- 圧密降伏応力ってなに?
- e-logp曲線のどこから読み取るの?
- pcってどう求めるの?
- 過圧密比(OCR)と圧密降伏応力ってどう関係する?
- 正規圧密粘土と過圧密粘土の違いって?
- 沈下計算で何のために必要なの?
上記の様な悩みを解決します。
圧密降伏応力(pc)は、結論「過去にその粘土が経験した最大の有効応力」のことです。粘土地盤に新たな荷重をかけたとき、この値を超えるかどうかで「沈下が小さく済むか・大きく進むか」が決まる、地盤沈下計算の最重要パラメータ。圧密試験の e-logp曲線(間隙比 e と荷重 p の対数の関係)から、Casagrande法やSchmertmann法といった作図法で読み取ります。「現状の有効応力 < pc(過圧密粘土)」なら沈下小、「現状の有効応力 ≧ pc(正規圧密粘土)」なら沈下大──この見立てが軟弱地盤の対策設計の出発点ですね。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
圧密降伏応力とは?
圧密降伏応力とは、結論「ある粘土層が過去に経験した最大の有効応力」のことです。
英語では preconsolidation pressure または preconsolidation stress。記号は pc または σ’p(プライム付きで有効応力を示す)。土質力学・地盤工学では、軟弱地盤の沈下予測において主役級の物性値です。
「降伏」と呼ばれる理由
材料力学で「降伏」というと、応力-ひずみ曲線の傾きが大きく変わる点(弾性領域から塑性領域への切り替わり点)のこと。粘土の圧密でも同じで、
- pc 未満の応力範囲:粘土はあまり圧縮されない(再圧縮)
- pc 以上の応力範囲:粘土が一気に圧縮される(処女圧縮)
という変化点が e-logp 曲線に現れるため、「降伏応力」と呼ばれます。
「圧密」とは何か?
圧密(consolidation)とは「粘土の中の水が時間をかけて絞り出され、土粒子が詰まっていく現象」のこと。粘土に荷重をかけると、
- 最初は水と土粒子が一緒に荷重を受ける(過剰間隙水圧の発生)
- 時間をかけて水が抜けていく(圧密進行)
- 最終的に土粒子だけで荷重を支える(圧密完了)
この一連の流れを「圧密」と呼び、圧密による沈下量を予測するために pc が必要になるわけです。
主要な記号と単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| pc または σ’p | 圧密降伏応力 | kN/m² または kPa |
| σ’v0 | 現在の有効上載圧 | kN/m² |
| OCR | 過圧密比(pc / σ’v0) | 無次元 |
| Cc | 圧縮指数 | 無次元 |
| Cs | 膨潤指数(再圧縮指数) | 無次元 |
地盤の許容応力度との関係はこちらの記事もどうぞ。

圧密降伏応力の意味:過去の応力履歴
「過去に経験した最大応力」というのは少しイメージしづらいので、地形と地質の歴史で考えると分かりやすいです。
①地層の堆積と侵食の歴史
粘土層は何万年もかけて堆積し、ある時期は厚い土砂に覆われ、別の時期は氷河や洪水で削られて軽くなる──という歴史を持ちます。
- 堆積期:上に重い土砂がのり、粘土に大きな有効応力が作用 → 圧密進行
- 侵食期:上の土砂が削られ、有効応力が減少 → でも、粘土はもう詰まったままで戻らない
つまり、過去にかかった最大の応力が粘土層に「記憶」として残り、それが pc になるわけです。
②過圧密と正規圧密
| 状態 | 定義 | OCR |
|---|---|---|
| 正規圧密粘土(NC) | pc = σ’v0(現在の有効応力と等しい) | OCR = 1 |
| 過圧密粘土(OC) | pc > σ’v0(過去の方が大きい) | OCR > 1 |
| 軽過圧密粘土 | OCR が 1〜2 程度 | 1 < OCR ≦ 2 |
| 強過圧密粘土 | OCR が 2 以上 | OCR > 2 |
③なぜ過圧密の方が沈下しにくいか
過圧密粘土に新しい荷重をかけても、現在の応力が pc を超えない限り、粘土は再圧縮領域にいるので変形が小さい(圧縮指数 Cc よりずっと小さい膨潤指数 Cs で計算)。
逆に正規圧密粘土は、新しい荷重がそのまま pc を超える処女圧縮領域に入るため、Cc に従って一気に変形が進みます。
④地盤調査で過圧密かどうかを見抜く
ボーリング調査で得た粘土サンプルを圧密試験にかけ、求めた pc と、その深さの有効上載圧 σ’v0 を比較するのが基本。OCR > 1 なら過圧密、OCR = 1 に近ければ正規圧密、と判定します。
地盤調査の代表手法はこちらの記事もどうぞ。

e-logp曲線からの圧密降伏応力の求め方
実務で最もよく使うのが、圧密試験で得られる e-logp 曲線 からの作図的判定です。
①e-logp 曲線とは
縦軸に 間隙比 e、横軸に 有効応力 p の常用対数(log)をとった曲線。圧密試験で段階的に荷重を増やしていったときの、e と p の関係をプロットしたものです。
- 低応力域(pc 未満):傾きが緩やか(再圧縮曲線)
- 高応力域(pc 以上):傾きが急激(処女圧縮曲線)
この曲率が変化する点が pc に相当します。
②Casagrande法(カサグランデ法)
最も古典的かつ広く使われる作図法。手順は以下のとおりです。
- e-logp 曲線の曲率が最大になる点 A を見つける
- A 点で曲線に接線を引く
- A 点で水平線を引く
- 接線と水平線の二等分線を引く
- e-logp 曲線の直線部分(処女圧縮直線)を後ろに延長して、二等分線との交点を求める
- その交点の x 座標が pc
慣れるまで作図がややこしいですが、原理を理解すれば手作業でできます。
③Schmertmann法(シュマートマン法)
Casagrande法の補正版。試料が乱れていることを補正し、現位置の e-logp 曲線を推定する方法です。Casagrande法で求めた pc を使って、現位置の処女圧縮直線を引き直します。
④三笠(みかさ)の方法
日本独自の作図法。e-logp 曲線の曲率半径が最小になる点を pc とする方法。Casagrande法と近い結果になることが多いです。
⑤数値判定法
近年は CAD ソフトや圧密試験解析ソフトで自動判定する方法も普及。ただし乱れた試料だと信頼性が下がるため、最終的には人の目で曲線をチェックする習慣が必要です。
⑥試料の乱れによる補正
ボーリング試料は採取・運搬・成型の段階で乱されるので、e-logp 曲線が「丸く」なって pc が小さく見える傾向があります。Schmertmann法はこれを補正する手段。実務では「試料品質:A・B・C」のランク判定とセットで pc を扱うのが標準です。
N値や標準貫入試験の話はこちらの記事もどうぞ。

過圧密比(OCR)と地盤の状態判定
pc と現在の有効応力の関係から、地盤の特性を読み解くキー指標が OCR です。
①過圧密比 OCRの定義
OCR = pc / σ'v0
- pc:圧密降伏応力 [kN/m²]
- σ’v0:その深さの現在の有効上載圧 [kN/m²]
②有効上載圧 σ’v0 の計算
σ'v0 = γ × z − u
- γ:上載土の単位体積重量 [kN/m³]
- z:その地点の深さ [m]
- u:間隙水圧 [kN/m²]
地下水面より上では u = 0、地下水面より下では u = γw × (深さ – 地下水面深さ)、という関係。
③OCRから読み取れること
| OCR の値 | 状態 | 沈下挙動 |
|---|---|---|
| OCR = 1 | 正規圧密 | 新規荷重で大きく沈下 |
| 1 < OCR ≦ 2 | 軽過圧密 | 沈下はある程度抑えられる |
| 2 < OCR ≦ 4 | 中過圧密 | 沈下小、せん断強度大 |
| OCR > 4 | 強過圧密 | 沈下小、亀裂や ��ーバーコンソリデーション特性 |
④日本各地の代表的な OCR
- 東京湾岸の沖積粘土:OCR ≒ 1(正規圧密)
- 大阪平野の Ma13 層:OCR ≒ 1〜1.5(軽過圧密)
- 北海道の泥炭地:OCR ≒ 1〜2
- 関東ローム層:OCR > 2(強過圧密)
軟弱地盤対策の必要性は、OCRと sigma_v0 の組み合わせで判断します。
⑤OCRとせん断強度の関係
過圧密粘土ほどせん断強度(c’、φ’)が大きく、地震時の安定性も高い。同じ含水比・密度でも、過圧密粘土は支持力が高く、変形が小さい。
�6 OCRと施工管理
- 軟弱粘土に基礎を作る場合 → OCR を確認し、新規荷重が pc を超えるか判定
- pc を超えるなら → 圧密沈下対策(プレロード、サンドドレーン、深層混合処理など)が必要
- pc を超えないなら → 弾性的な沈下のみで済む
地盤の種類分類はこちらの記事もどうぞ。

圧密降伏応力を使った沈下計算の実例
最後に、実際の沈下計算で pc がどう使われるかを示します。
①沈下量の基本式(一次元圧密)
S = H × Cc / (1 + e0) × log(p1 / p0)(正規圧密)
- S:沈下量 [m]
- H:圧密層厚 [m]
- Cc:圧縮指数 [無次元]
- e0:初期間隙比 [無次元]
- p0:初期有効応力 [kN/m²]
- p1:載荷後の有効応力 [kN/m²]
②過圧密粘土の場合(pc を境に式を切り替える)
新規載荷後の応力 p1 が pc を超えるか、pc 以下かで計算式が変わります。
- p1 ≦ pc(再圧縮領域内に収まる):
S = H × Cs / (1 + e0) × log(p1 / p0)
- p1 > pc(pc を超えて処女圧縮領域に入る):
S = H × Cs / (1+e0) × log(pc / p0) + H × Cc / (1+e0) × log(p1 / pc)
③数値例
条件:
– 圧密層厚 H = 10 m
– 初期間隙比 e0 = 1.5
– 圧縮指数 Cc = 0.6
– 膨潤指数 Cs = 0.06
– 初期有効応力 p0 = 50 kN/m²
– 圧密降伏応力 pc = 80 kN/m²
– 新規載荷後の応力 p1 = 150 kN/m²
p1 > pc なので、過圧密粘土の式を使います。
Cs項(再圧縮分)
S1 = 10 × 0.06 / (1+1.5) × log(80/50)
= 0.24 × log(1.6)
= 0.24 × 0.204
≒ 0.049 m = 4.9 cm
Cc項(処女圧縮分)
S2 = 10 × 0.6 / (1+1.5) × log(150/80)
= 2.4 × log(1.875)
= 2.4 × 0.273
≒ 0.655 m = 65.5 cm
合計沈下量
S = S1 + S2 = 4.9 + 65.5 = 70.4 cm
④もし正規圧密だったら?
同条件で OCR = 1(pc = p0 = 50 kN/m²)と仮定すると、
S = 10 × 0.6 / 2.5 × log(150/50) = 2.4 × log(3) = 2.4 × 0.477 ≒ 1.14 m
過圧密の70 cm が、正規圧密だと 約114 cm。44cm の沈下量の差は、まさに pc の有無で生まれる差です。
⑤施工管理上の意味
- pc が大きい地盤:載荷しても沈下が小さい。基礎工事の設計が楽
- pc が小さい地盤:少しの荷重でも大きく沈下する。プレロード・サンドドレーン・置換など対策必須
[talk words=’ある現場で「ボーリング結果でpc値はあるが、現状載荷σ\’v0との差が15kN/m²しかない、要するにOCR=1.2くらい」というデータを見せられて、「これって過圧密だから安心ですよね」と言ったら、ベテランから「軽過圧密はpc超えやすいぞ、新規載荷次第だ」と指摘されました。実際に施工後の追加荷重を計算したらpcを軽く超えていて、そこから先は処女圧縮で大きく沈下する見込みになり、急遽プレロードが追加された経験があります。pc単体ではなく、新規載荷σ\’1とpcの大小関係こそが沈下計算の本丸という、教科書では当たり前に書いてあるのに現場で見落としやすいポイントですね。’ name=”” avatarimg=”https://seko-kanri.com/wp-content/uploads/2020/02/c-run.png” avatarsize=70 avatarbdcolor=#d0d0d0 avatarbdwidth=1 bdcolor=#d0d0d0]
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圧密降伏応力に関する情報まとめ
- 圧密降伏応力(pc)とは:粘土が過去に経験した最大の有効応力
- 別名:preconsolidation pressure、σ’p
- 単位:kN/m²(kPa)
- 判定方法:圧密試験の e-logp 曲線から Casagrande法・Schmertmann法・三笠の方法
- 過圧密比 OCR = pc / σ’v0 で地盤の状態判定
- OCR = 1 → 正規圧密、OCR > 1 → 過圧密
- 沈下計算:p1 ≦ pc は再圧縮、p1 > pc は処女圧縮の式に切り替え
- 過圧密粘土ほど沈下小、せん断強度大
- 軟弱地盤対策(プレロード、サンドドレーン)の要否は pc が決め手
以上が圧密降伏応力に関する情報のまとめです。
一通り圧密降伏応力の基礎知識は理解できたかなと思います。「過去に経験した最大の有効応力」という考え方さえ腹に落ちれば、e-logp 曲線の読み方も沈下計算の式も一気に見通しが開けます。実務で本当に効くのは pc 単体の値ではなく、現状の有効応力 σ’v0 と pc の差(つまりOCR)、そして新規載荷後の応力 p1 との大小関係。「軽過圧密だから安心」と即断せず、新規荷重で pc を超えるかを必ずチェックする──この一手間を踏めるかどうかで、軟弱地盤の沈下対策設計の精度が大きく変わります。
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