- エレベーターって何種類あるの?
- ロープ式と油圧式って何が違う?
- 機械室なしってどういう意味?
- 用途で選び方が変わるの?
- ピット深さやオーバーヘッドって何のこと?
- 電源やメンテナンスはどれくらい必要?
上記の様な悩みを解決します。
「エレベーター」と一口に言っても、駆動方式・機械室の有無・用途で組み合わせが多く、図面に「P-9-CO 60m/分」みたいに書かれても初見では何を指すか分かりません。本記事では、施工管理視点で建築・電気・メンテ各方面の人と話が通じるレベルまで、エレベーターの種類を整理しておきます。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
エレベーターとは?
エレベーターとは、結論「カゴ(乗りかご)を昇降させて人や荷物を上下階に運ぶ建築設備」のことです。
英語の elevator(昇降機)が語源。建築基準法では「昇降機」のうち、人または人と物を運ぶものを指します。エスカレーター・小荷物専用昇降機(ダムウェーター)と区別されるのもこの定義から来ています。
エレベーターを構成する主な部材
- 乗りかご:人・荷物が乗る箱
- 巻上機・モーター:ロープを巻き上げる、または油圧でカゴを押し上げる動力源
- 主索(ロープ):カゴを吊るワイヤーロープ
- カウンターウェイト:カゴと釣り合いを取る錘(ロープ式の場合)
- ガイドレール:カゴと錘が上下方向に直進するためのレール
- ピット:昇降路の最下部の凹み
- オーバーヘッド:昇降路の最上階より上の余白
- 機械室:巻上機・制御盤を収める部屋(機械室なしタイプは昇降路内に収める)
法定検査・既存改修の話を含めると一気に範囲が広がるので、本記事では新築・更新時に種類の判断ができるレベルにフォーカスします。
駆動方式の種類(ロープ式・油圧式・リニア)
エレベーターの種類は、まず「何で動かすか」という駆動方式で大きく3つに分かれます。
ロープ式(トラクション方式)
最も一般的な方式。主索(ワイヤーロープ)の片側にカゴ、反対側にカウンターウェイトを吊って、シーブ(綱車)を回して動かすしくみです。
- カゴと錘がシーソーのように釣り合う
- モーターは錘との重量差だけ動かせばOKで、エネルギー効率が良い
- 高速・高揚程に強い(60m/分〜600m/分くらいまで網羅)
- 中低層〜超高層まで広く使われる
オフィスビル・タワマン・商業施設で見かけるのはほぼこれ、と思っておいてOK。
ロープ式はさらに、ギアード(減速機付き)とギアレス(直結)に分かれます。
- ギアード:ウォームギア等で減速。中低層・低速向け
- ギアレス:薄型モーター直結。中高層・高速向け、機械室なしタイプにも採用
ギアレスでも永久磁石モーター(PMモーター)が主流になり、消費電力・サイズともに昔より大幅に小さくなっています。
油圧式
油圧シリンダーでカゴを直接押し上げる方式。直接押し上げる直接式と、ロープを介する間接式があります。
- 機械室は昇降路の脇に置けるので、屋上に出っ張りが出ない
- 積載量が大きく取れる(自動車用エレベーター・荷物用に強い)
- 速度は45m/分〜60m/分程度まで(高速化には不向き)
- 油圧ユニット・配管のメンテが必要
- 油漏れ・温度変化で停止リスクがある
5階建て程度までの中低層で、機械室を屋上に出したくない・大荷物を運ぶ用途に強い、というのが現代の立ち位置です。最近はロープ式の機械室なしタイプ(MRL)が普及して、新築での採用は減少傾向。ただし自動車用・ホームエレベーターではまだ主役級です。
リニアモーター式
昇降路にリニアモーターを直接配置し、カゴを電磁力で動かす方式。
- 機械室・主索が不要
- 高速・高効率
- ただしコストが高く、採用例は限定的(一部の新築タワー等)
新築の現場で見ることは少ないですが、「そういう方式もある」と頭に入れておくと、メンテ会社・メーカーとの会話で困りません。
駆動方式の比較表
| 方式 | 適用速度の目安 | 適用階数 | 機械室 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| ロープ式(ギアード) | 〜90m/分 | 〜10階 | 必要 | マンション・小〜中規模ビル |
| ロープ式(ギアレス) | 60〜600m/分 | 〜超高層 | 必要 or なし | オフィス・タワマン・商業施設 |
| 油圧式(直接) | 〜45m/分 | 〜5階 | 昇降路脇 | 荷物用・自動車用・低層住宅 |
| 油圧式(間接) | 〜60m/分 | 〜6階 | 昇降路脇 | 中低層住宅・荷物用 |
| リニア | 高速 | 〜超高層 | 不要 | 一部の新築高層 |
機械室の有無(MR・MRL)
ロープ式エレベーターは「機械室の有無」でさらに2タイプに分かれます。
MR(Machine Room):機械室あり
- 昇降路の直上に機械室を設置
- 巻上機・制御盤・調速機を機械室内に収納
- 屋上に5〜6m²程度の機械室(ペントハウス)が必要
- メンテ性が良い、点検作業が楽
- 屋上に出っ張りが出るので、高度地区の規制にひっかかることがある
昔ながらのオーソドックスなタイプ。今でもメンテ性重視の物件・大型の物件で採用されています。
MRL(Machine Room Less):機械室なし
- 巻上機・制御盤を昇降路内に収納
- 屋上に機械室を設けないので、建物の高さを抑えられる
- ペントハウス分の建設コストを削減
- 制御盤の点検は最上階の乗り場から行うことが多い
- メンテ作業のスペースが狭く、慣れない作業員には作業性で不利
2000年代以降に普及し、今ではマンション・小規模ビルで主流。新築の見積もりで「MRLで安く」と言われることが多いのはこの理由です。
MRとMRLの選び分けの目安
| 観点 | MR | MRL |
|---|---|---|
| 建物高さの余裕 | 屋上にPHを設けてOK | PHを設けたくない場合に有利 |
| 用途 | 大型・荷物用・高速 | マンション・小規模オフィス |
| メンテ性 | ◎ | ○(やや手狭) |
| 初期コスト | やや高 | やや安 |
| 更新時の対応 | 機械室で交換しやすい | 昇降路全体で計画必要 |
新築ではMRL前提で計画する物件が増えていますが、揚程が高い・荷物用・大型の高速機を選ぶならMRを残すケースも多いです。
用途別の種類
カゴの中身・建築的な使い方の側面で、用途別の種類を整理します。
乗用エレベーター
人を運ぶ標準的なタイプ。P-9・P-11・P-15・P-20のように積載人数で型番が振られているのを見たことがあるはずです。
- P-6:450kg・6人乗り(小規模住宅)
- P-9:600kg・9人乗り(マンション標準)
- P-13:900kg・13人乗り(中規模オフィス)
- P-15:1000kg・15人乗り(オフィス標準)
- P-20:1350kg・20人乗り(大規模オフィス)
積載量はおおよそ1人=65〜75kgで換算されます。マンションはP-9、6m/分前後、オフィスはP-15、105m/分以上が多い、とざっくり覚えておくと現場の会話で困りません。
寝台用(ストレッチャー兼用)エレベーター
病院・介護施設で使う、ストレッチャーが横向きに入る奥行きのあるエレベーター。乗用と同じ駆動方式ですが、カゴサイズが2.5m前後と長く、扉の開口幅も広く取られます。
- 病院では患者用と職員用を分ける運用がほとんど
- ホスピス・特養では非常時の搬送動線として必須
荷物用エレベーター
人ではなく荷物の運搬を主目的とする型。
- カゴの内装が金属製でシンプル(壁を蹴って凹まない)
- 積載量が1000kg〜5000kgと大きい
- 速度は遅め(30〜60m/分)
- 荷捌き場と倉庫を結ぶ動線で計画されることが多い
倉庫・工場・物流施設で必須の設備。建築計画の段階でピットの深さ・床荷重・出入口を倉庫側と擦り合わせるのが施工管理の重要タスクです。
自動車用エレベーター
立体駐車場・カーディーラー・タワーパーキングで使う、車を載せるエレベーター。
- 積載量2000〜4000kg前後
- 油圧式が多い(重量物に強い)
- 入庫時間・回転率が建築計画と直結
ホームエレベーター
戸建て住宅向けの小型エレベーター。
- 積載量200kg・3人乗り程度
- 床面積1m²前後と小さい
- 油圧式・ロープ式どちらもある
- 3階建て・2世帯住宅での採用が多い
法令上は「ホームエレベーター」として通常エレベーターと別の基準が適用され、設置時の確認申請・年次検査の手続きが少し簡略化されます。
小荷物専用昇降機(ダムウェーター)
人は乗れない、書類・食事・小荷物専用の小型昇降機。
- 飲食店の厨房〜客席間の食事運搬
- 病院・図書館の書類運搬
- 法令上「小荷物専用昇降機」として、人の乗用とは別カテゴリ
設置基準・検査内容が乗用エレベーターと違うので、計画時に用途・呼称を間違えないこと。
選定で押さえるポイント
種類が分かったら、現場で選定する際のチェックポイント。
積載量・速度・台数
建物の用途・延床・想定居住者数から決まります。乱暴な目安として、
- マンション:居住者1人あたり0.05〜0.1人/分の輸送能力
- オフィス:5分間で就業者の8〜13%を運べる輸送能力
を基準にメーカーが計算します。ターミナルレイアウト(ロビー)の設計にも直結するので、用途決定→台数→速度→積載の順で詰めるのが王道です。
ピット・オーバーヘッドの寸法
建築側との一番大きな取り合いポイント。速度が上がるとピットもOHも深くなるのが鉄則。
ざっくりした目安(ロープ式)。
| 速度 | ピット深さ | オーバーヘッド |
|---|---|---|
| 45m/分 | 1.4m前後 | 4.0m前後 |
| 60m/分 | 1.5m前後 | 4.2m前後 |
| 105m/分 | 1.8m前後 | 4.5m前後 |
| 150m/分 | 2.5m前後 | 5.0m前後 |
実際の数値はメーカー仕様書で必ず確認。ピットを浅くしすぎるとカゴの底面とピット床のクリアランスが取れず、最後の最後で図面が組み替えになる、という事故が起こります。
ピットの工事はこちらでも整理しています。

電源容量とブレーカー
容量はカゴサイズ・速度で大きく変わります。ざっくりとした目安:
- マンション標準(P-9、60m/分):三相200V、15kW前後
- オフィス標準(P-13、105m/分):三相200V、30kW前後
- 高速・大型(P-20、150m/分):三相200V、50kW前後
エレベーター単独の専用回路で引くのが基本。動力盤からの幹線設計、漏電遮断器の選定までセットで決めます。
幹線設備の話はこちらで整理しています。


法定検査と更新サイクル
設置後の運用面で押さえておくと、設計段階で予算計画が立てやすいです。
- 法定検査:年1回、認定検査機関による定期検査が義務(建築基準法)
- メンテナンス契約:月1回または2ヶ月に1回の保守点検
- 部品更新:ワイヤーロープ・制御盤・モーターなどは10〜25年で更新
- 本体更新(リニューアル):機械寿命20〜30年、建物の長寿命化に合わせて更新
リニューアルは準撤去・準新設を含めると本体価格の60〜80%かかるので、新築時の機種選定がライフサイクルコストに直結します。MRLは部品の入手性も含めて、メーカーの撤退リスクを確認しておくと安心です。
非常用エレベーター・地震時管制
高さ31mを超える建物は、非常用エレベーターを1台以上設置する義務があります(建築基準法第34条)。
- 非常時の消防活動に使う
- 60秒以内に最上階まで到達する速度が必要(高層では速度自動的に上がる)
- 専用予備電源が必要
また、震度4以上で最寄階に自動停止して扉を開く「地震時管制運転」は新規設置のほぼすべてに搭載されます。停電時管制・火災時管制と合わせて3点セットで機能を確認するのが定番です。
非常用設備全般はこちらで整理しています。

エレベーターの種類に関する情報まとめ
- エレベーターとは:人・荷物を上下に運ぶ昇降機。乗りかご・巻上機・ロープ・ガイドレール・ピット・OHで構成
- 駆動方式:ロープ式(トラクション)/油圧式/リニア式の3種。新築はロープ式が圧倒的多数
- 機械室の有無:MR(機械室あり)/MRL(機械室なし)。マンション・小規模ビルはMRLが主流
- 用途別:乗用(P-6〜P-20)/寝台用/荷物用/自動車用/ホーム/小荷物専用昇降機
- 選定の押さえどころ:積載・速度・台数 → ピット・OH → 電源容量 → 検査・更新サイクル
- 建築との取り合い:ピット深さ・オーバーヘッドは速度に比例して大きくなる
- 法令対応:高さ31m超は非常用EVが義務、地震・停電・火災管制運転がほぼ標準
以上がエレベーターの種類に関する情報のまとめです。
エレベーターはメーカーカタログを見ると種類が多すぎて圧倒されますが、「駆動方式 × 機械室の有無 × 用途」の3軸で整理すれば、選定理由を施主・設計者に説明できるレベルに届きます。新築時の機種選定は20〜30年のライフサイクルコストを左右するので、速度・積載・電源・ピットを早い段階で建築・電気・設備の三者で握っておくのが、施工管理として一番現場をスムーズに進める近道かなと思います。
合わせて読みたい関連記事を貼っておきます。







