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保育園建築とは?設置基準、面積、避難計画、用途地域、安全設計など

  • 保育園を建てるときの法律的なルールって?
  • 部屋ごとに必要な面積はどれくらい?
  • 認可と認可外で何が違うの?
  • 避難計画ってどう作る?
  • 内装は普通の建物と違う?
  • 施工管理として気をつけることは?

上記の様な悩みを解決します。

保育園建築は「児童福祉施設最低基準」という独自の規制に縛られた特殊な建築用途で、面積基準や避難計画、設備要件まで細かく決まっています。設計の最初に法規を押さえておかないと、認可申請の段階で大幅な手戻りが発生する分野です。今回は建築士・施工管理者の目線で、保育園建築の全体像を整理してみます。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

保育園建築とは?

保育園建築とは、結論「児童福祉施設最低基準に基づき設計する、乳幼児を保育するための建物」のことです。

法的には「保育所」「保育園」は児童福祉法上の児童福祉施設にあたり、就学前の乳幼児(0歳〜小学校就学前)を保育する施設です。一般のテナント工事や事務所建築と違い、児童福祉施設最低基準(厚労省令)を満たさないと認可を取れず開園できないという強い縛りがあります。

→ ざっくり、「乳幼児の安全と発達を法令で守る建築用途」が保育園建築、というイメージです。

主な保育施設の種類

主な保育施設の種類としては、認可保育所(児童福祉法上の認可施設・最低基準を満たす必要あり)、認定こども園(保育所と幼稚園の機能を併せ持つ)、小規模保育事業=地域型(定員6〜19名の小規模)、認可外保育施設(認可基準は満たさないが届出制で運営可能)、企業主導型保育事業(事業所内保育・内閣府所管)、というあたり。

認可保育所と認可外では建築基準が大きく異なり、認可保育所のほうが面積要件・避難要件ともに厳しくなります。設計初期で「どの形式の保育園か」を必ず確認することが必須です。

保育園建築の法規

保育園に関わる主な法規は次のとおりです。

最低基準・建築基準法・消防法

児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(厚労省令)は、通称「最低基準」。乳児室・ほふく室・保育室・園庭の面積、保育士の配置、給食設備、便所の数まで細かく規定されています。設計の根幹となる省令です。

建築基準法・用途地域では、保育所は建築基準法上「児童福祉施設等」に分類されます。第一種低層住居専用地域で原則OK(規模制限あり)、第一種・第二種住居地域で問題なくOK、商業地域・近隣商業地域でOK、工業地域でOK(ただし周辺環境を要確認)、工業専用地域では建てられない、というあたり。住宅街での新設が多いので、用途地域の確認は必須です。

消防法では、保育所は防火対象物の(6)項ハに分類され、自動火災報知設備・消防用設備・避難誘導の整備が求められます。階段付き2階以上の保育所では、避難設備の要件がさらに厳しくなります。

バリアフリー法

バリアフリー法(高齢者・障害者等の移動等の円滑化)は、床面積2,000m²以上の施設で適用。保育所では送迎する保護者にベビーカーや車椅子利用者がいるため、規模を問わずバリアフリー対応が推奨されます。法令調査の進め方はこちらも参考になります。

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保育園のゾーニングと面積基準

最低基準で定められた児童1人あたりの最低面積が、設計のスタート地点になります。

児童1人あたりの最低面積(認可保育所)

部屋 最低面積(1人あたり) 対象児童
乳児室 1.65 m² 2歳未満(ねんね・あんよ前)
ほふく室 3.3 m² 2歳未満(はいはい〜あんよ)
保育室・遊戯室 1.98 m² 2歳以上
園庭(屋外) 3.3 m² 2歳以上

たとえば「2歳児クラス20人+3歳児クラス20人」を計画するなら、保育室は1.98×40=79.2 m²以上、園庭は3.3×40=132 m²以上が最低ライン。最低ラインで設計するとギリギリ過ぎるので、実際は1.2〜1.5倍の余裕を持って計画するのが普通です。

必要な部屋とゾーニング

そのほか必要な部屋としては、調理室(給食を提供する場合)、便所(児童20人につき1個以上)、医務室(病気の児童を一時隔離)、事務室・職員室、倉庫・物入れ、送迎用エントランス(ベビーカー置場含む)、というあたり。

ゾーニングの基本は、パブリック(エントランス・送迎エリア・保護者待合)、セミパブリック(保育室・遊戯室・園庭)、プライベート(職員室・調理室・倉庫)、サービス(機械室・受変電・ゴミ置場)、の4区分。

→ 「送迎時の保護者動線」と「保育中の児童動線」を交差させないのが理想です。エントランスから保育室へのアクセスを最短化しつつ、保育中は外部から児童が見えない位置に配置するのがコツになります。

保育園の採光・換気・避難計画

子供が長時間過ごす施設なので、環境性能の基準も厳しめです。

採光・換気

採光は、建築基準法では居室の採光面積比は床面積の1/5以上(一般居室)、保育所では実態として1/4以上を確保することが多い、直射日光をどう取り入れるかが園庭・保育室の配置を左右、というあたり。

換気は、必要換気量が児童1人あたり20〜30 m³/h(CO₂濃度1000ppm以下を目標)、機械換気+自然換気の併用が一般的、給食調理室は局所排気+全体換気を別途確保、というところ。換気回数の考え方はこちら。

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避難計画

保育所は「自力避難が困難な乳幼児が在室する」という特殊事情から、2方向避難の確保が建築基準法上の重要要件です。

避難計画のポイントは、1階で避難経路は2方向(内1つは屋外への直接出入口)、2階以上で屋内階段+屋外階段または避難スロープの2方向、0〜1歳児の保育室は1階に配置が原則、待避バルコニーや避難用ベランダの設置、というあたり。

特に2階以上に乳児室・ほふく室を設ける場合は、消防法上の追加要件(避難用滑り台・避難はしご等)が必要になります。最初から1階配置で計画するのが無難ですね。階高の考え方はこちら。

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保育園の設備と仕上げ

子供の安全と衛生を最優先にした仕上げが求められます。

床・壁・天井の仕上げ

床仕上げは、保育室はフローリングまたは塩ビシート(クッション性のあるもの)が主流、乳児室・ほふく室は畳・カーペットまたは衝撃吸収マット(転倒時の衝撃を緩和)、園庭は人工芝・ゴムチップ舗装が増加(土の園庭は減少傾向)、というあたり。クッションフロアやコルクタイルなど、転倒時の怪我を減らす素材が好まれます。

壁仕上げは、抗菌・防汚仕上げのビニルクロスが標準、腰壁部分は腰高100cm程度まで耐久性の高い化粧板を貼って児童による損耗を防ぐ、角は丸み(コーナーガード)を入れる、というところ。

天井は、化粧石膏ボードまたは岩綿吸音板、防音性を考慮(保育室で歌・読み聞かせ等の音が出る)、というあたり。

水まわりと安全配慮設備

水まわりは、子供用便器(高さ250mm、ロータイプ)、手洗いは低めの位置に設置(高さ500mm程度)、給食室はHACCP対応の衛生区画(汚染・非汚染エリアの分離)、というところ。

安全配慮の設備は、指挟み防止の建具(蝶番カバー、ドアストッパー)、児童の手の届く高さの電気スイッチは避ける(高さ1.2m以上)、ガスコック・水栓は保育士の手の届く範囲に、というあたり。

→ 戸建てクリニックや一般住宅では当たり前の高さに付ける電気スイッチも、保育園では「子供が触れない高さ」に上げる必要があります。設計初期に保育士の動線と児童の手の届く範囲を意識しておかないと、後で全部やり直しになるんです。

保育園の施工管理での注意点

最後に、施工管理として押さえておきたい注意点を整理します。

計画・施工段階の注意

計画段階での注意は、認可申請のスケジュールから逆算して工程を組む(行政検査が複数回ある)、自治体の福祉部局・建築指導課の両方と事前協議、周辺住民への説明(送迎時の渋滞・園児の声などへの配慮)、既存樹木・園庭の植栽計画も含めて設計、というあたり。

施工段階での注意は、防音・遮音性能(階下や隣接住宅への騒音対策=防音床・遮音壁)、ホルムアルデヒド・VOC(内装はF☆☆☆☆=フォースター材を選定)、仕上げの角・段差処理(児童の怪我リスクを最小化)、園庭の安全遊具(JIS A 5710=公園・運動施設の遊具の安全基準を確認)、引渡し前のクリーニング(通常以上に念入りに=小さい子供が床を舐めても安全な水準)、というところ。

現場での体験談

電気施工管理として現場で苦労したのは、保育園のスイッチ位置決め。設計時の図面ではスイッチが床上1.2mで指定されていたものの、現場で「保育士の手の高さに合わせて1.4m」「コンセントは1.5m以上に」と運営者側から細かい変更が入ったケースがありました。完成後に運営者が安心して引き渡しを受けるためにも、施工途中で運営者・園長との実物確認のタイミングを1〜2回挟んでおくと手戻りが減ります。総合図の作成と運営者レビューはこちらも参考に。

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保育園建築に関する情報まとめ

  • 保育園建築とは:児童福祉施設最低基準に基づき設計する、乳幼児を保育する建物
  • 種類:認可保育所、認定こども園、小規模保育、認可外、企業主導型
  • 法規:児童福祉施設最低基準、建築基準法(用途地域)、消防法(6項ハ)、バリアフリー法
  • 面積基準(児童1人あたり):乳児室1.65、ほふく室3.3、保育室1.98、園庭3.3 m²
  • 採光:床面積の1/5以上、実態は1/4以上
  • 避難:2方向避難必須、0〜1歳児は1階配置原則
  • 仕上げ:抗菌・防汚・衝撃吸収を意識、角の丸み処理、F☆☆☆☆材
  • 施工注意:認可スケジュール逆算、周辺住民対応、運営者と途中レビュー

以上が保育園建築に関する情報のまとめです。

保育園建築は、面積基準・避難・仕上げ・設備のどれもが「乳幼児の安全と発達」を軸に決められた特殊な建物です。設計と施工の両段階で運営者・自治体と密に連携しながら進めることで、引渡し後にスムーズに開園できる施設に仕上がります。一通り保育園建築の基礎知識は理解できたと思います。

合わせて、関連する建築・設備の知識もチェックしておきましょう。

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