合は、こう配50度以下・幅40cm以上です。わく組そのものが、このはしごの要件を満たす建わくで組まれているときは、別にはしごを付けなくてよい、というただし書があります。
また、高さが脚輪の主軸間隔の3倍を超える場合は、脚輪と作業床との中間の位置に布わくを設けることになっています(指針 3-3-8)。背の高いタワーでは、中間の布わくが入っているかも見るところです。
動かすときの6つの決まりと、止めて使うときの決まり
「乗ったまま少しだけ動かしていい?」への答えは、結論「指針4-2-3が、移動式足場に労働者を乗せて移動してはならないこと、と定めている」です(指針 4-2-3)。4-2-3は「移動式足場に労働者を乗せて移動してはならないこと。」の一文で、文言はこれだけです。1975年に当時の労働省産業安全研究所がまとめた技術資料も、移動式足場に関する労働災害の大半は足場の転倒事故によるもの、と書いています(労働省産業安全研究所 技術資料 RIIS-TN-75-5 p.1)。同じ資料が挙げる転倒事故の型には、移動中のものが含まれます。
指針4-2が移動のときに求めていることを、番号順に並べます(指針 4-2-1〜4-2-6)。
- 4-2-1:路面のおうとつ、障害物等による転倒を防止するため、あらかじめ路面の状態を確認する
- 4-2-2:すべての脚輪のブレーキを解除した後に移動する
- 4-2-3:移動式足場に労働者を乗せて移動してはならない
- 4-2-4:移動中は、転倒等による危険を生ずるおそれがあるところに、関係労働者以外の労働者を立ち入らせない
- 4-2-5:控わくを有する移動式足場は、控わくのすべてのジャッキを繰り上げる。3-1-1の本文に適合していても転倒のおそれがあるときは、転倒のおそれのない高さに組み替えること等で転倒を防ぐ。控わくが建設物、設備等に接触するおそれがあるときは、控わくを取り外し、又はたたむ
- 4-2-6:壁つなぎ又は控が設けられていた移動式足場は、転倒のおそれのない高さに組み替えること、シートを取り外すこと等により転倒防止の措置を講ずる
4-2-4は、移動中に転倒等による危険を生ずるおそれがあるところへ、関係労働者以外の労働者を立ち入らせない決まりです。現場の段取りでいえば、動かす前に周りの職人へ声をかけ、倒れたときに巻き込まれる範囲から離れてもらうことが、この決まりを守る方法の1つになります。
見落としやすいのが4-2-5の(2)です。控わくを有する移動式足場を移動させるときは、3-1-1の本文に適合する移動式足場であっても、転倒のおそれがあるときは転倒のおそれのない高さに組み替えること等により転倒を防止する、と書いてあります(指針 4-2-5(2))。前の章で触れた仮設工業会のQ&Aも、高さの式は移動時の安定性を確保する目的で算出する、としています(仮設工業会 Q&A 技術基準)。
止めて使うとき(定置)の決まり
作業する位置に据えて使うことを、指針は「定置」と呼んでいます。4-3に並ぶ決まりは次のとおりです(指針 4-3-1〜4-3-6)。まず、無理のない姿勢で作業を行うため、作業箇所に近接したところに定置させることです。
脚輪のブレーキは、移動中を除き常に作動させておき、作動させるときはその効き具合を確認します(指針 4-3-2)。おうとつ又は傾斜が著しい場所で使うときは、ジャッキ等の使用により作業床の水平を保持します(指針 4-3-3)。段差や勾配のある床で使ってよいかという疑問には、この条が答えになります。控わくを有する移動式足場を定着したときは、控わくの取付け状態、接地状態等に異常がないことを確認します(指針 4-3-4)。
移動式足場にシートを張ったため強い風圧を受けるおそれのある場合等には、壁つなぎ又は控を設けることになっています(指針 4-3-5)。電線の近くでは、架空電路を移設し、架空電路に絶縁用防護具を装着する等、架空電路との接触を防止するための措置を講じます(指針 4-3-6)。
組み立てるときの決まり
移動と定置の前に、組立ての段階で守ることが4-1にあります。建わく等の接続部は、使用中容易に離脱しないように確実に結合すること。最大積載荷重を2-2-1の積載荷重以下に定めて見やすい箇所に表示すること。そして2基以上の移動式足場を連結して使用するときは、鋼管と緊結金具とを用いる方法等により、それぞれを確実に連結すること、です(指針 4-1-1〜4-1-3)。
荷物を載せる・昇り降りするときの決まり
4-4は荷重の積載等の決まりです。最大積載荷重を超えた荷重をかけない、材料等を載せる場合は転倒を防ぐため偏心しないように配慮する、移動式足場の上では移動はしご、脚立等を使用しない、作業又は昇降のため手すり、中さん等を取り外したときは、その必要がなくなった後、直ちに原状にもどす、の4つが並びます(指針 4-4-1〜4-4-4)。作業床で脚立を使ってよいかという疑問は、4-4-3がそのまま答えです。
最後の4-4-5は、わく組構造部の外側空間を昇降路とする構造の移動式足場について、転倒を防止するため、同一面より同時に2名以上の者が昇降しないこと、としています(指針 4-4-5)。外側のわくをはしご代わりにして昇り降りするタイプでは、同じ面から2人同時に登らない、ということです。
1975年の技術資料が挙げた転倒の型と、指針の決まり
指針と同じ1975年の技術資料は、過去の事故の例から、転倒事故の内容を3つに分けています(労働省産業安全研究所 技術資料 RIIS-TN-75-5 p.1)。それぞれが指針のどの決まりで防ぐ形になっているかを並べると、移動と定置の決まりが事故の型と対応する形になっていることが見えてきます。
| 技術資料が挙げた転倒の型 | 対応する指針の決まり |
|---|---|
| 足場の移動中、脚輪が物につまずく、または窪みに落ち込む | 4-2-1(あらかじめ路面の状態を確認)・4-3-3(おうとつ又は傾斜が著しい場所ではジャッキ等で作業床の水平を保持) |
| 足場上での梯子などの使用により、足場に多大な水平力を与える | 4-4-3(移動式足場の上では、移動はしご、脚立等を使用しない) |
| 足場の同一外側面を複数の作業者が同時に昇降する | 4-4-5(同一面より同時に2名以上の者が昇降しない) |
正直なところ、職人さんに「なぜダメなのか」を説明するなら、条文の番号よりこの対応表のほうが材料になります。脚立を上に持ち込むと足場に大きな水平力がかかる、同じ面から2人で同時に登るのは過去の転倒の型そのもの、という理由が付くと、決まりが「上から言われたルール」ではなくなるからです。
安衛則の足場の条文はどこまで当てはまるか
「法令ではどこに書いてある?」への答えは、結論「労働安全衛生規則で移動式足場という語が出てくるのは第570条だけ」です。e-Govの安衛則・施行令の現行版の全条文を「移動式足場」「ローリングタワー」で検索して確認した範囲では、ヒットするのは安衛則第570条のみでした。
第570条は「鋼管足場」の条です。第1項第1号の脚部の措置には「足場(脚輪を取り付けた移動式足場を除く。)」という括弧書きがあり、第2号が「脚輪を取り付けた移動式足場にあつては、不意に移動することを防止するため、ブレーキ、歯止め等で脚輪を確実に固定させ、足場の一部を堅固な建設物に固定させる等の措置を講ずること。」です(労働安全衛生規則 第570条第1項第1号・第2号)。ただし鋼管足場の条なので、アルミ製のローリングタワーにそのまま及ぶかどうかは、この記事で確認した資料からは言い切れません。一方で、確認した範囲では第562条・第563条・第567条に移動式足場を除外する文言は見当たらず、後の「朝の点検」は第567条第1項をそのまま当てはめた形で書いています。
作業床・最大積載荷重・点検の条
作業床の第563条は、対象が「足場(一側足場を除く。)における高さ二メートル以上の作業場所」です。第1項第2号は、つり足場の場合を除き、幅40cm以上・床材間の隙間3cm以下。第3号は、わく組足場以外の足場では手すり等及び中桟等。第6号の高さ10cm以上の幅木等は、作業のため物体が落下することにより労働者に危険を及ぼすおそれのあるときの規定で、ただし書も付いています(労働安全衛生規則 第563条第1項)。条件なしの指針3-6の幅木とは別に読むのが正確です。最大積載荷重の第562条は、作業床の最大積載荷重を定めて超えて積載しないことと、労働者への周知を求めています(同 第562条第1項・第3項)。
点検の第567条は、項で中身が違います。第1項は、点検者を指名して、その日の作業を開始する前に、作業を行う箇所に設けた足場用墜落防止設備の取り外し及び脱落の有無を点検させる毎日の点検。第2項は悪天候・中震以上の地震・組立て等の後の9項目の点検で、第3項でその結果と点検者の氏名などを記録・保存します(同 第567条第1項〜第3項)。令和5年の改正(R5.10.1施行)で加わったのは、点検者の指名と、組立て等の後の点検での点検者の氏名の記録・保存で、点検と記録そのものは改正前からありました(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署 リーフレット「足場からの墜落防止措置が強化されます」)。この改正が移動式足場を含むと明示した記述は、確認した範囲(同リーフレット、基発0314第2号の冒頭、足場からの墜落・転落災害防止総合対策推進要綱の別紙)にはありません。
なお宮崎労働局の「足場の規則改正に係るQ&A」は、Q6の「ローリングタワー(移動式足場)についても、今回の足場に関する規則改正が適用されるのでしょうか?」に「適用されます。」と答えています。ただし平成21年6月1日施行の改正についての問答で、現行の第563条とは条項の内容が異なる箇所があるため、当時の考え方を知る資料として読むのが安全です。
組立てに要る資格|特別教育と作業主任者の線引き
「組み立てる人に特別教育は要る?」への答えは、結論「足場の組立て等の業務として特別教育の対象になる、というのが建災防の答え」です。根拠の条文は安衛則第36条第39号の「足場の組立て、解体又は変更の作業に係る業務(地上又は堅固な床上における補助作業の業務を除く。)」です(労働安全衛生規則 第36条第39号)。教育は学科教育で、各科目を次の時間以上行うものとされています(安全衛生特別教育規程 第22条・平成27年厚生労働省告示第114号・平成27年7月1日適用)。
- 足場及び作業の方法に関する知識:3時間以上
- 工事用設備、機械、器具、作業環境等に関する知識:0.5時間以上
- 労働災害の防止に関する知識:1.5時間以上
- 関係法令:1時間以上
足場の組立て等作業主任者技能講習を修了した者は、科目の全部を省略できます(基発0331第10号 平成27年3月31日 第3の1)。ローリングタワーについては、建設業労働災害防止協会のリーフレットが「脚立足場やローリングタワーの組立て等の作業に就く場合も特別教育は必要です。」「高さに制限はありません。」と答えています(建災防リーフレット「足場の組立て等の業務に係る特別教育」)。団体の資料で、同じ趣旨の厚生労働省の一次原文はこの記事では確認できていません。
作業主任者は、安衛則第565条が令第6条第15号の作業について選任を求めていて、第15号は「つり足場(ゴンドラのつり足場を除く。以下同じ。)、張出し足場又は高さが五メートル以上の構造の足場の組立て、解体又は変更の作業」です(労働安全衛生規則 第565条・労働安全衛生法施行令 第6条第15号)。ローリングタワーがこれに当たるかを明示した記述は、確認した範囲(e-Govの安衛則・施行令、労働局Q&A、建災防の資料、厚労省パンフレット、総合対策推進要綱、基発0331第10号)にはありません。第15号の高さの基準と合わせて、元請や所轄の監督署に確かめるのが確実です。選任の考え方は足場の組立て等作業主任者の解説にまとめています。
手すりが載せてあるだけだった墜落事例(No.100802)
「実際にどんな事故が起きている?」には、厚生労働省の職場のあんぜんサイトの事例No.100802が具体的です。工場建屋の内装工事で、ボード張りをしていた被災者が、作業床の地上からの高さ975cmのローリングタワー上で煙草を受け取ろうと手すりに近づいたときにバランスを崩し、約10m下のコンクリート床に墜落して亡くなりました。保護帽は着用していませんでした(厚生労働省 職場のあんぜんサイト 労働災害事例 No.100802)。
事例が原因として挙げているのは3つ(手すりが緊縛されていなかったこと・手すりの固定方法を確認していなかったこと・喫煙等についての指示が不明確だったこと)で、中心は手すりの固定です。墜落した箇所では、手すりのパイプが他のパイプの上に載せてあるだけで、固定方法はパイプの端部の穴に番線を通して輪にし、建地の単管に掛ける形式でした。また事例は、このタワーを使う前に別の内装会社の作業員が材料を荷揚げするため一時手すりを外していたことも記しています。手すりを外したら直ちに原状に戻すという指針4-4-4とつながる場面です。職長は朝に手すりの点検を指示していたものの、実際には確実な点検が行われていませんでした(同 原因)。事例が示す対策は4つです(同 対策)。
- 作業開始前および荷揚げ作業の終了後等に、手すりの緊縛等の状態を必ず確認する(安衛則第519条関連)。番線の輪のような着脱しやすい固定ではなく、専用の固定用金具を使用する等の方法を採る
- 乗ったまま移動せず、安全な昇降用梯子等で地上に降りたうえで移動する。短時間の休憩でも保護帽を着用する
- 喫煙場所の特定等の指示を明確に行い、ローリングタワー上での喫煙は厳禁する
- 手すりの固定状態の確認と是正を徹底し、管理者が定期あるいは随時に巡視等で確認する
器具の使い方はフルハーネス特別教育の記事、朝礼での共有の仕方はヒヤリハットの記事で扱っています。脚立上からの転落の事例No.101066は、対策として手すりが設置されたローリングタワー等の使用を挙げています(同 No.101066)。
朝の点検で見る6つのこと
「毎日の点検は誰が何を見る?」には、結論「点検する人を決めて、その日の作業開始前に、指針と安衛則の語に沿って見る」が答えです。第567条第1項の毎日の点検事項(足場用墜落防止設備の取り外し及び脱落の有無)に指針の使用時の決まりを足して、6つにまとめました。第2項の9項目は悪天候・地震・組立て等の後の項目なので、毎朝の項目とは分けます。
- 作業を行う箇所の手すり・中さん等が外れていないか、脱落していないか(安衛則第567条第1項・指針4-4-4)
- すべての脚輪のブレーキが作動していて、効き具合を確かめたか(指針4-3-2)
- 最大積載荷重が見やすい箇所に表示されているか(指針4-1-2)
- 作業床の上に移動はしご・脚立等を持ち込んでいないか(指針4-4-3)
- 控わくの取付け状態・接地状態に異常がないか(指針4-3-4)
- おうとつ又は傾斜が著しい床では、ジャッキ等で作業床の水平が保たれているか(指針4-3-3)
参考として、建災防の外国人建設就労者向け教材には、昇降設備の有無や取扱責任者表示、点検表の有無など11の点検項目が並んでいます(建災防 Ⅱ-5 p.15)。仮設全体の段取りは仮設計画の進め方で整理しています。手すりに目が行きがちですが、最大積載荷重の表示が無いタワーは、何kgまで載せてよいかを誰も言えないまま一日が始まってしまいます。
移動式足場に関する情報まとめ
- 移動式足場とは:脚輪で動かせるわく組の足場。数値は安衛法第28条第1項に基づく技術上の指針(技術上の指針公示第6号)にある
- 構造の数値:高さはH≦7.7L-5(壁つなぎ又は控を設けた場合を除く)、手すり90cm以上・幅木10cm以上。段数の規定は指針・安衛則・施行令に無い
- 移動と定置:労働者を乗せて移動しない、ブレーキは移動中を除き常に作動、上で脚立を使わない、同一面から2名同時に昇降しない
- 安衛則:「移動式足場」の語は鋼管足場の第570条だけ。他の条は対象と条件を原文どおりに読む
- 資格:特別教育は第36条第39号で、建災防はローリングタワーも必要と答えている。作業主任者は高さで断定しない
- 事例と点検:手すりが載せてあるだけで墜落した事例があり、朝は手すりの外れ・ブレーキ・表示から確かめる
以上が移動式足場に関する情報のまとめです。
ローリングタワーは、組んだ瞬間より、動かすときと、誰かが手すりを外したあとが危ない道具です。高さは段数ではなく脚輪の主軸間隔との関係(H≦7.7L-5、壁つなぎ又は控を設けた場合は別)で決まり、動かすときは必ず人を降ろし、外した手すりは戻ったかを確かめる。この3つを朝礼とKYで言い続けることが、施工管理にできるいちばん効く対策だと、僕は考えています。
Q1:ローリングタワーは何段まで組めますか?
指針の原本全文・安衛則・施行令を確認した範囲では、段数の規定はありません。高さは指針3-1-1のH≦7.7L-5で決まります(壁つなぎ又は控を設けた場合を除く)。「5段まで」は建災防の教材の点検項目にある数字です。
Q2:少しの距離なら、人が乗ったまま動かしてもいいですか?
指針4-2-3は「移動式足場に労働者を乗せて移動してはならないこと。」と定めています。事例No.100802の対策も、地上に降りたうえで移動する、としています。
Q3:ローリングタワーの組立てに特別教育は要りますか?
安衛則第36条第39号は、足場の組立て、解体又は変更の作業に係る業務を特別教育の対象にしていて、建災防のリーフレットは、ローリングタワーの組立て等の作業に就く場合も必要で、高さに制限はない、と答えています。
足場全体の中での位置づけを確かめるなら足場の種類、組立ての体制を決めるなら足場の組立て等作業主任者に進むと、話がつながります。
