MENU

鉄骨の継手とは?種類、接合部との違い、位置、施工管理など

  • 鉄骨の継手ってなに?
  • 接合部とどう違うの?
  • 高力ボルトと溶接、どっちが多い?
  • 継手位置ってなんで真ん中じゃないの?
  • 鉄筋の継手と違いは?
  • 施工管理として何を見ればいい?

上記の様な悩みを解決します。

「継手」は鉄骨工事の図面・施工計画でしょっちゅう出てくる言葉ですが、「接合部」との違いが曖昧だったり、継手位置がなぜそこに来るのかを説明できる人が少なかったりします。継手は同じ部材どうしを長手方向につなぐ場所、接合部は柱と梁のような違う部材が出会う節点で、両者は別物。さらに「継手は応力が小さい所に置く」「接合部は応力が大きい所で受ける」という構造設計の論理も押さえると、施工管理として図面の読み方が深くなります。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

鉄骨の継手とは?

鉄骨の継手とは、結論「鋼材どうしを長手方向につなぎ合わせる接合部位」のことです。

英語では splice(スプライス)または joint(ジョイント)。鉄骨工事の現場では「ツギテ」「ジョイント」と呼ばれます。

ざっくりイメージすると

工場で1本の梁(H形鋼12mとか)を作っても、運送車両に乗らないことがあります。一般的にトラック輸送の上限は約10〜12m、高速道路の制限で長尺物は規制対象、揚重機(クレーン)の能力で長すぎると吊れない、というのが運搬上の制約。

→ そこで現場で運べるサイズに分割→運搬→現場で再結合する必要があり、その再結合部位が継手になります。

継手と接合部の違い

ここがよく混同されるポイント。整理しておきます。

項目 継手(スプライス) 接合部(ジョイント)
対象 同じ部材どうし 違う部材(柱と梁など)
役割 部材を長手方向に延長 力の伝達・節点の形成
位置 部材の途中(M小の所) 構造の節点(M大の所)
構造的重要度 比較的軽め 重要(地震時に支配的)
代表例 梁の中間継手、柱の継手 柱梁接合部、ブレース取付け

「継手=同じ部材の延長」「接合部=違う部材の節点」で区別。同じボルト群を使っていても、構造的役割は別物。

なぜ継手は構造設計上”楽”なのか

設計者は継手位置を「応力が小さい場所」に意図的に置きます。継手位置のM(曲げモーメント)<設計M、だから継手部の必要強度<部材本体の強度、結果として継手のボルト本数・スプライスプレートのサイズが控えめでOK、という関係。

→ 一方、柱梁接合部はM大の場所で受けるため、ダイヤフラム・スカラップ・パネルゾーンの補強が必要。継手と接合部で設計の重さが違うのが普通。

柱梁接合部はこちらの記事も参考にしてください。

あわせて読みたい
柱梁接合部とは?種類、ダイヤフラム、剛接合とピンの違いなど 柱梁接合部とは、建物の柱と梁が出会って力を伝える要となる部位のこと。種類(剛接合・ピン接合・半剛接合)、鉄骨造のダイヤフラム・スカラップの構造、RC造の納まり、設計上のパネルゾーン照査、施工管理での着眼点まで構造設計の入門レベルから現場視点で網羅的に整理しました。

鉄骨継手の種類(高力ボルト・溶接・ピン)

継手は接合方式で3種類に分けられます。それぞれ用途・施工性・コストが違うので使い分け。

①高力ボルト摩擦接合(現場の主流)

H形鋼やCチャンネルの梁の中間継手で圧倒的に多い方式。ウェブとフランジにスプライスプレート(添え板)を当て、F10TまたはS10Tの高力ボルトで強く締め付け、ボルトの摩擦力で板を一体化(=「摩擦接合」)、締付トルク管理またはマーキング法で品質確認、という流れ。

→ メリット:現場施工が比較的容易、品質チェックが視覚的、雨天時もOK。デメリット:プレートが目立つ、塗装に手間。鉄骨建方での継手はほぼこれ。

②溶接継手

工場製作の段階で材料を継ぎ足す場合や、現場でも特殊な部材で使用。完全溶け込み溶接(突合せ溶接)で部材を一体化、溶接後はプレートが不要で見た目もスッキリ、ただし現場溶接は品質管理が難しく雨天NG・風NG、検査は超音波探傷(UT)・浸透探傷(PT)などが必要、という構成。

→ 大スパン梁・特殊鋼管・継手位置を意匠的に隠したいときに採用。現場溶接の継手は基本敬遠される(品質リスクが高いため)。

③ピン接合(ピン継手)

回転を許す接合。橋梁・特殊建築で使用。1本のピン(ヒンジボルト)で接合し、回転自由で曲げモーメントを伝えず、構造的にはピン支点として機能する形。

→ 一般建築の継手では稀。橋梁の伸縮継手・大型門型ラーメンの一部などで使う。

3種類の比較表

項目 高力ボルト 溶接 ピン
施工難易度 ◎ 低 △ 高(現場) ○ 中
雨天施工 ◎ OK × NG ○ OK
品質確認 ◎ 視覚的(マーキング) △ 探傷検査 ○ 寸法確認
強度 ○ 摩擦+ボルト力 ◎ 母材並 △ ピン1本依存
意匠性 △ プレート見える ◎ スッキリ ○ 中
採用率 圧倒的多数 工場・特殊

→ 現場で採用する継手はほぼ高力ボルト摩擦接合と覚えておけばOK。

高力ボルト摩擦接合の詳細はこちらの記事も参考にしてください。

あわせて読みたい
高力ボルト摩擦接合とは?仕組み、すべり係数、施工の流れなど 高力ボルト摩擦接合とは、強く締め付けたボルトの摩擦力で板同士を一体化させる鉄骨接合の主流工法のこと。仕組み、すべり係数(0.45)、F8T・F10T・S10Tの種類、摩擦面処理、施工の流れ、トルク管理、施工管理での着眼点まで鉄骨工事の現場視点で網羅的に整理しました。

鉄骨継手の位置(なぜ「真ん中ではない」のか)

継手位置は構造設計者の判断で決まりますが、以下の原則があります。これを知っておくと「なぜここに継手がある?」と疑問に思わなくなる。

①基本原則:応力(モーメント)が小さい場所に置く

部材 継手の標準位置
単純梁 中央付近(Mmaxの真ん中)は避け、スパンの1/4〜1/3
連続梁 反曲点付近(M=0の点)
ラーメン梁 内法スパンの両端から1/4以内
フロア床面から1m上(梁端部のMからずらす)

→ 「継手位置はM小の場所」を意識すれば設計図の継手位置の意図が読める。Mmax位置(中央など)に継手がある図面は要確認(設計者の意図がはっきり示せない=リスク)。

②なぜラーメン梁の継手は「内法1/4以内」か

ラーメン梁(柱と剛接合の梁)は、構造解析的には両端のMが大(柱側でMが集中)、中央のMが小〜中、反曲点(M=0)は柱から内法の1/4〜1/3の位置に発生、という分布。

→ つまり「両端から1/4以内」=反曲点に近い=Mが小。だから継手をここに置けば、継手部の応力負担が最小で済む。

③柱の継手位置:床面から1m上が標準

柱の継手は2層分くらいの位置に置くのが一般的。工場製作で2階分の柱を1本で作る(=12m前後)、運搬は長すぎると不可なので運搬しやすい長さに、現場では床面から1m上で継手(梁端のMから離す)、という整理。

「床から1m上」梁との接合部から離れた位置で、柱断面のMが比較的小さい場所。これも構造合理性に基づく標準位置。

④継手位置の確認ポイント

施工管理者として継手位置の図面チェックポイントは、大梁の継手が両端から1/4以内or中央付近以外にあるか、柱の継手が床面から1〜1.5m上にあるか、吊り金具・補強金物の取付け位置と継手が干渉しないか、塗装・耐火被覆との取り合いとして継手周囲に作業スペースがあるか、というあたり。

→ 継手位置がおかしい=設計の意図がブレている可能性=構造設計者に確認の合図。

最大曲げモーメントについてはこちらの記事も参考にしてください。

あわせて読みたい
最大曲げモーメントとは?公式、求め方、単純梁・片持ち梁の場合など 最大曲げモーメントとは、部材内で曲げモーメントが最も大きくなる位置と値のこと。意味、単位、求め方、単純梁(等分布荷重・集中荷重)・片持ち梁の代表公式、M図での見方、施工管理での活用まで構造力学の入門レベルから現場視点で網羅的に整理しました。

施工管理での着眼点(継手の品質管理)

実際に継手部の施工管理で見るべきポイントを整理します。

①ボルト本数・配置の照合

工場で組立て図と現場図のボルト本数が一致しているかは最初に確認。チェック対象は、スプライスプレート上のボルト数、フランジ・ウェブごとの本数、千鳥配置 or 平行配置、縁端距離・ボルト間距離、というあたり。

→ ボルト1本でも欠けると応力分担が変わるので「本数厳守」。施工要領書の指示通りかをチェック。

②マーキング(締付け確認)

高力ボルトの締付け管理はマーキング(ボルト・ナット・座金・板に1本の線を引く)が標準。締付け前は全部が直線、締付け後はナット側が回転して線がズレる、ズレなしは未締付け(やり直し)、ズレすぎは過締付け(ボルト降伏のリスク)、というのが判定基準。

→ 第三者(検査員)がすべてのボルトのマーキング状態を確認するのが正規手順。マーキングがない=施工管理が甘い証拠。

③スプライスプレートの寸法・板厚

板厚・幅・長さが図面通りかも要確認。板厚は設計値以下はNG(強度不足)、幅・長さはボルト孔と縁端距離が規定値以上、材質はSS400相当でミルシート確認、というあたり。

→ 設計図と現物が違う場合、現場代替品を勝手に使うのはNG。必ず構造設計者の承認を取る。

ミルシートはこちらの記事も参考にしてください。

あわせて読みたい
ミルシートとは?見方、正式名称(英語)、類似書類との違いなど ミルシートってなに? 材料証明書との違いって? 試験成績表とは何が違うの? どこをどうやって見ればいいの? ミルシートの正式名称って? 絶対ミルシートを提出しなき...

④ボルト孔の精度

ボルト孔のズレは継手の致命的な不具合。設計孔径はボルト径+1〜1.5mm程度(基準)、工場製作精度として孔ズレで孔広げ加工は禁止(強度低下)、現場での修正はリーマ加工(±2mm程度まで可)でそれ以上はNG、というルール。

→ ボルト孔ズレで「ハンマーで叩き込んで穴に入れた」という古典的な失敗事例があります。これは強度の保証ができないので絶対NG。

⑤継手部の塗装・耐火被覆

接合完了後の表面処理も施工管理範囲。防錆塗装は継手部のボルトとプレートにペンキ系防錆塗料(現場塗り)、耐火被覆は鉄骨が露出する場合にロックウール吹付けなどで覆う、上記が継手のクリアランスを邪魔しないか事前確認、というあたり。

スプライスプレートはこちらの記事も参考にしてください。

あわせて読みたい
鉄骨のスプライスプレートとは?サルでも分かるように解説する 鉄骨のスプライスプレートとは? スプライスプレートとは、結論「継手と継手を重ね継ぐ板」のことです。 「そもそも継手って何やねん」って人もいると思うので一応解説...

鉄骨の継手に関する情報まとめ

最後に、鉄骨の継手の重要ポイントを整理します。

  • 定義:同じ鋼材どうしを長手方向につなぐ接合部位
  • 接合部との違い:継手=同じ部材の延長、接合部=違う部材の節点
  • 方式:高力ボルト摩擦接合が圧倒的多数、溶接は工場・特殊用途、ピンは稀
  • 継手位置:応力(M)が小さい場所(梁=内法1/4以内、柱=床上1m)
  • 施工管理:ボルト本数・マーキング・板厚・孔精度・塗装の5点
  • 検査:全ボルトの締付け状態を視覚的に確認(マーキング)

以上が鉄骨の継手に関する情報のまとめです。

鉄骨の継手は「鋼材を運搬可能なサイズに分割→現場で結合する」という運用上の必然から生まれた接合部位で、構造設計上は「応力小の場所に置く」という配慮で成立しています。施工管理として、継手位置の意図と、ボルト施工の品質管理を両輪で押さえれば、鉄骨建方で抜けの少ない管理ができますよ。一通り鉄骨の継手の基礎知識は理解できたと思います。

合わせて読みたい関連記事はこちら。

あわせて読みたい
柱梁接合部とは?種類、ダイヤフラム、剛接合とピンの違いなど 柱梁接合部とは、建物の柱と梁が出会って力を伝える要となる部位のこと。種類(剛接合・ピン接合・半剛接合)、鉄骨造のダイヤフラム・スカラップの構造、RC造の納まり、設計上のパネルゾーン照査、施工管理での着眼点まで構造設計の入門レベルから現場視点で網羅的に整理しました。
あわせて読みたい
高力ボルト摩擦接合とは?仕組み、すべり係数、施工の流れなど 高力ボルト摩擦接合とは、強く締め付けたボルトの摩擦力で板同士を一体化させる鉄骨接合の主流工法のこと。仕組み、すべり係数(0.45)、F8T・F10T・S10Tの種類、摩擦面処理、施工の流れ、トルク管理、施工管理での着眼点まで鉄骨工事の現場視点で網羅的に整理しました。
あわせて読みたい
鉄骨のスプライスプレートとは?サルでも分かるように解説する 鉄骨のスプライスプレートとは? スプライスプレートとは、結論「継手と継手を重ね継ぐ板」のことです。 「そもそも継手って何やねん」って人もいると思うので一応解説...
あわせて読みたい
ミルシートとは?見方、正式名称(英語)、類似書類との違いなど ミルシートってなに? 材料証明書との違いって? 試験成績表とは何が違うの? どこをどうやって見ればいいの? ミルシートの正式名称って? 絶対ミルシートを提出しなき...
あわせて読みたい
最大曲げモーメントとは?公式、求め方、単純梁・片持ち梁の場合など 最大曲げモーメントとは、部材内で曲げモーメントが最も大きくなる位置と値のこと。意味、単位、求め方、単純梁(等分布荷重・集中荷重)・片持ち梁の代表公式、M図での見方、施工管理での活用まで構造力学の入門レベルから現場視点で網羅的に整理しました。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次