- 質量と重量って何が違うの?
- kgとkgfって同じじゃないの?
- Nとkgfって何が違うの?
- 構造計算ではどう使い分ける?
- 「重さ」って言ったらどっち?
- 月でも値が変わるってホント?
上記の様な悩みを解決します。
質量と重量、似た言葉ですが物理学的には別物です。日常会話では「重さ=質量=重量」とごっちゃに使いがちですが、構造計算や荷重計算の世界では使い分けが必須。鉄骨の搬入計画でクレーンの吊り能力を確認するとき、地震荷重を計算するとき、ミルシートを読むとき、施工管理として「これは質量?それとも重量?」と問えるかどうかで、計算ミスのリスクが大きく変わります。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
質量と重量とは?
質量と重量は、結論「質量は『物体そのものの量』、重量は『その物体に働く重力の力』」のことです。
両者の定義をシンプルに言うと、
- 質量(しつりょう、Mass):物体に含まれる物質の量。場所が変わっても変化しない。
- 重量(じゅうりょう、Weight):物体に働く重力の大きさ。場所(重力加速度)で変化する。
英語では Mass(質量)と Weight(重量)と明確に区別されています。日本語の「重さ」は曖昧ですが、英語ではどっちか必ず明示するわけです。
重力加速度 g は地球上では約 9.80665 m/s²、月面では約 1.62 m/s² なので、月に行くと体重(重量)は約 1/6 になりますが、質量(体そのものの量)は変わりません。これが「質量は普遍、重量は環境依存」の典型例です。
両者の関係式は、
重量 W = 質量 m × 重力加速度 g
地球上では g ≒ 9.81 m/s² なので、質量 1kg の物体には約 9.81 N の重力が働きます(後述)。
質量と重量の違い
両者の違いを整理しておきます。
| 項目 | 質量 | 重量 |
|---|---|---|
| 定義 | 物体に含まれる物質の量 | 物体に働く重力の大きさ |
| 物理量 | スカラー(量) | ベクトル(力) |
| 場所による変化 | 変わらない(普遍) | 重力で変化(地球・月で違う) |
| 単位(SI) | kg(キログラム) | N(ニュートン) |
| 単位(工学系) | kg、g、t | kgf、N、tf |
| 測定方法 | 天秤(基準分銅と比較) | ばねばかり(重力で伸び量計測) |
天秤とばねばかり
両者の違いを直感的につかむには、天秤とばねばかりを比較するのが分かりやすい。
- 天秤:左右の腕に乗せた物体の質量どうしを比較する。月でも地球でも同じ結果。質量を測っている。
- ばねばかり:ばねの伸びで重量(重力)を測る。月では伸びが小さくなるので、表示値が変わる。重量を測っている。
体重計(ばねばかりタイプ)も「重量計」が正しい呼び方なんですが、地球上では g ≒ 一定なので、表示は質量(kg)に変換されているわけです。
質量と重量の単位
ここが最も混乱するポイント。整理します。
質量の単位
| 単位 | 記号 | 換算 |
|---|---|---|
| グラム | g | 1g = 0.001kg |
| キログラム | kg | SIの基本単位 |
| トン(メトリックトン) | t | 1t = 1000kg |
| ポンド | lb | 1lb ≒ 0.4536kg |
重量(力)の単位
| 単位 | 記号 | 換算 |
|---|---|---|
| ニュートン | N | 1N = 1kg・m/s²(SI) |
| キロニュートン | kN | 1kN = 1000N |
| キログラム重 | kgf | 1kgf = 9.80665N(重力単位、旧JISで使用) |
| トン重 | tf | 1tf = 1000kgf ≒ 9806.65N |
| ポンド重 | lbf | 1lbf ≒ 4.4482N |
kgとkgfの紛らわしさ
実務でよく見るのが「N・mとkgf・m」「kgとkgf」の混同。
- kg:質量の単位
- kgf:重量(力)の単位(kg-force)
設計図書では「重量 200kg」と書かれていることが多いですが、これは厳密には「重量 200 × 9.81 N」または「200 kgf」と書くのが正しい。日常では混用されますが、構造計算では厳密に区別します。
「kgf を重量の単位として使う」のは旧JIS(重量単位系)の名残で、SI移行後も建設業界では慣習的に残っている表記です。
単位の換算
実務でよく使う換算式をまとめます。
重量の換算
| 単位 | 換算 |
|---|---|
| 1 kgf | = 9.80665 N ≒ 9.81 N |
| 1 N | ≒ 0.102 kgf |
| 1 kN | ≒ 102 kgf ≒ 0.102 tf |
| 1 tf | = 1000 kgf ≒ 9806.65 N ≒ 9.81 kN |
よく出るシーンの単位
鉄骨梁の重量:
– 質量 500 kg の梁 → 重量 ≒ 4.9 kN ≒ 500 kgf
– ミルシートには「単位質量 [kg/m]」が記載されているのが標準。長さを掛けて全体質量を計算 → 9.81 倍して重量に換算。
地震荷重の計算:
– 建物質量 1000 t → 重量 ≒ 9810 kN
– 設計用1次固有周期、Co(地震層せん断力係数)を使って各階水平荷重を計算するときに、質量から重量への換算が必要。
機器の搬入計画:
– 受電盤の質量 800 kg → 玉掛け側に伝えるのは「800 kg」。クレーンの定格荷重表は重量(kg)表記が一般的。
構造計算・実務での使い方
構造計算では、質量と重量を厳密に使い分ける必要があります。
静荷重計算(自重・積載荷重)
積載荷重や自重の計算では、SI 単位系で「重量=N」または「面荷重=N/m²」で扱います。
例:床スラブ厚 150mm のコンクリート(密度 24 kN/m³ = 2400 kg/m³ × g)
→ 床自重 = 0.15 × 24 = 3.6 kN/m²
ここで「kN/m²」は重量÷面積の単位、すなわち面荷重です。
地震荷重(水平力)
地震時の水平力 Q は、
Q = C × W
C:層せん断力係数、W:その階より上の重量(kN)
W は質量 [t] × 9.81 で重量 [kN] に換算してから使います。
風荷重・雪荷重
これも重量・力の世界。N/m² や kN/m² で扱います。
ミルシートの見方
鉄鋼材料に付くミルシート(https://seko-kanri.com/mill-sheet/)には「単位質量」が記載されます。
例:H鋼 H-300×150×6.5×9 → 単位質量 36.7 kg/m
長さ 12m の梁なら、質量 = 36.7 × 12 = 440.4 kg、重量 = 約 4.32 kN。
ミルシートは質量(kg)表記、構造計算は重量(N、kN)表記、というパターンが標準です。
搬入計画・玉掛けの世界
クレーンの定格荷重、フォークリフトの最大積載量、揚重ピースの強度計算は、すべて「kg」または「t」表示が現場標準。
例:800 kgの分電盤 → 800 kg を吊れるクレーン能力+ワイヤー強度+シャックル強度を確認。
ここで紛らわしいのが、ワイヤーロープやシャックルの強度カタログでは「kN」表記の方が増えてきていること。「800 kg = 7.85 kN」と、頭の中で換算するクセが必要です。
吊りピース類の話は、吊りピースの解説(https://seko-kanri.com/tsuri-piece/)にもまとまっています。
電気・設備機器の重量管理
受電盤、トランス、UPS、自家発電機などの大型電気機器は、設置位置の床荷重に直結します。設計時は「機器質量[kg]」を集計 → 床面積で割って「面荷重[kN/m²]」に換算 → 構造側でスラブ強度をチェック、という流れ。
例:UPS 1台 1.2t → 重量 ≒ 11.8 kN。設置面積 0.6m² なら面荷重 19.6 kN/m²(=2000 kg/m²)。これは一般的な事務所床(積載荷重 2.9 kN/m²)の数倍なので、構造補強が必要、と判断できます。
UPSや発電機の話は、UPSの解説や非常用発電機の解説にも詳しい話があります。

質量と重量の注意点
施工管理として混乱を防ぐためのチェックポイント。
①「重量」と書かれていても質量を意味することが多い
設計図書や仕様書では「重量 5t」のような表記が一般的。これは厳密には「質量 5t」を意味することがほとんど。重量で書きたい場合は「自重 49 kN」などのN系単位で書かれます。古い設計図書ほど混在しやすいので、「単位の系統(質量系か力系か)」で判別。
②kgとkgfの誤解
「kg」と書いてあっても文脈で「重量=力」を表しているケースがあります。トルクの単位でも「kgf・cm」のように力単位として使われるので、現場では「カラム名」「文脈」「単位の系統」の3つで判断するクセを。
トルクの話はトルクの単位の解説に詳しい話があります。
③SI 移行後も古い単位が残る
JIS は1999年にSI単位系へ移行しましたが、現場では今もkgf・tfが残っているのが現実。「N で計算したつもりが kgf だった」では強度計算が10倍ずれます。新人が引き継ぐときは、設計図書の単位を最初に整理して、テプラなどで明示しておくと安心。
④概算式での誤り
「質量[kg] × 9.81 = 重量[N]」という換算を、忙しいと「質量[kg] = 重量[N]」と省略してしまうケースが見られます。10倍違うので絶対NG。
⑤地震荷重計算での建物質量と建物重量
建物の地震荷重計算では「建物質量[t]」を出してから「重量[kN]」に換算 → 層せん断力係数を掛けて水平力を出します。途中の単位換算が抜けると桁ズレが起きるので、計算書の単位欄は必ずダブルチェック。地震荷重の話は層間変形角も合わせて確認すると、構造計算の流れがイメージできます。

質量と重量に関する情報まとめ
- 質量とは:物体そのものの量。場所が変わっても変化しない。SI単位は kg
- 重量とは:物体に働く重力の力。重力加速度で変化する。SI単位は N
- 関係式:W = m × g(g ≒ 9.81 m/s²)
- 単位換算:1 kgf ≒ 9.81 N、1 tf ≒ 9.81 kN
- 質量の単位:g、kg、t(ミルシート、搬入計画で多用)
- 重量の単位:N、kN、kgf、tf(構造計算、強度計算で多用)
- 注意点:kgとkgf の混同、設計図書の「重量」表記の曖昧さ、SI移行後も残る旧単位
以上が質量と重量に関する情報のまとめです。
質量と重量は「物理の授業の話」と思われがちですが、構造計算・搬入計画・地震荷重では常に出てきます。「物質の量=質量[kg]」「力=重量[N]」の使い分けを身につけておくと、計算書を読み違えることが激減します。一通り基礎知識は理解できたと思います。
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