- やり方(遣り方)ってなに?
- なんのためにやるの?
- 手順ってどうなってるの?
- どんな道具が必要?
- 丁張りとどう違うの?
- 現場で気をつけることは?
上記の様な悩みを解決します。
「やり方」と聞くと「やり方=手順」と勘違いしそうですが、建築現場の用語としての「やり方(遣り方)」は意味がまったく違います。基礎工事の最初に必ず行う重要な準備工程で、ここの精度がそのまま建物の精度に直結する、地味ですが肝心な作業です。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
やり方(遣り方)とは?
やり方とは、結論「基礎工事に入る前に、建物の位置・高さ・通り芯を現場に物理的に設定する仮設物」のことです。漢字では「遣り方」と書き、読み方は「やりかた」。
簡単に言うと、建物の予定位置に木の杭と板で「ここからここまでが建物の輪郭で、ここの高さがGL+450mm」という基準を作る作業のこと。これがあるから、その後の根切り(地面を掘る)・基礎工事・墨出しなど、すべての位置決めができるんですね。
「やり方」が必要な理由を整理すると:
- 建物の位置を物理的に固定する:図面上の建物位置を、現場の実際の地面に座標として落とし込む
- 基準高さを設定する:水平の基準となる高さ(やり方天端)を決めて、後工程の高さ管理の出発点にする
- 基礎工事中の精度確認に使う:根切り・捨てコン・基礎墨出しなどの精度確認の基準点
- 後工事のジオメトリ基準:墨出しなど躯体工事の基準にもなる
実際にやり方を組むのは、土工さんや基礎屋さんが多いですが、施工管理者は必ず立ち会って位置と高さの精度をチェックします。ここでミスがあると、後の工程すべてに影響するので、現場代理人としては最初の山場と言ってもいい工程ですね。
やり方の目的
やり方の役割をもう少し噛み砕くと、3つの目的に整理できます。
1. 通り芯(とおりしん)の位置を出す
通り芯とは、建物の柱や壁の中心を結んだ仮想の線。X方向(横)とY方向(縦)に通り芯を設定し、その交点が柱の中心になります。やり方では、この通り芯を木板の上に釘とテグスで物理的に表現します。
2. 建物の四隅の位置を確定する
通り芯から建物の外形寸法を測って、四隅の位置を地面上に落とし込みます。ここがズレると建物全体がズレてしまうので、対角線寸法(ピタゴラスの定理)でチェックして直角度を出します。
3. 基準高さ(GL+450mmなど)を設定する
水平器とレベル測量で、やり方天端の高さを統一して設置。例えば「やり方天端=GL+1000mm」と決めておけば、そこから−550mmが1FL、−1450mmが基礎天端、というように下ろしていける。
これらの基準を施工中ずっと保持するために、やり方は基礎工事が完了するまで現場に残します。「最初に作って、ずっと頼りにする」のがやり方の本質ですね。
やり方の手順
実際の手順を順を追って説明します。
ステップ1: 縄張り
まず、やり方を組む前に「縄張り」という工程があります。これは建物の予定位置に縄やビニールテープで建物の輪郭を表示する作業。「ここに本当に建物を建てていいか」を施主と最終確認するための工程です。
ステップ2: ベンチマーク(BM)の設置
工事区域内に「変動しない基準点」を設定します。隣地の境界石、近くの構造物、コンクリートに打設した基準点などをBMとして、ここから全ての高さ寸法を測ります。
ステップ3: 水杭を打つ
建物の四隅の外側1〜1.5mほどの位置に、太さ45〜60mm角の水杭を打ち込みます。水杭は地面にしっかり打ち込んで、ぐらつかないようにする。
ステップ4: 水杭の天端をレベルで合わせる
レベル測量機を使って、すべての水杭の天端を同じ高さに揃えます。例えば「すべての水杭天端=GL+1000mm」というふうに。これによってやり方全体が水平になります。
ステップ5: 水貫を取り付ける
水杭の天端に、水平に水貫(みずぬき)と呼ばれる横板を釘で取り付けます。水貫は厚さ24mm程度・幅90〜120mm程度の杉板が一般的。水貫の天端も水平になるように取り付ける。
ステップ6: 通り芯の墨を出す
水貫の上に、通り芯の位置を墨壺やマジックでマーキングします。X1通り、X2通り、Y1通り、Y2通り、というように建物の主要な通り芯を全て表記。
ステップ7: 通り芯にテグスを張る
水貫上のマーキングに釘を打ち、対面の水貫まで水糸(テグス)を張る。これで建物の通り芯が地面の上に「線」として現れます。
ステップ8: 直角度・対角線の確認
X方向とY方向の通り芯が直角になっているかを、3-4-5の直角三角形(ピタゴラス)または対角線の長さで確認。例えば建物が10m×8mなら、対角線は12.806mになるはず。実測値と理論値が一致するまで微調整します。
ステップ9: 検測・記録
最後に、施工管理者が立ち会って通り芯位置・高さ・直角度を確認し、写真と検測記録を残します。これを後の工程の根拠資料として保管。
やり方に必要な道具
やり方作業で使う主な道具を紹介します。
測量機器
- レベル測量機:水杭の高さを統一するための水平精度確保
- オートレベル / レーザーレベル:最近はレーザーレベルが普及
- トランシット / セオドライト:直角を出すときに使用
- メジャー / 巻尺:50m巻尺が標準
仮設材料
- 水杭(45〜60mm角×900mm程度):杉や松の角材
- 水貫(24×120mm×3m程度):水平方向の板
- 筋かい板:水杭の補強用斜め材
- 釘(90mm程度):水貫を水杭に固定
マーキング・記録
- 墨壺:通り芯のマーキング
- マジックペン:寸法・通り芯番号の記入
- 水糸(テグス):通り芯を物理的に表す糸
- チョークライン:簡易マーキング
- デジタルカメラ:検測写真記録
精度確認用
- 水平器:水貫の水平確認
- 下げ振り:垂直の確認
- 巻尺:対角線・寸法確認
最近の現場ではレーザーレベルやトータルステーションが主流で、伝統的な水盛り(透明ホースに水を入れて高さを比較する原始的な方法)はほぼ見ません。とはいえ、原理を知っておくと「なぜこの作業が必要か」の理解は深まりますね。
やり方と「丁張り」の違い
「やり方」と並んでよく出てくる言葉が「丁張り(ちょうはり)」。実はほぼ同じ意味で、地域や業界によって呼び分けられているだけです。
主な使われ方
- やり方(遣り方):建築工事で使われることが多い
- 丁張り:土木工事で使われることが多い
つまり、戸建住宅やビルの基礎工事の準備としては「やり方」、道路工事や造成工事の盛土・切土の基準としては「丁張り」と呼ぶ傾向があります。
技術的にも若干の違いはあって:
| 項目 | やり方(建築) | 丁張り(土木) |
|---|---|---|
| 主な目的 | 建物の位置・高さの基準 | 法面・舗装・構造物の位置・勾配の基準 |
| 設置場所 | 建物外周の四隅と要所 | 工事範囲全体に分散 |
| 表現対象 | 通り芯・基準高さ | 計画線・勾配・法肩・法尻 |
| 期間 | 基礎工事完了まで | 該当工程完了まで |
ただ、「やり方=建築、丁張り=土木」と完全に二分されているわけではなく、現場や元請の慣習で混在しています。「ウチの会社では建築でも丁張りって言うよ」というケースもあるので、現場で出てきた呼び方に合わせる柔軟性が大事。
やり方で詰まりやすいポイント
最後に、現場でやり方を組む・チェックする際のよくある問題点を整理します。
1. 水杭の動き
水杭は地中に打ち込んでも、雨や風、施工中の機械の振動で動くことがあります。特に軟弱地盤や雨期の現場では、定期的に高さの再確認が必要。動いていたら即座に修正。
2. 高さの基準ミス
「水貫天端=GL+1000mm」と決めたつもりが、実際は「GL+1100mm」に組まれていた、というミスが起きると、その後の全ての高さが100mmズレる致命的事態に。レベル測量は1人ではなく2人体制で、必ずダブルチェック。
3. 通り芯の番号間違い
X1とX2を取り違えてマーキングすると、通り芯が反転して建物が左右逆になります。マーキングする際に、必ず方位(北・南・東・西)を意識すること。
4. やり方の撤去タイミング
やり方は基礎工事完了まで残すのが原則ですが、根切り中に物理的に邪魔になる場合があります。一時的に外す場合は、事前に座標を実測記録しておき、復旧時に同じ位置に戻せるようにする。
5. 隣地との取り合い
狭小地や隣地境界ギリギリの建物では、やり方の水杭が隣地に越境しないよう注意。事前に境界確認を済ませてから水杭位置を決めるのが基本。
6. 雨天時の作業
水盛りやレベル測量は、雨や強風があると精度が落ちます。やり方の組立てや確認は、できるだけ穏やかな日に実施するのがベター。雨で濡れた水貫は乾燥後に位置がズレることもあるので要注意。
10m離れた水杭で1mmズレると、対角の建物頂部では2〜3mm単位の誤差として現れる、というのが実感値。地中梁・基礎・躯体・仕上と進むにつれて誤差が累積するので、ベテランほど水糸の張り直しに時間をかけて、ミリ単位の追い込みをやります。「最初の0.5mmが、最後は5mmになる」と言われる所以ですね。
やり方に関する情報まとめ
- やり方とは:基礎工事前に、建物の位置・高さ・通り芯を現場に物理的に設定する仮設物
- 目的:通り芯位置の決定、四隅の確定、基準高さの設定の3つ
- 手順:縄張り→BM設置→水杭打ち→レベル合わせ→水貫取付→通り芯墨出し→テグス張り→直角度確認→検測
- 必要道具:レベル測量機、水杭、水貫、墨壺、水糸、巻尺など
- 丁張りとの違い:建築=やり方、土木=丁張りが多いが、技術的には類似
- 注意点:水杭の動き、高さ基準ミス、通り芯番号、撤去タイミング、隣地越境、雨天作業
以上がやり方に関する情報のまとめです。
やり方は基礎工事の出発点であり、後工程すべての基準となる重要な工程です。一見地味ですが、ここの精度管理を丁寧にやれば、後の墨出しや配筋、基礎天端の精度がずっと楽になります。施工管理として最初の現場立ち会い案件として、原理と手順をしっかり押さえておきましょう。
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