- HEMSって結局なに?スマートメーターと何が違う?
- どの仕組みで動いてるの?
- パナとシャープと三菱、どれを選べばいい?
- ECHONET LiteとBルートって何?
- 補助金、ZEH支援事業とV2H補助金どっち使える?
- 申請してから入金まで何ヶ月かかる?
- 分電盤のCT、何個必要?既存住宅で盤交換いる?
- LAN配線はCAT6でいい?光回線は必須?
- 試運転で蓄電池・太陽光・V2H全部立ち会い必要?
- 既存住宅にHEMS後付けって現実的?
- 太陽光ない家にHEMSだけ入れる意味ある?
上記の様な悩みを解決します。
HEMS(ヘムス)は2030年までに全世帯設置を国が目指す住宅用エネルギー管理システムで、戸建て新築では標準仕様化が進んでいます。電気施工管理として「いきなり初担当」「補助金申請を任された」「分電盤CT設置で困った」というケースが急増している領域。今回は定義・仕組み・メーカーといった基礎を押さえた上で、現役の電気施工管理経験者目線で「2026年最新の補助金制度と申請動詞」「分電盤CT設置の実務」「LAN配線・通信インフラの段取り」「試運転調整の段取り」「既存住宅後付けの判断軸」など、明日の現場で動けるレベルまで落とし込みました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
HEMSとは?
HEMSとは、結論「家全体のエネルギー使用量を見える化して、家電・電気設備を自動制御するシステム」のことです。読みは「ヘムス」。
正式名称は Home Energy Management System で、直訳すると「家庭エネルギー管理システム」。家中の電気使用量を計測してスマホやモニターで確認できるだけでなく、太陽光発電・蓄電池・エコキュート・エアコン・照明などとも連携して、エネルギーの生産・貯蔵・消費を最適化します。
国の方針として、政府は2030年までに全世帯へのHEMS設置を目指すと表明しています(経済産業省「エネルギー基本計画」より)。ZEHやV2Hの普及と歩調を合わせる形で、HEMSは住宅電気工事の標準装備に近づきつつある状況です。
ビル向けの同種システムは BEMS(ビルエネルギー管理システム)、工場向けは FEMS と呼びます。仕組みは似ていますが、家庭向けに最適化されたのがHEMS、という位置づけです。
ZEH/V2Hの詳細はこちらが詳しいです。


僕としては、HEMSは「家電単体の制御ツール」というより「住宅のエネルギー戦略の司令塔」と捉えると役割が一気に明確になります。太陽光・蓄電池・V2Hを束ねて統合制御するハブで、これらの設備の補助金要件としてHEMSがセットで求められるケースも多い。電気施工管理として、HEMS単体の知識より「3点セット+HEMS」の段取りで考える発想が現場で効きます。
HEMSの基本構成
HEMSは次の3つの要素で構成されます。シンプルな構造ですが、各要素の役割を正確に把握しないと現場で詰みます。
| # | 要素 | 役割 | 設置場所 |
|---|---|---|---|
| ① | HEMSコントローラ | 中核機器、各機器を統合制御 | リビング壁面 or 分電盤近傍 |
| ② | 計測ユニット(CT) | 電流計測(主幹・各回路) | 分電盤内 |
| ③ | 通信規格 | 機器同士の連携 | 有線LAN/Wi-Fi/Wi-SUN |
HEMSコントローラ
家中の機器を統合制御する中核機器。パナのAiSEG2が業界シェア最大手。
- 価格帯:10〜25万円
- 設置場所:リビング壁面 or 分電盤近傍
- 必要条件:100V電源、有線LAN1口、Wi-Fi or Wi-SUN
計測ユニット(CT)
分電盤の主幹と各回路にCTを取り付けて電流を計測する装置。
- 主幹用CT:1〜2個
- 各回路用CT:6〜16個(測定したい回路数による)
- 設置場所:分電盤内(スペース必須)
- 価格帯:5〜10万円
通信規格
機器同士をつなぐ通信規格。家電メーカー横断の標準規格としてECHONET Liteが採用されています。
- 有線LAN:CAT6以上推奨、最も安定
- Wi-Fi:手軽だが電波届かないリスク
- Wi-SUN:スマートメーターとの通信用
CT変流器の詳細はこちらが詳しいです。

分電盤の詳細はこちらが詳しいです。

僕の感覚だと、新人施工管理が一番ハマるのが「計測ユニット用のCTスペースが分電盤に確保されていない」パターンです。既存住宅の後付けで分電盤交換が発生すると、コストが一気に膨らんで施主と揉める。新築時は設計初期から「HEMS対応分電盤」を仕様指定するのが鉄則です。
HEMSの3つの機能(見える化・遠隔操作・自動制御)
HEMSの機能を整理すると、次の3つに集約されます。
見える化(モニタリング)
家全体・部屋ごと・機器ごとの電気使用量をリアルタイム表示。
- 全体使用量のリアルタイム表示
- 機器別の内訳(エアコン/給湯器/照明等)
- 時間帯別の使用量グラフ
- 太陽光発電量と消費量の対比
- 電気料金の推計
「エアコンと冷蔵庫で全体の半分使ってる」レベルの発見が出てきます。スマホアプリで外出先からも確認可能。
遠隔操作
家電・電気設備をスマホから操作。
- エアコンON/OFF・設定温度変更
- 照明ON/OFF・調光
- シャッター開閉
- エコキュート湯沸し
- 電気錠の施錠
「家を出てからエアコン消し忘れに気付いた」場面で重宝します。
自動制御
設定ルールやAI学習で機器を自動制御。
- 売電単価が下がる時間帯は蓄電池に充電
- ピーク電力を超えそうな時に特定機器をOFF
- 太陽光発電量に応じて自家消費機器を稼働
- 天気予報連動で翌日の使用計画
メーカーによってはAI学習で各家庭の使用パターンに最適化が進んでいます。
僕としては、3機能で施主に一番刺さるのは「自動制御」だと感じます。見える化や遠隔操作は1〜2ヶ月で飽きられがちですが、自動制御は「気付いたら電気代が下がってる」という体感が継続するので、満足度の維持に効きます。施主への説明では、見える化を入口にしつつ自動制御の価値を強調するのが定番フローです。
HEMSとZEH・V2H・太陽光・蓄電池の関係
HEMSは単独で動く設備ではなく、家全体のエネルギー戦略の中で位置づけられます。
| 設備 | 役割 | HEMSとの関係 |
|---|---|---|
| 太陽光発電 | 発電する(生産) | 発電量をHEMSが取得 |
| 蓄電池 | 貯める(貯蔵) | 充放電をHEMSが制御 |
| V2H | EVを蓄電池として使う | 充放電タイミングをHEMSが制御 |
| エコキュート | 給湯(蓄熱) | 沸き上げタイミングをHEMSが制御 |
| エアコン・照明 | 使う(消費) | 使用量をHEMSが計測・制御 |
| HEMS | これら全体を見える化+制御 | 司令塔 |
HEMSがZEH/V2H補助金の要件になっている
ZEH補助金やV2H補助金の交付要件には「HEMSの設置」が含まれているケースが多く、HEMSなしでは満額取れない構造になっています。
- ZEH支援事業:HEMS設置が要件に含まれる
- V2H補助金(CEV補助金):HEMSセット要件あり
- DR補助金(デマンドレスポンス):HEMSと連携できることが要件
逆に言うと、ZEH/V2Hを導入する施主にはHEMSは事実上必須。施工管理側としては設計初期から3点セットで計画を立てるのが定石です。
ZEHの詳細はこちらが詳しいです。

ZEBの詳細はこちらが詳しいです。

EV充電器設置の詳細はこちらが詳しいです。

僕の感覚だと、HEMSを「単体の設備」として売り込むと施主には響きません。「ZEH補助金55〜100万円取るために必要な設備です」と補助金とセットで提示すると、検討が一気に進みます。電気施工管理として施主・住宅メーカーと打合せる時は、HEMS単体ではなく補助金スキームとセットで提案する発想が効きます。
HEMSの主要メーカーと実選定基準
HEMSメーカーは家電メーカー系と独立系の2系統に分かれます。実選定の判断軸を整理します。
主要メーカー一覧
| メーカー | 主力製品 | 強み |
|---|---|---|
| パナソニック | スマートHEMS(AiSEG2) | 業界シェア最大、住宅メーカー標準採用多 |
| シャープ | クラウドHEMS(COCORO HOME) | 太陽光・蓄電池連携 |
| 三菱電機 | 三菱HEMS | 自社製品連携が手厚い |
| 京セラ | エネレッツァ | 太陽光メーカー由来の統合管理 |
| 日立 | ハーモニアス | リフォーム後付け対応 |
| NTT東日本 | フレッツ・ミルエネ | 低価格、回線セット |
実選定の3つの判断軸
判断軸1:家電メーカーが揃っているか
- パナソニック製エアコン・給湯器・太陽光で固めている → AiSEG2が連携機能をフルに使える
- 複数メーカー混在 → ECHONET Lite対応機種数が多いメーカーを選ぶ
判断軸2:既存設備との互換性
- 太陽光発電が既に設置済み → 太陽光メーカーと同系列のHEMS(パナ太陽光ならパナHEMS)
- 蓄電池が既設 → 蓄電池メーカー対応HEMSを優先
判断軸3:補助金要件との整合
- ZEH支援事業を狙う → SII登録機種から選定
- V2H補助金を狙う → V2H機器との連携実績があるHEMS
ECHONET Lite対応の実態
ECHONET Lite(エコーネットライト)は家電メーカー横断の標準通信規格。一般社団法人エコーネットコンソーシアムが策定しており、対応機器ならメーカーが違ってもHEMSから操作できる、という建前です。
ただし現場での実態は次の通り。
- 機器マニュアル上は対応でも一部機能のみ
- HEMS側で「測定可」だが「制御不可」のケースあり
- 古い機器は対応外(2015年以前は要注意)
- メーカー独自のクラウドサービス経由になる場合あり
僕としては、メーカー選定は「施主の家電メーカーの偏り」を最初に確認するのが正解だと感じます。パナで固まっているならパナのAiSEG2一択、複数メーカー混在なら ECHONET Lite機種数でパナorシャープ、独立系で価格重視ならNTTのフレッツ・ミルエネ、という流れ。「メーカー機能比較表を施主に見せて選ばせる」より、施主の家電構成から推奨を絞る方が話が早いです。
ECHONET LiteとBルートの整理
HEMSの通信周りで混乱しやすいのが「ECHONET Lite」と「Bルート」。両者の役割を整理します。
ECHONET Liteとは
家電メーカー横断のHEMS用通信規格。
- 役割:HEMSと家電・電気設備をつなぐ通信プロトコル
- 物理層:有線LAN/Wi-Fi/Wi-SUN/PLC等
- 対応機器:エアコン、給湯器、太陽光、蓄電池、V2H、照明等
- 策定:エコーネットコンソーシアム
- 通信範囲:家庭内ローカル
Bルートとは
スマートメーターから家庭内のHEMSへ電力使用量を送る経路。
- 役割:スマートメーターの電力量データをHEMSが取得
- 通信規格:Wi-SUN(無線)
- 申請:電力会社にBルート利用申込みが必要
- 認証ID/パスワード:電力会社が発行
3つの経路の整理
スマートメーターには3つの通信経路があります。
| ルート | 通信相手 | 用途 |
|---|---|---|
| Aルート | 電力会社の検針システム | 自動検針 |
| Bルート | 家庭内のHEMS | HEMSへの電力データ提供 |
| Cルート | 電力会社→第三者事業者 | データ事業者向け |
HEMSが取得するのはBルート。
Bルート申請の動詞
施工管理が動くフローは次の通り。
- 施主が電力会社にBルート利用申込書を提出
- 電力会社が認証ID/パスワードを発行(1〜2週間)
- 施工時にIDをHEMSコントローラに設定
- スマートメーターとペアリング
- HEMSで電力使用量が表示されることを確認
スマートメーターの詳細はこちらが詳しいです。

僕としては、Bルート申請は意外と忘れがちなプロセスです。HEMS設置後に「電力データが出てこない」と問い合わせが来て初めて気付くパターンが多い。設置工事の段取り表に「Bルート申請」を明記しておくと事故を防げます。
HEMSの導入費用と内訳
施主から「いくらかかるの?」と聞かれる代表的な質問。費用感を具体的な内訳で整理します。
標準的な戸建て新築の費用相場
| 内訳 | 概算費用 | 備考 |
|---|---|---|
| HEMSコントローラ本体 | 10〜25万円 | パナAiSEG2基本構成 |
| 計測ユニット(CT) | 5〜10万円 | 主幹+各回路6〜16個 |
| HEMS対応分電盤 | 5〜15万円差額 | 通常盤との差額 |
| 通信機器(ルーター・LANハブ) | 2〜5万円 | 必要に応じて |
| 設置工事費(電気工事) | 5〜15万円 | 配線・設置・試運転 |
| 合計(標準的な戸建て) | 20〜50万円 | 既設設備込みで変動 |
太陽光・蓄電池とセット導入の場合
太陽光・蓄電池とセットで導入する場合は「ハイブリッドパワコン+HEMSパッケージ」として売られていることも多く、
- 太陽光発電システム:100〜200万円
- 蓄電池:100〜200万円
- HEMSパッケージ:上記に含まれる場合あり
- 合計:200〜450万円
既存住宅後付けの場合
新築より割高になります。
| 項目 | 追加コスト |
|---|---|
| 分電盤交換 | 10〜30万円 |
| 通信配線工事 | 5〜15万円 |
| HEMS本体・CT | 15〜35万円 |
| 試運転調整 | 5〜10万円 |
| 合計 | 35〜90万円 |
僕の感覚だと、新築時のHEMS導入は「住宅価格に紛れる」ので施主の心理的ハードルが低いです。既存住宅後付けは「単独の高額投資」に見えるので、補助金と組み合わせて実質負担額を提示する方が話が進みます。「90万円かかりますが補助金で50万円戻ります」と言えると、検討が一気に前向きになります。
2026年最新の補助金制度と申請手順
補助金は毎年制度が変わる性質ですが、2026年5月時点の主要制度と申請手順を整理します。最新情報は必ず公式サイト(経産省/環境省/SII/自治体)で確認してください。
主要な補助金制度(2026年5月時点)
| 補助金 | 主管 | HEMSとの関係 | 概算金額 |
|---|---|---|---|
| ZEH支援事業 | 環境省/SII | HEMSが要件に含まれる | 55〜100万円(ZEH住宅として) |
| 戸建ZEH・ZEH+ | 経産省 | HEMSが要件 | 100万円前後 |
| V2H補助金(CEV補助金) | 経産省 | HEMS連携が要件 | V2H機器費の1/2、上限75万円 |
| 子育てグリーン住宅支援事業 | 国交省 | HEMS単体は対象外、ZEH住宅向け補助 | 40〜100万円 |
| 都道府県・市区町村独自補助 | 自治体 | HEMS単独補助あり | 5〜30万円 |
ZEH支援事業の申請フロー
- 施主が登録工務店・住宅メーカーで申込み
- ZEH仕様の設計(HEMS設置含む)
- SII(環境共創イニシアチブ)に交付申請
- 交付決定通知(1〜3ヶ月)
- 着工・工事完了
- 完了実績報告書をSIIに提出
- 補助金交付(実績報告後1〜3ヶ月)
申請から入金までのタイムライン
| ステップ | 所要期間 |
|---|---|
| 申込み準備 | 1〜2ヶ月 |
| SII交付申請 | 即日 |
| 交付決定通知 | 1〜3ヶ月 |
| 着工〜工事完了 | 3〜6ヶ月 |
| 実績報告書提出 | 工事完了から1ヶ月以内 |
| 補助金入金 | 実績報告から1〜3ヶ月 |
| 合計 | 6〜15ヶ月 |
申請時のチェックポイント
- 申請者:原則として施主、施工会社が代行することも可
- 必要書類:申請書、設計図、HEMS仕様書、見積書、登記簿等
- 締切:年度予算の上限到達次第終了(早期締切リスク)
- 二重申請禁止:ZEHとV2Hの併用は要確認
よくある失敗
- 交付決定前に着工してしまい補助金対象外
- 必要書類の不備で申請差し戻し
- 自治体補助金との併用ルール違反
- HEMS設置の写真撮り忘れで実績報告不可
僕としては、補助金申請は「着工前に交付決定を取る」が絶対鉄則です。これを破ると100万円規模の補助金が全部消えるので、現場代理人として最初に確認すべきポイント。施主・住宅メーカー・施工会社で誰が申請窓口になるかも、着工前にハッキリさせておく必要があります。
HEMS設置時の電気工事のポイント(CT・分電盤)
電気施工管理として押さえておきたい現場ポイントを整理します。
CT(計測ユニット)の設置スペース確保
HEMSは分電盤の主幹と各回路にCTを取り付けて電流を計測します。
| 項目 | 標準仕様 |
|---|---|
| 主幹用CT | 1〜2個(単相2線/3線で異なる) |
| 各回路用CT | 6〜16個 |
| CT外径 | 30〜50mm |
| 分電盤スペース | 標準より深型必要 |
| 結線方式 | クランプ式 or 貫通式 |
新築時は「HEMS対応分電盤」を仕様指定するのが鉄則。標準盤に後付けでCT入れようとすると、スペース不足で盤交換が発生するリスクがあります。
既存住宅後付け時の盤交換判断
既存分電盤にCTを後付けする場合の判断軸。
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 分電盤に空きスペース十分 | CTのみ追加(5〜10万円) |
| 空きスペースあるが奥行不足 | 深型カバー追加または盤交換 |
| 古い分電盤(10年超) | 盤交換推奨(10〜30万円) |
| 主幹ブレーカが計測対応外 | 盤交換必須 |
分電盤近傍の電源コンセント
HEMS主装置・通信ハブ・ルータが集まる場所には、次の設備を確保する必要があります。
- 100V専用コンセント1〜2口
- 有線LANポート2口以上
- 弱電盤に近接配置
これを忘れると、テーブルタップでタコ足配線になり仕上がりが悪くなります。
配線・施工の注意点
- CT結線時にブレーカOFF(活線作業はNG)
- 配線色のJIS準拠(接地黒、対地100V白等)
- CT極性(K-L端子の向き)を間違えると測定値が逆
- 試運転前に絶縁抵抗測定(500V以上)
僕の感覚だと、新築時のHEMS設置で一番大事なのは「分電盤の仕様を最初に決める」ことだと感じます。これを後回しにすると、後で盤交換になって設計図と現場で齟齬が出る。電気施工管理として施主・設計者・住宅メーカーと打合せる時、分電盤型番をHEMSメーカー推奨型に揃える提案を最初の30分でやれると、後の段取りが一気に楽になります。
通信インフラの実務(LAN・Wi-SUN・光回線)
HEMSは通信インフラに大きく依存します。設計初期に押さえるべき要点を整理します。
有線LAN配線の要件
HEMSコントローラと各設備(パワコン・蓄電池・V2H・エコキュート)を有線LANで結ぶのが最も安定。
| 項目 | 推奨 |
|---|---|
| ケーブル規格 | CAT6以上(CAT6Aがベター) |
| 配線方式 | 隠蔽配線(新築時) |
| HUB配置 | 弱電盤内 or 分電盤近傍 |
| 配線本数 | 各機器1本+予備2本 |
LAN配線の詳細はこちらが詳しいです。

Wi-Fiでの接続
有線が引けない場合の代替手段。
- メリット:配線不要
- デメリット:電波届かないリスク、安定性低い
- 用途:HEMS本体と各機器の距離が近い場合のみ
Wi-SUN
スマートメーターとの通信に使う無線規格。
- 役割:Bルート通信(スマートメーター⇔HEMS)
- 通信距離:見通し100〜200m
- 必要機器:Wi-SUN対応HEMSコントローラ
インターネット回線の必須性
最近の主流であるクラウド連携型HEMSは、インターネット回線が必須。
| 回線種別 | HEMSとの相性 |
|---|---|
| 光回線(フレッツ等) | ◎ 標準・最推奨 |
| ケーブルテレビ回線 | ○ 多くのHEMS対応 |
| モバイル回線(5G/LTE) | △ 一部HEMS対応 |
| 衛星回線 | × 遅延・上限で非推奨 |
非光対応エリアではLTEルーター+HEMSも一部メーカーで可能ですが、停電・通信障害時の挙動を施主と事前確認しておく必要があります。
配線スケジュールの早期確定
新築時は次のスケジュールで先行配線します。
- 着工2〜4週間前:HEMS仕様と配線計画を確定
- 配筋工事中:床下のCD管先行配管
- 内装工事前:壁内の配線敷設
- 仕上げ後:HEMS本体取付け
僕としては、通信インフラは「後付けでモール露出になるとコケる」と覚えておくのが鉄則です。HEMSの配線を仕上げ後に追加すると、壁面にモールが走って施主から「これ何ですか?」と質問が来ます。新築時に隠蔽で済ませる段取りが、施主満足度を決めます。
試運転調整の段取り(蓄電池・太陽光・V2Hとの立ち会い管理)
HEMS試運転調整は、関連する複数設備の業者を一斉に呼び集める一日仕事。段取りミスは現場の信頼を一気に損ないます。
試運転日に必要な立ち会い業者
| 業者 | 役割 |
|---|---|
| 電気施工管理(自社) | 全体統括 |
| HEMSメーカー(パナ等) | HEMS設定 |
| 太陽光メーカー | パワコン設定・連携確認 |
| 蓄電池メーカー | 充放電動作確認 |
| V2H機器メーカー | V2H動作確認(該当時) |
| 通信業者 | 光回線開通・LAN設定 |
| 電力会社 | 受電・Bルート確認 |
試運転スケジュール(標準1日)
| 時間 | 作業 |
|---|---|
| 9:00〜10:00 | 受電・絶縁試験・電圧確認 |
| 10:00〜11:00 | 各機器の単独動作確認 |
| 11:00〜12:00 | 通信接続確認(ECHONET Lite) |
| 13:00〜14:00 | HEMS設定とBルート認証 |
| 14:00〜15:00 | 各機器との連携動作確認 |
| 15:00〜16:00 | 自動制御ルール設定 |
| 16:00〜17:00 | 施主立ち会い操作説明 |
段取り段階での確認事項
着工2週間前までに次の段取りを完了させます。
- 各業者の試運転日参加可否を確認
- 太陽光メーカーは日射条件で試運転日を選ぶ
- 電力会社の受電工事を試運転日前にスケジュール
- Bルート申請ID/PWを電力会社から取得
- 試運転当日の天候予報を3日前にチェック(雨天延期判断)
よくあるトラブル
- 蓄電池メーカーが日程合わず代理店派遣で連携不調
- 太陽光のコネクタ間違いで通信エラー
- Bルート認証IDの設定誤り
- 光回線が間に合わず通信不能
- 施主立ち会い忘れで操作説明やり直し
NG段取り
- 試運転日を「各機器の据付け終わってから決める」と各業者の都合がつかず遅延
- 各業者バラバラ呼んで日程が分散
- 試運転中の施主立ち会い時間を取らず後日説明
電力会社との契約の詳細はこちらが詳しいです。

僕としては、試運転段取りは「2週間前に全業者の日程をロックする」が絶対鉄則です。これを当日近くまで先延ばしすると、太陽光メーカーが来ない・蓄電池メーカーの代理店派遣・電力会社の受電未完了が連鎖して、試運転がやり直しになります。試運転やり直しは1日仕事の損失+施主の信頼喪失なので、段取り力で防ぐべき領域です。
既存住宅へのHEMS後付けの判断軸
新築だけでなく、既存住宅へのHEMS後付け相談も増えています。判断軸を整理します。
後付けのコスト構造
| 項目 | コスト | 備考 |
|---|---|---|
| 分電盤交換 | 10〜30万円 | 主幹CT対応に必要 |
| 通信配線工事 | 5〜15万円 | 隠蔽不可で露出になる場合あり |
| HEMS本体・CT | 15〜35万円 | 新築時と同等 |
| 試運転調整 | 5〜10万円 | 既存設備との互換確認 |
| 合計 | 35〜90万円 | 新築より20〜30万円高い |
後付けが現実的なケース
- 太陽光・蓄電池をすでに導入済み(連携でメリット最大化)
- 分電盤の更新時期が近い(10年超)
- 自治体補助金が活用可能
- 施主のITリテラシーが高い
後付けが推奨外のケース
- 太陽光・蓄電池なし、今後も予定なし(投資回収厳しい)
- 分電盤に余裕スペースなし+盤交換予算なし
- 居住者が高齢で見える化機能を活用しない
- 配線隠蔽が物理的に困難な構造
投資回収の試算
太陽光・蓄電池ありの既存住宅にHEMS後付けを検討する場合、コスト構造は次の通りです。
- 初期投資:50万円
- 補助金:10〜20万円(自治体)
- 実質負担:30〜40万円
- 年間節電効果:3〜5万円
- 投資回収:6〜13年
太陽光なしの場合は見える化効果のみで節電効果が小さく、投資回収15年超になることもあります。
後付け工事のフロー
- 現地調査(分電盤・通信環境・既設設備の確認)
- 見積提示と補助金可能性の提示
- 施主承認
- 補助金申請(必要時)
- 分電盤交換工事(半日〜1日)
- HEMS本体設置・配線(半日)
- 試運転調整(半日)
- 施主操作説明
僕の感覚だと、既存住宅後付けの相談で一番大事なのは「投資回収を正直に話す」ことだと感じます。「便利になりますよ」だけ言って50万円使わせると、後で「電気代下がってないんですけど」とクレームになります。逆に「太陽光ありなら回収できる、なしなら厳しい」とハッキリ言える施工管理は、リピート受注と紹介につながります。
HEMSとスマートメーターの違い・関係
混同しやすいHEMSとスマートメーター、両者の違いを整理します。
| 項目 | スマートメーター | HEMS |
|---|---|---|
| 役割 | 電力使用量を計測 | 計測+見える化+制御 |
| 設置者 | 電力会社(無償設置) | 施主(HEMSは自費) |
| 設置場所 | 屋外メーターBOX | 屋内(リビング等) |
| 計測対象 | 家全体の電力量のみ | 全体+部屋ごと+機器ごと |
| 制御機能 | なし | あり |
| データ提供先 | 電力会社(Aルート) | 家庭内HEMS(Bルート) |
| 必須/任意 | 必須(全戸交換中) | 任意 |
| 通信 | Wi-SUN(電力会社⇔) | Wi-SUN/LAN/Wi-Fi |
両者の連携
スマートメーター(Bルート)からの電力データをHEMSが取得することで、家全体の使用量がリアルタイム表示されます。
- スマートメーター:30分ごとの電力量を電力会社に自動送信
- HEMS:スマートメーターから家全体の電力量を取得し、機器別計測と合わせて表示
Bルート申請が必須
HEMSがスマートメーターから情報を取るには、施主から電力会社にBルート利用申請が必要。
- 申請:施主が電力会社に申込書提出
- 期間:1〜2週間で認証ID/PW発行
- 設定:HEMSコントローラに認証情報入力
- 確認:HEMSで電力量が表示されることを確認
スマートメーターの詳細はこちらが詳しいです。

僕としては、スマートメーターとHEMSの違いを施主に説明する時は「スマートメーターは電力会社のための計測器、HEMSは施主自身のための制御システム」と区別すると分かりやすいと感じます。スマートメーターは無償設置だがHEMSは自費、という違いも明確にしておかないと「うちもスマートメーターあるからHEMSいらないでしょ?」という誤解が生まれます。
HEMSに関する情報まとめ
- HEMSとは:家全体のエネルギー使用量を見える化+自動制御するシステム、Home Energy Management System
- 基本構成:コントローラ/計測ユニット(CT)/通信規格(ECHONET Lite)の3要素
- 3つの機能:見える化/遠隔操作/自動制御
- ZEH/V2H/太陽光/蓄電池との関係:HEMSが司令塔、補助金要件に含まれることが多い
- 主要メーカー:パナ・シャープ・三菱・京セラ・日立・NTT東日本
- 実選定基準:家電メーカーの偏り/既存設備/補助金要件の3軸
- ECHONET Lite:家電メーカー横断の標準通信規格
- Bルート:スマートメーター⇔HEMSの通信経路、電力会社申請必須
- 導入費用:新築20〜50万円、既存後付け35〜90万円
- 補助金(2026年):ZEH支援事業/V2H補助金/子育てグリーン住宅支援/自治体独自、申請〜入金で6〜15ヶ月
- 電気工事ポイント:分電盤CT設置スペース、HEMS対応分電盤の仕様指定が鉄則
- 通信インフラ:CAT6以上LAN推奨、光回線必須、Wi-SUNはBルート専用
- 試運転段取り:太陽光・蓄電池・V2H・通信業者の立ち会い管理、2週間前に日程ロック
- 既存後付け:太陽光・蓄電池ありなら回収可能、なしは投資回収厳しい
- スマートメーターとの違い:計測のみ(電力会社)vs 計測+制御(施主)
以上がHEMSに関する情報のまとめです。
HEMSは「単体の便利設備」ではなく、ZEH/V2H/太陽光/蓄電池をまとめる住宅エネルギー戦略の司令塔。電気施工管理としては「分電盤・通信・電源・ネット・補助金・試運転」の6点セットで段取りを組むと、現場で抜けが出にくくなります。新築時は設計初期からHEMS対応分電盤と隠蔽配線を仕込み、補助金は着工前に交付決定を取り、試運転は2週間前に全業者の日程をロックする。この3つを習慣化できれば、HEMS担当者として一人前です。
HEMSに関するよくある質問
Q1:HEMSとスマートメーター、何が違いますか?
スマートメーターは電力会社が無償で設置する電力量計測器、HEMSは施主が自費で設置する制御システム、と役割が異なります。スマートメーターは家全体の電力量を電力会社に自動送信するだけですが、HEMSは家全体+部屋別+機器別の使用量を見える化し、家電・電気設備の遠隔操作・自動制御まで行います。HEMSがスマートメーターからBルート経由でデータを取得することで、両者を連携させる構成が標準です。
Q2:パナ・シャープ・三菱、どのHEMSを選べばいいですか?
判断軸は3つです。①施主の家電メーカーがパナで揃っているならパナのAiSEG2が連携機能を最大化できる、②太陽光・蓄電池が既設なら同系列メーカーのHEMSを優先、③ZEHやV2H補助金を狙うならSII登録機種から選定。「メーカー機能比較表を施主に見せて選ばせる」より、施主の家電構成と既設設備から推奨を絞る方が話が早いです。
Q3:HEMSの補助金は2026年現在どんなものがありますか?
2026年5月時点の主要制度は次の通り。①ZEH支援事業(環境省/SII、55〜100万円、HEMS要件)、②V2H補助金(経産省、V2H機器費の1/2上限75万円、HEMS連携要件)、③子育てグリーン住宅支援事業(国交省、ZEH住宅で40〜100万円)、④都道府県・市区町村独自補助(5〜30万円、HEMS単独補助あり)。最新情報は経産省/環境省/SII/自治体公式サイトで必ず確認してください。
Q4:補助金は申請してから入金までどれくらいかかりますか?
ZEH支援事業の場合、申請から入金まで合計6〜15ヶ月です。内訳は申込み準備1〜2ヶ月、SII交付申請即日、交付決定通知1〜3ヶ月、着工〜工事完了3〜6ヶ月、実績報告書提出1ヶ月以内、補助金入金1〜3ヶ月。重要なのは「交付決定前に着工すると補助金対象外」になるので、着工は必ず交付決定後にすること。
Q5:分電盤のCT、何個必要ですか?既存住宅で盤交換は必要ですか?
主幹用CT 1〜2個、各回路用CT 6〜16個(測定したい回路数による)が標準。新築時はHEMS対応分電盤を仕様指定すればCTスペースは確保されます。既存住宅は分電盤に空きスペースがあればCTのみ追加(5〜10万円)で済むこともありますが、古い分電盤(10年超)や主幹ブレーカが計測対応外の場合は盤交換(10〜30万円)が必要。現地調査で判断します。
Q6:HEMS試運転、何時間かかりますか?
標準1日(9:00〜17:00)が目安です。受電・絶縁試験から始まり、各機器単独動作確認、通信接続確認、HEMS設定とBルート認証、連携動作確認、自動制御ルール設定、施主操作説明まで含めると約8時間。立ち会いは電気施工管理・HEMSメーカー・太陽光メーカー・蓄電池メーカー・V2H機器メーカー・通信業者・電力会社の最大7社が一同に集まる一日仕事です。2週間前に全業者の日程をロックするのが鉄則。
Q7:太陽光なしの家にHEMSだけ入れる意味ありますか?
正直に言うと、投資回収の観点では厳しいです。太陽光・蓄電池なしのHEMSは「見える化による節電意識向上」しか効果がなく、年間節電効果は1〜3万円程度。50万円投資して回収15年超かかります。一方、太陽光・蓄電池ありなら「発電・蓄電・消費の自動制御」で年間節電効果3〜5万円、投資回収6〜13年に短縮されます。HEMS単体導入を相談されたら「投資回収厳しい」と正直に伝える方が、長期的に施主の信頼を得られます。
Q8:既存住宅にHEMSを後付けって現実的ですか?
太陽光・蓄電池がすでにあれば現実的、なければ推奨外です。既存住宅後付けは新築より20〜30万円高い(合計35〜90万円)ものの、太陽光・蓄電池との連携で投資回収が成立します。分電盤の更新時期が近い(10年超)、自治体補助金が活用可能、施主のITリテラシーが高い、の3条件が揃うと特に効果的。逆に太陽光なし+分電盤更新予算なしの場合は、HEMS単体だと投資回収不可なので「無理に勧めない」のが正解です。
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