1級管工事施工管理技士の年収相場が存在しない理由と求人票の見方

  • 1級を取ったら、求人票の金額はどれくらい変わるのか知りたい
  • 転職サイトごとに「平均年収」の数字が違いすぎて、どれを信じればいいのか分からない
  • そもそも、その平均年収はどこから出てきた数字なのか
  • 求人票の「年収500〜750万円」の幅が広すぎて、自分がどこに入るのか読めない
  • 固定残業代が含まれているのかどうか、求人票からは分からない
  • 求人を見るときに、どの項目を最初に見ればいいのか

上記の様な悩みを解決します。

1級管工事施工管理技士は、設備施工管理のキャリアの中でも求人票の年収レンジが特に幅広く出回る資格です。転職サイトごとに「平均年収」の数字が食い違っているのに、その出典を書いているサイトはほとんどなく、結局どの数字を信じればいいのか分からないまま求人を眺めることになりがちです。今回は資格の位置づけ・求人票の年収レンジの読み方・固定残業代の見分け方といった基本を押さえた上で、公的な統計に「管工事」という職種区分がそもそも無く、世に出回る数字が近接職種の値を加工した合成値であるという、他の転職記事では触れられていない論点まで、施工管理の目線で整理しました。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、転職を考え始めたばかりの方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

1級管工事施工管理技士の求人・転職とは?金額より先に、その数字の出どころ

結論から書きます。求人を見比べるときに最初に確かめてほしいのは、提示された金額そのものではなく、その金額が何と比べられた数字なのかという一点です。この記事は、1級管工事施工管理技士の平均年収はいくらか、という当てっこをしません。並んでいる数字がどこで作られたのかを、公表資料までさかのぼって分解します。

そもそも、数字が食い違うこと自体は珍しくありません。ある会社の集計はその会社に登録した人の値、別の会社の集計は別の母集団の値です。母集団が違うものを横に並べれば、金額が揃わないほうが自然です。困るのは、どの母集団の話なのかが書かれていないせいで、読む側に比べようがないところです。この記事を書くにあたって2026年9月に検索上位8サイトを見比べましたが、提示した平均年収がどの調査のどの区分から来たものなのかを書いていたページはありませんでした。

そこで、この記事の守備範囲をはっきりさせておきます。

  • 扱うこと:公的な資料の中で、管工事の施工管理という仕事がどこに分類されているか
  • 扱うこと:出回っている年収の数字が、どの区分の値をどう加工して作られたか
  • 扱うこと:平均を探すのをやめたあと、求人票のどこを見ればいいか
  • 扱わないこと:1級管工事施工管理技士の平均年収として使える、たった1つの額

最後の1行が、この記事のいちばん言いたいところです。そういう額を出したくないのではなく、公表されている資料の中に、それにあたる数字が用意されていません。次のH2から、その事情を順番に確認していきます。

公的な職業情報では、管工事施工管理技士は「建築施工管理技術者」の別名

まず、公的な職業情報の側が、この仕事をどこに置いているかを見ます。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)の「建築施工管理技術者」のページ(https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/21 ・2026年9月3日確認)には、職業別名として次の6つが挙げられています。

  • 管工事施工管理技士
  • 給排水設備工事施工管理者
  • 空調衛生設備施工管理技術者
  • 建築工事現場監督
  • プラント建設工事施工管理技術者
  • 内装工事施工管理技術者

給排水設備も空調衛生設備も、この6つの中に並んでいます。この一覧のとおり、厚生労働省の job tag では、管工事施工管理技士は建築施工管理技術者の職業別名として収録されている、ということです。

その職業が何をする仕事として説明されているかも、同じページで確認できます。同ページの「どんな仕事?」は「住宅・学校・オフィスビル・工場などの建築現場において、施工が適正かつ計画通りに行われるよう建築工事の監督・指導を行う。施工図を基に、使用する機材や必要な作業員の人数、工期などを検討し、詳細な施工計画を立てる。」と記しています(厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「建築施工管理技術者」・2026年9月3日確認)。書かれているのは建築工事の監督・指導であって、配管や空調の設備工事に固有の説明ではありません。管工事施工管理技士という別名は、この説明文を共有する形でぶら下がっています。

押さえておきたいのは、6つの別名が同じ1つの統計データ欄を共有しているという構造です。別名がいくつあっても、ページに表示される数字は1本しかありません。「1級管工事施工管理技士の年収」を調べてこのページに行き着いた人が出会う数字は、建築施工管理技術者という括りに対して用意された数字だ、ということになります。

賃金の統計にも「管工事」「施工管理」という職種区分は無い

では、その統計データ欄のもとになっている調査の側はどうなっているのか。厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査、その(職種)第1表(職種(小分類)、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)・e-Stat statInfId=000040421116)を開くと、職種(小分類)は全部で145区分あります。この145区分を全件確認したところ、職種名に「管工事」を含むものも、「施工管理」を含むものも、1つもありませんでした。

建設に関係する区分として並んでいるのは「建設・さく井機械運転従事者」「その他の定置・建設機械運転従事者」「建設躯体工事従事者」「大工」「配管従事者」「その他の建設従事者」「電気工事従事者」「土木従事者,鉄道線路工事従事者」「ダム・トンネル掘削従事者,採掘従事者」で、技術者の側は「建築技術者」「土木技術者」「測量技術者」の3つです(厚生労働省 令和7年賃金構造基本統計調査(職種)第1表・e-Stat statInfId=000040421116)。管工事の施工管理という仕事を1つの職種として切り出した欄は、この並びの中に用意されていません。

そしてもう1つ、この表には無いものがあります。同表の表頭に実際に置かれている項目は、次の8つです。

同表の表頭に置かれている項目名
年齢
勤続年数
所定内実労働時間数
超過実労働時間数
きまって支給する現金給与額
所定内給与額
年間賞与その他特別給与額
労働者数

出典は同じく厚生労働省 令和7年賃金構造基本統計調査(職種)第1表(e-Stat statInfId=000040421116)です。8つの中に「年収」という項目がありません。月ごとの給与額と、1年分の賞与その他特別給与額とが、別々の項目として置かれているだけです。

ここまでで、2つのことが分かりました。管工事の施工管理だけを取り出した職種区分が、この調査には無い。そして年収という項目そのものが、この調査には無い。それでも世の中には年収の数字が出回っているわけで、その数字がどう作られたのかを次に見ます。

job tag の「年収679.1万円」は、月額と賞与を足した加工値

先ほどの job tag「建築施工管理技術者」のページに戻ります。同ページの統計データ欄には「賃金(年収)全国 679.1万円」と表示され、その出典として「(出典:令和7年賃金構造基本統計調査の結果を加工して作成)」と明記されています(厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「建築施工管理技術者」・2026年9月3日確認)。加工して作成、と書かれているとおり、これは調査から直接そのまま持ってきた値ではありません。

もとになる区分を探しにいきます。厚生労働省 令和7年賃金構造基本統計調査(職種)第1表(企業規模計10人以上・男女計・産業計・e-Stat statInfId=000040421116)で「建築技術者」の行を見ると、きまって支給する現金給与額が456.2千円、年間賞与その他特別給与額が1,316.1千円です。あわせて年齢43.4歳、所定内実労働時間数166時間、超過実労働時間数17時間、所定内給与額407.5千円、勤続年数12.9年、労働者数37,332(十人)が同じ行に並んでいます。

この2つの金額を、月額を12か月分にして年間賞与を足す形で計算すると、456.2×12+1,316.1=6,790.5千円、つまり679.05万円になります。job tag の表示値は679.1万円ですから、小数第1位まで一致します。年齢43.4歳と所定内実労働時間数166時間も、job tag 側の表示と揃っています。

念のため書いておくと、これは検算です。job tag が公式にこの式を使っていると発表しているわけではなく、公表されている表示値が、この区分のこの2項目からこの式で再現できることが確認できた、というところまでが言えることです。当サイトとしてここから新しい推定年収を作るつもりもありません。ここで確かめたかったのは、次の3点だけです。

  • 679.1万円は「建築技術者」という職種区分の値から再現できる(設備の施工管理だけを集計した値ではない)
  • 元の調査に年収という項目は無く、job tag 側で加工して作られた値である(出典表記は「加工して作成」)
  • 足す前の月額は、所定内給与額407.5千円ではなく、きまって支給する現金給与額456.2千円のほう

job tag 自身も、統計データ欄に「※「統計データ」は、必ずしもその職業のみの統計データを表しているものではありません。」という注記を置いています(同ページ・2026年9月3日確認)。数字の作り手の側が、この数字はその職業だけの数字ではないと断っている、ということです。

同じ仕組みで、配管工のページは523.1万円になる

同じ job tag の中には、別の職業ページとして「配管工」(https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/47 ・2026年9月3日確認)があります。同ページの「どんな仕事?」は「住居や工場、事務所には給水管、排水管、ガス管、冷暖房換気装置、消火設備、排水処理施設や空気清浄装置などが必ず設けられているが、その配管工事を行う。配管工は給水、排水などの配管を専門に施工する衛生配管工と、冷暖房などの配管を行う空調配管工に大別される。」と説明しています。給排水と空調という、管工事の施工管理が日々見ている工事そのものです。

そして同ページの統計データ欄には「賃金(年収)全国 523.1万円」と表示され、出典表記は建築施工管理技術者のページと同じ「(出典:令和7年賃金構造基本統計調査の結果を加工して作成)」です(同ページ・2026年9月3日確認)。同じ式で再現できるのは「配管従事者」の行の値です。厚生労働省 令和7年賃金構造基本統計調査(職種)第1表(企業規模計10人以上・男女計・産業計・e-Stat statInfId=000040421116)の同区分の行は、以下の値で並んでいます。

統計上の項目 「配管従事者」の値
年齢 42.9歳
勤続年数 12.7年
所定内実労働時間数 165時間
超過実労働時間数 11時間
きまって支給する現金給与額 368.6千円
所定内給与額 335.7千円
年間賞与その他特別給与額 807.5千円
労働者数 9,301(十人)

368.6×12+807.5=5,230.7千円、つまり523.07万円。job tag の表示値523.1万円と、やはり小数第1位まで一致します。先ほどとまったく同じ形の計算です。こちらも、job tag が公式にこの式を発表しているわけではなく、公表値がこの区分のこの2項目から再現できる、というところまでの話です。

この記事でいちばん見てほしいのは、ここです。679.1万円(建築技術者)と523.1万円(配管従事者)は、どちらも同じ調査の同じ2項目から、同じ式で再現できる数字です。つまり再現に使える職種区分が2つあるということで、そこだけで156万円ほど開きます。管工事の施工管理という仕事を公的な資料の中で追いかけようとすると、建築技術者の側にも配管従事者の側にも足がかりがあり、どちらを経由するかで着地する額が大きく変わる、ということになります。

とはいえ、配管工のほうが実態に近い、という話ではありません。同ページの「就業するには?」は「入職にあたって、特に学歴や資格は必要とされない。入職して働きながら技能を身につけていくか、職業訓練校で所定の課程を修了した後に入職する。」としています(同ページ・2026年9月3日確認)。学歴も資格も入職の条件になっていない技能職として説明されているわけで、1級を持って現場を管理する立場とは前提が違います。それでいて、同ページの関連資格の欄には1級管工事施工管理技士・2級管工事施工管理技士・1級管工事施工管理技士補・2級管工事施工管理技士補が並んでいます(同ページ・2026年9月3日確認)。同じ資格が、別名としても関連資格としても、2つの職業ページにまたがって顔を出している状態です。

したがって、2つの額の差を「1級を取ると上がる金額」として読むこともできません。これは資格の有無で分かれた2つの数字ではなく、統計の区分の切り方で分かれた2つの数字だからです。数字が2つあるのに、どちらも自分の額とは言えない。この気持ち悪さこそが、公的資料が置かれている実際の状態だと僕は考えています。

求人票で確かめるのは、平均ではなく条件のほう

平均を探すのをやめると、代わりに何を見ればいいのか。統計の側の項目立てが、そのまま答えのヒントになっています。

先ほど確認したとおり、この調査は月ごとの給与額と1年分の賞与その他特別給与額を別々の項目として公表していて、それらを1つにまとめた年収という項目を持っていません(厚生労働省 令和7年賃金構造基本統計調査(職種)第1表・e-Stat statInfId=000040421116)。求人票に書かれている「年収500〜750万円」は、その反対に、月々の支給額も賞与も込みにした1つの数字です。粒度が違うものを直接ぶつけても、どちらが高いか低いかは決まりません。求人票の数字を統計に当てにいくのではなく、求人票そのものの中で条件を確かめるほうが早い、というのはそういう意味です。

見るところは3つに絞れます。

  • レンジのどこが自分の条件に対応するのか(下限は何年目・何の経験を想定した額か、上限は何を満たした人の額か)
  • 提示額に固定残業代が含まれているか、含まれているなら何時間分か
  • 賞与が提示額に入っているのか、それとも別に支給されるのか

この3つが埋まらないと、他社の求人票と横に並べられません。逆にここが埋まれば、平均を知らなくても比較はできます。確かめる相手は統計ではなく募集元だ、と割り切ったほうが早いです。

なお、統計の側が月額を2種類の項目に分けているのは、超過労働給与額を含む額と含まない額を混ぜないためです。所定内給与額ときまって支給する現金給与額が、それぞれ何をどこまで含んでいるのかという定義そのものは、1級電気工事施工管理技士の記事で調査の定義文を引いて詳しく説明しています。

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動く前に、自分の側で確定させておくこと

求人票を読む力が付いたところで、もう1つ別の準備が残っています。求人票の側の条件がどれだけ読めても、応募する自分の側の状態が固まっていないと、話が前に進みません。手元で確定させておきたいのは次の3行です。

  • 実務経験の年数が、受検資格として求められている水準に届いているか
  • その経験を、証明できる形で書き出せるか
  • 受け直すつもりがあるなら、手元の教材が令和6年度以降の出題に対応しているか

上の2行は、実務経験の話です。何年必要かは受検資格の枠組みによって変わりますし、認められる管工事と認められない工事の線引きもあります。年数・経過措置・実務経験証明書の書き方は、次の記事にまとめてあります。

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3行目は、試験の中身が変わったことに関係します。一般財団法人 全国建設研修センター 管工事試験部が令和6年2月26日に公表した「令和6年度以降の管工事施工管理技術検定試験問題の見直しについて」により、令和6年度以降の1級・2級の第二次検定では、工程管理と安全管理の設問が必須の位置に置かれ、受検者自身の経験をもとに答えさせる形の設問は置かれなくなりました。古い年度に作られた教材は、この変更の前提で書かれたままになっている可能性があります。見直しの中身と、令和7年度に実際に出た問題の構成、それに古い教材の見分け方はこちらが詳しいです。

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1級管工事施工管理技士の求人・転職に関する情報まとめ

  • 最初に確かめること:提示された金額そのものではなく、その金額が何と比べられた数字なのか
  • 公的な職業情報での位置づけ:管工事施工管理技士は「建築施工管理技術者」の職業別名6つのうちの1つ
  • 賃金統計での位置づけ:職種145区分に「管工事」も「施工管理」も無く、表頭にも「年収」という項目が無い
  • 679.1万円の正体:「建築技術者」の月額456.2千円と年間賞与1,316.1千円から再現できる加工値
  • 523.1万円の正体:「配管従事者」の月額368.6千円と年間賞与807.5千円から、同じ式で再現できる加工値
  • 求人票の見方:レンジの対応関係・固定残業代の有無と時間数・賞与の扱いの3つを確かめる
  • 動く前の準備:実務経験の年数と証明のしかた、受け直すなら教材の年度を先に固めておく

以上が1級管工事施工管理技士の求人・転職に関する情報のまとめです。

相場が見つからないのは、探し方が下手だからでも、この資格の価値が測れないからでもありません。公的な資料の側に、管工事の施工管理だけを切り出した職種の欄がそもそも用意されていないというだけの話です。そう分かってしまえば、平均を探す時間を、目の前の求人票1枚の条件を詰める時間に回せます。金額の当てっこをやめて条件を確かめにいくほうが、結果的に自分の額に早くたどり着けるはずです。

建築の1級についても同じ突き合わせをやっているので、あわせて読むなら次の記事です。

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