- 耐震金物ってなに?
- ホールダウン金物・羽子板ボルト・かど金物の違いって?
- どの金物をどこに付けるのかどうやって決めるの?
- N値計算ってどうやるの?
- 配筋検査ならぬ「金物検査」のチェックポイントは?
- 釘の種類(CN・ZN)まで指定があるって本当?
上記の様な悩みを解決します。
耐震金物は2000年の建築基準法改正で「接合部の引抜き耐力を構造計算で確認すること」が義務化されてから一気に種類が増えた部位。図面には「HD-25」「羽子板」のような記号が当たり前のように書かれていますが、新人施工管理だと「金物の種類が多すぎてどれがどれだか分からない」という壁にぶつかりがちですよね。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
耐震金物とは?
耐震金物とは、結論「地震時に柱・梁・土台などの接合部が抜けたり外れたりするのを防ぐ補強金物」のことです。
主に木造住宅で使われ、英語では Seismic Hardware や Anchoring Hardware。木造のフレームは柱と土台、柱と梁、梁と梁が接合部で仕口・継手として組まれるわけですが、地震の水平力が加わると柱が土台から引き抜けようとする力(引抜力)が働きます。木の仕口だけだと耐え切れないので、金属で補強しましょう、というのが耐震金物の役割です。
耐震金物が登場する主な部位
- 土台と柱の接合部(柱脚)
- 柱と梁の接合部(柱頭)
- 通し柱と胴差の接合部
- 筋かいの取り付け部
- 梁同士の継手
- 床合板と土台・梁の接合(剛床)
2000年の建築基準法改正(いわゆる「告示第1460号」)で、柱の接合部については仕様規定(N値計算 or 構造計算)に基づいて金物を選定することが義務化されました。これ以降「柱頭・柱脚に何を付けるか」が金物選定の最重要ポイントになっています。
接合部・取り合いの基本的な考え方は、別記事の躯体図解説も読んでおくと現場での照合がスムーズです。

耐震金物の種類
実務でよく出てくる耐震金物を、用途別に整理します。
① ホールダウン金物(HD金物)
引抜力が大きい柱の柱脚や柱頭に使う、最強クラスの金物。土台を貫通してアンカーボルトを基礎まで届かせる形で設置します。HD-10kN、HD-15kN、HD-20kN、HD-25kN…と耐力が大きくなるにつれて金物本体も大型化。N値計算で「N値5.6以上」などとなる引抜きの大きい柱には必須です。
② 山形プレート(VP金物)/T字プレート
中程度の引抜力に対応する金物。ホールダウンほどの引抜きは不要だけど、かど金物だと役不足、という中間レンジの柱で使います。木材を傷めない大きさで耐力を稼げるのが特徴。
③ かど金物(CP-T、CP-L)
通し柱や管柱の柱頭・柱脚に使う基本金物。「コーナーで折り曲げる金物」のイメージです。CP-Tは2方向用、CP-Lは1方向用。N値が小さい一般的な柱で使われる頻度が高い金物。
④ 羽子板ボルト
梁と梁、梁と柱の引張接合に使う代表的な金物。羽子板(卓球のラケット)のような形状をしているので「羽子板」。継手や仕口で胴差や軒桁が抜け出さないように引っ張り側で押さえる役割を持ちます。
⑤ 短ざく金物
梁の継手の上下に当てて、梁の通し方向の引張力に抵抗する金物。梁の継手部はせん断力に加えて引張・曲げが効くので、上下を短ざくで挟むことで連続性を確保。羽子板と組み合わせて使うパターンも多い。
⑥ 筋かいプレート
筋かい(45°方向のブレース)と柱・梁の接合部に取り付ける専用金物。BP-2、BP-3などの規格がある。筋かいの倍率(1.5倍・2倍・3倍など)に応じてプレートも対応するものを選定する仕組み。
⑦ アンカーボルト類
土台と基礎を接合する基本ボルト。M12が標準。通常のアンカーボルトに加えて、ホールダウン用は別途ホールダウンアンカーボルト(M16)を打ち込みます。
金物の耐力一覧(代表例)
| 金物 | 形状 | 耐力(kN) | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| かど金物 CP-T | 山形プレート | 7.5 | 一般的な柱頭柱脚 |
| ホールダウン HD-10 | ボルト直結型 | 10 | N値1.0〜2.0の柱 |
| ホールダウン HD-15 | ボルト直結型 | 15 | N値2.0〜3.0の柱 |
| ホールダウン HD-20 | ボルト直結型 | 20 | N値3.0〜4.0の柱 |
| ホールダウン HD-25 | ボルト直結型 | 25 | N値4.0〜5.6の柱 |
| 羽子板ボルト | 羽子板形 | 8.5 | 梁と柱の引張接合 |
| 短ざく金物 | 短冊形 | 17 | 梁継手の引張補強 |
筋かい関係の話は壁倍率と切り離せないので、合わせてどうぞ。

ホールダウン金物の役割と選び方
耐震金物の中で最重要かつ最も間違いの多いのがホールダウン金物。施工管理として絶対に押さえておきたいポイントを整理します。
ホールダウン金物が必要な理由
地震時、建物の片側に水平力が加わると、反対側の柱が引き抜かれようとします。特に外周角柱は引抜力が集中するので、土台に固定しただけでは抜けてしまいます。ホールダウン金物は土台ではなく基礎まで一直線にボルトを通すことで、柱の引抜きをコンクリートで受け止める仕組み。
ホールダウン金物の選定基準(N値計算)
N値計算は、その柱に発生する引抜力を簡易的に求める計算法。式は以下の通り。
N = A1×B1 + A2×B2 - L
- A1:柱に取り付く耐力壁の壁倍率の差
- B1:周辺柱の押さえ係数
- A2:上階柱の引抜力(上階がある場合)
- B2:上階の押さえ係数
- L:鉛直荷重による押さえ効果
求めたN値(kN/3.5kN)に対して、ホールダウン金物の耐力を選びます。N値が0.7以下ならかど金物、3.0を超えたらHD-20、5.6を超えたらHD-25という具合。
選定の流れ
- プレカット工場・構造設計者がN値計算書を作成
- 金物伏図(金物配置図)で各柱の金物を指定
- 施工管理は金物伏図と納入金物の整合を確認
- 現場では柱位置・金物位置・ボルト径・上下接合の方向が一致しているか検査
ホールダウンの位置間違いは一発アウトで、金物伏図と異なる位置に取り付けるとそもそも構造計算が成立しません。位置のズレはコンクリート打設後に発覚すると基礎を斫って打ち直しのレベルで大きな事故になります。
引抜力の元になる壁倍率、配置の整合確認は壁量計算の話と直結します。

耐震金物の設置位置とルール
「どの金物を、どこに、どう付けるか」は構造図と金物伏図を読み解くスキルが必要。施工管理として押さえておきたい設置ルールを整理します。
柱頭・柱脚の組み合わせルール
柱の頭(柱頭)と脚(柱脚)は同じレベルの金物を付けるのが原則。柱脚にHD-20を付けて柱頭にかど金物だけ、というアンバランスは構造的に意味をなさないので、「柱頭と柱脚はワンセット」で考えます。
取り付け方向のルール
筋かいプレートやかど金物は取り付け面(壁面)方向が決まっています。90°向きを変えると壁倍率が成立しないので、図面と現場の方向確認は必須。「筋かいの向きと金物の向きが揃っているか」が現場でのチェックポイントになります。
釘の種類と本数の指定
耐震金物は指定された釘・ビスを使わないと耐力が出ません。例えばかど金物CP-Tは「ZN65(亜鉛メッキ太め釘)を○本」という指定。CN釘(普通釘)で代用してはいけません。金物のパッケージに付属している専用釘を使うのが安全です。
金物の重ね使い禁止
「梁同士の継手で羽子板と短ざくの位置がぶつかる」場合、重ねて打つのは原則NG。位置をずらすか、より大型の金物に変更する必要があります。プレカット工場の刻み図と金物伏図がきちんと整合していれば干渉は発生しないので、事前に図面段階での干渉チェックが大事ですね。
筋かい関連の取り付けは、躯体工事の流れの中で確認が必要です。

耐震金物の検査ポイント
金物検査(中間検査の一部、または住宅瑕疵担保責任保険の検査項目)でチェックされるポイントを整理します。
検査の流れ
- 金物配置図(金物伏図)と現場の照合
- 金物の品番・耐力が指定通りか確認
- 取り付け位置・向きの確認
- 取り付けビス・釘の種類と本数の確認
- ボルトの締め付け確認
現場での見分け方と確認ポイント
- 金物の品番表示:金物本体に刻印されている品番(HD-25、CP-T、BP-2など)を確認
- 取り付けビスの規格:ZN65、CN50などの指定釘か
- ボルトの締付け:ホールダウンのナットがゆるんでいないか(増し締めの記録)
- 筋かいの向き:筋かいプレートが正しい方向に付いているか
- 金物の二重打ち:複数の金物が同じビスを共有していないか
施工管理として要注意のミス
- 金物伏図と異なる金物を使用(HD-15を要求している柱にHD-10)
- 取り付け方向の間違い(筋かいの向きと逆)
- 釘の種類間違い(CN釘・コーススレッド代用)
- ボルトの初期締めだけで増し締め忘れ
- 配筋(ホールダウンアンカーボルト)の位置ズレ
金物検査の鬼門は「ホールダウンアンカーボルトの位置」。基礎打設前のアンカー位置決めの段階でズレると、後から動かせません。型枠建て込み前にアンカーセッターで正確に位置決めしているかを最重要チェックポイントにしましょう。
型枠建て込みのタイミングや手順は別記事を参照してください。

耐震金物に関する情報まとめ
- 耐震金物とは:接合部の引抜き・抜け出しを防ぐ補強金物
- 法的根拠:2000年告示第1460号で柱接合部の金物選定が義務化
- 主な種類:ホールダウン、かど金物、羽子板ボルト、短ざく、筋かいプレート等
- 選定方法:N値計算で引抜力を求めて対応耐力の金物を選ぶ
- N値計算:A1×B1 + A2×B2 – L の式で柱の引抜力を簡易計算
- 位置間違いはアウト:特にホールダウンアンカーは打設前の位置決めが超重要
- 釘・ビスの規格:金物指定の専用釘(ZN65等)を使う
- 検査ポイント:品番・位置・向き・釘種・締付けの5観点
以上が耐震金物に関する情報のまとめです。
耐震金物は「金物伏図の通りに付ける」が大原則。地震時の引抜力に対して、構造計算で求めた耐力の金物が、指定の場所に、指定の向きで、指定の釘で付いていてはじめて機能します。施工管理としては「金物伏図と現物の整合確認」を金物検査前に必ず一度行うことを習慣化しておきましょう。打設後やボード張り後だと金物の位置・品番の確認が極端に難しくなるので、柱を建てた直後・筋かいを入れた直後の段階が金物確認のベストタイミングです。
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