- 真応力ってなに?
- 公称応力と何が違うの?
- 計算式はどう違うの?
- 応力ひずみ曲線で見るとどう違って見える?
- 現場の鋼材選定で真応力って使うの?
- 学生・実務でどっちを覚えればいい?
上記の様な悩みを解決します。
「真応力」は、引張試験で材料がどんどん細くなっていくのに合わせて、実際の断面積で割り直した応力のこと。建築の構造設計や現場の鋼材選定では「公称応力」を使うのが大半なので、「真応力なんて初めて聞いた」という人も多いと思います。ただ、塑性域の挙動や金属の加工で「真応力」を理解しているかどうかで、応力ひずみ曲線の見え方が大きく変わってきます。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
真応力とは?
真応力とは、結論「変形に伴って刻々と変化する実際の断面積で、その瞬間の荷重を割って求めた応力」のことです。記号は σt(true stress)と書かれることが多いです。
引張試験のイメージで言うと、丸棒鋼の供試体を引っ張ると、降伏を超えたあたりからネッキング(くびれ)が出てきて、断面がどんどん細くなっていきます。このとき、「最初の断面積」ではなく「いま現在の細くなった断面積」で荷重を割ったものが真応力です。
「最初の断面積で割る公称応力に比べて、変形が進むほど真応力の値はどんどん大きくなっていく」というのが、ざっくりとした特徴ですね。
なお、構造設計や施工現場で扱う数値(許容応力度・降伏点・引張強さ)は基本的にすべて公称応力ベースで決められています。真応力は「材料の本当の挙動を知るため」の概念で、設計の現場には基本出てこないと覚えておくと混乱しません。
応力ひずみ曲線の話はこちら。

真応力と公称応力の違い
ここがこの記事のメインテーマ。両者の違いを整理します。
| 項目 | 公称応力(σn) | 真応力(σt) |
|---|---|---|
| 別名 | 工学応力(engineering stress) | True stress |
| 断面積 | 試験前の初期断面積 A0 | 変形後の実際の断面積 A |
| 計算式 | σn = P / A0 | σt = P / A |
| 弾性域での値 | 真応力とほぼ一致 | 公称応力とほぼ一致 |
| 塑性域での値 | 引張強さで頭打ち→低下 | 単調増加(破断まで) |
| 設計で使うか | 使う(許容応力度の元) | 使わない(解析・研究用) |
弾性域では断面の縮みがほぼ無視できるくらい小さいので、両者はほとんど同じ値になります。違いが大きく出てくるのは降伏を超えて塑性変形が進んだ後。ネッキング後は断面積が大きく減るので、公称応力と真応力で値の差が広がります。
ここがイメージしにくい人へ
「同じ供試体を同じ荷重で引っ張っているのに、なんで応力の値が変わるの?」と思った人は鋭いです。応力=荷重÷面積なので、割る面積をどう取るかで値が変わるという話。荷重Pは1つでも、面積を「初期A0」で割れば公称応力、「実際のA」で割れば真応力、ただそれだけの違いです。
ヤング率の話はこちら。

真応力の計算式
真応力の基本式は以下の通り。
σt = P / A
P:その瞬間の荷重(N)
A:その瞬間の実断面積(mm²)
ただ、引張試験中の断面積を直接測るのは大変なので、実務では「体積一定の仮定」を置いて、ひずみから真応力を逆算する式がよく使われます。
体積一定からの導出
塑性変形では体積がほぼ変わらないので、A0 × L0 = A × L が成り立ちます(A0・L0は試験前、A・Lは変形後)。これを使うと、
σt = σn × (1 + εn)
σn:公称応力
εn:公称ひずみ(εn = (L − L0) / L0)
という形に変形できます。つまり「公称応力」と「公称ひずみ」さえ分かれば、計算で真応力が出せるということ。
真ひずみとの組み合わせ
真応力をプロットするときは、ひずみ側も「真ひずみ εt」を使うのが一般的です。
εt = ln(1 + εn)
「ln」は自然対数。微小ひずみを順次積分していった量、と理解しておけばOKです。真応力-真ひずみの組み合わせで使うのが基本セットなので、両方セットで覚えておくと混乱しません。
たわみの話はこちら。
応力ひずみ曲線での見え方
実際のσ-ε曲線で、公称応力曲線と真応力曲線がどう違うかを言葉で整理します。図がなくてもイメージできるように書きます。
1. 弾性域(変形開始〜降伏点まで)
- 公称・真:ほぼ重なって一直線(フックの法則)
- 違いはほぼ見えない
2. 降伏域(降伏点〜引張強さまで)
- 公称:緩やかに上昇していき、引張強さでピーク
- 真:公称より少しだけ高い値で上昇
- 差は徐々に開いていくが、まだ大きくはない
3. ネッキング後(引張強さ〜破断まで)
- 公称:ピーク後は下降していく(断面が減っているのに初期断面で割るから見かけ上の応力が下がる)
- 真:そのまま単調増加する(実際の断面で割っているので、最後まで応力は上昇)
- 破断点では真応力の方が公称応力より大幅に大きい
ここが一番の見せ場
公称応力-公称ひずみ曲線の「ピーク後の下降」を見て、「材料が弱くなっている」と勘違いする学生が多い。実は材料自体は最後まで強くなり続けている(加工硬化)。下がって見えるのは「割っている断面が初期値で固定されている」だけ。真応力曲線で見ると、これが正直に表現されるわけですね。
降伏点の話はこちら。

現場での扱いと真応力が必要になる場面
施工管理の実務でどう関わるかを整理します。
1. 鋼材選定はすべて公称応力ベース
JIS規格のSS400・SN400・SD345などの「降伏点」「引張強さ」、許容応力度計算で使う「F値」「fb(許容曲げ応力度)」、全部公称応力で書かれた値です。
設計図書に出てくる応力の値も全て公称応力。現場の施工管理者として鋼材ミルシートを読む・配筋検査をする・グラウト強度を確認する、というレベルでは真応力は1mmも出てきません。
ミルシートの話はこちら。

2. 真応力が出てくる場面(参考)
施工管理ではほぼ無縁ですが、関連分野では真応力を使います。
- 塑性加工(曲げ・絞り・冷間圧延):金属がどこまで塑性変形できるかを評価する場面
- 耐震設計の塑性ヒンジ解析:終局耐力時の挙動を真応力ベースで考える研究
- 金属疲労・破壊力学の研究:破断点近傍の挙動を正確に表現する必要がある
- 大学の構造材料学の授業:σ-ε曲線の正しい理解を学ぶため
3. 学生・実務の使い分け
- 建築学生:両方の存在と違いを理解する。試験で公称・真の違いを問われる
- 構造設計者:基本は公称応力で設計。塑性ヒンジ解析や保有水平耐力計算では関連知識として真応力の概念を理解
- 施工管理者:公称応力ベースで実務はほぼ完結。真応力は「教養として知っておく」程度でOK
4. 鋼材ミルシートに書かれている値は全部公称
現場でミルシートを開いて出てくる「降伏点 295 N/mm²以上」「引張強さ 400-510 N/mm²」のような数値、これらは全部公称応力ベース。真応力で書かれたミルシートは見たことがない。仕様書もJIS規格も全部公称ベースで揃っているので、現場ではこっちで世界が回っている、と覚えておくと安心です。
保有水平耐力の話はこちら。

真応力に関する情報まとめ
- 真応力とは:変形に伴う実断面積で荷重を割った応力(σt = P / A)
- 公称応力との違い:割る断面積が「初期 A0」か「現在の A」かの違い。弾性域ではほぼ同じ、ネッキング後で大きく差が出る
- 計算式:σt = σn × (1 + εn)(体積一定の仮定)。真ひずみは εt = ln(1 + εn)
- σ-ε曲線での見え方:公称はピーク後に下降、真は単調増加(破断まで)。曲線の「下降」は見かけ上の現象
- 現場での扱い:JIS規格・許容応力度・ミルシートは全て公称応力ベース。施工管理実務に真応力はほぼ出てこない
- 真応力が必要な場面:塑性加工、塑性ヒンジ解析、金属疲労研究、構造材料学の授業など
以上が真応力に関する情報のまとめです。
「公称応力か真応力か」の議論は、現場では発生しません。ただ、応力ひずみ曲線の「ピーク後の下降」を見て「材料が弱くなっている」と読み違えないためには、真応力という概念があると知っておくのが構造系の常識。実務上は公称ベースで完結しても問題ありませんが、構造設計の話を読み解くときに「あ、真応力で書いてあるのね」と気づければ、文献を読むスピードが上がります。
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