- 内部摩擦角ってなに?
- 単位は度?
- 砂と粘土でどれくらい違うの?
- 粘着力との関係は?
- 土圧計算でどう使うの?
- 施工管理として何を見る?
上記の様な悩みを解決します。
「内部摩擦角」は地盤工学で最も重要な物性値の1つで、土がせん断破壊するときの抵抗力を表す指標。山留め設計・擁壁設計・基礎の支持力すべての計算に使われます。建築現場で「この土の φ(ファイ)が30度だから〜」という会話を聞いたら、それは内部摩擦角の話。施工管理として地盤調査結果を読むとき、「なぜこの数字が重要か」が腑に落ちるようになります。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
内部摩擦角とは?
内部摩擦角とは、結論「土粒子同士のすべりに対する摩擦抵抗を、角度で表した値」のことです。
英語では angle of internal friction(アングル・オブ・インターナル・フリクション)。記号は φ(ファイ)。単位は度(°)。
ざっくりイメージすると
砂を山型に積み上げると、ある角度より急にすると崩れますよね。
- サラサラ乾いた砂:山にしても比較的緩やかな角度しか保てない
- 湿った砂:急な角度でも崩れない
- 粒の大きい砂利:角度を急にしても崩れない
→ この「崩れずに保てる最大の角度」が、ほぼ内部摩擦角に相当(厳密には安息角との違いはあるが、近い概念)。「土がどれだけ自立する力を持っているか」と覚えると分かりやすい。
内部摩擦角の主な特徴
- 土粒子同士の摩擦・かみ合わせから生まれる
- 砂質土(粒が大きい・角張っている)で大きい値
- 粘性土(粒が小さい・水分多い)で小さい値
- 粘着力(c)とともに「土の強さ」を構成する2大物性値
- 土圧・支持力・斜面安定すべての計算根拠
なぜ建築で重要か
内部摩擦角は次の3つの設計に直結。
- 土圧計算:山留め壁・擁壁の主働・受働土圧の計算根拠
- 支持力計算:基礎の許容支持力(テルツアギの式)の重要パラメータ
- 斜面安定:法面・盛土・切土の安定計算
→ つまり「地盤を相手にする全ての構造設計でφが必要」。建築の意匠側からは見えにくい数字ですが、構造・地盤系では毎日のように出てくる重要パラメータです。
主働土圧・受働土圧はこちらの記事も参考にしてください。

内部摩擦角の単位と求め方
数値の意味と求め方を整理します。
①単位は度(°)
内部摩擦角の単位は度(°)。土の種類によって 0°〜45° 程度のレンジ。
- 0°:粘性土の極限(完全に粒子間摩擦がない)
- 30°:砂質土の標準的な値
- 40〜45°:密実な砂・砂利の最大値
→ 「45度を超える内部摩擦角はほぼない」と覚えていい。
②求め方:三軸圧縮試験
内部摩擦角の標準的な求め方は三軸圧縮試験。
1. 円筒形に成形した土試料を装置に設置
2. 周囲から拘束圧を加える(σ3)
3. 軸方向に荷重をかけて破壊させる(σ1)
4. 拘束圧を変えて複数回試験
5. 破壊応力の関係から内部摩擦角を逆算
→ 試験条件(排水・非排水)で有効応力に対するφ’と全応力に対するφで値が変わる。実務では設計条件に応じて使い分け。
③求め方:一面せん断試験
簡易な方法として一面せん断試験。
1. 直方体の土試料を上下のせん断箱にセット
2. 上から垂直荷重を加える(σ)
3. 水平方向にせん断力を加えて破壊させる(τ)
4. 垂直荷重を変えて複数回試験
5. τ-σの関係から内部摩擦角と粘着力を求める
→ 砂質土の試験に多用。粘性土はやや精度が落ちる。
④N値からの推定式(現場で多用)
実務では地盤調査のN値(標準貫入試験)から内部摩擦角を推定することが多い。
| 推定式 | 適用範囲 |
|---|---|
| φ = √(20N) + 15(大崎の式) | 砂質土・実務で標準 |
| φ = √(15N) + 15(粒度・含水比補正) | より厳密 |
| φ = 0.3N + 27(Peck の式) | 海外原典・参考値 |
→ N=10 → φ ≒ 29°、N=30 → φ ≒ 40° くらい。現場で使われる目安として覚えておくと便利。
N値はこちらの記事も参考にしてください。

標準貫入試験はこちらの記事も参考にしてください。

⑤摩擦係数 tan(φ) との関係
物理学的には、内部摩擦角は摩擦係数 μ = tan(φ)と直接対応。
| φ (度) | tan(φ) | 摩擦係数 μ |
|---|---|---|
| 20° | 0.364 | 0.36 |
| 30° | 0.577 | 0.58 |
| 40° | 0.839 | 0.84 |
| 45° | 1.000 | 1.00 |
→ 「角度を摩擦係数で表す」という発想で生まれた指標。土圧係数の式にも tan が頻出します。
土の種類別の内部摩擦角の値
実務でよく使う土の代表値を整理します。
①砂質土・砂利の代表値
| 土の種類 | 内部摩擦角 φ (度) | 備考 |
|---|---|---|
| 砂利・玉石(密実) | 40〜45 | 大型砂利・玉石 |
| 砂利(密実) | 35〜40 | 角張った粒で高い値 |
| 砂(密実) | 30〜35 | N値30以上の砂層 |
| 砂(中位) | 28〜32 | 一般的な砂層 |
| 砂(緩い) | 25〜30 | 砂洲・新しい埋立地 |
| シルト質砂 | 20〜30 | 砂と粘土の中間 |
→ 砂質土の値は「密実度」で大きく変動。同じ砂でもN値5とN値30では10度近く違うことも。
②粘性土の代表値
| 土の種類 | 内部摩擦角 φ (度) | 備考 |
|---|---|---|
| シルト | 15〜25 | 砂と粘土の中間 |
| 粘土(硬い) | 10〜20 | 強度の高い粘土層 |
| 粘土(中位) | 5〜15 | 一般的な粘土層 |
| 粘土(軟弱) | 0〜10 | 軟弱地盤 |
| 高有機質土(腐植土) | 0〜5 | 沼地・湿地 |
→ 粘性土は粘着力 c が支配的で、内部摩擦角は小さい(または無視)。粘土を「φ=0」として扱うことも多い。
③地盤種別ごとの実用値
建築実務でよく使う代表値:
| 地盤 | φ (度) | c (kN/m²) | 備考 |
|---|---|---|---|
| ローム層 | 25〜30 | 20〜30 | 関東ロームの典型 |
| 砂質粘性土 | 15〜25 | 10〜30 | 一般的な平野部地盤 |
| 砂礫層 | 35〜40 | 0 | 河川堆積層・支持層 |
| 沖積粘土 | 0〜5 | 5〜15 | 軟弱地盤 |
| 洪積粘土 | 10〜15 | 30〜80 | 中位の硬い粘土 |
→ 地域・地盤の歴史で典型値が決まる。地盤調査報告書には必ずφが記載される。
軟弱地盤はこちらの記事も参考にしてください。

④水の影響(飽和時のφ低下)
土の含水比が増えると内部摩擦角は低下します。
- 砂質土:乾燥時 φ=35°、飽和時 φ=33° 程度(若干低下)
- 粘性土:乾燥時 φ=20°、飽和時 φ=15° 程度(大きく低下)
- 急速排水できない条件:非排水せん断でφが大幅低下
→ 「雨が降ると地盤が滑る」のは、含水比上昇でφが低下するため。法面・盛土の安定計算では最悪条件(降雨時)で評価。
ボイリングはこちらの記事も参考にしてください。

内部摩擦角と粘着力(c)の関係 ─ クーロンの破壊基準
土の強さは「内部摩擦角φ」と「粘着力c」のセットで決まります。
①クーロンの式
土がせん断破壊する条件は、
τ = c + σ × tan(φ)
τ: せん断応力
c: 粘着力(kN/m²)
σ: 垂直応力
φ: 内部摩擦角
→ つまり「破壊強さは c(粘着力)と σ×tan(φ)(摩擦による強さ)の和」。これが土質工学の最も基本的な式。
②2成分の意味
| 成分 | 説明 | 強い土 |
|---|---|---|
| c(粘着力) | 土粒子同士の電気化学的な引きつけ力 | 粘性土 |
| σ × tan(φ) | 垂直応力に比例する摩擦抵抗 | 砂質土 |
→ 「粘土は粘着力で耐え、砂は摩擦で耐える」のが本質。両方の和で土全体の強さが決まる。
③砂質土と粘性土の代表的なクーロン式
| 土の種類 | 代表的な式 |
|---|---|
| 純粋な砂質土 | τ = σ × tan(35°) (c≒0、摩擦のみ) |
| 純粋な粘性土 | τ = c (φ≒0、粘着力のみ) |
| 中間的な土 | τ = c + σ × tan(φ) (両方) |
→ 砂は「ほぼ φ で決まる」、粘土は「ほぼ c で決まる」と覚えると見通しが良い。
④モール円との関係
土質力学の基本:モールの応力円を描いて、その包絡線がクーロンの式。
- 主応力 σ1・σ3 が破壊条件を満たすとモール円が破壊包絡線に接する
- 接線の傾きが tan(φ)、切片が c
→ 受験(土質力学・地盤工学)では必ず出題される基本概念。
土圧計算での内部摩擦角の使い方
実際の設計でφが土圧計算にどう使われるかを整理します。
①主働土圧係数 Ka(ランキンの式)
土が壁を押す側(主働状態)の土圧係数は、
Ka = (1 - sin φ) / (1 + sin φ)
= tan²(45° - φ/2)
| φ (度) | Ka |
|---|---|
| 20 | 0.490 |
| 25 | 0.406 |
| 30 | 0.333 |
| 35 | 0.271 |
| 40 | 0.217 |
→ φが大きいほど Ka は小さい = 土圧が小さい。砂質土の方が粘性土より土を押す力が弱い、ということ。
②受働土圧係数 Kp
土が壁から押し返される側(受働状態)の土圧係数は、
Kp = (1 + sin φ) / (1 - sin φ)
= tan²(45° + φ/2)
= 1 / Ka
| φ (度) | Kp |
|---|---|
| 20 | 2.04 |
| 25 | 2.46 |
| 30 | 3.00 |
| 35 | 3.69 |
| 40 | 4.60 |
→ φが大きいほど Kp も大きく、土が壁を押し返す力が強い。
③土圧の計算式
主働土圧 Pa(壁の単位幅あたり):
Pa = (1/2) × γ × H² × Ka
γ: 土の単位体積重量 (kN/m³)
H: 壁の高さ (m)
Ka: 主働土圧係数
→ φが分かれば Ka が分かり、土圧 Pa が計算できる、という流れ。
④山留め設計での実例
地下3階(深さ12m)の山留め壁に作用する土圧:
土の条件:砂質土 φ=30°、γ=18 kN/m³
Ka = tan²(45° - 15°) = tan²(30°) = 0.333
Pa = (1/2) × 18 × 12² × 0.333
= 0.5 × 18 × 144 × 0.333
= 432 kN/m
→ 1mあたり432 kN(約44トン)の土圧。これに水圧(地下水)も加算する場合は、さらに大きな値に。
⑤支持力公式での内部摩擦角
テルツアギの極限支持力公式:
qu = c × Nc + (1/2) × γ × B × Nγ + γ × Df × Nq
Nc, Nγ, Nq: 支持力係数(φの関数)
c: 粘着力
γ: 土の単位体積重量
B: 基礎幅
Df: 根入れ深さ
→ 支持力係数 Nc・Nγ・Nq はすべて φ で決まる。φが大きいほど Nq が指数関数的に増大→支持力UP。
杭基礎はこちらの記事も参考にしてください。

施工管理での着眼点
施工管理として地盤関連で押さえるべきポイントを整理します。
①地盤調査報告書の読み方
地盤調査報告書(ボーリング柱状図)で確認すべき項目:
- 各層のN値:標準貫入試験の結果
- 各層の土質名:砂質土・粘性土・礫層 等の分類
- 各層のφ・c:三軸試験 or 一面せん断試験の結果
- 地下水位:常時水位・最高水位
→ 設計で使われている土質定数(φ・c)が「実測値か推定値か」を確認するクセが大事。
②φの妥当性チェック
報告書のφが実際の地盤と合っているか確認するポイント:
- N値からの推定φ vs 実測φ の整合性
- 同じ土質名(例:砂質土)で過去の物件と大きく違わないか
- 季節・含水比による補正の有無
→ 「N値10で φ=40°」のような異常値には注意。試験誤差・特殊な地盤条件の可能性。
③山留め設計時の注意
山留め設計では設計者が想定するφと、実際の地盤のφが乖離するリスク:
- 設計時:N値からの推定φ(例:30°)
- 実際:掘削後の観察で粘性土が混在(φ低下)
- 結果:設計より大きな土圧→山留め壁の変位増
→ 掘削開始後、地盤の実態を確認して必要なら設計レビューを依頼するのが施工管理の役目。
SMW工法はこちらの記事も参考にしてください。

④盛土・法面工事での注意
盛土の安定計算は、
- 盛土材料のφ:建材試験成績書で確認
- 含水比管理:雨天時の盛土は強度低下リスク
- 締固め度:現場密度試験で確認(φは密度依存)
→ 盛土材の「乾燥密度+含水比」を管理することで、設計通りのφが現場で実現できる。
⑤現場での具体例(独自エピソード)
ある中規模オフィスビル(地下2階)の山留め工事で、深度8m付近で予想していなかった粘性土層にぶつかった経験があります。
- 設計上の地盤:砂質土(φ=30°、Ka=0.333)
- 実際の地盤:深度8m付近に厚さ2mの粘性土層(φ≒10°、Ka=0.704)
- 影響:この層から下の土圧計算が変動
その時に学んだのは、「ボーリング1〜2本では地盤の実態が捉え切れない場合がある」こと。地盤コンサルが追加調査を実施→設計レビュー→山留め支保工の追加設計、という流れに。設計上の余裕度がない物件で同じ事態が発生したら、山留め変位過大→近隣建物への影響まで波及する可能性も。
教科書では「φ=30°」という1つの数字ですが、現場では「層構成を実態として捉えて、φを使い分ける」判断が必要、というリアルな話でした。施工管理として山留め工事を見守るときは、「掘削面の土質観察」が地味だけど一番大事なノウハウですね。
地盤改良はこちらの記事も参考にしてください。

内部摩擦角に関する情報まとめ
最後に、内部摩擦角の重要ポイントを整理します。
- 内部摩擦角とは:土粒子同士のすべり抵抗を角度で表した値。記号 φ、単位は度(°)
- 代表値:砂質土 30〜40°、粘性土 0〜20°、砂礫 35〜45°
- 求め方:三軸圧縮試験・一面せん断試験。実務ではN値からの推定式(φ=√(20N)+15)も多用
- クーロン式:τ = c + σ × tan(φ)。粘着力 c と摩擦による強さ σ tan(φ) の和で土の強さが決まる
- 土圧計算:主働土圧係数 Ka = tan²(45°-φ/2)、受働土圧係数 Kp = tan²(45°+φ/2)
- 施工管理視点:地盤調査報告書のφの妥当性確認、掘削時の地盤実態の観察、盛土の含水比・密度管理
以上が内部摩擦角に関する情報のまとめです。
内部摩擦角は「土がどれだけ自立する力を持っているか」を表す指標で、土圧・支持力・斜面安定すべての計算根拠になっています。施工管理として地盤調査結果を読むとき、「この φ で本当に大丈夫か」「掘削して見えた地盤と整合しているか」を確認するだけで、地盤関連トラブルを未然に防げますよ。一通り内部摩擦角の基礎知識は理解できたと思います。
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