- 過去の大地震と建築基準法の改正って関係あるの?
- 旧耐震・新耐震ってどう分かれるの?
- 2000年基準って何が変わった?
- 阪神・東日本以降の改正は?
- 中古物件で「耐震性」を確認するときどう使う?
- 施工管理として何を押さえるべき?
上記の様な悩みを解決します。
「この建物は新耐震ですか?」「旧耐震とどう違う?」と聞かれて答えに詰まる人は多いと思います。実は 建築基準法の耐震規定は、過去の大地震で建物が壊れる→法律を改正、というサイクル で進化してきました。年表で並べてみると、地震と建築基準法の関係が一気にクリアになります。今回は施工管理視点で、地震と建築基準法の年表を整理してみます。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
地震と建築基準法の年表(全体俯瞰)
地震と建築基準法の主要トピックを時系列で並べると、結論「大地震→法改正→次の地震→法改正… が繰り返されている」のが見えてきます。
主要な地震と建築基準法改正の年表
| 年 | 大地震・出来事 | 建築基準法・関連法の動き |
|---|---|---|
| 1891年 | 濃尾地震(M8.0) | 震災予防調査会発足(地震研究の起点) |
| 1919年 | — | 市街地建築物法 公布 |
| 1923年 | 関東大震災(M7.9、死者10万超) | — |
| 1924年 | — | 市街地建築物法改正(初の耐震規定、震度0.1の水平力規定) |
| 1948年 | 福井地震(M7.1) | — |
| 1950年 | — | 建築基準法 制定(市街地建築物法を廃止)/許容応力度設計 |
| 1964年 | 新潟地震(M7.5、液状化) | 液状化研究の本格化 |
| 1968年 | 十勝沖地震(M7.9、RC柱せん断破壊多発) | — |
| 1971年 | — | 建築基準法施行令改正(RC柱の帯筋規定強化、十勝沖の教訓) |
| 1978年 | 宮城県沖地震(M7.4、RCピロティ被害) | — |
| 1981年 | — | 建築基準法施行令の大改正(新耐震基準) 保有水平耐力・層間変形角の規定 |
| 1995年 | 阪神・淡路大震災(M7.3、死者6,400人超) | — |
| 2000年 | — | 建築基準法・住宅品確法 大改正(2000年基準) 地耐力規定・接合部規定・住宅性能表示 |
| 2004年 | 新潟県中越地震(M6.8) | 既存不適格建築物の耐震診断義務化(特定建築物) |
| 2006年 | — | 建築基準法改正(構造計算適合判定制度/姉歯事件後) |
| 2011年 | 東日本大震災(M9.0、津波被害甚大) | — |
| 2014年 | — | 津波防災地域づくり法・新たな津波避難ビル基準 |
| 2016年 | 熊本地震(M7.3、震度7×2回) | 連続地震に対する設計手法の議論 |
| 2018年 | 大阪府北部地震(M6.1、ブロック塀倒壊) | ブロック塀の安全点検要請 |
| 2024年 | 能登半島地震(M7.6) | 既存木造建物の耐震性能再検証 |
注目すべき3つの節目
特に押さえておきたい節目は、1924年(市街地建築物法に初めて耐震規定が入った=関東大震災の翌年)、1981年(新耐震基準が施行=震度6強で倒壊しない設計へ)、2000年(2000年基準で接合部・地耐力・耐力壁配置の規定強化)、という3つ。
「旧耐震」と「新耐震」を分ける線が 1981年6月1日 で、ここを境に建物の耐震性能が大きく変わったのが現代の常識です。
新耐震・旧耐震の話はこちら(壁量計算と関連)。

層間変形角(新耐震で導入)の話はこちら。

関東大震災(1923年)と耐震規定の誕生
関東大震災は、現代日本の耐震基準の 原点 です。
関東大震災の概要
関東大震災の概要は、発生日が1923年9月1日、マグニチュード7.9、死者・行方不明者が約10万5千人、主な被害は東京・横浜のレンガ造・木造住宅の倒壊と火災旋風、というかたち。
当時の建築事情
当時の建築事情は、レンガ造・組積造が多く地震に脆弱だった、木造住宅の壁量・接合部規定がなかった、鉄筋コンクリート造はまだ少なかった、というあたり。
1924年の市街地建築物法改正
関東大震災の翌年、市街地建築物法に 「水平震度0.1」(建物自重の10%の水平力に耐える)という設計規定が追加されました。これが日本初の本格的な耐震規定です。
「震度0.1って弱い?」と思うかもしれませんが、当時は 耐震規定そのものがなかった ので、これだけでも大きな前進でした。
福井地震(1948年)と建築基準法の制定
戦後、福井地震をきっかけに建築基準法が制定されます。
福井地震の概要
福井地震の概要は、発生日が1948年6月28日、マグニチュード7.1、死者約3,800人、主な被害は福井市内の木造住宅・RC造の倒壊、というかたち。
1950年の建築基準法制定
戦後復興と相まって、市街地建築物法を発展的に解消し 建築基準法 が制定されました。水平震度を0.2に引き上げ、許容応力度設計の導入、全国統一の建築規制(市街地建築物法は都市部限定だった)、というのが主なポイント。
これ以降、建築基準法は地震被害のたびに改正を重ねていくことになります。
1981年「新耐震基準」の登場
地震対策の歴史で最大の節目が、1981年の建築基準法施行令の大改正、いわゆる 新耐震基準 です。
新耐震基準の主なポイント
新耐震基準の主なポイントは、2段階の検証を要求(一次設計=震度5強・二次設計=震度6強〜7)、保有水平耐力の概念が導入、層間変形角が1/200以下(一次設計)の規定、木造住宅の壁量規定を強化、必要保有水平耐力の概念で大地震時に倒壊しない設計へ、というあたり。
新耐震基準が施行されたタイミング
公布は1981年6月1日、適用も1981年6月1日以降に建築確認を受けた建物が対象、という日付の整理。
この日付が「旧耐震/新耐震」の境界 です。中古住宅の耐震性確認で必ず聞かれる「いつ建築確認を取りましたか?」の理由はここにあります。
阪神・淡路大震災での新耐震の評価
1995年の阪神・淡路大震災では、新耐震基準(1981年以降)で建てられた建物の 倒壊率が大幅に低かった ことが確認され、新耐震基準の有効性が実証されました。一方で旧耐震建物は大きな被害を受け、これがその後の 耐震診断・耐震改修促進法 の制定(1995年)につながります。
保有水平耐力の話はこちらも参考に。

層間変形角の話はこちら。

2000年基準と現代の耐震規定
阪神・淡路大震災を受けて、2000年に建築基準法・住宅品確法が大幅に改正されました。これが 「2000年基準」 と呼ばれるものです。
2000年基準の主な変更点(木造住宅)
2000年基準の主な変更点は、地耐力に応じた基礎の規定(地盤調査が事実上の必須)、筋交いや構造金物の接合部規定(金物による接合の義務化)、耐力壁のバランス配置(4分割法、偏心率の考慮)、というあたり。
住宅品確法の制定
同じ2000年に住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)が施行され、住宅性能表示制度、瑕疵担保責任10年義務化、住宅性能評価書、というのが制度化されました。
2000年基準が中古住宅で重要な理由
中古住宅の検討時、よく「2000年基準前か後か」で耐震性能を判断します。旧耐震(〜1981年5月)は耐震性能が低い、新耐震(1981年6月〜)は基本的な耐震性能あり、2000年基準(2000年6月〜)は接合金物・地耐力・壁配置まで規定された現代仕様、という3階層で評価するのが基本。
2006年の建築基準法改正
2005年の 姉歯事件(構造計算書偽造事件)を受けて、2006年に建築基準法が改正され 構造計算適合判定制度 が導入されました。一定以上の高さや規模の建物は、構造計算書を専門の判定機関で再チェックする仕組みです。
壁量計算の話はこちら。

剛性率の話はこちら。

偏心率の話はこちら。

東日本大震災(2011年)以降の動き
2011年の東日本大震災(M9.0、最大震度7)は、それまでの「揺れ」中心の耐震基準に 津波 という新しい視点を持ち込みました。
東日本大震災の特徴
東日本大震災の特徴は、巨大津波による建物・設備の壊滅的被害、沿岸部の建物倒壊、想定外の長周期地震動による超高層・免震建物の長時間揺れ、ライフライン・インフラの長期停止、というあたり。
法令・基準の動き
法令・基準の動きは、2011年の津波防災地域づくり法制定、2013年の津波避難ビルの基準明確化、同時期の超高層建物の長周期地震動への対応指針、という流れ。
熊本地震(2016年)の教訓
2016年4月、熊本県を 震度7の地震が2回連続 で襲いました。これは「想定」になかった事態で、建築基準法は基本的に「震度7の地震で倒壊しない」設計を求めますが、「2回続けて震度7」までは想定していなかった。1981年新耐震・2000年基準でも被害が出た例があり、連続地震に対する設計手法の見直しが議論されました。
能登半島地震(2024年)
2024年元日の能登半島地震は、新耐震・2000年基準前の 古い木造住宅の被害が中心。「旧耐震木造住宅は依然として日本の地震リスクの大きな部分」という認識が再確認されました。
地震荷重の話はこちら。

地震年表に関する施工管理の注意点
最後に、地震と耐震規定の年表を施工管理として現場で活用するうえでの注意点を整理します。
注意点①:1981年以前の物件は「旧耐震」で扱う
中古物件の改修・解体・耐震診断を依頼されたら、まず 建築確認年月日 を確認しましょう。1981年5月以前なら旧耐震、6月以降なら新耐震というのが原則。「築年数」ではなく「建築確認年月日」 で判断するのがポイントです。
注意点②:2000年基準前後で木造住宅の補強方針が変わる
2000年以前の木造住宅は 接合金物が不十分 なケースが多く、耐震改修では金物補強が中心になります。一方2000年以降の建物は接合部はある程度規定通りなので、改修では 耐力壁の追加 や 基礎補強 が中心になります。
注意点③:「耐震性能評価」と「建築当時の基準」の違い
「新耐震だから安心」とは限らず、新耐震物件でも 実際の耐震性能評価(耐震診断)で Is値が0.6を下回る ことがあります。耐震診断は「建築当時の基準で建てられたか」だけでなく、現状の劣化・改修履歴・実際の構造 を総合判定するものです。
注意点④:2025年壁量計算改正への注意
2025年4月から木造住宅の壁量計算が改正され、必要壁量の計算方法が変わりました。新築だけでなく、既存住宅の 設計改修・増改築 でも適用要件が変わるので、最新の規定を確認しておきましょう。
壁量計算の改正はこちら。

注意点⑤:耐震診断と耐震改修の最新動向
耐震診断は1995年の改修促進法、2013年の改正で 大規模建築物の耐震診断・公表義務 が拡大しています。施設管理者からの相談が増えるトピックなので、関連法令を押さえておくと信頼につながります。
築40年のオフィスビル改修案件で、当初は「内装と電気設備のリニューアルだけ」という話だったのが、建築確認年月日が 1980年12月 だったために旧耐震判定→耐震改修必須となり、スコープが3倍に膨らんだプロジェクトに関わったことがあります。施主側はビルの竣工年が1981年だったので「ギリギリ新耐震」と思い込んでいましたが、確認申請は半年前。電気設備としても耐震ブレース増設に合わせて天井裏の幹線ルートをまるごと組み直しになり、設計図を3回引き直す事態に。1981年6月1日の建築基準法施行令改正は 建築確認の日付が境界 で、竣工日ではないという基本ルールを、施主・設計・施工の三者で初日に確認しておけば、もっと早くスコープを正しくつかめました。改修案件の初動は、登記簿よりまず確認済証の控えを見る、が定石です。
地震の年表に関する情報まとめ
- 地震と建築基準法は 大地震→法改正のサイクル で進化してきた
- 1924年:市街地建築物法改正で初の耐震規定
- 1950年:建築基準法 制定
- 1981年6月1日:新耐震基準施行(旧耐震/新耐震の境界)
- 2000年6月:2000年基準(接合部・地耐力・耐力壁配置の強化)
- 2006年:構造計算適合判定制度(姉歯事件後)
- 2011年:東日本大震災で津波対策が法制度化
- 2016年:熊本地震で連続地震対応の議論
- 2024年:能登半島地震で旧耐震木造住宅の被害が再確認
- 2025年4月:木造住宅の壁量計算が改正
以上が地震の年表に関する情報のまとめです。
地震と建築基準法の年表は、単なる歴史ではなく 「いつの建物がどの基準で建っているか」を即座に判断する実務ツール です。1981年と2000年という2つの大きな節目を覚えておくだけで、中古物件・改修案件の打合せでぐっとリードできるようになります。一通り地震の年表に関する基礎知識は理解できたと思います。
合わせて、関連する耐震・地震・構造規定の知識もチェックしておきましょう。









