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ポアソン比とは?意味、公式、計算方法、各材料の数値、用途など

  • ポアソン比って何のこと?
  • 公式と計算方法は?
  • 鋼・コンクリート・ゴムだと数値がどう違うの?
  • 何のために使う数字なの?
  • 現場で意識する場面って実際あるの?
  • ヤング係数とどう関係してるの?

上記の様な悩みを解決します。

ポアソン比は構造力学の基本パラメータの1つで、教科書では「縦に引っ張ったとき横にどれくらい縮むか」と説明される地味な数字。ただ、実は ゴム支承の設計、地下構造物の浮き上がり、コンクリートのクリープ予測 など、現場の重要な計算に効いてきます。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

ポアソン比とは?

ポアソン比とは、結論「材料を縦に引っ張ったとき、横方向にどれだけ縮むかの比率」のことです。

英語では Poisson’s ratio(ポアソンズ・レシオ)。記号はギリシャ文字の ν(ニュー)、論文によっては μ(ミュー)が使われます。フランスの数学者・物理学者シメオン・ドニ・ポアソン(1781〜1840)が提唱したことから名前が付いています。

直感的にいうと、 ゴムを引っ張ると細くなる という現象。これを定量化したのがポアソン比です。

具体的には:
– 鋼を縦方向に引っ張る → 縦方向に伸びる、横方向に縮む
– ゴムを縦方向に引っ張る → 縦方向に大きく伸びる、横方向に大きく縮む
– 鋳鉄を縦方向に引っ張る → 縦方向に少し伸びる、横方向にほとんど縮まない

この「縦の伸びと横の縮みの比」を取った数字がポアソン比です。

材料の特性を表すパラメータとして、ヤング係数(縦弾性係数 E)・剛性率(横弾性係数 G)と並ぶ 3大パラメータの1つ。構造計算では避けて通れない値です。

ポアソン比の公式

公式は単純です。

ν = 横ひずみ / 縦ひずみ

ν:ポアソン比(無次元)
横ひずみ ε_横 = ΔW/W₀(横方向の縮み比)
縦ひずみ ε_縦 = ΔL/L₀(縦方向の伸び比)

実例:鋼棒の引張試験

  • 元の長さ L₀ = 1000mm、元の幅 W₀ = 20mm
  • 引っ張った後:長さ 1001mm(伸び 1mm)、幅 19.994mm(縮み 0.006mm)
  • 縦ひずみ ε_縦 = 1/1000 = 0.001
  • 横ひずみ ε_横 = 0.006/20 = 0.0003
  • ポアソン比 ν = 0.0003 / 0.001 = 0.3

鋼の場合、ν ≒ 0.3 が標準的な値。これは中学校の理科の延長で計算できる範囲なので、構造力学が苦手という人も式を覚えるのは難しくないはず。

ヤング係数・剛性率との関係式

材料が等方均質(縦・横どちらに引っ張っても性質が同じ)と仮定できる場合、3つのパラメータには以下の関係があります。

G = E / 2(1+ν)

G:剛性率(横弾性係数、N/mm²)
E:ヤング係数(縦弾性係数、N/mm²)
ν:ポアソン比

これがあるので、 ヤング係数とポアソン比が分かれば剛性率は計算で出せる。実務では大変便利な関係式です。剛性率(横弾性係数)の基本はこちらにまとめています。

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ポアソン比の各材料の数値

主要な建設材料のポアソン比をまとめます。

材料 ポアソン比 ν
鋼(SS400、SM490など) 0.30
鋳鉄 0.27
アルミニウム 0.33
0.34
コンクリート 0.20
木材(繊維方向) 0.30〜0.50(ばらつき大)
ガラス 0.22
ゴム(天然ゴム) 0.49〜0.50
コルク ほぼ0

ν=0.5が理論最大値

材料力学の理論では、 ν=0.5は体積変化が0 を意味します。つまり、引っ張っても圧縮されてもだけ体積が一切変わらないという「完全非圧縮材料」。実在する材料ではゴム・水・人体の軟組織がこれに近く、 ν > 0.5 はあり得ない(熱力学的に)と決められています。

ν=0は体積変化が最大

逆にν=0は、縦に引っ張っても横が全く縮まない状態。コルクがこれに近く、ワインボトルにしっかり押し込んで密封できるのはこの性質のおかげです。

コンクリートが0.20

意外と低い、と思うかもしれません。これはコンクリートが 微細なヒビ(マイクロクラック)を多く含む ため、引っ張られても横方向には素直に縮まないから。ただし、設計実務ではν=0.16〜0.20の範囲で使われ、構造形式によって細かく規定されています。

ポアソン比はなぜ重要か(用途)

学術的な数字に見えるポアソン比、現場のどこで使うかを4つ並べます。

1. 三軸応力状態の解析

地下構造物・ダム・トンネルなど、 3方向から圧力を受ける状態 の応力解析にはポアソン比が必須。たとえば地下水圧を受ける地下タンクの壁は、深さ方向・水平方向の両方から押されるので、横ひずみがどれだけ拘束されるかでせん断応力が変わります。

2. ゴム支承(免震ゴム)の設計

橋梁の支承や建築の免震装置に使われるゴムは、ν ≒ 0.5 の「ほぼ非圧縮」材料。 押しつぶしても体積が減らない ので、横方向に膨らむ性質があります。これを利用して水平方向に大きく変形できる構造が免震ゴム。設計ではポアソン比を加味した補正剛性係数を使います。

3. コンクリートのクリープ・乾燥収縮の予測

長期荷重を受けるコンクリート構造物は、時間とともにクリープ変形(時間依存変形)が進みます。クリープの三次元解析にはポアソン比が直接効いてくる。マスコンクリートの温度応力解析でも同様。

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4. 有限要素解析(FEM)の入力値

構造解析ソフト(SAP2000、Midas、ABAQUSなど)に材料を定義するときの必須項目。 ヤング係数だけ入れてもFEMは動かない、ポアソン比とのセット入力が前提です。

ポアソン比の現場での使い方・意識する場面

施工管理として、ポアソン比そのものを計算する場面はあまりありません。が、 その存在を知っていることで現場判断が変わる 場面があります。

1. ゴムシール材の押し込み量

防水シール材、ガスケット、Oリングなどゴム製品を取り付けるとき、 指定の圧縮率 を守る必要があります。これはν=0.5に近い材料が、押しつぶされた分だけ横に膨らんで隙間を密閉するから。圧縮率を超えるとゴムが破断、足りないと漏水。施工要領書の数字の根拠がポアソン比にあります。

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2. 鋼材の溶接残留応力

鋼板を溶接すると、加熱・冷却で局所的に縦・横の収縮が起きます。この三次元収縮の計算にポアソン比が効く。FCAW・SAWなどの溶接設計を行う設計者と話すとき、ポアソン比を理解していれば「なぜそのプリ熱条件なのか」が腑に落ちる。

3. 圧入工事・杭打ちでの周辺地盤への影響

杭を打ち込むと、周囲の地盤がポアソン効果で側方に膨らもうとします。隣接構造物への押し出しを評価するとき、地盤のポアソン比(砂で0.3前後、粘土で0.4前後)が効きます。隣地クレームのリスク評価で意識する場面ですね。

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4. 地下水圧を受ける構造物の浮力検討

ν=0.5に近いゴム遮水材は、押されると横に膨らんで密閉する性質がある一方、地下構造物のコンクリートはν=0.2なので、地下水圧を受けると素直に変形して圧縮応力が出ます。ピット・地下タンクの設計では、これらの違いを意識する必要がある。

ポアソン比の注意点

実務で誤用しがちなポイントを4つ。

1. 等方均質を仮定できない材料に注意

木材は繊維方向と直交方向で性質が違うため、 3つのポアソン比(縦縦、縦横、横横) を別々に持ちます。木造の構造計算で「ポアソン比0.3」と一律に入れるのは粗すぎ。樹種・繊維方向ごとの値を確認。

2. 弾性域でのみ成立

ポアソン比は 弾性域(フックの法則が成り立つ範囲) での値。降伏後の塑性域では大きく変わる(多くの金属で塑性ν ≒ 0.5 に近づく)。終局解析では弾性ν / 塑性νを使い分けます。

3. 温度依存性

高温下ではポアソン比が変わる。鋼の場合、常温でν=0.3だが、火災時の高温域では0.4近くまで上昇。耐火被覆や火災時の構造解析で意識される論点。

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4. コンクリートは応力レベル依存

コンクリートのポアソン比は応力が増えると上昇します。低応力時0.20、終局付近では0.30〜0.50と挙動が激変。終局耐力評価では応力依存性を加味した解析が必要。

ポアソン比に関する情報まとめ

  • ポアソン比とは:材料を縦に引っ張ったとき横にどれだけ縮むかの比率(記号 ν)
  • 公式:ν = 横ひずみ / 縦ひずみ
  • ヤング係数との関係:G = E / 2(1+ν)
  • 材料別の数値:鋼0.30、コンクリート0.20、ゴム0.49〜0.50、コルク約0
  • 理論範囲:0 〜 0.5(0.5で体積変化なし)
  • 用途:三軸応力解析、ゴム支承設計、コンクリートクリープ、有限要素解析
  • 現場で意識:ゴムシール材の圧縮率、溶接残留応力、地盤への影響、地下構造物
  • 注意点:等方均質仮定、弾性域、温度依存性、コンクリートの応力依存性

以上がポアソン比に関する情報のまとめです。

ポアソン比は「教科書の隅っこで紹介されて終わる地味な数字」と思われがちですが、 ゴム支承・コンクリート・地盤 という建設の主要材料すべてに関わる重要パラメータです。施工管理として日常で計算する場面は少なくとも、シール材の圧縮率や溶接残留応力の話で構造設計者と会話するとき、知識があるだけで議論の質が変わります。剛性率・コンクリート・耐火被覆など関連知識と合わせて、構造力学の基礎パッケージとして押さえておきましょう。

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