- ヤング係数ってそもそも何?
- 単位ってどう書くの?
- 求め方の式が知りたい
- コンクリートと鋼材で数値はどう違う?
- 弾性係数と同じ意味?
- 現場でいつ使う知識なの?
上記の様な悩みを解決します。
ヤング係数は、材料の「変形しにくさ」を数値で表した指標で、構造設計の出発点となる超重要パラメータです。施工管理者でも、構造図のチェックや一級建築施工管理技士の試験対策で必ず通る道なので、基礎知識を抑えておきましょう。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
ヤング係数とは?
ヤング係数とは、結論「材料がどれくらい変形しにくいかを表す係数」です。
別名「縦弾性係数」「弾性係数」とも呼ばれます。19世紀のイギリスの物理学者トーマス・ヤング博士が定義したことから「ヤング係数(Young’s modulus)」という名前が付きました。
イメージとしては、ゴムと鉄の違いを思い浮かべてもらうと早いです。同じ大きさの力を加えても、ゴムは大きく伸びる(変形しやすい=ヤング係数が小さい)のに対し、鉄はほとんど変形しない(変形しにくい=ヤング係数が大きい)。この「変形しにくさ」を数値化したのがヤング係数というわけです。
構造設計においては、梁のたわみ量や柱の縮み量を計算する際に必ず登場するので、構造計算をする人にとっては四則演算と同じくらい当たり前に使う数値ですね。
たわみとの関係はこちらの記事も合わせてどうぞ。
ヤング係数の単位
ヤング係数の単位は「N/mm²」または「GPa(ギガパスカル)」が一般的です。
| 単位 | 読み方 | 換算関係 |
|---|---|---|
| N/mm² | ニュートン毎平方ミリメートル | 1 N/mm² = 1 MPa |
| MPa | メガパスカル | 1,000 MPa = 1 GPa |
| GPa | ギガパスカル | 1 GPa = 1,000 N/mm² |
| kgf/cm² | キログラム重毎平方センチメートル | 1 N/mm² ≒ 10.2 kgf/cm² |
日本の構造計算書ではN/mm²で書かれることが多く、教科書ではGPaを使うこともあります。電卓計算では基本N/mm²で統一しておくとミスが減りますね。
なお、kgf/cm²は古い構造計算書で見かけることがあります。改修案件で過去の図面を読み解くときに換算が必要になるので、N/mm² ≒ 10.2 kgf/cm²の関係は覚えておくと便利です。
ヤング係数の求め方
ヤング係数は応力とひずみの比で求められます。式はこんな感じ。
E = σ ÷ ε
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| E | ヤング係数 | N/mm² |
| σ(シグマ) | 応力 | N/mm² |
| ε(イプシロン) | ひずみ | 無次元(比なので単位なし) |
ひずみは「変形量÷元の長さ」なので無次元(パーセントみたいなもの)。応力は「N/mm²」なので、ヤング係数の単位は応力と同じN/mm²になります。
実験的にヤング係数を求める手順
1. 試験体に既知の引張力(または圧縮力)を加える
2. 加えた力から応力σを計算(σ=荷重÷断面積)
3. 試験体の伸び量を測定し、ひずみε(伸び÷元の長さ)を計算
4. E=σ÷εでヤング係数を算出
応力ひずみ曲線の傾き(直線部分)がヤング係数に相当します。降伏点を超えて塑性変形領域に入ると、この関係は崩れるので、ヤング係数は弾性域内でしか有効ではありません。
応力やひずみの基礎についてはこちらも参考にしてください。
主要材料のヤング係数
代表的な建築材料のヤング係数をまとめておきます。設計実務で頻繁に使う数値です。
| 材料 | ヤング係数(N/mm²) | 備考 |
|---|---|---|
| 鋼材(SS400、SN400など) | 205,000 | 構造用鋼共通でほぼ一定 |
| ステンレス(SUS304) | 197,000 | 鋼材より少し小さい |
| アルミニウム合金 | 70,000 | 鋼材の約1/3 |
| コンクリート(Fc=24) | 22,500〜25,000 | 強度で変わる |
| コンクリート(Fc=36) | 28,000〜30,000 | 高強度ほど大きい |
| 木材(杉) | 7,000〜8,000 | 樹種・含水率で変動 |
| 木材(ヒノキ) | 9,000〜11,000 | |
| 木材(米松) | 10,000〜12,000 | |
| ゴム | 1〜10 | ほぼ自由に変形 |
鋼材のヤング係数は「205,000 N/mm²」と覚えておけばOK。SS400もSN400もSM490も基本的に同じ値です。ここが鋼構造設計の便利なところで、鋼種を変えても変形量の計算ロジックは変わりません。
一方コンクリートは設計基準強度(Fc)でヤング係数が変わるのが特徴。建築学会の式(JASS 5)で計算するのが一般的です。
コンクリートのヤング係数(建築学会式)
E = 33,500 ×(γ÷24)² ×(Fc÷60)^(1/3) [N/mm²]
ここで γ は気乾単位容積質量(普通コンクリートは23〜24kN/m³)、Fcは設計基準強度。式が複雑に見えますが、Fc=24のときE≒22,500、Fc=36でE≒27,500というのが大体の目安ですね。

ヤング係数の計算例
実例を1つ見ておきましょう。鉄骨造の梁のたわみ量を求める計算です。
条件
– 梁の材質: SS400(ヤング係数 E = 205,000 N/mm²)
– 断面二次モーメント I = 50,000,000 mm⁴
– 等分布荷重 w = 10 N/mm
– スパン L = 6,000 mm
– 単純梁
等分布荷重を受ける単純梁の最大たわみδ
δ = 5wL⁴ ÷(384EI)
計算
δ = 5 × 10 × 6,000⁴ ÷(384 × 205,000 × 50,000,000)
= 5 × 10 × 1.296 × 10¹⁵ ÷(3.936 × 10¹⁵)
= 約 16.5 mm
スパン6mに対してたわみ16.5mm(L/364)なので、許容たわみ(一般にL/250〜L/300)の範囲内に収まっています。
このように、ヤング係数Eが分母に入っているので、Eが大きい材料(鋼材)ほどたわみが小さくなる、という関係です。RC造梁のたわみが大きく出やすいのは、コンクリートのヤング係数が鋼材の約1/8しかないから、というのも理屈で分かりますよね。
断面二次モーメントについてはこちらの記事を参照してください。
ヤング係数と施工現場の関わり
「ヤング係数って構造設計者の話でしょ?施工管理は知らなくていいよね?」と思いがちですが、現場でも以下のような場面で関わります。
ケース1: コンクリート受入検査でヤング係数試験
高強度コンクリート(Fc=42以上)を使う物件では、生コン受入時にヤング係数試験(静弾性係数試験 JIS A 1149)が行われることがあります。設計値より大幅に低いと構造性能を満たさない可能性があるので、施工管理者として試験結果を確認する立場ですね。
ケース2: たわみ問題の原因究明
完成後に「2階の床がたわむ」「梁が下がっている」といった指摘が出た場合、たわみ計算をやり直すことがあります。実際のヤング係数(コア抜き試験で測定)が設計値より低いと、計算上のたわみが大きくなり、原因の一端が説明できます。
ケース3: 既存建物の耐震診断
改修案件では、既存コンクリートのヤング係数を実測することがあります。築40年の建物でコンクリートが想定より弱っていれば、補強計画にも影響します。
ケース4: 施工管理技士試験での出題
1級・2級建築施工管理技士、コンクリート技士の試験では、ヤング係数の概念や数値が頻出。「鋼材のヤング係数は約205,000 N/mm²」「コンクリートのヤング係数は強度に依存する」といった選択肢を判定できる必要があります。

ヤング係数に関する注意点
ヤング係数は使い方を間違えるとトラブルになるので、いくつか注意点を整理しておきます。
弾性域内でしか成り立たない
冒頭で触れた通り、応力ひずみ曲線の直線部分でしかヤング係数は有効です。降伏点を超えて塑性変形領域に入ると、応力とひずみの比は一定になりません。常時荷重・地震時荷重ともに弾性域内に収まる前提で設計するのが基本です。
コンクリートは「割線弾性係数」が一般的
コンクリートは厳密にいうと弾性体ではないので、応力ひずみ曲線が完全な直線にはなりません。そこで「最大応力の1/3点」と「ほぼ原点」を結んだ直線の傾きを「割線弾性係数」として、これを実用上のヤング係数として扱います。試験規格JIS A 1149で定められている方法ですね。
クリープ・乾燥収縮を考慮しない数値
ヤング係数は「短期的な変形のしやすさ」を表す数値です。コンクリートの長期たわみを評価する際は、クリープ係数や乾燥収縮を別途考慮しないといけません。「ヤング係数だけで長期たわみは決まらない」点に注意。
木材は方向と含水率で大きく変わる
木材のヤング係数は繊維方向(縦)と直交方向(横)で10倍以上違います。また、含水率15%と含水率30%でも数値が変わります。設計用には「気乾状態(含水率15%程度)の繊維方向ヤング係数」を使うのが標準です。
ヤング係数と剛性は別物
「ヤング係数が大きい=剛性が高い」と誤解されがちですが、剛性は「ヤング係数 × 断面二次モーメント」で決まります。鋼材のH鋼が剛性高く感じるのは、ヤング係数だけでなくH型断面の効率の良さも効いているからですね。
ヤング係数に関する情報まとめ
- ヤング係数とは:材料の変形しにくさを表す係数(縦弾性係数とも呼ぶ)
- 単位:N/mm² または GPa(1 GPa=1,000 N/mm²)
- 求め方:E=σ÷ε(応力とひずみの比)
- 鋼材のヤング係数:約205,000 N/mm²(構造用鋼ならほぼ共通)
- コンクリートのヤング係数:強度で変動。Fc=24で約22,500、Fc=36で約27,500
- 計算例:単純梁のたわみδ=5wL⁴÷(384EI)で利用
- 施工現場との関わり:受入検査、たわみ原因究明、耐震診断、資格試験
- 注意点:弾性域内のみ/コンクリートは割線弾性係数/クリープは別考慮/剛性とは別物
以上がヤング係数に関する情報のまとめです。
ヤング係数は構造計算の最も基本的なパラメータの1つで、施工管理者にとっても「材料の変形しにくさを数値化した係数」と理解しておくだけで、構造図の読み方や受入検査の意義が腹落ちします。一級・コンクリート技士試験の対策にもなる知識なので、確実に押さえておきましょう。



