- CLTって結局どういう材料・工法?
- 「直交集成板」って普通の集成材と何が違うの?
- 木造なのに中高層が建つって本当?
- 鉄筋コンクリートと比べて何がいいの?
- 木なのに地震や火事に強いの?
- 工期が短いって具体的にどれくらい?
- 現場での組み立て方が知りたい
- 結局いくらかかるの?RCより高い?
- なんでこんなにいいのに普及しないの?
- どんな建物に使われてるの?
上記の様な悩みを解決します。
CLT工法は、木造で中高層ビルまで建てられる「次世代の木質構造」として注目されている工法です。「木なのに大きい建物が建つの?」「燃えないの?」と疑問に思われがちですが、直交集成板という材料の特性と、プラットフォーム工法という組み立て方を押さえると、その実力と課題がはっきり見えてきます。今回は定義・集成材との違い・特徴といった基本を整理した上で、現役の施工管理目線で「施工方法」「価格」「採用事例」「現場で気をつけること」まで網羅的に解説します。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
CLT工法とは?
CLT工法とは、結論「ひき板(ラミナ)を繊維方向が直交するように積層接着した大判パネル=CLTを、壁や床として組み立てて建物をつくる工法」のことです。CLTはCross Laminated Timberの略で、日本のJAS(日本農林規格)では「直交集成板」と呼ばれます。
CLTは1990年代にオーストリアで開発され、現在は世界中で使われています。日本では2013年にJAS(製造規格)が制定され、2016年にCLT関連の建築基準法の告示が施行されたことで、構造材として本格的に使えるようになりました。木材を直交させて積層しているため寸法が安定し、厚みのある大判パネルとして壁式構造の建物に使えるのが大きな特徴です。
CLTを使った建築物の全体像はこちらが詳しいです。

僕の感覚だと、CLTは「木でつくる巨大な合板パネル」とイメージすると分かりやすいです。普段見かける合板を、構造体として使えるレベルまで分厚く・大判にしたものがCLTで、それを壁や床として箱を組み上げていくのがCLT工法だ、と捉えると全体像がつかみやすくなります。木造の基礎知識はこちらも参考になります。

CLT工法と集成材・在来工法の違い
CLTでよくある混乱が「普通の集成材と何が違うの?」「在来工法や2×4とどう違うの?」という点です。ここを整理しておくと、CLTの立ち位置がはっきりします。
| 工法・材料 | 構造形式 | 木材の使い方 |
|---|---|---|
| CLT工法 | 壁式(面で支える) | ラミナを直交積層した大判パネル(面材) |
| 集成材(一般) | 軸組(線で支える) | ラミナを平行に積層した梁・柱(線材) |
| 在来工法 | 軸組(柱・梁) | 製材や集成材の柱・梁を組む |
| 2×4工法 | 壁式(面で支える) | 規格製材+合板でパネルを構成 |
一番混同されやすい集成材との違いは、積層の向きです。一般的な集成材はラミナを繊維方向が平行になるように重ねて、梁や柱といった「線の部材」をつくります。一方CLTは繊維方向を直交させて重ね、壁や床といった「面の部材」をつくります。この「直交」こそがCLTの名前の由来であり、寸法安定性と二方向の強度を生む理由です。
構造形式で見ると、CLT工法は壁や床のパネルで建物を支える壁式構造で、考え方は2×4工法に近いです。柱・梁で支える在来工法とは支え方が根本的に違います。在来工法の詳細はこちらが参考になります。

僕の整理では、「集成材=平行積層の線材(梁・柱)」「CLT=直交積層の面材(壁・床)」と、積層の向きと部材の形で対比すると一発で区別できます。同じ”板を重ねた木材”でも、向きが平行か直交か、できるのが線か面か、で用途がまったく変わってくるわけです。
CLT工法の特徴・メリット
CLT工法が注目される理由は、木造でありながら従来の木構造の弱点を補う特徴を多く持っているからです。主な特徴とメリットを整理します。
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 軽量 | 鉄筋コンクリートに比べ材料重量が約5分の1 |
| 高い寸法安定性 | 直交積層で反り・狂いが出にくい |
| 耐震性 | 面で支える壁式構造で地震に強い |
| 耐火性 | 表面が炭化して燃え進みを遅らせる |
| 断熱性 | 厚みのある木質パネルで断熱に優れる |
| 工期短縮 | 工場でパネルを加工し、現場では組み立てるだけ |
| デザイン自由度 | 面材の組み合わせで箱型以外も設計しやすい |
軽量であることは、基礎の負担が減る・運搬や揚重が楽になるといった現場メリットに直結します。耐震性については、面で力を受ける壁式構造のため、実大の震動実験でも大きな損壊なく性能を保った例が報告されています。耐火性も、木は燃えると表面が炭化層をつくって内部への燃え進みを遅らせる性質があり、これに加えて燃え代設計や石膏ボードなどの被覆を組み合わせることで、必要な耐火性能を確保します。
工期短縮の効果は大きく、日本CLT協会は6階建ての住宅でRC造に比べ3か月ほど工期を短縮できると発表しています。木目が見える材料なので、木のぬくもりを活かした内装デザインにできるのも魅力です。コンクリートや鉄に比べて製造時のエネルギーが少なく、CO2排出を抑えられる環境面のメリットもあります。
現場目線で言えば、CLTの一番の強みは「工場で精度よく加工した大判パネルを、現場で一気に組み上げられる」ところです。湿式のRC造のように養生で1か月待つ必要がなく、パネルを建て込んで引きボルトで固定すればすぐ次の工程に進めるので、工期の読みやすさが段違いになります。
CLT工法のデメリットと普及の課題
良い面ばかりに見えるCLT工法ですが、「これだけメリットがあるのになぜ普及しないのか」という疑問の裏には、明確なデメリットと課題があります。
CLT工法の主な課題は次のとおりです。
- コストが高い:RC造・S造に比べて材料・技術のコストが高くなりがち
- 製造工場が少ない:国内のCLT製造拠点がまだ限られている
- 設計できる人が少ない:特に防耐火設計は専門性が高く、対応できる設計者が限られる
- 実績・データが新しい:現場で安全性を確認しながら進める場面が多く、時間とコストがかかる
最大のハードルはコストです。CLTはまだ新しい工法で、経験のある設計者・施工会社が少なく、データの蓄積も発展途上のため、確立されたRC造・S造と比べると割高になりがちです。特に中高層を合理的につくるには、工法のさらなる確立が必要とされています。
ただし、コスト面は国や自治体の補助金が充実しているため、補助金を活用すれば他工法と同等の予算で建てられるケースもあります。政府もロードマップを定めてCLTの生産体制強化やコスト改善を進めており、製造施設の整備や設計者・施工者向けの講習も拡充されています。
個人的には、CLTの普及のボトルネックは「材料そのもの」より「扱える人と工場の数」だと感じます。技術的な優位性は実証されつつあるので、設計者・施工者の裾野が広がり、製造拠点が増えてコストが下がれば、普及は一気に進む可能性があります。逆に言えば、今のうちにCLTを扱える施工管理になっておくと、今後の中高層木造の波で強みになるはずです。
CLT工法の施工方法
ここからは競合記事ではあまり踏み込まれない、現場での具体的な組み立て方です。CLT工法では、プラットフォーム工法という積層方式が標準的に使われます。
プラットフォーム工法の基本的な流れは次のとおりです。
- 基礎・土台の上に1階の壁パネルを建て込む
- 1階の壁の上に2階の床パネルを載せる
- その床を作業床(プラットフォーム)として2階の壁を建て込む
- これを上階へ繰り返し、箱を積み上げていく
各階の床を作業床として使いながら、壁→床→壁と積み上げていくのがプラットフォーム工法です。パネル同士は引きボルトや専用金物で緊結します。大判パネルを工場で精密に加工してくるため、現場は組み立て中心で、レッカー(クレーン)でパネルを吊り込みながら短期間で躯体を立ち上げられます。
施工管理として現場で気をつけること
CLTの現場で施工管理が押さえておきたいポイントを挙げておきます。
- 揚重計画:大判パネルを吊るレッカーの能力・配置・搬入動線を事前に詰める
- 接合金物の精度:引きボルト・ビス・金物の施工精度が構造性能に直結する
- 雨対策・含水管理:木材なので、施工中・引き渡し前の養生と防水が品質の要
- 混構造の取り合い:RC・S造と組み合わせる場合、異種構造の接合部の納まりを確認
特に注意したいのが、木材ゆえの水分管理です。CLTは雨に濡れると含水率が上がり、品質や寸法に影響するため、施工中の養生と仕上げ後の防水処理が欠かせません。パネルの精度が高いぶん、現場での接合金物の施工精度が建物全体の性能を左右する点も、RCや鉄骨とは違う緊張感があります。
僕の考えでは、CLTの施工は「現場で何かを生み出す」というより「工場でつくった精密な部品を、いかに正確に・濡らさず組み上げるか」という品質管理の勝負です。プレファブの精度を現場で殺さないこと、そして木材を水から守ること。この2点を外さなければ、CLTの工期と品質のメリットをしっかり引き出せます。
CLT工法の価格・コスト
CLT工法を検討するうえで一番気になるのが価格です。結論から言うと、現状ではRC造・S造より割高になるのが一般的です。
コストが高くなる主な理由は、前述のとおり製造工場が少ないこと、扱える設計者・施工者が限られること、実績データが新しく現場確認に時間がかかることです。材料費だけでなく、設計・施工の習熟度がコストに跳ね返っている面が大きいです。
ただし、価格は次の要素で大きく変わります。
- 補助金の活用:国・自治体のCLT関連補助金で実質負担を抑えられる
- 工期短縮効果:現場工期が短いぶん、仮設費・人件費・現場経費を圧縮できる
- 混構造での部分採用:全体をCLTにせず、壁・床など一部に使ってコストを調整
補助金をうまく使えば、他工法と同程度の予算で建てられるケースもあります。また、CLTは工期が短いため、工事期間に比例する仮設費や現場経費を圧縮できる効果もあり、材料単価だけで割高と判断するのは早計です。総事業費・工期・補助金まで含めたトータルで比較するのが現実的です。
実務だと、CLTは「材料費は高いが工期は短い」という特性なので、坪単価だけで他工法と比べると判断を誤りやすいです。補助金の有無、工期短縮による経費削減、混構造での部分採用まで含めて、案件ごとに総額で見積もるのが妥当だと感じます。
CLT工法の採用事例
CLT工法は、公共施設から商業施設、中高層建築まで採用が広がっています。代表的な事例を見てみましょう。
| 事例 | 概要 |
|---|---|
| 南予森林組合事務所(愛媛県) | 屋根・壁・床にCLTを採用した木造事務所 |
| ケンタッキー・フライド・チキン(一部店舗) | 屋内の天井・壁にCLTパネルを採用、鉄骨案より工期を約10日短縮 |
| ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園 | 三菱地所が2021年開業、国内初の高層ハイブリッド木造ホテル(下層RC・上層木造) |
| 大阪・関西万博 日本館 | CLT活用プロジェクトとして整備 |
特に注目されたのが、三菱地所の「ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園」で、下層をRC造・上層を木造とした国内初の高層ハイブリッド木造ホテルとして話題になりました。この建物は国土交通省のCLT先導的プロジェクトにも採択されています。
最近は、全体を木造にするのではなく、RC造やS造の建物の壁・床にCLTパネルを使う「混構造」が増えています。これは、CLTのデザイン性・環境性能を活かしつつ、コストや防耐火設計の課題をRC・S造で補う現実的な手法です。RC造・S造の基本はこちらも参考になります。


僕としては、CLTの普及は「全部木造」より、まず混構造での部分採用から進むと見ています。いきなり総CLTの中高層はコストも設計のハードルも高いですが、RC・Sの建物の一部にCLTを使う形なら導入しやすく、事例も着実に増えています。施工管理としては、こうした混構造案件でのCLTの取り合いを経験しておくと、今後の現場で重宝されるはずです。
CLT工法に関するよくある質問
Q1:CLTと集成材は何が違うのですか?
積層の向きと部材の形が違います。一般的な集成材はラミナ(ひき板)を繊維方向が平行になるように積層し、梁や柱といった線材をつくります。CLTはラミナを繊維方向が直交するように積層し、壁や床といった大判の面材をつくります。この「直交積層」がCLTの名前の由来で、寸法安定性と二方向の強度を生んでいます。集成材は軸組(線で支える)、CLTは壁式(面で支える)と覚えると区別しやすいです。
Q2:木造なのに本当に地震や火災に強いのですか?
強いです。CLTは面で力を受ける壁式構造のため剛性が高く、実大の震動実験でも大きな損壊なく性能を保った例が報告されています。火災についても、木は燃えると表面が炭化層をつくり、内部への燃え進みを遅らせます。鉄骨が早期に強度を失うのに対しCLTは炭化層に守られて一定時間持ちこたえるため、これに燃え代設計や被覆を組み合わせて必要な耐火性能を確保します。
Q3:CLT工法の工期はどれくらい短縮できますか?
建物規模によりますが、日本CLT協会は6階建ての住宅でRC造に比べ約3か月の工期短縮ができると発表しています。RC造はコンクリートの養生に1か月近くかかる湿式工法ですが、CLTは工場加工した大判パネルを現場で組み立てて引きボルトで固定すればすぐ次工程に進めるため、現場工期を大幅に圧縮できます。
Q4:CLT工法はRCやS造と組み合わせて使えますか?
使えます。最近はRC造・S造の建物の壁や床にCLTパネルを採用する「混構造」が増えています。CLTのデザイン性・環境性能を活かしつつ、コストや防耐火設計の課題をRC・S造で補える現実的な手法で、下層RC・上層木造の高層ハイブリッド木造ホテルとして札幌の事例などが知られています。総CLTよりも導入のハードルが低く、CLT普及の主要なルートになっています。
Q5:CLTは雨に濡れても大丈夫ですか?
木材なので、施工中・引き渡し前の養生と防水処理が重要です。雨に濡れて含水率が上がると、品質や寸法に影響する可能性があります。施工管理としては、パネルの養生、屋根・外装による早期の雨仕舞い、仕上げ後の防水処理を計画的に行うことが品質確保の要になります。逆に、適切に水分管理し設計・施工すれば、木造でも長寿命化が期待できます。木造の耐用年数についてはこちらが参考になります。

CLT工法に関する情報まとめ
- CLT工法とは:ラミナを直交積層した大判パネル(直交集成板=CLT)を壁・床として組み立てる工法
- 集成材との違い:集成材は平行積層の線材(梁・柱)、CLTは直交積層の面材(壁・床)。CLTは壁式構造
- 特徴・メリット:軽量(RCの約5分の1)・寸法安定・耐震・耐火・断熱・工期短縮・デザイン自由・CO2削減
- デメリットと課題:コストが高い・製造工場が少ない・設計者が少ない。補助金や生産体制強化で改善が進む
- 施工方法:プラットフォーム工法で壁→床→壁と積み上げる。揚重計画・接合金物の精度・雨養生が現場の要
- 価格:現状はRC・Sより割高だが、補助金・工期短縮・混構造での部分採用で総額は変わる
- 採用事例:南予森林組合事務所、KFC、札幌の木造×RC混構造、大阪・関西万博日本館など
以上がCLT工法に関する情報のまとめです。
CLT工法は、直交集成板という材料の特性と、プラットフォーム工法という組み立て方を押さえれば、「木造で中高層が建つ」理由も、コストという課題も腑に落ちます。施工管理の視点では、工場プレファブの精度をいかに現場で殺さず、木材を水から守れるかが品質の勝負どころです。当面は混構造での部分採用から普及が進むと見られるので、今のうちにCLTの基礎と現場の勘所を押さえておくと、これからの中高層木造の時代で強みになるはずです。




