- 圧力水頭ってなに?
- 単位はメートルなの?
- 位置水頭・速度水頭とどう違うの?
- ベルヌーイの式ってどんな式?
- 地下水位や配管設計でどう使うの?
- ポンプの揚程と圧力水頭は同じもの?
上記の様な悩みを解決します。
圧力水頭は、結論「水の圧力を、その圧力で支えられる水柱の高さに換算した値」のこと。単位は m(メートル)。「水深10mのところは、圧力水頭がちょうど10m」というシンプルな関係で、流体力学のベルヌーイの式に出てくる 「位置水頭・速度水頭・圧力水頭」の3兄弟のうちの1つです。施工管理の現場では、地下水圧によるピット・地下室の浮き上がり、ポンプの揚程設計、消火配管の必要圧力などで頻繁に登場するので、ここで一気に整理しておきましょう。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
圧力水頭とは?
圧力水頭とは、結論「ある点の水圧を、その水圧と釣り合う水柱の高さに換算した値」のことです。
英語では pressure head。記号は hp または p / (ρg)。単位は m(メートル)。
直感的なイメージ
水深 1m の場所では、その上の水の重みで圧力 9.81 kPa が発生しています。逆に、9.81 kPa の圧力が「何mの水柱に相当するか」と聞かれたら、答えは 1m。これが圧力水頭の基本イメージで、
圧力水頭 hp = 圧力 p ÷(水の密度 ρ × 重力加速度 g)
という換算式で表します。「圧力の単位(Pa)を、長さの単位(m)に変換した値」と覚えておけば実用上は十分。
圧力水頭の計算例
| 圧力 | 圧力水頭(水柱に換算) |
|---|---|
| 9.81 kPa | 1 m |
| 49.05 kPa | 5 m |
| 98.07 kPa(≒大気圧) | 10 m |
| 196.13 kPa(2気圧) | 20 m |
| 490 kPa | 50 m |
水以外の流体だと値が変わる
水以外(油・空気など)でも同じ概念は使えますが、密度が違うので「圧力水頭という言葉を使うなら、流体は水」と統一して理解しておくのが無難。油の場合は「油頭」と呼ぶこともあります。
水頭の3兄弟:位置水頭・速度水頭・圧力水頭
流体力学では、流れのエネルギーを 3種類の水頭 に分けて扱います。それぞれをm(メートル)単位で揃えると、足し算引き算が直感的にできるのが水頭の便利なところ。
| 水頭 | 意味 | 式 |
|---|---|---|
| 位置水頭 z | 基準面からの高さ。重力ポテンシャルを長さに換算 | z |
| 速度水頭 hv | 流れの速度エネルギーを高さに換算 | v² / (2g) |
| 圧力水頭 hp | 流体の圧力を水柱の高さに換算 | p / (ρg) |
位置水頭 z(potential head)
地表からの高さや、水位の標高など、基準面からどれだけ上にあるかを表す量。タンクが10m上に置かれていれば、水面の位置水頭は10m。
速度水頭 hv(velocity head)
流体が動いている速さの2乗を、9.81×2 で割ったもの。秒速2mで動く水なら、
hv = 2² / (2 × 9.81) ≒ 0.20 m
「遅い流れほど速度水頭は小さい」という関係。配管中の水は通常 0.1〜数m程度の範囲。
圧力水頭 hp(pressure head)
すでに説明した通り、圧力をm換算した値。タンクの水面から下に10m潜れば、その点の圧力水頭は10m。
3つを足したものが「全水頭」
全水頭 H = 位置水頭 z + 速度水頭 hv + 圧力水頭 hp
これがベルヌーイの式の左辺。「流れている水のエネルギーは、高さ・速度・圧力の3つを足し合わせたもの」として表現します。

ベルヌーイの式と圧力水頭
流体力学の中心となる式が ベルヌーイの式。
ベルヌーイの式(理想流体・定常流)
z₁ + v₁² / (2g) + p₁ / (ρg) = z₂ + v₂² / (2g) + p₂ / (ρg)
つまり、
位置水頭₁ + 速度水頭₁ + 圧力水頭₁ = 位置水頭₂ + 速度水頭₂ + 圧力水頭₂
式が言っていること
「摩擦損失がない理想的な流れでは、流れに沿った全水頭は一定」というエネルギー保存則。
- 同じ標高なら、速くなる場所は圧力が下がる(ベンチュリ効果)
- 同じ太さの管なら、高い場所は圧力水頭が小さい(位置水頭で食われる)
- 同じ位置なら、圧力が高い場所では遅い
実際の配管・ポンプ設計では、これに 損失水頭 hL(摩擦・継手・バルブ等によるエネルギー損失)を引いて、
全水頭₁ - hL = 全水頭₂
という形で扱います。
式が役立つ場面
- 配管の必要ポンプ揚程の計算
- 消火栓の必要圧力チェック
- 地下水流れの方向判定(ダルシーの法則とセット)
- 自由噴流の到達高さ計算
ベルヌーイの式は 「水頭の単位がmで揃っている」から、3項目を足し算引き算でき、現場感覚で扱える式になっているわけですね。
単位と換算
圧力水頭の単位は m(メートル)。圧力の単位(Pa、kPa、MPa)と相互変換できます。
圧力 → 圧力水頭の換算
水の密度 ρ = 1,000 kg/m³、重力加速度 g = 9.80665 m/s² を使うと、
hp [m] = p [Pa] ÷(1,000 × 9.80665)≒ p [kPa] ÷ 9.81
| 圧力 | 圧力水頭 |
|---|---|
| 1 kPa | 約 0.102 m |
| 9.81 kPa | 1 m |
| 100 kPa(≒1気圧) | 約 10.2 m |
| 1 MPa(10気圧) | 約 102 m |
圧力水頭 → 圧力の換算
p [kPa] = hp [m] × 9.81
| 圧力水頭 | 圧力 |
|---|---|
| 1 m | 9.81 kPa |
| 10 m | 98.1 kPa(≒1気圧) |
| 50 m | 490 kPa |
| 100 m | 981 kPa(≒10気圧) |
実務でよく使う 「水柱10m = 約1気圧」 は、流体力学の世界の最重要キーフレーズ。「水深10mで地表気圧と同じだけの追加圧力」というイメージは、地下水位の話・潜水夫の耳抜き・水道圧の話で全部同じ理屈で説明できます。
MPa・kgf/cm² との換算
| 単位 | 圧力水頭への換算 |
|---|---|
| 1 MPa | 約 102 m |
| 1 kgf/cm² | 約 10 m |
| 0.1 MPa(≒1気圧) | 約 10.2 m |
「1kgf/cm² ≒ 10m水頭 ≒ 0.1MPa」 これも現場で覚えておくと便利な換算ですね。
計算例:地下ピットの浮き上がり
施工管理として一番よく使うのが、地下ピット・地下室の浮き上がり検討で圧力水頭を扱う場面。具体例を見てみます。
例:地下水位 GL-1.0m、ピット底 GL-3.0m の浮き上がりチェック
- 地下水位からピット底までの深さ:3.0 – 1.0 = 2.0 m
- 圧力水頭 hp = 2.0 m
- ピット底に作用する水圧 p = 2.0 × 9.81 = 19.6 kPa
- ピット底面が 5m × 5m = 25m² なら、浮き上がろうとする力 = 19.6 × 25 = 490 kN
これと、ピットの自重(コンクリート+上載土)が釣り合うかどうかで、浮き上がり安全率を出します。一般的には自重 / 浮力 ≥ 1.2 が目安。足りなければ アンカーや増しコンで重さを増やすか、水抜き孔・常時排水ポンプ で水圧を逃がす対策を取ることに。
地下水を止める擁壁・山留め設計でも、土圧と並んで 水圧(=圧力水頭) が荷重として加算されます。
土圧と水圧の組み合わせ計算については、こちらに整理してあります。

例:屋上水槽からシャワーまでの水圧
- 屋上水槽の水面:GL+30m
- 1階シャワーヘッド:GL+1.5m
- 高さの差 = 28.5m
- 配管摩擦損失:5m と仮定
- シャワーヘッドでの圧力水頭 = 28.5 – 5 = 23.5 m
- 圧力換算 = 23.5 × 9.81 ≒ 231 kPa(≒2.4気圧)
水道メーターから蛇口までの圧力低下を、こうした水頭の足し算引き算で見積もる、という訳ですね。
現場で圧力水頭が出てくる場面
施工管理として「圧力水頭」を意識するシーンを整理しておきます。
①地下構造物の浮き上がり検討
地下ピット・地下水槽・地下駐車場の床版下に作用する水圧を、地下水位から床版までの深さ=圧力水頭で計算。これに床版面積を掛けて浮力(揚圧力)を求めます。
②山留め・擁壁の水圧荷重
掘削現場で地下水位が高いと、山留め壁背面に 土圧+水圧 の合算が作用。水圧分はちょうど 「圧力水頭 × 単位面積 × 単位体積重量」 で出るので、この計算が素早くできると山留め架構の設計が読み解きやすくなります。
③ポンプの全揚程計算
給水ポンプ・排水ポンプの選定で、必要全揚程は
全揚程 = 位置水頭差 + 配管損失水頭 + 末端の必要圧力水頭(吐出圧)
の3項目の合算。「末端の蛇口で○MPa必要」という要求圧力を圧力水頭に換算してポンプスペックに落とし込むのが基本動作です。
④消火配管の必要圧力
スプリンクラー・消火栓は 末端で必要な圧力水頭 が告示で定められています。例えば屋内消火栓1号では 末端ノズル先で 0.17 MPa(17m水頭)以上が必要。配管経路の損失水頭を見込んで、ポンプ吐出圧を逆算します。

⑤地下水流れ(ダルシーの法則)
地下水の動きは、ベルヌーイ式の単純化版である ダルシーの法則 で扱います。「圧力水頭の高い方から低い方へ流れる」という基本則は、井戸の取水・地下排水路の設計で頻繁に出てきます。
僕も電気工事の現場で、地下機械室の浸水対策として 「集水ピット+排水ポンプ」 の選定に立ち会ったとき、構造担当が 「ピット最深部からGLまで4mあるから、最低でも4m+末端圧力分の揚程が必要だね」 と即座に計算していたシーンを覚えています。水頭をmで考えると、ポンプの揚程・地下水位・配管損失が全部同じ単位で並べられる――この感覚を身につけると、現場の水回り判断が格段にスムーズになりますよ。
圧力水頭に関する情報まとめ
- 圧力水頭とは:水の圧力を、その圧力に相当する水柱の高さ(m)に換算した値
- 水頭3兄弟:位置水頭 z、速度水頭 v²/(2g)、圧力水頭 p/(ρg)
- ベルヌーイの式:3つの水頭の合計 = 全水頭が一定(理想流体)
- 単位換算:1 m水頭 ≒ 9.81 kPa、10 m水頭 ≒ 1気圧、102 m水頭 ≒ 1 MPa
- 現場での出番:地下浮き上がり・山留め水圧・ポンプ揚程・消火配管・地下水流れ
- ポンプ全揚程 = 位置差 + 損失 + 末端必要圧力水頭
以上が圧力水頭に関する情報のまとめです。
圧力水頭は 「圧力をmに換算した値」というシンプルな概念ですが、位置水頭・速度水頭と単位を揃えてベルヌーイの式に乗せることで、流体力学の見通しが一気に立ちやすくなります。「水柱10m = 約1気圧 = 約100kPa」を体に染み込ませておけば、地下水・ポンプ・配管・消火設備の話が全部同じ枠組みで扱えますよ。一通り圧力水頭の基礎知識は理解できたと思います。
合わせて、水・土圧の周辺概念や配管系の知識も押さえておくと、施工管理の現場対応力が一段アップしますよ。




