工程管理とは?工程表を作って終わりではない仕事を条文つきで解説

  • 工程管理って結局、工程表を作ることなの?
  • 工程管理って法律で決まってる仕事?誰の責任?
  • バーチャートとネットワーク、現場でどっちを使えばいい?
  • 工程表を作ったあと、毎日なにを見ればいいの?
  • 雨で3日止まった。どこで取り戻せばいい?
  • 残業の上限が決まったけど、工程にどう効くの?
  • 施主の言う工期が明らかに短い。言い返していいの?

上記の様な悩みを解決します。

工程管理とは、工期内に工事を完成させるため、計画した工程と実際の進み方のずれをつかみ、直していく管理のことです。工程表を作って終わりではなく、作ったあとに毎日の実績と見比べるところまでが仕事です。建設業法第26条の4第1項は、主任技術者と監理技術者の職務に「工程管理」を挙げています。この記事では、工程表の種類、遅れたときの取り戻し方、工期の考え方を順に整理します。

「工程管理」で調べると、工程管理ソフトを扱う会社のコラムが多く、最後は「ツールで見える化しましょう」に着地するものが少なくないんですよね。今回は定義・工程表の種類・進め方といった基本を押さえた上で、ソフトの紹介記事ではまず触れられない「工程管理が建設業法のどこに書かれているか」「残業の上限規制で遅れの取り戻し方がどう変わったか」「中央建設業審議会の工期に関する基準が挙げる日数」「受注する側も著しく短い工期で契約してはならなくなった改正」まで、施工管理の目線で整理しました。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、工程表を任され始めたばかりの方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

工程管理とは?工期に間に合わせるため、予定と実績のずれを直し続ける仕事

工程管理とは、結論「決められた工期の中で工事を終わらせるために、予定した工程と実際の進み方を比べ、ずれが出たら手を打ち続ける管理」のことです。

工程表はその道具の1つにすぎません。着工前に立派な工程表を作っても、雨で止まった日や、材料の搬入が1日ずれた日をそのまま放っておけば、工程表はただの紙になります。工程管理の中身は、むしろ工程表ができたあとの「見比べる」「直す」の繰り返しのほうです。

所長がよく口にする「段取り」は、次の作業が止まらないように、人・材料・機械・手続きを先回りしてそろえておくことを指す現場の言葉です。工程管理という大きな枠の中で、計画どおりに作業を進めるための実務の部分を担っているもの、というのが僕の整理です。

品質管理が「何を、どの精度で造るか」、安全管理が「誰にもけがをさせないこと」を見るのに対して、工程管理が見るのは「いつまでに」という時間の軸です。時間はほかの管理とぶつかりやすく、工程が苦しくなると品質や安全にしわ寄せが行きやすいので、工程に余裕を持たせること自体が品質と安全を守る手段にもなります。原価管理を加えた品質・原価・工程・安全の4つは施工管理の柱としてまとめて呼ばれることが多く、工程管理はそのうち時間の軸を受け持つ柱だと考えると位置付けがつかみやすくなります。

法律の上では主任技術者・監理技術者の職務

工程管理は、現場の慣習で回っている仕事ではありません。建設業法第26条の4第1項(e-Gov法令検索)は、主任技術者と監理技術者の職務を次のように定めています。

主任技術者及び監理技術者は、工事現場における建設工事を適正に実施するため、当該建設工事の施工計画の作成、工程管理、品質管理その他の技術上の管理及び当該建設工事の施工に従事する者の技術上の指導監督の職務を誠実に行わなければならない。

施工計画の作成と品質管理に並んで、工程管理が名指しで書かれています。現場でよく聞く「4大管理」「5大管理」は、施工管理の仕事をまとめて覚えるための呼び名で、この条文に出てくる言葉ではありません。慣用の呼び方として使うぶんには便利ですが、法律で決まっている枠組みとは分けて考えておくと混乱しません。

同じ条の第2項は、現場で働く側について「…従事する者は、主任技術者又は監理技術者がその職務として行う指導に従わなければならない」としています(建設業法第26条の4第2項)。工程について協力会社の職長に指示を出すとき、条文の上では技術者の職務として行う指導に当たる、と僕は捉えています。

主任技術者と監理技術者のどちらを置くかの線引きは、監理技術者の役割と配置の条件で整理しています。工程以外も含めた現場の仕事の全体像は、施工管理の仕事内容の解説から辿れます。

施工管理技士の検定では「施工管理法」の中に入る

工程管理は、資格試験の側でもはっきり位置付けられています。施工技術検定規則(e-Gov法令検索)の第2条は、検定の科目と基準を別表第一(一級)と別表第二(二級)に定めるとしていて、一級建築の第一次検定「施工管理法」の基準は次のとおりです。

監理技術者補佐として、建築一式工事の施工の管理を適確に行うために必要な施工計画の作成方法及び工程管理、品質管理、安全管理等工事の施工の管理方法に関する知識を有すること。

一級土木も同じ形の文で、二級(別表第二)では冒頭の「監理技術者補佐として、」が無く、末尾が「基礎的な知識を有すること」になっています(施工技術検定規則 別表第一・別表第二)。現場で工程を回している経験が、そのまま試験の出題範囲につながっている科目です。

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施工技術検定規則では、施工管理技士の第一次検定の「施工管理法」の基準に、施工計画の作成方法とあわせて工程管理の知識が入っています。受験を考えている方は、講座の内容も確認してみてください。

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工程表の種類と使い分け|バーチャート・ガントチャート・ネットワーク・曲線式

工程表は1種類ではなく、何を見たいかで形を選びます。公共工事の基準類も、特定の1種類を決め打ちする書き方にはなっていません。国土交通省「土木工事施工管理基準及び規格値(案)」(令和7年3月)は「受注者は、工事内容に応じて適切な工程管理(ネットワーク、バーチャート方式など)を行うものとする。」と書いています。建築では、公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版の1.2.1に「工事の着手に先立ち、実施工程表を作成し、監督職員の承諾を受ける。」とあります。

現場でよく使う4種類を、見えるものと向く場面で並べました。

種類 形 よく見えるもの 向く場面 見えにくいもの
バーチャート 縦に作業、横に日付をとり、作業ごとの期間を横棒で引く いつ何をするか、作業の期間 月間・週間工程、職人さんへの周知 作業同士のつながり、どの遅れが全体に響くか
ガントチャート 縦に作業、横に達成率(%)をとる 作業ごとの進み具合 各工種の進捗の確認 日付と、遅れが工期に与える影響
ネットワーク工程表 作業を矢線、作業の区切りを結合点で表してつなぐ 作業の前後関係、クリティカルパス 工種が多く並行作業の多い工事、短縮の検討 作るのに手間がかかり、ぱっと見では読みにくい
曲線式(出来高累計曲線・バナナ曲線) 横に時間、縦に出来高の累計をとった曲線 工事全体が予定より進んでいるか遅れているか 全体の出来高の管理、発注者への報告 どの作業が遅れの原因か

この表の説明は、施工管理で一般に使われている整理です。今回確認した国土交通省の基準類で手法名として出てくるのはネットワークとバーチャートで、ガントチャートや曲線式の定義文は見当たりませんでした。旧建設省東北地方建設局の「工程計画管理基準(案)」には「ネットワークは矢線型(アロー型)を使用するものとする。」という一文もあります。

まぎらわしいのがガントチャートです。教科書的には横軸が達成率のものを指しますが、現場や工程表ソフトでは、横軸に日付をとった棒の工程表、つまりバーチャートと同じものをガントチャートと呼ぶことも多いです。資格試験の勉強では区別して、職場の会話ではどちらの意味で言っているかを相手に合わせる、くらいの構えで困りません。

バナナ曲線は、出来高累計の予定曲線の上下に許容できる範囲の線を2本引いたもので、形がバナナに似ていることから呼ばれています。実績の曲線がその帯の中にあれば、全体としては許容範囲の進み方だと読みます。

僕のおすすめは、1枚の工程表に全部を背負わせないことです。全体の段取りと遅れの影響はネットワークで考え、職人さんへの周知は週間のバーチャートで、発注者への報告は出来高の曲線で、と役割を分けると、それぞれが軽くなります。

形ごとの書き方は個別の記事に分けています。棒の引き方と月間工程への落とし方はバーチャート工程表の作り方に、達成率で見る表の読み方はガントチャートの解説に、矢線と結合点の書き方はネットワーク工程表の書き方にまとめています。

工程管理の進め方|計画・実施・確認・是正を回し続ける

工程管理は、計画を立てて終わりではなく、計画・実施・確認・是正の4段を工期が終わるまで回し続ける仕事です。段ごとに、現場で何を見るかを書いていきます。

計画:全体工程から月間・週間へ落としていく

最初に作るのは、着工から引き渡しまでを1枚にした全体工程です。そこから月間工程、週間工程へと、期間を短く区切るほど作業を細かくしていきます。全体工程の段階で、どの作業がどの作業を待つのかという前後関係を決めておくと、後の段で遅れの影響を読みやすくなります。

協力会社の工程は、全体工程を引く前に取り込むのが理想です。各工種の所要日数、入る人数、資材の搬入日を職長や担当者から聞き取り、それを並べて全体をつなぎます。協力会社ごとの工程が見えないまま元請だけで全体を引くと、現場に入ってから「その日は別の現場に行っている」「その材料はまだ届かない」といったずれが次々に出てきます。

工程表の土台には、工法と手順を決める施工計画書があります。施工計画書に何を書くかは施工計画書の項目と書き方で一覧にしています。

実施:段取りで次の作業を止めない

実施の段で工程管理者がやることは、作業そのものより、次の作業が止まる原因を先につぶすことです。材料の発注と搬入日、図面や施工要領の承諾、検査の日程、重機や揚重の手配が、作業の前日までにそろっているかを確かめます。所長の言う段取りは、ほぼこの段のことを指しています。

確認:予定と実績の差だけを見る

工程表ができたあと、毎日見るべきものは多くありません。今日予定していた作業が終わったか、終わらなかったなら何日分ずれたか、そのずれた作業は後ろの作業を待たせるものか。この3つを毎日確かめるだけで、遅れは小さいうちに見つかります。

日報や出来高の数字を細かく集めても、予定との差として並べなければ遅れには気づけません。見る対象を予定と実績の差に絞るのが、この段のこつです。

是正:原因に手を打ち、工程表を引き直す

ずれが見つかったら、原因を特定して手を打ち、必要なら工程表を引き直します。原因が材料の遅れなのか、人手なのか、天候なのかで打ち手が変わるので、ずれの日数だけでなく理由までセットで記録しておくと、次の現場の計画にも使えます。

工程会議は、この確認と是正をまとめて行う場です。頻度や形式は現場ごとに決めればよく、話す中身は次の4つに絞ると会議が締まります。

  • 前回の会議で決めた予定と、実際の進み方の差
  • 次の数週間に入る作業と、その前提(材料・承諾・検査)がそろっているか
  • 工種同士の取り合いで、同じ場所・同じ日にぶつかる作業がないか
  • ずれへの対策を、誰がいつまでにやるか

僕の考えでは、工程管理が上手い人とは、きれいな工程表を引ける人より、この確認と是正を毎日短く回し続けられる人です。

遅れたときの取り戻し方|クリティカルパスと残業の上限

遅れが出たとき、最初に確かめるのは、その作業がクリティカルパスの上にあるかどうかです。クリティカルパスは、着工から完成までの作業のつながりのうち、余裕が1日もない経路のことで、ここに乗っている作業が遅れると、そのぶん工期全体が延びます。

たとえば雨で3日止まった作業がクリティカルパスの上にあれば、何もしなければ完成が3日遅れます。逆に、余裕のある経路の作業なら、その余裕の範囲に収まる限り、全体の工期には響きません。慌てて人を集める前に、まずどちらなのかを見分けることが先です。経路の見つけ方と余裕日数の計算はクリティカルパスの求め方で手順を追っています。

クリティカルパス上の遅れを取り戻す手は、大きく次の4つです。上から順に、ほかの管理への影響が小さい手になるように並べています。

  • 作業の順序を組み替える(雨の影響を受けない内部の作業を先に回すなど)
  • 前後関係のない作業を並行して進める
  • 人員や機械を足す
  • それでも収まらないときは、発注者と工期の変更を協議する

人や機械を足す手は分かりやすい反面、増やしたぶんだけ日数が縮むとは限りません。作業する場所の広さ、揚重の回数、職人さん同士の段取りで頭打ちになることがあり、同じ場所に作業を重ねるほど安全と品質の確認も増えます。

残業で取り戻す前提は、もう工程に組み込めない

以前は、最後は残業と休日出勤で詰めるという取り戻し方が、半ば当たり前に工程の中に入っていました。それを難しくしたのが、時間外労働の上限規制です。工作物の建設の事業への上限規制は、5年間の猶予を経て「令和6(2024)年4月から適用されています(一部特例あり)。」と案内されています(厚生労働省「時間外労働の上限規制 特設ページ」)。

区分 厚生労働省の特設ページに書かれた上限
法定労働時間 原則週40時間、1日8時間
時間外労働の原則 月45時間、年360時間(限度時間)以内
特別条項(臨時的な特別の事情があるとき) 1年で720時間まで/1か月で100時間未満(休日労働含む)/複数月の平均で80時間以内(休日労働含む)
月45時間を超えてよい月数 1年のうち6か月まで

工作物の建設の事業は、災害時における復旧及び復興の事業を除いて上限規制が全て適用されます。同ページは、災害時における復旧及び復興の事業には「時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、2~6か月平均80時間以内とする規制」は適用されないとしています。

工程管理の目線で言い換えると、月45時間という原則の枠は、遅れを取り戻すための予備ではなく、日々の工程を回すだけで埋まりかねない枠だということです。だから僕は、取り戻し手段の順番をいま挙げた並びで考え、残業はあくまで最後の調整に残しておくのが現実的だと考えています。週休2日の現場で休日を工程にどう入れるかは、次の章で扱います。

工期を組むときに入れる日数|工期に関する基準の考慮事項

工程を組むときに入れ忘れやすいのが、作業をしない日の日数です。そのよりどころになるのが、中央建設業審議会の「工期に関する基準」です。令和2年7月20日に作成・勧告され、令和6年3月27日の中央建設業審議会で改定の実施が勧告されています(国土交通省 報道発表 令和6年3月29日)。

基準は自らの趣旨を「本基準は、適正な工期の設定や見積りにあたり発注者及び受注者(下請負人を含む)が考慮すべき事項の集合体であり、建設工事において適正な工期を確保するための基準である。」と書いています(工期に関する基準 p.8)。発注者だけでなく、下請を含む受注者が見積りのときに見るものだと明記されている点は、押さえておきたいところです。

工期は準備・施工・後片付けの3段階で考える

基準の第3章は、工程別に考慮すべき事項を(1)準備(2)施工(3)後片付けに分け、「工期は大きく分けて、準備・施工・後片付けの3段階に分けられる。」としています。工程表は施工の期間だけで埋めがちですが、着工前の準備と、完成後の後片付けにも日数が要るという前提です。

後片付けの日数について、基準は参考として「国土交通省発注の土木工事においては、20 日間を最低限必要な「後片付け期間」とし、工事規模や地域の状況に応じて期間を設定。」と紹介しています(工期に関する基準 第3章(3))。

天候で動けない日を先に見込む

基準の第2章は、工期全般にわたって考慮すべき事項として、自然要因、休日・法定外労働時間、イベント、制約条件、契約方式、関係者との調整、行政への申請、労働・安全衛生、工期変更などを挙げています。このうち自然要因として挙がっているのが次の4つです(工期に関する基準 p.16)。

  • 降雨日・降雪日(雨休率の設定 等)
  • 猛暑日(夏期におけるWBGT値が 31 以上の場合における不稼働等を考慮)
  • 河川の出水期における作業制限
  • 寒冷・多雪地域における冬期休止期間

猛暑日がWBGT値という数字つきで書かれているのは、夏の工程を組むときの根拠として使えます。

公共工事で考慮される休日と準備期間

工期に関する基準は、公共工事の入札契約適正化指針が挙げる考慮事項も引いています(工期に関する基準 p.6)。民間工事でも、工程に入れる日数の点検表として使える項目です。

考慮する事項 基準が引いている内容
休日 公共工事に従事する者の休日(週休2日に加え、祝日、年末年始及び夏季休暇)
準備期間 労務・資機材の調達、現地調査、現場事務所の設置等の準備期間
後片付け期間 工事完成後の自主検査、清掃等を含む後片付け期間
作業不能日数 降雨日、降雪・出水期等の作業不能日数
着工前の手続 用地取得や建築確認、道路管理者との調整等、発注者が対応すべき事項の手続に要する期間
過去の実績 同種類似工事で当初の見込みより長い工期を要した実績が多い場合の、その実績

完成後の自主検査が後片付け期間に含まれている点は、見落としやすいところです。検査と手直しの日数を施工の最終日にくっつけて考えておくと、引き渡し直前に慌てずにすみます。

国交省直轄工事の週休2日は「週休2日や交替制など」

国土交通省は令和8年3月10日付の通知「国土交通省直轄工事における週休2日の取組方針について」で、令和8年度以降に発注する工事の扱いを示しました。対象は国土交通省直轄工事(官庁営繕関係及び港湾空港関係を除く)で、本文は「地域の実情や現場の状況等を踏まえ、週休2日や交替制など、適切な方法により取り組むものとする。」としています。適用は令和8年4月1日以降に入札公告等を行う工事です。

同じ通知は、週休2日の取得に要する費用の計上等による試行は完了とし、今後は費用計上等を実施しないとしたうえで、「発注者は、施工期間・時間等の変更について受注者から協議があった場合には、丁寧に協議に応じるものとする。」とも書いています。直轄工事であれば、週休2日や交替制などのどの方法で回すのかを、工程を組む前に確かめておくと安心です。

工程を組む順番としては、工期全体からまず休日と天候で動けない日、準備と後片付けの日数を差し引き、残った日数に施工を並べるのがおすすめです。施工の日数から積み上げるより、足りないことに早く気づけます。

短すぎる工期と工期の変更|建設業法第19条・第19条の5

施主から明らかに無理な工期を示されたとき、「短いと言ったら次の仕事がなくなるのでは」と飲み込んでしまう人は少なくないはずです。ここは条文を知っておくと、話の切り出し方が変わる部分です。

著しく短い工期は、受注する側も契約してはならない

建設業法第19条の5は「著しく短い工期の禁止」を定めています(e-Gov法令検索)。第1項は注文者について、第2項は建設業者について書かれています。

第1項:注文者は、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない。

第2項:建設業者は、その請け負う建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない。

第2項は令和6年法律第49号で追加され、2025年12月12日(令和7年12月12日)に施行されています。それまで条文の主語は注文者だけでしたが、いまは請け負う側も、著しく短い工期で契約してはならない立場になりました。

また、建設業者と請負契約を締結した発注者が第19条の5第1項に違反した場合で、特に必要があると認めるときは、その建設業者の許可をした国土交通大臣又は都道府県知事が、発注者に必要な勧告をできる仕組みになっています(建設業法第19条の6第2項。対象となる契約には条件があるので、条文で確認してください)。

どこからが「著しく短い」かを、現場の担当者が自分で決めつける必要はありません。工期に関する基準は「著しく短い工期の疑義がある場合には、本基準を踏まえるとともに、過去の同種類似工事の実績との比較や建設業者が行った工期の見積りの内容の精査などを行い、許可行政庁が工事ごとに個別に判断する。」としています(工期に関する基準 p.8)。現場側にできるのは、基準の考慮事項に沿って日数を積んだ見積りを示し、協議の材料にすることです。

令和6年の改定では、受注者が「契約締結前又は変更契約が必要となる際に、時間外労働規制を遵守した適正な工期が確保された見積りを提出することを努力義務として位置づけ」たとされています(国土交通省 報道発表 令和6年3月29日)。無理な工期に対して黙って受けるのではなく、上限規制を守った工期の見積りを出すことが、受注者に求められる動きになったと僕は受け止めています。

契約書に工期の決め事を書いておく

工期の協議で効いてくるのが、契約書に何が書いてあるかです。建設業法第19条第1項は、請負契約の当事者が契約の締結に際して書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない事項を挙げていて、工期に関わるのは次の号です(e-Gov法令検索)。

  • 第三号:工事着手の時期及び工事完成の時期
  • 第四号:工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
  • 第六号:設計変更や工事着手の延期・中止の申出があった場合の工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
  • 第七号:天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め

第四号は、週休2日や作業時間帯の制約を契約の段階で書き込んでおける号です。設計変更や、天災などの不可抗力で工期を延ばしたいときに頼れるのは第六号と第七号の定めなので、着工前に自分の現場の契約書でその箇所を読んでおくと、遅れが出たときに協議へ進む道筋が見えます。どこまでが不可抗力に当たるかのような個別の判断は契約の定めによるので、迷ったら上司や会社の担当部署に早めに相談するのが安全です。

工程管理に関する情報まとめ

  • 工程管理とは:工期内に終わらせるため、予定と実績のずれを見つけて直し続ける管理。建設業法第26条の4第1項で主任技術者・監理技術者の職務に挙がる
  • 工程表の種類:バーチャートは期間、ガントチャートは達成率、ネットワークは前後関係とクリティカルパス、曲線式は全体の出来高を見る道具
  • 進め方:計画・実施・確認・是正の4段を回し、毎日の確認は予定と実績の差に絞る
  • 遅れの取り戻し:まずクリティカルパス上かを見分け、順序の組み替え・並行作業・人員と機械の追加・工期の協議の順に考える。残業は上限規制で月45時間・年360時間が原則
  • 工期の組み方:工期に関する基準は準備・施工・後片付けの3段階で考え、降雨・猛暑・出水期・冬期休止や休日を先に見込むとしている
  • 短い工期と変更:第19条の5第2項で受注する建設業者側も著しく短い工期で契約してはならなくなった。工期変更の定めは契約書の第19条第1項第六号・第七号に書く

以上が工程管理に関する情報のまとめです。

工程管理は、工程表をきれいに引く技術よりも、引いた工程表を毎日の実績と見比べて直し続ける習慣のほうが結果を左右します。明日の現場でまず試すなら、今日予定した作業が終わったか、ずれた作業がクリティカルパスに乗っているかの2点を確かめることから始めてみてください。工期そのものに無理を感じたら、工期に関する基準の項目で日数を積み直し、契約書の工期変更の定めを確認してから協議に臨む。その順番を持っておくだけで、遅れにも短い工期にも落ち着いて向き合えるはずです。

遅れの影響を読む力をつけたい方はクリティカルパスの記事を、工程表を実際に引く段階に入った方はネットワーク工程表の記事を続けて読むと、この記事の内容が手を動かす形でつながります。

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