弾性と塑性とは?違い、変形、降伏点、構造設計での扱いなど

  • 弾性と塑性って結局どう違うの?
  • 力を抜くと戻る・戻らないの境目は?
  • 降伏点ってなに?
  • 応力ひずみ曲線の見方が分からない
  • 弾性係数とかヤング率と何が関係あるの?
  • 建築の構造設計でどう使われてる?
  • 一次設計・二次設計って弾性塑性の話?
  • 「靭性」「粘り」ってこれのこと?
  • 現場の仕事と関係あるの?
  • 鉄筋を曲げるのは塑性を使ってる?

上記の様な悩みを解決します。

弾性と塑性は、材料力学の入口でありながら、建築の耐震設計の根っこを支える超重要な概念です。ところが世の中の解説は材料力学の一般論で止まっていて、「建築の構造設計で弾性と塑性がどう使い分けられているか」「現場のどこで出会うか」まで踏み込んだものは多くありません。今回は弾性・塑性の意味と違い、応力ひずみ曲線と降伏点といった基本を押さえた上で、一次設計・二次設計での扱いや靭性、現場で出会う場面まで、施工管理の目線で整理しました。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

弾性とは?

弾性とは、結論「力を加えると変形するが、力を取り除くと元の形に戻る性質」のことです。

イメージしやすいのは輪ゴムです。引っ張れば伸びますが、手を離せば元の長さに戻ります。この「戻る」性質が弾性で、こういう性質を持つ材料を弾性体と呼びます。鋼は明確な弾性域を持ち、コンクリートも応力の低い範囲では近似的に弾性的なものとして扱われます。

弾性の範囲では、応力(力)とひずみ(変形)が比例します。これが「フックの法則」で、その比例定数が弾性係数(ヤング係数)です。同じ力をかけても、ヤング係数が大きい材料ほど変形が小さい、つまり固いということになります。

ヤング係数の考え方はこちらが詳しいです。

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個人的には、弾性は「材料の素直な領域」と捉えると分かりやすいです。力に応じてきれいに比例して変形し、放せば元通り。建物が普段の風や中規模の地震で揺れても元に戻るのは、構造体がこの弾性の範囲内で働いているからです。後で出てくる「一次設計」は、まさにこの素直な領域に建物を収める設計だと考えると、話がつながります。

塑性とは?

塑性とは、結論「ある限度を超えて力を加えると、力を取り除いても変形が残る性質」のことです。

針金を何度も曲げると、もう元には戻らずクセがつきますよね。あれが塑性です。弾性の範囲を超えて塑性の状態に移ることを「降伏」と呼び、力を抜いても残ってしまう変形を「塑性ひずみ」と呼びます。

ここで大事なのは、塑性は「壊れた」状態ではないという点です。永久変形は残りますが、材料はまだ力に耐えながら、ねばって変形し続けています。この「ねばり強さ」が、実は建築の耐震では非常に重要な意味を持ちます。後ほど詳しく触れます。

弾塑性という言葉で両者をまとめて扱うこともあります。

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実務だと、塑性は「壊れる一歩手前で粘ってくれる領域」と捉えると本質が見えてきます。弾性だけの材料は、限度を超えると急にパキッと折れます。一方、塑性域を持つ鋼は、降伏してからも大きく変形しながら耐える。この粘りがあるかないかが、地震時に建物が一気に崩れるか、変形しながら持ちこたえるかを分けます。

弾性と塑性の違い

弾性と塑性を対比すると、違いがはっきりします。

項目 弾性 塑性
力を除いたあと 元の形に戻る 変形が残る
応力とひずみ 比例(フックの法則) 比例しない
境目 降伏点まで 降伏点を超えてから
建築での主な役割 通常時・中地震に耐える 大地震で粘って倒壊を防ぐ
イメージ 輪ゴム 曲げた針金

両者を分ける境界が「降伏点」です。降伏点までが弾性、超えると塑性、と覚えておくと整理しやすいです。

現場目線で言えば、弾性と塑性は対立する性質ではなく、1つの材料が持つ「2段階の働き方」です。普段は弾性で素直に元に戻り、いざ大きな力が来たら塑性で粘る。鋼がこの2段階を持っていることが、鉄骨造やRC造の耐震性を成立させている、という理解が一番しっくりきます。

応力ひずみ曲線と降伏点

弾性と塑性を具体的に説明するときに使われるのが、鋼(軟鋼)の「応力ひずみ曲線」です。縦軸に応力、横軸にひずみを取ったグラフで、鋼を引っ張ったときの挙動を表します。

軟鋼の応力ひずみ曲線は、次のような段階をたどります。

段階 内容
比例限度 応力とひずみが比例する限界
弾性限度 ここまでは力を抜けば元に戻る
降伏点(上・下) 弾性から塑性へ移る点
降伏棚 応力がほぼ一定のままひずみだけ増える
ひずみ硬化 再び応力が上昇する領域
最大応力(引張強さ) 応力の最大値
破断 最終的に切れる

ポイントは、降伏点を境に挙動が変わることです。降伏点までは弾性(戻る)、超えると塑性(戻らない)。そして降伏棚やひずみ硬化を経て、大きく変形しながら最大応力に達し、破断します。

応力ひずみ曲線の見方はこちらでさらに詳しく押さえられます。

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僕の整理では、応力ひずみ曲線は「材料の一生を1枚に描いた図」です。素直に伸びる弾性、粘り始める降伏、耐えながら変形する塑性、そして破断。この流れを頭に入れておくと、降伏点や引張強さといった数値が「曲線のどこの話か」で理解でき、構造の話が一気に立体的になります。

弾性と塑性の構造設計での扱い

ここが材料力学の一般解説には載っていない、建築ならではの本題です。建築の耐震設計は、弾性と塑性を地震の規模で使い分けています。

段階 想定する地震 考え方
一次設計 中規模地震(数十年に一度) 弾性範囲内に収め、損傷させない
二次設計 大規模地震(数百年に一度) 塑性変形を許し、粘って倒壊させない

一次設計(許容応力度設計)では、普通に起こりうる地震に対して、建物を弾性の範囲に収め、傷ませないことを目指します。

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一方の二次設計では、めったに来ない大地震に対して、構造体がある程度塑性変形することを前提にします。あえて塑性域で粘らせ、変形しながら地震のエネルギーを吸収させることで、倒壊を防ぐ。この「粘り強さ」が「靭性」です。地震に強い建物とは、固いだけの建物ではなく、靭性に富んだ建物を指します。

このとき、部材の特定箇所が塑性変形して地震エネルギーを吸収する仕組みを「塑性ヒンジ」と呼びます。逆に、粘らずに突然壊れる「脆性破壊」は耐震設計で最も避けたい壊れ方です。

耐震構造の全体像はこちらで整理できます。

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僕の考えでは、弾性と塑性の使い分けこそ、現代の耐震設計の核心です。中地震では弾性で無傷を狙い、大地震では塑性で粘って人命を守る。固さと粘りの両方を持たせるという発想は、弾性塑性を理解していないと腹落ちしません。ここが分かると、なぜ鋼材に粘りが求められるのか、なぜ脆性破壊を嫌うのかが一本につながります。

現場で弾性・塑性に出会う場面

理論の話に見えて、弾性と塑性は現場のあちこちに顔を出します。施工管理として知っておくと、図面や材料の意味がぐっと分かりやすくなります。

  • 鉄筋の曲げ加工:フックやスターラップを曲げるのは、まさに塑性を利用した加工です。曲げてもクセが戻らないのは塑性ひずみが残るから
  • 鋼材の降伏点:SN材・SS400などの鋼材は、降伏点や引張強さが規格で決まっています。設計はこの降伏点を基準に許容応力度を決めます
  • 降伏比:粘りを確保するため、SN材では降伏比(降伏点÷引張強さ)を一定以下に抑え、塑性変形能力を持たせています
  • 地震後の残留変形・座屈:大地震後に柱や梁に変形が残るのは塑性変形した証拠。座屈もこの領域で起こる現象です
  • 高力ボルト:締め付けによる軸力の管理も、弾性・塑性の境を意識した世界です

降伏比やSN材の考え方はこちらが参考になります。

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座屈との関係はこちらで深められます。

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正直なところ、弾性と塑性は「現場には関係ない理論」と思われがちですが、鉄筋を曲げる作業ひとつ取っても塑性そのものです。鋼材の規格値が何を意味するのか、地震後になぜ変形が残るのか、その理由はすべて弾性塑性に行き着きます。理屈と現場をこの概念でつなげておくと、材料や図面を見る目が変わってきます。

弾性と塑性に関する情報まとめ

  • 弾性とは:力を除けば元に戻る性質。応力とひずみが比例(フックの法則)し、比例定数がヤング係数
  • 塑性とは:降伏点を超えると変形が残る性質。壊れる手前で粘る領域
  • 違い:戻るのが弾性、戻らないのが塑性。境目は降伏点
  • 応力ひずみ曲線:比例限度→弾性限度→降伏点→降伏棚→ひずみ硬化→最大応力→破断
  • 構造設計での扱い:一次設計は弾性内で無損傷、二次設計は塑性変形で粘り(靭性)倒壊を防ぐ
  • 現場:鉄筋の曲げ加工、鋼材の降伏点・降伏比、地震後の残留変形・座屈、高力ボルト

以上が弾性と塑性に関する情報のまとめです。

弾性と塑性は、材料の基本性質であると同時に、建物が地震に耐える仕組みそのものを説明する概念です。意味と違い、応力ひずみ曲線を押さえたうえで、一次設計・二次設計での使い分けや現場で出会う場面まで理解しておくと、構造の意図が読めるようになります。降伏点や応力ひずみ曲線、耐震構造の知識と合わせて深めておくと、図面や材料の数値が「なぜその値なのか」まで見えてくるはずです。

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