- HEAT20ってそもそも何?
- G1、G2、G3って何が違うの?
- ZEHや省エネ基準とは違うの?
- UA値はいくつにすればHEAT20をクリアできる?
- HEAT20を満たすと冬どれくらい暖かい?
- 達成するために窓や断熱材はどう変える?
上記の様な悩みを解決します。
「HEAT20」は、ZEHや省エネ基準より一段高い断熱性能を狙うときに必ず出てくる住宅性能の指標です。「冬の最低室温を何℃に保ちたいか」を起点に、UA値(外皮平均熱貫流率)の目標値を地域別に定めているのが特徴で、G1・G2・G3の3段階があります。新築・リノベの打ち合わせで「うちはHEAT20のG2でいきましょう」と工務店から言われて検索した方も多いはず。本記事では基礎知識から、達成するための施工ポイントまで整理しておきます。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
HEAT20とは?
HEAT20とは、結論「冬でも家の中が寒くなりすぎないことを目標にした、住宅の断熱性能の推奨基準」のことです。
正式名称は「一般社団法人 20年先を見据えた住宅研究会(Investigation Committee on Housing Performance and Energy Efficiency for 2020 and Beyond)」。研究者・実務者が集まる団体で、国の省エネ基準よりもう一段高い、「これからの家はこのレベルが望ましい」というベンチマークを独自に提案しています。
HEAT20が大事にしている考え方
- 暖房を切ったあとも家全体が寒くなりにくい
- 廊下・脱衣室・トイレなど非居室も寒くしない
- 冬の最低室温(おおむね10℃〜15℃)を保てる断熱性能を持つ
- 結露・カビ・ヒートショックを起こしにくい
ポイントは、省エネ基準が「冷暖房に使うエネルギーを減らすこと」を目的にしているのに対し、HEAT20は「室温の最低値を維持すること」を目的にしているところ。エネルギー削減ではなく、住む人の健康と快適性を起点にした設計指標と言えます。
省エネとの位置関係はこちらでも整理しています。

G1・G2・G3の違いと地域別UA値
HEAT20にはG1・G2・G3の3段階の推奨水準があります。
グレードの位置付け
ざっくり整理すると、
- G1:省エネ基準より一段上。冬の最低室温の目安は概ね 10℃前後を切らないレベル
- G2:G1のさらに上。最低室温の目安は 13℃前後を切らないレベル
- G3:HEAT20が示す最高水準。最低室温の目安は 15℃前後を切らないレベル(ほぼ無暖房でも厳寒期に耐える)
家全体を「寒い場所を作らない」観点で見たときに、G1で最低限、G2で快適、G3で寒冷地でも余裕、というイメージです。
地域区分別のUA値(外皮平均熱貫流率)の目安
UA値(W/m²·K)が小さいほど断熱性能が高い、という指標です。HEAT20が公表している地域区分別の推奨値(住宅)の目安は以下の通り。
| 地域区分 | 該当地域の例 | G1 | G2 | G3 |
|---|---|---|---|---|
| 1〜2 | 北海道(札幌・旭川等) | 0.34 | 0.28 | 0.20 |
| 3 | 青森・盛岡・長野等 | 0.38 | 0.28 | 0.20 |
| 4 | 仙台・福島等 | 0.46 | 0.34 | 0.23 |
| 5〜6 | 東京・大阪・名古屋等 | 0.48 | 0.46 | 0.26 |
| 7 | 鹿児島・宮崎等 | 0.56 | 0.46 | 0.26 |
※ 数値は2026年時点でHEAT20が公表している目安。年度・改訂で微修正されるため、設計時には最新版で照合してください。
地域区分は国土交通省が定める1〜8地域の区分。寒い地域ほど厳しい数値になっており、同じG2でも札幌は0.28、東京は0.46と倍近い差があります。
UA値の計算方法はこちらで詳しく整理しています。

数値の読み方の注意点
G2を「東京で0.46」と覚えると、寒冷地の数値感覚がズレます。
- 「同じG2でも地域で要求値は別物」を意識する
- 「G2を取りに行きます」と言われたら、地域区分とセットで聞く
- 隣県でも地域区分が違うことがある(例:神奈川県は5地域、山梨県の一部は4地域)
数値を覚えるより「自分の地域は何地域で、G1〜G3でUA値いくつ要るか」を都度照合する癖をつけるのが安全です。
ZEH・省エネ基準との違い
HEAT20は単独で出てくる指標ではなく、ZEHや省エネ基準と並べて理解するのが分かりやすいです。
3つの指標を並べる
| 指標 | 起点となる考え方 | UA値の例(5・6地域) |
|---|---|---|
| 省エネ基準(断熱等級4) | 1999年策定、最低限の省エネ | 0.87 |
| 断熱等級5(≒ZEH水準) | 一次エネルギー収支ゼロを狙う | 0.60 |
| 断熱等級6(≒HEAT20 G2相当) | 最低室温13℃前後を維持 | 0.46 |
| 断熱等級7(≒HEAT20 G3相当) | 最低室温15℃前後を維持 | 0.26 |
2022年以降、住宅性能表示制度に断熱等級5・6・7が追加され、HEAT20 G1〜G3とほぼ対応する形で整理されました。
評価軸の違い
- 省エネ基準・ZEH:エネルギー消費(一次エネルギー)をどれだけ減らせるか
- HEAT20:冬の最低室温をどう保つか
ZEHは太陽光パネル等の設備で帳尻を合わせる方向に振りやすいのに対し、HEAT20は外皮性能(断熱・気密)そのものを上げる方向に振った指標。「設備で稼ぐか、外皮で稼ぐか」の違い、と整理しても近いです。
どれを選ぶべきか
地域・予算・敷地条件で変わりますが、ざっくりした選び方の目安は、
- 太陽光を載せたい・補助金を取りたい → ZEHから検討
- 設備に頼らず家そのものを冬暖かくしたい → HEAT20 G2以上
- 寒冷地・吹き抜けが多い → HEAT20 G2〜G3を視野に
- 予算最優先・最低限OK → 省エネ基準(断熱等級4)でも法的にはOK
ZEHとHEAT20は両立可能で、最近は「HEAT20 G2 + ZEH」を狙う物件も増えています。
ZEHの位置付けはこちらで整理しています。

冬の最低室温と暖房負荷の目安
HEAT20の魅力を一番分かりやすく示す数値が「冬の最低室温」と「暖房負荷削減率」です。
冬の最低室温の目安(5・6地域)
HEAT20が示している計算上の目安は以下のような並びです。
- 省エネ基準(等級4):冬の最低室温が8℃を切る部屋が出る
- G1:最低室温おおむね10℃以上
- G2:最低室温おおむね13℃以上
- G3:最低室温おおむね15℃以上
最低室温が10℃を切ると、廊下・脱衣室でヒートショックのリスクが上がります。G2の13℃を確保できると、家全体の温度ムラが小さくなり、冬場の生活の質が大きく変わるラインです。
暖房負荷の削減効果
省エネ基準を100としたとき、HEAT20を達成すると暖房負荷(暖房に必要な熱量)はどれくらい減るかの目安。
| グレード | 暖房負荷削減率(省エネ基準比) |
|---|---|
| G1 | 約20〜30%減 |
| G2 | 約30〜50%減 |
| G3 | 約50〜70%減 |
暖房費・光熱費でいうと、G2なら省エネ基準より2〜4割安く、G3なら5割以上安くなる試算です。25〜30年住むことを考えると、初期投資を回収できるレベルになりやすい性能差です。
結露・カビへの効果
最低室温が上がるということは、室内側の壁・窓の表面温度も上がるということ。これは結露防止に直結します。
- 省エネ基準レベル:冬の朝、窓の結露・カーテン裏の壁のカビが発生しやすい
- G2レベル:窓ガラス本体の結露がほぼなくなる(樹脂サッシ+Low-E複層ガラス前提)
- G3レベル:ガラス・サッシ枠まで結露しにくくなる
結露・カビの問題は、家の寿命にもかかわる話です。HEAT20が「20年先を見据えた」と名乗っているのは、ここに本気で踏み込みたいから、と読めます。
HEAT20を達成するための施工ポイント
数値の話だけだと机上論なので、現場でどう作るかの話に踏み込みます。施工管理者として現場に立ち会うと、UA値を下げる勝負所がどこに集中しているかが見えます。
窓の性能で半分以上決まる
戸建ての熱損失の約3〜5割は窓から出入りします。HEAT20を狙うなら、まず窓を見直すのが圧倒的に効きます。
- アルミサッシ+単板ガラス → ほぼ論外(省エネ基準すら厳しい)
- アルミ樹脂複合サッシ+Low-E複層 → 等級5(ZEH水準)相当に届く
- 樹脂サッシ+Low-E複層(アルゴンガス入り)→ G1〜G2を狙える
- 樹脂サッシ+Low-Eトリプル(クリプトンガス)→ G3も視野
ガラスだけ替えてもサッシ枠が熱橋になると性能が出ません。枠を含めた窓全体の熱貫流率(U値)で選ぶのが基本です。
断熱材の厚みと連続性
外皮の各部位(屋根・外壁・床)で熱の漏れる量を計算するので、
- 屋根(天井)断熱:高性能グラスウール16K 180mm以上
- 外壁断熱:高性能グラスウール16K 105mm以上+付加断熱
- 床断熱:押出法ポリスチレンフォーム 80mm以上
くらいが、5・6地域のG2を狙うときの一例です(窓性能とのバランスで微調整)。断熱材の厚みより「途切れていないこと」が重要で、施工管理者として一番見るのはここ。
- グラスウールの繊維のずれ・隙間
- 配管貫通部の断熱欠損
- 間柱・梁周りの充填不足
- 床断熱と基礎断熱の取り合い欠損
断熱材の話はこちらでも整理しています。


気密性能(C値)も合わせて押さえる
HEAT20はUA値が中心の指標ですが、実際の冬の暖かさは気密性能(C値)でも大きく変わります。隙間風が多いと、断熱材を厚くしても室温が下がります。
- C値 1.0以下:HEAT20 G1〜G2を取りに行くなら最低ライン
- C値 0.5以下:G2を「狙い通りの暖かさ」にしたい場合の目安
- C値 0.3以下:G3クラスを実体験として再現するライン
気密はテープ・防湿シート・サッシ周りの処理で決まるので、現場の手間賃と直結します。図面で性能を上げるだけでは不十分で、気密試験(C値測定)の実施を仕様に含めるのがおすすめです。
C値の話はこちらでも整理しています。

換気と熱回収
断熱・気密が上がると、24時間換気の熱損失が無視できなくなります。第三種換気(給気自然・排気機械)だと、寒い外気がそのまま入ってくるので、HEAT20のメリットが目減りします。
- 第一種換気(熱交換型):給排気とも機械、熱交換素子で暖気を回収
- 熱交換効率 70〜90%の機種を選ぶと、換気による熱損失を大幅に削減
G2以上を狙う物件では、熱交換型第一種換気を組み合わせるのがほぼ標準と思っておいてOKです。
熱交換のしくみはこちらで整理しています。

価格インパクトの目安
ざっくりした建築費の上振れ感(30坪の戸建てで省エネ基準比)。
- G1 → +50〜100万円
- G2 → +100〜200万円
- G3 → +200〜400万円
地域・工務店・仕様で大きく変わりますが、G2は手の届く範囲、G3は本気で振り切らないと届かない、という感覚が現実です。光熱費削減・補助金(子育てエコホーム支援事業など)を加味すれば、G2は20〜25年で初期投資が回収できる試算になることが多いです。
HEAT20に関する情報まとめ
- HEAT20とは:冬の最低室温を維持することを起点にした、住宅の断熱性能の推奨基準(一般社団法人 20年先を見据えた住宅研究会)
- G1・G2・G3:最低室温の目安が約10℃/13℃/15℃。地域区分ごとにUA値の推奨値が定められている
- ZEH・省エネ基準との違い:ZEHはエネルギー収支ベース、HEAT20は室温維持ベース。両立可能
- 暖房負荷削減:省エネ基準比でG1=20〜30%減、G2=30〜50%減、G3=50〜70%減
- 窓で半分以上決まる:樹脂サッシ+Low-E複層が最低ライン、トリプルガラスでG3が見えてくる
- 気密と換気もセット:C値1.0以下+第一種熱交換換気で性能が活きる
- コスト感:30坪戸建てでG2は省エネ基準比+100〜200万円が目安
以上がHEAT20に関する情報のまとめです。
HEAT20は「家全体を寒くしない」という体感ベースの指標で、断熱等級5〜7の整備とともに、ここ数年で住宅性能の事実上のベンチマークになりました。施主としては「数字としてのUA値」だけでなく「冬の最低室温」と「暖房負荷削減率」を一緒に確認しておくと、見積もり比較で判断しやすくなります。施工管理側としては、窓・断熱・気密・換気の4点セットで性能を実現する意識を持つと、UA値計算と現場のギャップを埋めやすいかなと思います。
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