- 公称応力ってなに?
- 真応力とどう違うの?
- 計算式はどう書くの?
- 応力ひずみ線図ではどっちを描いてるの?
- 現場で使うミルシートの数字は公称応力?
- ぶっちゃけ施工管理で意識する場面ってある?
上記の様な悩みを解決します。
公称応力は、構造力学や材料力学の入り口でつまずきやすい用語のひとつです。「真応力」と並べて出てくる割に違いがイメージしづらく、引張試験の応力ひずみ線図で実際に描かれているのがどっちなのか曖昧になりがちな概念です。施工管理の立場でも、ミルシートに載っている降伏点・引張強さの数字が公称応力ベースであることを知っているかどうかで、検査や打合せでの会話の精度がだいぶ変わってきます。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
公称応力とは?
公称応力とは、結論「引張試験で測定した荷重を、試験を始める前の元の断面積で割った応力のこと」です。
英語では nominal stress や engineering stress と呼びます。「エンジニアリングストレス(工学応力)」という言い方もよく出てきますが、これも公称応力と同じ意味で、現場と試験室の両方で扱いやすい指標として標準的に採用されています。
ポイントは「元の断面積で割る」という部分です。引張試験では試験片を引っ張ると徐々に細くなっていきますが、公称応力ではこの細くなる前の最初の断面積(A0)を使います。実際の断面積は引っ張るほど小さくなるので、本当に部材内部に発生している応力とは少しズレが出ます。それでも公称応力を使うのは、計算が単純で再現性があり、設計や検査で使う「規格値」と直接照合しやすいからです。
JISや建築構造設計指針で出てくる「降伏点」「引張強さ」「許容応力度」は、ほぼすべて公称応力ベースの数値です。SS400の引張強さ400N/mm²やSD345の降伏点345N/mm²といった数字も、すべて公称応力で表記されています。
[talk words=’実は応力ひずみ線図のテキストに描かれているグラフも、ほとんどは公称応力を縦軸にとったものですからね。線図を見るたびに「これは元の断面積で割っている」と思い出してください。’ name=”” avatarimg=”https://seko-kanri.com/wp-content/uploads/2020/02/c-run.png” avatarsize=70 avatarbdcolor=#d0d0d0 avatarbdwidth=1 bdcolor=#d0d0d0]
公称応力と真応力の違い
ここがいちばん混乱しやすい部分です。並べて整理します。
| 項目 | 公称応力 | 真応力 |
|---|---|---|
| 割る断面積 | 試験前の元の断面積 A0 | 変形中の実際の断面積 A |
| 別名 | 工学応力/エンジニアリングストレス | True stress |
| 線図の形 | 引張強さ後にピークから下がって見える | 破断まで上昇し続ける |
| 規格値 | 降伏点、引張強さなど | 材料研究、塑性加工分野で使用 |
引張試験では、試験片が降伏点を超えるとくびれ(ネッキング)が発生して、ある一点だけ細くなります。公称応力で計算すると元の断面積で割っているので、実際は応力が上がっているにもかかわらずグラフ上は荷重が下がって見えます。これが応力ひずみ線図で「最大点(引張強さ)の後に下降カーブが現れる」原因です。
一方で真応力は、その時点での実際の細くなった断面積で割るので、破断するその瞬間まで応力は上昇し続けます。
施工管理で扱う場面はほぼ公称応力です。鋼材試験や鉄筋の引張試験、高力ボルトの規格値、鉄筋コンクリートの設計強度、いずれも公称応力ベースで定義されています。真応力は塑性加工や材料研究の分野で活躍する指標で、一般的な施工管理の打合せで真応力を持ち出す機会はほぼゼロです。
鉄骨と鉄筋それぞれの素材としての違いは、こちらの記事もあわせて参考にしてみてください。

公称応力の計算式
公称応力の式はとてもシンプルで、
σn = P ÷ A0
P:引張荷重(N)
A0:試験前の元の断面積(mm²)
σn:公称応力(N/mm²)
の3点だけ覚えておけばOKです。
例えば、断面積100mm²(10mm×10mm)の試験片を50,000N(5,000kgf相当)で引っ張ったときの公称応力は、50,000 ÷ 100 = 500N/mm² となります。
ミルシートの読み方を例に挙げると、SS400の引張強さの規格値400N/mm²は、「引張試験で破断したときの最大荷重を、元の断面積で割った値が400N/mm²以上ある」ことを意味します。試験成績書を見るときに「これは元の断面積ベースの数字だ」と頭に入れておくと、納入された鋼材の品質を判断するときにブレが出にくいです。
降伏点や引張強さなど、ミルシートに載る数値の読み方はこちらが詳しいです。

応力ひずみ線図での公称応力の見え方
応力ひずみ線図は、横軸にひずみ(伸び率)、縦軸に応力をとったグラフのことです。鋼材を引張試験にかけたときに描かれる典型的なグラフは以下の流れになります。
鋼材の応力ひずみ線図の典型的な流れ
- 弾性域:直線的に応力が増加する区間(ヤング率の傾き)
- 上降伏点:いったん応力がピークに達する点
- 下降伏点〜降伏棚:応力がほぼ一定のまま伸びる区間
- ひずみ硬化域:再び応力が上昇する区間
- 引張強さ:応力のピーク
- ネッキング以降:応力が下降して破断
このグラフが「引張強さ以降に下降して見える」のが公称応力の特徴です。実際の部材内部で起きている応力は破断直前まで上昇していて、グラフ上の下降は「断面積が縮んでいるのに元の断面積で割り続けているせいで起きている見かけの現象」です。
入門書や教科書のグラフはほぼすべて公称応力で描かれています。試験室で得たデータから真応力を計算し直すと、引張強さ以降もカーブが上を向いたままになります。
スターラップ筋(あばら筋)に使う鉄筋の規格値も、応力ひずみ線図ベースで設定されています。

公称応力が施工管理で関わる場面
「机上の話でしょ?」と感じるかもしれませんが、施工管理の現場でも公称応力ベースの数値を見る場面は意外と多いです。
現場で公称応力ベースの数字を扱う場面
- 鋼材納入時のミルシート確認(SS400・SM490などの引張強さ・降伏点)
- 鉄筋のミルシート確認(SD295・SD345・SD390などの降伏点・引張強さ)
- 高力ボルトの規格値確認(F10T・S10Tの引張強さ)
- アンカーボルトの引張試験成績書の読み取り
- 構造計算書での許容応力度の根拠(規格値はすべて公称応力ベース)
特にミルシートの数字は、現場で「規格値を満たしているか」を判定する一次資料です。納入された鋼材のロット番号と試験成績書の対応関係を確認した上で、引張強さ・降伏点・伸びの欄を見て、規格値(公称応力ベース)をクリアしているかチェックします。
[talk words=’僕も電気施工管理時代は鉄骨や鉄筋のミルシートを直接見る機会は少なかったんですが、配筋検査の打合せで「ミルシートの引張強さは公称応力ベースだから、ここの420N/mm²ってのはSD390の規格値345を十分クリアしてる」と先輩が言っていて、そこで初めて「あぁ、規格値って真応力じゃなくて公称応力なんだ」と腑に落ちた覚えがあります。’ name=”” avatarimg=”https://seko-kanri.com/wp-content/uploads/2020/02/c-run.png” avatarsize=70 avatarbdcolor=#d0d0d0 avatarbdwidth=1 bdcolor=#d0d0d0]
配筋検査での鉄筋ロット・規格値の確認手順については、こちらが分かりやすいです。

H鋼やIビームのような鋼材も、規格値はすべて公称応力ベースで定義されています。

公称応力に関する注意点
数字を扱うときに気をつけたいポイントを2点だけまとめておきます。
1. ネッキング後のグラフは「見かけ」と理解する
応力ひずみ線図で最大点(引張強さ)の後に応力が下がっているように見えても、それは公称応力の計算ルール上そう描かれるだけで、内部の応力が下がっているわけではありません。「断面積が縮んだから割られる側が大きく見える」という理解が大事です。
2. 設計と試験で「同じ土俵」に立っている
設計式に出てくる許容応力度は公称応力ベース、ミルシートの試験値も公称応力ベース、構造計算書の規格値も公称応力ベース。検査・設計・施工が「同じ計算ルール」で会話しているからこそ、数字の比較ができるという仕組みです。研究分野で真応力を使う場面はあっても、施工管理の打合せに真応力を持ち込むと話がかみ合わなくなります。
層間変形角や剛性率など、構造計算で使う指標もすべて公称応力ベースの設計値で評価されています。


公称応力に関する情報まとめ
- 公称応力とは:引張試験の荷重を試験前の元の断面積で割った応力のこと
- 真応力との違い:真応力はその時点の実際の断面積で割る/公称応力は元の断面積で固定
- 計算式:σn = P / A0(単位はN/mm²)
- 応力ひずみ線図:教科書のグラフはほぼ公称応力ベース。引張強さ後の下降は「見かけの現象」
- 施工管理での扱い:ミルシートの引張強さ・降伏点はすべて公称応力ベース
- 設計値との関係:許容応力度・規格値もすべて公称応力で定義されている
以上が公称応力に関する情報のまとめです。
一通り公称応力の基礎知識は理解できたと思います。応力ひずみ線図や鋼材の規格を読むときに「これは元の断面積で割った数字なんだな」と頭に置くだけで、ミルシートや構造計算書を見る目がだいぶ変わってくるはずですよ。
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