- 足場台と脚立って、同じもの?呼び方の違いだけ?
- 脚立は天板に乗るなって言うのに、足場台の天板には乗っていいの?
- 踏台と足場台は何が違う?
- 可搬式作業台と足場台、どこで線を引けばいい?
- 安衛則だと足場台は脚立の扱いになるの?
- 脚立の75度ってどこを測る?
- 2人で乗ってもいい?天板の上にさらに台を置くのは?
- 職人が持ち込んだ足場台、何を見てOKを出せばいい?
- 新規入場者教育で何を言えばいい?
上記の様な悩みを解決します。
足場台は、JIS S 1121:2013で脚立の種類の1つ「足場台脚立」として、天板面までの垂直高さが1,000mm未満で、主に天板に乗って作業に使用するもの、と区分されている道具です。ただし「脚立は天板に乗らない、足場台は乗ってよい」と言い切ることはできません。同じJISは、附属書A(参考)の表示の例で、天板に乗ることのできる脚立と乗ることのできない脚立を分けて書いており、乗ってよいかは道具の種類と、その製品の表示・取扱説明書で決まります。
今回は定義・脚立との違い・正しい乗り方といった基本を押さえた上で、通販の比較記事や洗車用品の解説では出てこない「安衛則第528条・第518条の当てはめ」「仮設工業会の可搬式作業台の使用基準との違い」「元請として持ち込みを判断するときのルール」まで、施工管理の目線で整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、朝礼やKYで脚立の話をする立場になったばかりの方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
足場台とは?JISでは「主に天板に乗って使う脚立」に区分される道具
足場台とは、結論「JIS S 1121:2013で足場台脚立と区分される、主に天板に乗って作業に使う脚立の一種」です。JIS S 1121:2013は、天板面までの垂直高さが1,000mm未満で、主に天板に乗って作業に使用するものを足場台脚立と区分しています(JIS S 1121:2013 表1)。JIS S 1121はアルミニウム合金製の脚立及びはしごの規格で、2024年11月20日に改正版のJIS S 1121:2024が発行されています。この記事で引くのは2013年版の規定で、2024年版で定義や数値が変わっていないかは確認できていません。
JIS S 1121:2013は、まず脚立そのものを「自立する構造で,昇降及び高所作業に使用するもの」と定め、その中に専用脚立、兼用脚立、足場台脚立及び三脚脚立がある、としています(JIS S 1121:2013 3.1)。つまり2013年版では、足場台脚立は脚立の中の1種類という位置づけです。
2013年版の表1に並ぶ脚立の種類と、高さの区切りを整理するとこうなります。
- 専用脚立・兼用脚立:乗ることのできる天板又は最上段踏ざんまでの垂直高さが2,000mm未満(JIS S 1121:2013 表1)
- 足場台脚立:天板面までの垂直高さが1,000mm未満で、主に天板に乗って作業に使用するもの(同 表1)
- 三脚脚立:乗ることのできる天板又は最上段踏ざんまでの垂直高さが3,000mm未満で、支柱が3本で主に造園作業に使用するもの(同 表1)
製品として売られている足場台の天板高さも見ておきます。製品名に「足場台」とつく例として、長谷川工業のDRXBは天板高さ0.52m(天板70×30cm)、0.75m(100×30cm)、0.98m(100×30cm)の3型式があります(長谷川工業 DRXB 製品ページ)。アルインコのPXGK-910Wは天板高さ0.82m、天板寸法400×881mmです(アルインコ 足場台 PXGK-W 製品ページ)。どちらも数字の上では1,000mmを下回っていますが、これらの製品がJISの足場台脚立に当たるかどうかは、この記事では確認していません。持ち込まれた製品が何の規格に沿っているかは、本体の表示で見るものです。
現場で「立馬」と呼ばれる道具が足場台なのか可搬式作業台なのかは、現場ごとに確かめないと噛み合わないので、この記事では呼び名ではなく規格や認定基準の区分で整理します。足場そのものの種類(本足場・一側足場・移動式足場など)との違いを先に押さえたい方は、足場の種類の整理から読むと全体の位置関係がつかめます。
僕の整理では、足場台は名前に反して「足場」ではなく「脚立の仲間」と捉えておくのが一番ズレません。
脚立・踏台・可搬式作業台との違い|分かれ目は「天板に乗れるか」
結論から言うと、4つの道具は「天板に乗って作業してよいか」と「その根拠がどの資料にあるか」で並べると整理しやすいです。よくある「脚立は乗らない、足場台は乗る」という二択は分かりやすい反面、正確ではありません。JIS S 1121:2013も、附属書A(参考)の表示の例の中で、「天板に乗ることのできる脚立」と「天板に乗ることのできない脚立」を分けて書いているからです(JIS S 1121:2013 附属書A(参考)A.2)。乗ってよいかは、道具の種類と、その製品の表示・取扱説明書で決まります。
4者を、根拠資料の語のまま並べたのが次の表です。
| 道具 | 区分の根拠 | 天板に乗るか(資料の語) | 高さの区切り(資料の数値) |
|---|---|---|---|
| 脚立(専用・兼用) | JIS S 1121:2013 表1 | JISは「天板に乗ることのできる脚立」と「天板に乗ることのできない脚立」を分けている。長谷川工業の脚立の使い方は「天板に乗らない」 | 乗ることのできる天板又は最上段踏ざんまで2,000mm未満(JIS 2013年版) |
| 足場台(足場台脚立) | JIS S 1121:2013 表1 | 「主に天板に乗って作業に使用するもの」(JIS 2013年版)。アルインコは「身体が天板の中心にくる位置に乗る」 | 天板面まで1,000mm未満(JIS 2013年版) |
| 踏台 | JIS 2013年版に区分名としての定義なし | ピカコーポレイションは「800㎜以上であっても天板に乗れる構造にしたツール」。長谷川工業は「天板に乗る時は、身体が天板の中心にくる位置に」 | 資料に共通の数値なし |
| 可搬式作業台 | 仮設工業会の認定基準(杉孝の法令集の引用・二次資料) | 「作業に十分な面積を有する天板(作業床)」を持つ | 開脚状態の垂直高さ2m未満(同引用) |
二択で覚えてしまうと、現場で2つの困りごとが起きます。1つは、天板に乗れる構造の踏台や脚立を持ち込んだ職人に「脚立は天板禁止」と言ってしまい、根拠を聞かれて詰まること。もう1つは、「足場台だから天板に乗っていい」と思い込み、天板に乗ること禁止の旨が表示された製品にも乗ってしまうことです。どちらも、呼び名と道具の中身がずれたときに起きます。表の「天板に乗るか」の列を、あえて資料の語のまま残したのはそのためです。
脚立:乗れるものと乗れないものがある
脚立について、厚生労働省のリーフレット「脚立を使う前に」は作業前のチェックとして「天板上や天板をまたいで作業をしない」「作業は2段目以下の踏みさんを使用する (3段目以下がよりよい)」を挙げています(厚生労働省 脚立を使う前に 令和3年3月)。メーカー側でも、長谷川工業は脚立の使い方として「【天板に乗らない】」「【脚立に跨がらない】」「【天板に座らない】」と示し、天板を含め上から3段目(210cmタイプ以下は2段目)以下の踏ざんに乗るよう書いています(長谷川工業 脚立の安全な使い方)。
ここで押さえたいのは、厚労省のリーフレットの記述はあくまで「脚立」についてのもので、足場台がその対象に含まれるかどうかはリーフレットに書かれていない点です。一方でJIS S 1121:2013は、天板に乗ることのできる脚立には「天板の上で爪先立ちをしないこと」、天板に乗ることのできない脚立には天板に「天板に乗ること,またがること,すわること禁止」という旨を表示する例を、参考の附属書で示しています(JIS S 1121:2013 附属書A(参考)表示)。脚立の中にも乗れるものと乗れないものがあり、それを見分ける手がかりが本体の表示だ、という組み立てです。
足場台:主に天板に乗って使う区分
足場台は、JIS S 1121:2013で「主に天板に乗って作業に使用するもの」と区分されています(JIS S 1121:2013 表1)。メーカーの説明も同じ方向で、長谷川工業は「足場台は広い作業面を確保できるように設計されており、一定の高さで安定した作業が可能です」と書き(長谷川工業 足場台の適切な選び方)、ピカコーポレイションは「天板が広く、複数歩分の作業スペースがある」と説明しています(ピカコーポレイション 2025.06.19)。アルインコの足場台の使い方では、乗る位置を「身体が天板の中心にくる位置に乗る」としています(アルインコ 足場台の安全な使い方)。
手すり付きの足場台については、ピカコーポレイションが「手すりやエリアガードを取付けできるタイプもあり」と書いています(ピカコーポレイション 2025.06.19)。手すりを付けた場合の安全性がどれだけ上がるかは、この記事の資料では確かめられていません。参考になるのは厚労省のパンフレットで、墜落の危険性が相対的に低い道具の例として、ローリングタワー(移動式足場)、可搬式作業台、手すり付き脚立、高所作業車を挙げています(厚生労働省 はしごや脚立からの墜落・転落災害をなくしましょう! 平成29年3月 p.3)。
踏台:JIS 2013年版には区分名が無い
「踏台」は、JIS S 1121:2013の本文に区分名としての定義がありません。2013年版の脚立の種類は、専用脚立・兼用脚立・足場台脚立・三脚脚立の4つです(JIS S 1121:2013 表1)。メーカーの説明では、ピカコーポレイションが「踏台は、脚立に属しますが、800㎜以上であっても天板に乗れる構造にしたツールです」としています(ピカコーポレイション 2025.06.19)。長谷川工業の踏台の使い方は「天板に乗る時は、身体が天板の中心にくる位置に乗ってください」「【天板に片足で乗らない】」「【天板の端に乗らない】」と書いていて、天板に乗る前提の書き方です(長谷川工業 踏台の安全な使い方)。
踏台の天板に乗ってよい、というメーカーの説明があることで、「脚立の仲間はどれも天板に乗らない」という言い方が成り立たないことが分かります。踏台と足場台の線引きは、規格の区分名ではなくメーカーごとの呼び方に近いので、現場では呼び名ではなく本体の表示で確認するのが確実です。
可搬式作業台:仮設工業会の認定基準の道具
可搬式作業台は、JIS S 1121ではなく、一般社団法人仮設工業会の認定基準で定義される道具です。仮設工業会の認定基準として杉孝の法令集が引用している内容では、可搬式作業台は「作業に十分な面積を有する天板(作業床)と天板を支持する支柱」などからなり、「任意の作業場所に容易に持ち運んで移動でき、単独で使用するもの」とされています。構造は、開脚状態における垂直高さ(支柱を最大に伸ばしたとき)が2m未満で、垂直高さが1.5mを超えるものは天板面から60cm以上突出した手がかり棒等を設け、天板の大きさは幅40cm以上、長さ60cm以上、と書かれています(杉孝 別冊 仮設機材災害防止法令集 p.136 の認定基準の引用)。
これは杉孝の資料が引用したもので、二次資料です。認定基準書『仮設機材認定基準とその解説』は第11版(令和8年9月1日発行)が最新ですが、本文は有償刊行物で、この記事では確認できていません。上の数値は引用元の資料が書かれた時点のものとして読んでください。高さの上限については、メーカーの中尾も「仮設工業会の認定基準では、可搬式作業台、移動式室内足場、脚立の全てにおいて最大高さ2000mm未満という条件がある」とFAQに書いています(中尾 よくあるご質問)。
現場で道具を見分けるときは、次の順番で確かめると迷いません。
- 本体の表示で、どの規格・認定に沿った道具かを見る
- 表示や取扱説明書に「天板に乗ること禁止」の旨があるかを見る
- 天板に乗れる道具なら、乗る位置(天板の中心)と最大使用質量を見る
- 可搬式作業台なら、使用高さと手がかり棒等の有無を見る
僕の考えでは、この比較で一番大事なのは「呼び名で判断しない」ことです。同じ見た目の道具が、ある職人には足場台、別の職人には踏台と呼ばれていることは十分ありえます。表示と取扱説明書を見て、天板に乗れる道具かどうかを確かめる。それだけで朝礼の注意が具体的になります。
天板に乗る危険の考え方|「乗るな」から「どう乗るか」へルールが変わる
天板に乗る危険は、結論「乗れない道具では乗ること自体が問題になり、乗れる道具では乗り方が問題になる」と分けて考えると整理できます。脚立の「天板に乗るな」は前者のルールで、足場台のように天板に乗る使い方が想定された道具では、天板の中心に乗る、身を乗り出さない、天板に物を置かない、といった乗り方のルールが中心になります。
脚立の天板で何が起きているか
厚労省のパンフレットは、脚立の事例として「脚立の天板に乗って作業したところ、バランスを崩して背中から墜落した。」を挙げ、対策例として「天板での作業は簡単にバランスを崩しやすいので禁止。より安全な代替策を検討する。」と書いています(厚生労働省 はしごや脚立からの墜落・転落災害をなくしましょう! 平成29年3月 p.2)。同じページにはもう1つ、「脚立をまたいで乗った状態で蛍光灯の交換作業をしていたところ、バランスを崩し階段に墜落した。」という事例があり、脚立にまたがっての作業は一旦バランスが崩れたら身体を戻すのが非常に難しい、脚立の片側を使って作業すると3点支持がとりやすい、と対策例が続きます(同 p.2)。
どちらも脚立の事例で、足場台の事例ではありません。それでも、天板の上で身体が安定を失うと戻せない、という点は足場台にもそのまま通じる話です。天板に乗ってよい道具だからといって、天板の上でバランスを崩さない保証にはならないからです。
天板の上で姿勢を保つための決まり
厚労省の「脚立を使う前に」は、天板に乗らないことのほかに、姿勢の保ち方もチェック項目に入れています。「身体を天板や踏みさんに当て、身体を安定させる」「作業は頭の真上でしない」「荷物を持って昇降しない」の3つです(厚生労働省 脚立を使う前に 令和3年3月)。これらも脚立について書かれたものですが、頭の真上の作業や荷物を持った昇降で姿勢が崩れる、という構図は天板に乗る道具でも変わりません。アルインコが足場台のまちがった使い方に「身体が安定を得られないような荷物を持って、昇り降りする」を挙げているのも、同じ方向の注意です(アルインコ 足場台の安全な使い方)。
そもそも天板に乗らずに済む道具はないか、という考え方もあります。厚労省のパンフレットは「はしごや脚立は、足元が不安定になりやすく危険です。まず、代わりとなる床面の広いローリングタワー(移動式足場)や作業台などの使用を検討しましょう。」と書いています(厚生労働省 平成29年3月 p.3)。天板に乗る危険を減らす一番確実な方法は、乗り方を工夫するより先に、床面の広い道具に替えられないかを検討することです。
JIS 2013年版の上枠の規定
JIS S 1121:2013は構造の規定として、「天板に乗ることのできる脚立で天板面までの垂直高さが800 mm以上のものにあっては,上枠がなければならない。ただし,足場台脚立はこの限りでない。」としています(JIS S 1121:2013 構造)。条件の向きを正確に読むと、天板に乗れる脚立のうち天板面まで800mm以上のものには上枠が要り、足場台脚立はその対象から外れています。足場台脚立は1,000mm未満の区分なので、天板面までが800〜999mmの足場台脚立でも、2013年版では上枠は求められていない、という読み方になります。
上枠がどんな目的で求められているかは、この記事の資料には書かれていません。ここから言えるのは、2013年版では「天板に乗れる脚立」と「足場台脚立」で構造の求められ方が違う、という事実までです。
乗ってよい道具でもやらせない使い方
天板に乗れる道具でも、やってはいけない使い方ははっきりしています。JIS S 1121:2013は参考の附属書で、取扱説明書に載せる注意事項の例を挙げていて、その中に「例48 足場台脚立については,天板の上に台又は物を置いて使用しないこと。」「例49 同時に2人以上乗らないこと。」「例51 製品から身体を乗り出さないこと。」があります(JIS S 1121:2013 附属書A(参考)取扱説明書の記載例)。これは規格の要求事項ではなく記載例ですが、メーカーの取扱説明書がどんな注意を書くかの目安になります。なお例49は足場台脚立に限らない脚立全般の例です。例48の原文が「台」だけでなく「台又は物」となっている点も見落とせません。工具箱やバケツを天板に置いて踏み台代わりにする使い方も、この記載例の範囲で読むのが自然でしょう。
メーカーの説明も合わせて、乗ってよい道具でも現場でやらせない使い方を並べます。
- 天板の上に台又は物を置いて使う(JIS S 1121:2013 取扱説明書の記載例48)
- 同時に2人以上乗る(同 記載例49)
- 身を乗り出す、壁や物を無理に押したり引いたりする(アルインコ 足場台の安全な使い方)
- 足場台を背にして昇り降りする、身体が安定しない荷物を持って昇り降りする(同)
- 天板に片足で乗る、天板の端に乗る(長谷川工業 踏台の安全な使い方)
- スリッパなど滑りやすい物を履いて乗る(アルインコ 足場台の安全な使い方)
可搬式作業台にも同じ考え方があり、仮設工業会は認定品のアルミニウム合金製可搬式作業台の使用基準の例として「可搬式作業台の天板の上では、脚立、架台、はしご等を使用してはならないこと。」を挙げています(仮設工業会 安全性が確認されている作業台の使用について 2022.11.24)。天板に乗れる道具の上にさらに道具を重ねて高さを稼ぐ使い方は、足場台でも可搬式作業台でも認められていない、と覚えておけば十分です。
開き止めと「身を乗り出す人」への声かけ
開き止めのロックは、乗る前の確認です。厚労省の「脚立を使う前に」は「開き止めに確実にロックをかけた」「脚立は安定した場所に設置している」を作業前のチェックに入れています(厚生労働省 脚立を使う前に 令和3年3月)。足場台についても、アルインコは「設置後、ガタツキがないことを確認する」としています(アルインコ 足場台の安全な使い方)。
身を乗り出して作業している人への声かけは、「危ない」だけで終わらせると次も同じことが起きます。僕なら「届かないなら一回降りて、台を動かしてから乗り直そう」と、手順そのものを言います。身を乗り出す背景には台を動かす手間があるはずなので、動かすことを当たり前の手順として認めてしまうほうが効きます。ヒヤリとした場面を拾って共有する流れは、ヒヤリハットの書き方と活かし方にまとめています。
安衛則の当てはめ|脚立の第528条と、高さ2m以上の第518条
安衛則の当てはめは、結論「脚立には第528条の4項目があり、高さ2m以上の箇所での作業には第518条がかかる」です。足場台が第528条の「脚立」に当たるかどうかを示した公的な解釈は、この記事の資料にはありません。そこは断定せず、条文と資料をそのまま並べます。
第528条(脚立)の4項目
労働安全衛生規則第528条は、「事業者は、脚立については、次に定めるところに適合したものでなければ使用してはならない。」として、次の4つを定めています(労働安全衛生規則 第528条)。
- 一 丈夫な構造とすること。
- 二 材料は、著しい損傷、腐食等がないものとすること。
- 三 脚と水平面との角度を七十五度以下とし、かつ、折りたたみ式のものにあつては、脚と水平面との角度を確実に保つための金具等を備えること。
- 四 踏み面は、作業を安全に行なうため必要な面積を有すること。
75度は第三号の文言どおり「脚と水平面との角度」です。JIS S 1121:2013にも、「脚立の昇降面及び背面の傾斜角度[図1,図2 a),図6及び図7のθ1]は,75°以下でなければならない。なお,支柱の長さが調整できるものにあっては最大長さにした状態で確認する。」としています(JIS S 1121:2013 7 a) 寸法 e))。図6は足場台脚立の例なので、2013年版では足場台脚立もこの規定の対象です。
僕の意見としては、足場台はJIS(2013年版)では脚立の種類の1つなので、現場では第528条の各号に照らして点検しておくのが筋だと考えています。構造・材料・開き止めの金具・踏み面の4点は、足場台を見るときにもそのまま使えます。
第518条:高さ2m以上は作業床、困難なら墜落制止用器具
第518条は「事業者は、高さが二メートル以上の箇所(作業床の端、開口部等を除く。)で作業を行なう場合において墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けなければならない。」とし、第2項で、作業床を設けることが困難なときは防網を張り、労働者に要求性能墜落制止用器具を使用させる等の措置を求めています(労働安全衛生規則 第518条)。
厚労省の「脚立を使う前に」は「高さ2m以上での作業時は、墜落制止用器具の使用も必要です!」と明記しています(厚生労働省 脚立を使う前に 令和3年3月)。またパンフレットは、足元の高さが2m以上の箇所で作業する場合には、原則として十分な広さと強度をもった作業床や墜落防止措置(手すり等)を備えた用具を使用するよう書いています(厚生労働省 平成29年3月 p.3)。ただし、2m未満なら何も要らない、という読み方はしないでください。高さ2m以上の作業の考え方は高所作業のルールと対策で、墜落制止用器具を使わせる側の準備はフルハーネス特別教育の記事で詳しく扱っています。
はしご等からの墜落・転落の統計
厚生労働省のパンフレット(平成29年3月)には、平成23年〜27年の5年平均で、墜落・転落による休業4日以上の被災労働者計20,186人のうち、「はしご等」が4,535人(約23%)とあります(厚生労働省 平成29年3月 p.1、出典:労働者死傷病報告)。ここでの「はしご等」は、はしご、脚立、作業台などです。同じ資料は見出しで「「はしご等」は墜落・転落災害の原因で最も多い」と書き、さらに過去5年間の死亡災害について「毎年30人弱の労働者が「はしご等」からの墜落・転落により亡くなっている」としています(同 p.1、死亡の数は死亡災害報告から)。
通達でも、「はしご等からの墜落・転落災害は、墜落・転落災害全体の2割を占め、建設業では、墜落・転落災害の約3割と最も多くなっている。」とされています(基安安発0317第1号 令和3年3月17日)。パンフレットの数字は平成23〜27年の集計で、通達とは別の資料です。どちらも足場台が「はしご等」に含まれるかまでは書いていないので、足場台だけの件数として読まないようにしてください。
現場で足場台を使わせるときのルール作り
現場のルールは、結論「持ち込み時に表示を見て、乗り方と人数を決めて、教育で言い切る」の3段で作ると回ります。
最大使用質量は製品の表示で見る
足場台の耐える重さは、製品ごとの最大使用質量で見ます。例として、長谷川工業のDRXBは最大使用質量100kg(長谷川工業 DRXB 製品ページ)、アルインコのPXGK-Wは「最大使用質量130kgに対応した安定感のある足場台」とされています(アルインコ 足場台 PXGK-W 製品ページ)。JIS S 1121:2013の表2には、記号10が最大使用質量100kgで「主に軽作業に用いるもの」、記号13が130kgで「主に業務用に用いるもの」とあり、表示の記号の例として「E−10 ……… 最大使用質量100 kgの足場台脚立の場合」が示されています(JIS S 1121:2013 表2・記号の例)。上の2製品がこの記号のどれに当たるかは、この記事では確認していません。
最大使用質量に工具や材料の重さをどう含めるかは、製品の取扱説明書で確認してください。
可搬式作業台の使用基準は「積載」の上限で読む
可搬式作業台については、仮設工業会自身が書いた記事(2022年)で、認定品のアルミニウム合金製可搬式作業台の使用基準が例として示されています。その中には「可搬式作業台は、単独での使用を原則とすること。」「使用する場所の床面等の傾斜や凹凸等による転倒および不意の移動等の危険がないことを確認てから設置すること。」「使用高さが1.5mを超える場合の昇降には手がかり棒等を必ず使用すること。」「人を乗せたままで移動をしないこと。」「可搬式作業台には、150 ㎏を超えて積載しないこと。」があります(仮設工業会 安全性が確認されている作業台の使用について 2022.11.24、原文の「確認てから」はママ)。
150kgは「積載」の上限として書かれている数字で、足場台の最大使用質量100kgや130kgと並べて比べるものではありません。可搬式作業台は使用基準で、足場台は製品の表示で、と別々に見てください。
持ち込み時に見る項目
職人が足場台を持ち込んだとき、元請として見る項目です。
- 本体の表示で、天板に乗ってよい道具か、天板に乗ること禁止の旨があるかを確認する
- 最大使用質量の表示を確認し、取扱説明書の扱いと合わせて作業内容に足りるかを見る
- 開き止めの金具が効くか、支柱・踏ざん・天板に著しい損傷や腐食がないかを見る(労働安全衛生規則 第528条の各号に照らして)
- 設置面にガタつきが出ないか、使う場所の床で確認する(アルインコ 足場台の安全な使い方)
- 作業の足元が2m以上になる使い方をしないか、作業計画と突き合わせる(労働安全衛生規則 第518条)
持ち込みを止めるのはこの裏返しで、表示が読めない、開き止めが効かない、損傷がある、天板に台を重ねないと届かない、のどれかに当たる場面です。その場では使わせずに、別の道具か段取りを考えます。持ち込みを止める判断は元請の仕事なので、止める条件を先に決めておくと現場で迷いません。
新規入場者教育で言う3点
新規入場者教育で足場台について言うなら、3点に絞ります。1つ目は「天板に乗ってよいかは、呼び名ではなく本体の表示と取扱説明書で決まる」。2つ目は「乗れる道具でも、天板の中心に乗る、身を乗り出さない、天板に物や台を置かない、2人で乗らない」。JIS S 1121:2013の附属書A(参考)が取扱説明書の記載例として挙げている内容(例48・49・51)と、アルインコの足場台の使い方(天板の中心に乗る、身を乗り出さない)を、現場の教育用に並べたものです。3つ目は「開き止めとガタつきを乗る前に確認する」。教育で何をどの順で話すかは新規入場者教育の進め方に、日々の朝礼で足場台を話題にするときの組み立てはKY活動のやり方に整理しています。
足場台に関する情報まとめ
- 足場台とは:JIS S 1121:2013で足場台脚立と区分される、天板面まで1,000mm未満・主に天板に乗って作業に使う脚立の一種
- 他の道具との違い:天板に乗れるかは呼び名ではなく、道具の種類と製品の表示・取扱説明書で決まる。踏台はJIS 2013年版に区分名がなく、可搬式作業台は仮設工業会の認定基準の道具
- 天板に乗る危険:乗れない道具では乗ること自体、乗れる道具では乗り方が問題。物や台を置かない・2人で乗らない・身を乗り出さない
- 安衛則の当てはめ:脚立は第528条の4項目、高さ2m以上の箇所は第518条。足場台は528条の項目に照らして点検しておくのが筋
- 現場のルール:持ち込み時に表示・最大使用質量・開き止め・ガタつきを見て、教育では3点に絞って言い切る
以上が足場台に関する情報のまとめです。
足場台は「乗っていい脚立」と片づけられがちですが、規格の区分、製品の表示、安衛則の条文が少しずつずれて重なっている道具です。呼び名で判断せず、表示を見て、乗り方を決めて、教育で同じことを言い続ける。そこまで決めておけば、職人が何を持ち込んでも慌てずに判断できるはずです。
Q1:足場台の天板には乗っていいのですか?
JIS S 1121:2013では、足場台脚立は天板面までの垂直高さが1,000mm未満で、主に天板に乗って作業に使用するものと区分されています。ただし、手元の製品が天板に乗ってよいものかは、その製品の表示と取扱説明書で確認してください。乗れる製品でも、乗り方のルールは残ります。
Q2:足場台と脚立は何が違うのですか?
JIS S 1121:2013では、足場台脚立は脚立の種類の1つです。専用脚立・兼用脚立は乗ることのできる天板又は最上段踏ざんまで2,000mm未満、足場台脚立は天板面まで1,000mm未満で主に天板に乗って使うもの、という区分の違いがあります。脚立にも天板に乗れるものと乗れないものがあるので、二択で覚えるより表示で確認するほうが確実です。
Q3:高さ2m以上の作業に足場台を使ってもいいですか?
労働安全衛生規則第518条は、高さ2m以上の箇所で墜落の危険がある作業には作業床を設けること、困難なときは防網や要求性能墜落制止用器具等の措置を求めています。厚労省のリーフレットも、高さ2m以上での作業時は墜落制止用器具の使用も必要と書いています。足元が2m以上になる作業は、作業床や墜落防止措置を備えた方法を作業計画の段階で検討してください。
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