- 設計荷重ってなに?
- 何種類あるの?
- どう組み合わせる?
- 用途別で値は変わる?
- 工事中の荷重は別?
- 施工管理として何を見る?
上記の様な悩みを解決します。
「設計荷重」は構造設計の入口で、建物にどんな力が、いつ、どのくらい加わるかを仮定する作業です。固定荷重(建物の自重)、積載荷重(人・物)、地震荷重、風荷重、積雪荷重の5種類が基本で、これらを建物の用途や地域・状況に応じて組み合わせながら設計します。施工管理として現場に入ると、「設計図書はこの荷重を前提にしている=これを超える荷重をかけてはいけない」という制約条件が見えてきて、什器の搬入計画・仮設足場の設置・養生材の置き場まで、「設計荷重と整合する施工」の考え方が腑に落ちます。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
設計荷重とは?
設計荷重とは、結論「構造設計で建物に作用すると仮定する各種の力」のことです。
英語では design load(デザイン・ロード)。記号は荷重の種類によって異なる(G、P、E、W、S 等)。単位は N/m²(分布荷重)、kN(集中荷重)、kN/m(線荷重)など。
ざっくりイメージすると
1棟の建物が一生のうちに「どんな力にどんなタイミングでさらされるか」を、設計者があらかじめリストアップする作業。
- 常にかかる:建物自身の重さ(固定荷重)
- 使う時だけ:人・什器(積載荷重)
- 時々襲う:地震・台風・大雪(変動荷重)
→ これらを定量化(数字にして)構造計算に入れるのが設計荷重。
設計荷重の主な特徴
- 建築基準法・施行令で最低基準が定められている
- 用途・地域・気候で値が変わる
- 長期・短期の2区分で組み合わせる
- 重要度係数 I で割り増しすることがある
- 設計図書(構造図)に設計条件として明記される
なぜ建築で重要か
設計荷重は構造設計のすべての出発点:
- 柱・梁・スラブの断面決定:設計荷重から断面力を計算→部材設計
- 基礎・杭の設計:設計荷重の鉛直成分から基礎を設計
- 耐震・耐風・耐雪設計の前提:変動荷重の評価がベース
- 施工時の制限条件:設計荷重を超える積載は避ける
→ つまり「設計荷重が分からないと建物は設計できない」。
設計荷重の5種類
建築基準法に基づく5つの基本荷重を整理します。
①固定荷重(G)
定義:建物自身の重量。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 何が入るか | 構造体(柱・梁・スラブ)、外装材、内装材、設備機器 |
| いつかかるか | 常に(一生) |
| 単位 | N/m²、kN/m² |
| 略号 | G(Generic / Gravity) |
代表値の目安(N/m²):
| 部材 | 固定荷重 |
|---|---|
| RCスラブ(t=150mm) | 3,750 |
| ALC壁(t=100mm) | 1,000 |
| 押出セメント板外壁 | 600〜800 |
| プラスターボード壁 | 350〜500 |
| 設備機器分(空調・配管込み) | 150〜500 |
→ 「動かない、必ずある重さ」。設計の基本。
②積載荷重(P)
定義:人・家具・什器・物品など、建物の使用に伴う荷重。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 何が入るか | 人・家具・什器・在庫品 |
| いつかかるか | 使用時 |
| 単位 | N/m²、kN/m² |
| 略号 | P(Personal / Live) |
用途別の代表値(N/m²) (建築基準法施行令第85条):
| 用途 | 床用 | 大梁・柱用 | 地震用 |
|---|---|---|---|
| 住宅・寝室 | 1,800 | 1,300 | 600 |
| 事務所 | 2,900 | 1,800 | 800 |
| 教室 | 2,300 | 2,100 | 1,100 |
| 百貨店・店舗 | 2,900 | 2,400 | 1,300 |
| 屋上(住宅) | 1,800 | 1,300 | 600 |
| 倉庫 | 3,900以上 | 同左 | 同左 |
| 自動車車庫 | 5,400 | 3,900 | 2,000 |
→ 「同じ用途でも、床用・梁用・地震用で値が違う」のがポイント。床は局部、梁は平均化、地震は同時発生確率を考慮で減算。
③地震荷重(E)
定義:地震時に建物に作用する水平力。
Ci = Z × Rt × Ai × C0 × I
Z:地域係数(0.7〜1.0)
Rt:振動特性係数(建物固有周期で決まる)
Ai:層せん断力分布係数(建物高さで)
C0:標準せん断力係数(0.2)
I:重要度係数(1.0〜1.5)
→ 層ごとの地震力 = Ci × その層から上の重量。一次設計はC0=0.2、二次設計でC0=1.0。
④風荷重(W)
定義:風(台風・通常風)が建物に与える水平力。
W = q × Cf × I
q:速度圧(基準風速・地表面粗度区分・建物高さで決まる)
Cf:風力係数(建物形状で決まる)
I:重要度係数
→ 風圧力 W ×受風面積 = 風荷重。基準風速は沖縄が高く北海道が低い。
⑤積雪荷重(S)
定義:雪が屋根に積もって生じる荷重。
S = ρ × d × Cs × I
ρ:雪の単位荷重(20 N/m²/cm 等)
d:積雪深さ(地域で決定)
Cs:屋根形状係数(屋根勾配で決まる)
I:重要度係数
→ 多雪地域(東北・北陸・北海道)では設計の主軸荷重になる。
地震荷重はこちらの記事も参考にしてください。

風圧力はこちらの記事も参考にしてください。

重要度係数はこちらの記事も参考にしてください。

荷重の組合せルール
「いつ、どの荷重が同時に発生するか」を組み合わせて、応力・変形を計算します。
①長期荷重(長期間、常時かかる)
長期荷重 = G(固定荷重) + P(積載荷重)
→ 常にかかる重み。クリープ・たわみ・耐久性などの長期評価で使用。
②短期荷重(一時的に大きい)
短期は3つに分けて検討:
短期(地震時) = G + P_地震用 + E
短期(暴風時) = G + P + W
短期(積雪時) = G + P + S(多雪地域)
→ 「3つの短期」を全部チェックして、最も厳しい条件で設計。
③多雪地域での組合せ
多雪地域(積雪深さ1m超等)では:
長期(積雪) = G + P + 0.7 × S(多雪地域では恒久的雪荷重も加算)
短期(積雪+地震) = G + P_地震用 + 0.35 × S + E
短期(積雪+暴風) = G + P + 0.35 × S + W
→ 雪と地震・風が同時発生しても雪は0.35倍に減算(同時に最大ではないため)。
④組合せの実用例
3階建ての事務所ビル(東京、雪≪1m):
| 条件 | 組合せ式 |
|---|---|
| 長期 | G + P |
| 地震時 | G + P_地震 + E |
| 暴風時 | G + P + W |
| 積雪時 | (検討不要) |
→ 関東は雪が支配しないので、地震 vs 風の比較で大きい方が支配。
⑤組合せの判断基準
| 建物の高さ | 主な支配荷重 |
|---|---|
| 低層(〜30m) | 地震が支配 |
| 中層(30〜100m) | 地震が支配(振動特性で減衰) |
| 超高層(100m〜) | 風が支配することも(柔軟構造) |
| 多雪地域 | 雪が支配することも |
→ 「どの組合せが最も厳しいか」で部材断面が決まる。
部位別・用途別の代表値
実務でよく使う代表的な設計荷重を整理します。
①住宅(マンション・戸建)
| 区分 | 値 |
|---|---|
| 固定荷重(RCスラブ含む) | 4,000〜5,000 N/m² |
| 積載荷重(住宅) | 1,800 N/m²(床) |
| 地震荷重 | C0=0.2標準 |
| 風荷重 | 地域基準風速次第 |
②事務所ビル
| 区分 | 値 |
|---|---|
| 固定荷重 | 4,000〜6,000 N/m² |
| 積載荷重(事務室) | 2,900 N/m²(床) |
| 機械室 | 5,000 N/m²超(機械重量で増) |
③倉庫・物流
| 区分 | 値 |
|---|---|
| 固定荷重 | 4,000〜5,000 N/m² |
| 積載荷重(倉庫) | 3,900 N/m²以上(用途で決定) |
| 重量物倉庫 | 9,800 N/m²(1トン/m²)も |
④駐車場(自動車車庫)
| 区分 | 値 |
|---|---|
| 固定荷重 | 4,000〜5,000 N/m² |
| 積載荷重(自動車車庫) | 5,400 N/m² |
| 大型車対応の場合 | 別途増額 |
⑤特殊荷重
| 用途 | 特殊荷重 |
|---|---|
| 図書館書架室 | 7,800 N/m²(集中荷重相当) |
| 大型機械室 | 機械重量に応じて10,000以上も |
| 太陽光パネル屋根 | パネル重量+風荷重増 |
→ 「用途で決まる」ので、設計図の条件を確認することが大事。
施工管理での着眼点
施工管理として、設計荷重の理解が現場でどう活きるかを整理します。
①構造図の設計条件確認
構造図のヘッダ・凡例ページに記載される設計条件:
- 固定荷重の集計
- 用途別の積載荷重(床・梁・地震)
- 地震荷重(設計用Z、C0、I)
- 風荷重(基準風速、粗度区分)
- 積雪荷重(設計積雪深さ)
→ 「設計図書はこの荷重を前提にしている」を最初に把握する。
②什器搬入時の積載確認
オフィスビル(事務室):積載荷重 2,900 N/m²(床用) = 約 296 kgf/m²。
| 什器 | 重量 | 接地面積 | 実効荷重 |
|---|---|---|---|
| 大型コピー機 | 200kg | 0.5m² | 4,000 N/m²(超過!) |
| サーバラック満載 | 1,200kg | 1.0m² | 12,000 N/m²(大幅超過!) |
| 大型書架 | 500kg | 1.0m² | 5,000 N/m²(超過!) |
→ 「積載許容を超えるか確認」して、必要なら敷板で受け面積を広げる。
集中荷重はこちらの記事も参考にしてください。

③仮設足場の荷重設計
仮設足場の作業床:
- 単管足場の作業床:245 N/m²(設計値)
- くさび足場の作業床:588 N/m²(設計値)
- 部材仮置き:3,920 N/m²以下にすること
→ 足場上の積載は「設計値以下」を絶対に守る。
④打設時の生コン・型枠荷重
コンクリート打設時のスラブ下:
- フレッシュ生コン:24 kN/m³ = スラブ厚150mmなら3,600 N/m²
- 型枠+支保工自重:約500 N/m²
- 打設衝撃・人荷重:1,000 N/m²程度
- 合計:約 5,000 N/m²(短期)
→ 設計時の積載荷重を超える可能性があるので、支保工で支えて打設後の長期荷重に変換する。
支保工はこちらの記事も参考にしてください。

⑤現場での具体例(独自エピソード)
ある中規模オフィスビル(RC造10階建)の竣工後、テナント入居時に3階の機械室予定区画の床にひびが発見された経験があります。
- 設計時の積載荷重:事務室区分 2,900 N/m²で設計
- 実態:機械室の重い空調機(約2トン)が4脚で支持
- 実効集中荷重:1脚あたり 5,000 N/m²(設計値の1.7倍)
そこで設計者と施工者で再評価:
– 設計時の用途設定が「事務室」だったが、実際は「機械室」として使用
– 機械室区分の積載許容値は 5,000 N/m²超(設計には未反映)
– 結果として用途変更時の設計検討漏れ
対応として:
– 該当区画の床版を炭素繊維シート補強
– 機械の脚部にスチール敷板で受け面積拡大
– ひび進行のモニタリング
その時に学んだのは、「設計荷重は『使う用途』で決まる」こと。施工管理として現場のリレーションシップ図(用途配置図)を見るとき、「この区画は何の用途? 設計時の用途と一致しているか?」を確認できれば、結果として用途変更時の局所応力増加を防げます。
教科書では「事務室の積載荷重は2,900 N/m²」と1行ですが、現場では「テナントの実使用が用途設定と一致するか」という運用面のチェックが、結果として補修コスト・機能停止リスクを未然に防ぐリアルなノウハウでした。
設計荷重に関する情報まとめ
最後に、設計荷重の重要ポイントを整理します。
- 設計荷重とは:構造設計で建物に作用すると仮定する各種の力
- 5種類:固定荷重G、積載荷重P、地震荷重E、風荷重W、積雪荷重S
- 組合せ:長期(G+P)、短期(地震/暴風/積雪 + 固定+積載)
- 用途別の値:住宅1,800 / 事務2,900 / 倉庫3,900以上 / 自動車車庫5,400 N/m²
- 施工管理視点:構造図の設計条件確認、什器搬入の集中荷重、仮設足場・打設時の積載、用途変更時の再評価
以上が設計荷重に関する情報のまとめです。
設計荷重は「建物が一生のうちにさらされる力のリスト」で、これを理解すると「設計図書はこの前提でできている=これを超えるとリスク」という制約条件が見えるようになります。施工管理として竣工前後の什器配置・テナント変更・大規模搬入を見るときに、「設計時の荷重前提」を確認できる視点が、結果としてひび・補修・機能維持リスクを未然に防ぐ強力な判断軸になりますよ。一通り設計荷重の基礎知識は理解できたと思います。
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