ネットワーク工程表とは?書き方、計算、フロート、試験対策など

  • ネットワーク工程表ってなに?
  • 矢印多すぎて何を見ればいいか分からん
  • ESTとLFTの計算手順、毎回忘れる
  • クリティカルパスって結局どこを指すの?
  • フロートって本当に消費できる?それとも見せかけの余裕?
  • 複数のクリティカルパスがあるって本当?
  • 工程会議でCP聞かれて答えられなかった
  • 1級施工管理技士試験で確実に得点したい
  • バーチャート/ガントチャートとどう使い分ければいい?
  • PDM法とADM法、どっちが主流?
  • 現場で実際に使われてる?
  • Excelで作れる?それとも専用ソフトが要る?

上記の様な悩みを解決します。

ネットワーク工程表は「上級者の工程表」と呼ばれ、施工管理3〜7年目で初めて中規模以上の現場に出た時、1級施工管理技士試験の勉強で詰まる人が多い領域です。今回は定義・構成要素・専門用語といった基礎を押さえた上で、現役の施工管理経験者目線で「フロート消費の判断ルール」「複数CP並走時の動き方」「工程会議のCP即答フレーズ集」「1級試験の頻出パターン攻略」「ガントチャート/バーチャートとの明確な使い分け基準」など、明日の現場と試験本番で詰まらないレベルまで落とし込みました。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

ネットワーク工程表とは?

ネットワーク工程表とは、結論「作業の前後関係を矢印で結び、各作業の所要時間と最早・最遅時刻を計算して、工程の中で最も時間のかかる経路(クリティカルパス)を可視化する工程表」のことです。

「PERT図」「アロー図」「アクティビティネットワーク」とも呼ばれ、米国海軍のポラリス計画(1957年頃)で発展した手法。日本の建設業界では1970年代から普及し、現在は1級施工管理技士試験の頻出論点になっています。

特徴を一言でいえば「作業の繋がりが見える、遅延の影響が分かる」。バーチャートが「いつ、何をやるか」をカレンダー上に並べた表なのに対し、ネットワーク工程表は「作業同士の依存関係」と「遅らせてはいけない作業(クリティカルパス)」を可視化します。

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僕の感覚だと、ネットワーク工程表は「現場掲示する工程表」ではなく「施工管理者が頭の中で全体を整理するための分析ツール」と捉えると役割が明確になります。現場の職人に渡しても「これじゃ来週何やるか分からん」と言われます。CP・フロート・依存関係を頭で計算するためのツールとして使い、現場掲示はバーチャートに変換する、というのが実務の定番運用です。

ネットワーク工程表の構成要素

ネットワーク工程表は次の3つの要素で構成されます。シンプルですが、組み合わせで複雑な依存関係を表現できます。

要素 表記 意味
イベント(結合点) 〇(番号付き) 作業の開始・終了時点 ①②③…
アクティビティ(作業) 矢印(→) 実際の作業(時間と資源を消費) A 5日
ダミー作業 点線矢印(→) 時間ゼロの仮想作業(順序関係のみ表す) 0日

イベントの書き方ルール

  • 〇印の中に番号を入れる(①②③…)
  • 左から右に進むほど番号が大きくなる
  • 番号は重複させない
  • 1つのイベント内に複数の作業が合流できる

アクティビティの書き方ルール

  • 矢印の上に作業名(A、B、C等または工種名)
  • 矢印の下に所要日数
  • イベント間に複数のアクティビティを引かない(1本だけ)
  • 作業の進行方向に矢印を描く

ダミー作業の使いどころ

ダミー作業は実際の作業ではなく、「この作業は前の作業が終わってから始まる」という順序関係だけを示す仮想矢印。点線で表します。

ダミーを使う典型例は次の通り。

  • 配筋作業と型枠作業がそれぞれ別の流れで進み、両方が終わってからコンクリート打設に入る
  • イベント間に2本以上のアクティビティが必要になる場面
  • 並列に走る2系統が後で合流する場面

僕としては、ダミー作業は「実物がないので学習者が一番混乱する要素」だと感じます。「実作業じゃないなら何で書くの?」と聞かれることが多いですが、答えは「順序関係を表すためだけの仮想矢印」。これがないと、本来順序関係がない作業同士が誤って依存関係を持ってしまい、計算が狂います。

ネットワーク工程表の専門用語(EST/EFT/LST/LFT/TF/FF/CP)

ネットワーク工程表で詰まる最大の理由が用語の多さ。一覧表で整理します。

略号 正式名 意味 計算式
EST Earliest Start Time(最早開始時刻) 最も早く作業を開始できる時刻 先行作業のEFTの最大値
EFT Earliest Finish Time(最早終了時刻) 最も早く作業を終了できる時刻 EST+所要日数
LST Latest Start Time(最遅開始時刻) 全体工期に影響しない最遅開始時刻 LFT−所要日数
LFT Latest Finish Time(最遅終了時刻) 全体工期に影響しない最遅終了時刻 後続作業のLSTの最小値
TF Total Float(トータルフロート) 工期全体に影響しない余裕時間 LFT−EFT(または LST−EST)
FF Free Float(自由余裕) 次の作業に影響しない余裕時間 後続作業のEST−自作業のEFT
IF Independent Float(独立余裕) 前後どちらにも影響しない余裕時間 後続EST−(先行LFT+所要日数)
CP Critical Path(クリティカルパス) TFが0で連続する経路 計算で特定

用語の関係性

  • TF≧FF≧IF が常に成立
  • CP上の作業は TF=0
  • CP上の作業が1日遅れると、工期全体が1日延びる

試験で問われる頻度

用語 1級施工管理技士試験での出題頻度 重要度
EST/EFT 毎年出題 ★★★
LST/LFT 毎年出題 ★★★
TF 毎年出題 ★★★
FF 隔年出題 ★★
IF 数年に1回
CP特定 毎年出題(最頻出) ★★★

僕の感覚だと、TF・FF・IFの違いは試験対策では細かく問われますが、現場ではTFだけ覚えておけば9割使えます。試験ではFFまで区別、現場ではTF中心、という割り切りで頭を整理すると混乱が減ります。

バーチャート/ガントチャートとの使い分け基準

3種類の工程表の違いと使い分け基準を、抽象論ではなく具体的な判断軸で整理します。

3工程表の基本比較

項目 バーチャート ガントチャート ネットワーク
縦軸 作業項目 作業項目 (図形配置)
横軸 暦日(日付) 進捗率(0〜100%) (矢印の流れ)
強み 直感的、現場掲示可 進捗が一目瞭然 依存関係・CPが明確
弱み 依存関係不明 期間が読みにくい 描くのが難しい
主用途 現場掲示、月間工程 進捗管理 全体計画・遅延分析

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規模・工程数で判断する使い分け基準

現場規模 工程数 工期 推奨工程表
戸建て・小規模リフォーム 20以下 〜3ヶ月 バーチャートのみ
中規模建築(オフィス・店舗) 20〜50 3〜12ヶ月 バーチャート+ガント
大規模建築(マンション・商業施設) 50〜200 12〜36ヶ月 バーチャート+ガント+NW
プラント・大規模土木 200以上 24ヶ月以上 NW主、バーチャート補助

用途別の使い分け

用途 推奨工程表 理由
施主・元請への報告 バーチャート 直感的でわかりやすい
現場の進捗確認 ガントチャート 進捗率が見える
工程計画・遅延分析 ネットワーク 依存関係とCPが見える
工程会議の論点整理 ネットワーク CPで論理判断
職人への週次指示 バーチャート抜粋 自分の作業がいつ分かる

ハイブリッド運用の現実

実務では3つを場面で使い分けるハイブリッド運用が標準。具体には次の運用が多いです。

  • マスター工程表はネットワーク(CP管理)
  • 月次工程表はガントチャート(進捗管理)
  • 週間予定表はバーチャート(職人配布)

僕としては、新人のうちは「ネットワーク1本で頑張る」より「3つの使い分けを意識する」方が現場で評価されます。中規模以上の現場でネットワークだけ作っても、職人さんは見ません。逆にバーチャートだけだと、設計変更時に遅延影響が読めない。場面で適切な工程表を選べる人が、現場代理人として一人前です。

クリティカルパスの計算手順(前向き・後向き・フロート)

CP計算は「足し算・引き算レベル」と言われますが、解法パターンを知らないと試験本番で手が止まります。具体例で計算手順を整理します。

例題

以下の作業表を題材にCP計算を進めます。

作業 所要日数 先行作業
A 3 なし
B 5 A
C 4 A
D 2 B
E 3 C
F 1 D, E

Step 1:前向き計算(EST/EFTを求める)

左から右に向かって計算。EFT=EST+所要日数、ESTは先行作業EFTの最大値。

作業 所要日数 先行 EST EFT
A 3 なし 0 3
B 5 A 3 8
C 4 A 3 7
D 2 B 8 10
E 3 C 7 10
F 1 D, E 10 11

合流点(F)では先行B由来とC由来の両方を比較し、大きい値(10)を採用。

Step 2:後向き計算(LST/LFTを求める)

右から左に向かって計算。LST=LFT−所要日数、LFTは後続作業LSTの最小値。

作業 所要日数 後続 LFT LST
F 1 なし 11 10
E 3 F 10 7
D 2 F 10 8
C 4 E 7 3
B 5 D 8 3
A 3 B, C 3 0

分岐点(A)では後続B由来とC由来の両方を比較し、小さい値(3)を採用。

Step 3:フロート計算

TF=LFT−EFT(または LST−EST)で求めます。

作業 EST EFT LST LFT TF
A 0 3 0 3 0
B 3 8 3 8 0
C 3 7 3 7 0
D 8 10 8 10 0
E 7 10 7 10 0
F 10 11 10 11 0

この例ではA→B→D→FとA→C→E→Fの両方がTF=0で、CPが2本並走しています(後述)。

計算ミスを防ぐ3つのチェック

ポイント 内容 ミス例
前向き合流点 必ず最大値を選ぶ 早い方を選ぶ
後向き分岐点 必ず最小値を選ぶ 遅い方を選ぶ
CP連続性 CP上は途切れず続く 途中で途切れる

クリティカルパスの詳細はこちらが詳しいです。

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僕としては、計算は「表形式で機械的に進める」のが鉄則だと感じます。図上で計算するとミスが多いですが、表に落とせば前向き→後向き→フロートの順で確実に追えます。試験本番でも問題用紙の余白に表を書いてから計算する習慣をつけると、ミスが激減します。

フロート消費の判断ルール

「フロートがあるから大丈夫」と油断して工程が遅延するのは、現場でよくある失敗。フロート消費の判断ルールを言語化します。

フロート消費の3段階アラート

消費率 状況 対応
0〜30% 余裕あり 通常運用
30〜70% 注意 週次でモニタリング強化
70〜100% 警戒 リカバリ計画策定
100%超 クリティカル化 全体工期に影響、即対策

フロート消費の社内ルール例

現場代理人として社内ルールを決めておくと、判断のブレが減ります。実務でよく使われるルールは次の通りです。

  • フロートの30%消費でアラートを職長会議で共有
  • フロートの50%消費で対策案を所長に上申
  • フロートの70%消費で発注者に進捗報告
  • フロート100%消費で工期再計算を実施

フロート消費=悪ではない

フロートは「使ってもいい余裕」ですが、計画的に使うべきもの。次の運用が現実的です。

  • 天候不順のリスクヘッジで意図的に消費(梅雨時期に余裕を残す)
  • 他工種待ち合わせで消費(先行工種の遅延を吸収)
  • 材料納期遅延で消費(製造リードタイムの揺らぎを吸収)

フロート消費でやってはいけないこと

  • 「余裕があるから今日はゆっくり」で消費(無計画消費)
  • 報告なしで消費(情報共有の断絶)
  • 他のフロートを当てにして消費(連鎖遅延の起点)

僕の感覚だと、フロートは「保険」と捉えると判断軸が固まります。保険は使うために積み立てるのではなく、不測の事態のために積み立てるもの。フロートも同じで、想定リスクの範囲なら使ってOK、想定外リスクが顕在化した時のためにある程度は温存する、というバランス感覚が現場代理人の腕の見せどころです。

複数クリティカルパスが並走する場合の動き方

CPは1本とは限りません。複数CPが並走する場合の判断軸を整理します。

複数CPが発生するパターン

  • 並列に走る経路の合計日数が同一
  • 上記の例題のように A→B→D→F と A→C→E→F が両方とも11日

複数CPで何が困るか

困りごと 内容
短縮効果が限定的 片方のCPだけ短縮しても全体は縮まない
リソース配分の判断 どのCPに優先的に人員を投入するか
遅延リスクが増える CPの本数が多いほど遅延リスク増
監視負荷が増える 複数CP全てを監視する必要

複数CP時の動き方

  1. すべてのCPを赤線で可視化(1本だけ強調しない)
  2. 各CP上の作業を一覧化して人員配置を比較
  3. 全CPに対して並行的にリソース投入
  4. 短縮検討時は「両方のCPを同時に短縮できる作業」を狙う

工程操作で別CPが顕在化するケース

CP上の作業を短縮した結果、別の経路がCPに昇格することがあります。

例えば上記の例題で作業Bを5日から3日に短縮すると、各経路の所要日数は次のようになります。

  • A→B→D→F:3+3+2+1=9日(旧CP)
  • A→C→E→F:3+4+3+1=11日(新CP、不変)

つまりBを短縮しても全体工期は11日のまま変わらず、A→C→E→Fが唯一のCPになります。

このように、CP短縮は「狙ったCPだけ短縮し、別CPが新規発生しないか」を必ず再計算で確認します。

準クリティカル作業の管理

TF=0ではないがフロートが少ない(TF≦3日程度)の作業は「準クリティカル」として注意。

  • 準クリティカル:TF=1〜3日
  • 通常作業:TF=4日以上

準クリティカル作業はフロート消費でCP化するリスクがあるので、週次会議でモニタリング対象に含めます。

僕としては、複数CPが並走する現場は「CPが見えない現場と同じくらい危険」だと感じます。1本のCPなら集中管理できますが、複数CPを別々に管理しないと「片方が破綻したことに気付かない」事故が起きる。試験では出題頻度が低い論点ですが、実務では中規模以上の現場で必ず遭遇するので、判断軸を持っておく必要があります。

工程会議でCPを聞かれた時の即答フレーズ集

工程会議で所長や設計者から「ここ遅れたら影響は?」「CPはどこ?」と聞かれて答えられないのが若手の典型的なつまずき。即答できる定型フレーズを用意します。

即答フレーズ10選

シーン フレーズ
CP聞かれた 「現状のCPはA→B→D→Fで、計11日です」
フロート確認 「この作業はTF○日あるので、全体工期への影響はありません」
クリティカル化 「この作業はCP上なので、1日遅延すると工期も1日延びます」
遅延発生時 「TF○日を消費したので、残○日まで耐えられます」
短縮検討 「この作業を○日短縮しても、別CPが11日のままなので全体工期は変わりません」
複数CP 「現状CPが2本並走しており、両方を同時に短縮しないと工期短縮になりません」
準クリティカル 「この作業はTF2日の準クリティカルなので、モニタリング対象に追加します」
人員投入判断 「CP上の作業に優先的に人員を投入したいので、〇〇さんを来週から配置転換します」
工期延長判断 「CPが11日から13日に延びるため、発注者と工期協議が必要です」
計画再確認 「実績を反映してCPを再計算したところ、〇日→〇日に変化しました」

発言できる人の3つの型

  1. 質問型:「ここのフロート、今いくらですか?」(事実確認)
  2. 確認型:「CP上の作業はこれであってますか?」(理解確認)
  3. 提案型:「○○を短縮すれば工期○日短縮できます」(解決策提案)

質問型は知識ゼロでも使える。確認型は工程表を読めれば使える。提案型はCP計算ができれば使える、と段階的に上がっていけます。

NG発言

  • 「分かりません」だけ言って次の話題に流す
  • フロートをチラ見せず勘で「大丈夫です」と答える
  • CPの本数を確認せず「ここがCPです」と1本だけ言う

僕としては、若手のうちは「答えより質問の質」で評価されると感じます。CP計算ができなくても「ここのフロート何日ですか?」と聞ける若手は、論点を可視化できる人として扱われます。逆に答えだけ持ち込んで論点を見落としていると、後で大きな手戻りになる。質問で論点を出せる若手は3〜5年で現場代理人候補と見られます。

工程遅延発生時のNWでの判断フロー

実際に遅延が発覚したとき、ネットワーク工程表でどう判断するか。実務動詞のフローを整理します。

発覚から24時間以内の判断フロー

ステップ 所要時間 やること
① 遅延量の確定 30分 実測で何日遅れか確定
② 該当作業のフロート確認 15分 TFと残フロート量
③ CP影響の判定 30分 CP上か準クリティカルか通常か
④ 全体工期への影響計算 30分 NW再計算で工期再算出
⑤ リカバリ案の検討 60分 残業/人員増/順序変更/工期延長
⑥ 関係者協議 当日中 所長・設計者・専門業者と共有
⑦ 工程表の更新 翌日 NW・バーチャート両方を更新

CPか否かで対応が変わる

状況 対応
CP上の作業遅延 即時リカバリ。残業・人員増・順序変更検討
準クリティカル作業遅延 CP化リスクをモニタリング、必要に応じてリカバリ
通常作業遅延 フロート消費アラートが30%超えたら対策検討

リカバリ4パターン

パターン 対応方法 適用シーン 工期影響
①残業 1日の作業時間延長 軽微(1〜2日遅延) 0日
②人員増 投入人員を増やす 中程度(3〜5日遅延) 短縮可能
③順序変更 並列化や順序入れ替え 大規模(1週間超) 大幅短縮可能
④工期延長 発注者と再協議 致命的(CPで2週間超) 全体延長

NG対応

  • 遅延を隠して進めて後で発覚
  • フロート確認せず「大丈夫だろう」で進める
  • リカバリ案を所長に相談せず現場で勝手に判断
  • 工程表更新を後回しにして関係者が古い情報で動く

歩掛と日数算出の関係はこちらが詳しいです。

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僕の感覚だと、遅延発生時は「24時間以内に関係者と再計算を共有する」スピードが現場代理人の評価を決めると感じます。「あとで考えよう」と先延ばしすると、後続工種が古い工程で動いて二次的な混乱を生みます。NWで再計算→影響量を数字で示す→関係者と合意、を24時間で回せると、信頼が一気に固まります。

PDM法とADM法の整理(FS/SS/FF/SFと使い分け)

ネットワーク工程表には2つの記法があります。これを整理できていないと、現場で複数記法が混在した時に混乱します。

ADM法とPDM法の違い

項目 ADM法 PDM法
正式名 Arrow Diagramming Method Precedence Diagramming Method
別名 アロー型/矢線図 プレシデンス型/プレデセッサ型
表現 矢印=作業、〇=結合点 〇=作業、矢印=順序関係
依存関係 FSのみ FS/SS/FF/SF 4種類
使われる場面 1級施工管理技士試験/建設業界の伝統的記法 MS Project/海外PMツール

PDM法の4種類の依存関係

PDM法ではFSだけでなく、より柔軟な依存関係を表現できます。

略号 名称 意味 現場例
FS Finish-to-Start 先行作業終了→後続作業開始 配筋→打設
SS Start-to-Start 先行作業開始→後続作業開始 図面化と発注の同時開始
FF Finish-to-Finish 先行作業終了→後続作業終了 検査と引渡し同時終了
SF Start-to-Finish 先行作業開始→後続作業終了 仮設撤去(特殊)

ラグ(待ち時間)の概念

PDM法では作業間の待ち時間を「ラグ」として明示できます。

  • FS+5日:先行終了の5日後に後続開始(例:コンクリ打設後5日間の養生)
  • FS-2日:先行終了の2日前に後続開始(リードタイム)
  • SS+3日:先行開始の3日後に後続開始

現場での使い分け

場面 推奨記法
1級施工管理技士試験 ADM法(試験はこちらが標準)
紙ベースの工程会議 ADM法(書きやすい)
MS Projectでの作成 PDM法(ソフトが対応)
ANDPAD/KANNA等のSaaS PDM法(クラウドが対応)
海外プロジェクト PDM法(国際標準)

どちらを覚えるべきか

  • 試験対策:ADM法を必ず習得
  • 実務(紙):ADM法で十分
  • 実務(ソフト):PDM法の概念理解が必須

両方を頭に入れておくと混乱しません。ADMがベース、PDMはADMの拡張、と捉えると整理しやすいです。

僕としては、現場での実用記法は記法の名前を知らずに「FSで結ぶ」「養生5日のラグを入れる」と動詞で使ってる人がほとんどだと感じます。理論的に整理する必要は試験対策と海外PJの時くらい。普段は「依存関係を正しく設定する」ことに集中する方が、現場で役立ちます。

ネットワーク工程表の作成手順5ステップ

実際にネットワーク工程表を作る5ステップを整理します。

Step 1:作業の洗い出し(WBS作成)

工事完了に必要な全作業を列挙します。WBSで階層化して整理。

  • 1作業の粒度:1〜10日程度が目安
  • 漏れチェック:仮設、検査、養生、引渡しまで含む
  • 階層化:大工種→中工種→個別作業

Step 2:各作業の所要日数を見積もる

歩掛・実績データ・経験から日数を算出。

  • 基本式:所要日数=作業量÷生産性(人・班あたり/日)
  • 天候予備日:屋外工事は月2〜3日見込む
  • 養生期間:コンクリ・塗装等の固定日数
  • リスクバッファ:不測事態に備えて10〜20%上乗せ

Step 3:作業の前後関係を整理

「この作業は何が終わってから始まるか」を1作業ずつ書き出し、表に整理。

作業 先行作業 同時並行
A:掘削 なし なし
B:砕石 A なし
C:杭打ち A B
D:捨てコン B, C なし

Step 4:ネットワーク図を描く

イベント番号とアクティビティ矢印で図を組み立てる。

  • ①から始めて流れに沿って矢印を伸ばす
  • 並列作業は上下に展開
  • 合流はダミーを活用
  • 最終イベント(⑩等)で完結

Step 5:時刻計算とCP特定

EST/EFT/LST/LFT/TFを計算し、CPを特定。

  • 前向き計算でEST/EFT
  • 後向き計算でLST/LFT
  • フロート計算でTF=0の経路がCP
  • 赤線・太線でCPを強調

作成ツールの選択

ツール 適用規模 特徴
手書き+電卓 小規模 試験対策に最適
エクセル+図形 中規模 多用、関数で計算自動化
MS Project 中〜大規模 CP自動計算、本格的
ANDPAD/KANNA 中規模 クラウド共有
Photoruction 中規模 建設SaaS

エクセルでの簡易作成テンプレ

エクセルで簡易ネットワーク工程表を作る場合の関数活用例。

  • EST列:=MAX(先行作業のEFT)
  • EFT列:=EST+所要日数
  • LST列:=LFT-所要日数
  • LFT列:=MIN(後続作業のLST)
  • TF列:=LFT-EFT
  • 条件付き書式:TF=0の行を赤色

これで作業リストを更新するだけでCPが自動更新されます。

僕の感覚だと、新人のうちは「エクセル+電卓」で手計算する経験を積むのが大事だと感じます。MS Projectで自動計算に頼ると「なぜこの作業がCPなのか」が分からなくなり、試験本番で詰みます。1〜2回手計算した上でソフトを使うと、自動計算結果の妥当性も判断できるようになります。

1級施工管理技士試験のNW工程表攻略法

NW工程表は1級施工管理技士試験の頻出論点。確実に得点するための攻略法を整理します。

過去5年の出題パターンと配点

出題パターン 配点目安 出題頻度 難易度
CPの特定 5点 毎年 基礎
EST/EFT/LST/LFTの計算 3点 毎年 基礎
TFの計算 2点 毎年 基礎
FFの計算 2点 隔年 標準
工期短縮の検討 3点 隔年 応用
ダミー作業の判断 1点 毎年 標準
合計 8〜13点

合格ライン60点に対して10点以上を確実に取れれば、他分野の失点をカバーできます。

試験本番の時間配分テクニック

問題用紙の余白に表を書いてから機械的に計算します。

時間 やること
0〜2分 問題文を読み、表を書く準備
2〜5分 前向き計算(EST/EFT)
5〜8分 後向き計算(LST/LFT)
8〜10分 TF計算、CP特定
10〜12分 答案転記、検算

合計12分で1問完答が目標です。

計算ミスを防ぐチェックポイント

ポイント チェック方法
前向き合流点 最大値を採用したか
後向き分岐点 最小値を採用したか
CP連続性 開始から終了まで途切れず続くか
プロジェクト工期 最終EFT=最終LFTか
TF=0の作業 全てCPに含まれているか

部分点狙いの戦略

時間が足りない場合、CP特定だけに集中。5点満点を確実に取る方が、全部やって2点しか取れないより戦略的。

試験対策の参考教材

  • 過去問題集(1級施工管理技士):実際の出題形式に慣れる
  • YouTube「ネットワーク工程表 解き方」:動画で解法パターン習得
  • 解説動画:30分〜1時間で基本パターン理解可能

僕としては、試験対策は「30〜50問の過去問を表形式で解く反復」が最短ルートだと感じます。理論を完璧に理解してから問題を解くより、解きながら理論を後追いで補強する方が試験では効率的。1日30分×2週間で十分なペースで合格レベルに到達できます。

ネットワーク工程表の落とし穴と失敗パターン

実務でハマる失敗パターンを5つ整理します。

失敗1:ダミー作業の設定ミスでCPが狂う

ダミー作業の向きや接続先を間違えると、本来CPでない経路がCP判定される。重要でない作業にリソースが集中し、本当のボトルネックが放置されるリスク。

対策:ダミーは「実作業ではなく順序関係のみ」と明確に意識。図完成後にもう1度ダミーの妥当性をチェック。

失敗2:フロート消費でCPが変わるのに気付かない

非CP作業がフロートを使い切ると、その経路が新CPに昇格。気付かず別のCPを管理していて、本当の遅延を見逃す。

対策:週次でNW再計算、フロート消費70%超え作業を準クリティカルとしてアラート対象に。

失敗3:工程表を作って満足し、更新しない

着工時に完璧な工程表を作っても、実績を反映して更新しなければ意味がない。「工程表と現場が乖離していて竣工2週間前に致命的遅延発覚」は典型的失敗パターン。

対策:週次または月次で実績反映と再計算をルーティン化。

失敗4:複数CPの存在に気付かず片方だけ管理

CPが2本並走しているのに1本だけ管理して、もう1本の遅延を見逃すパターン。

対策:CP特定後に「TF=0の作業を全て列挙」して複数CP有無を必ず確認。

失敗5:ソフト自動計算に頼り計算原理が分からない

MS ProjectやANDPADがCPを自動表示してくれるが、表示結果を鵜呑みにすると「なぜそうなったか」が分からない。データ入力ミスがあると間違ったCPを信じる事態に。

対策:少なくとも1回は手計算で同じ結果が出るか検算する。

QCDSEとの関係はこちらが詳しいです。

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僕の感覚だと、5パターンとも「習慣で防げる」失敗だと感じます。週次NW再計算、複数CPの確認、ソフト結果の検算、を毎週のルーティンに組み込めば、致命的事故はほぼ防げます。逆にこのひと手間を惜しむと、工期遅延による損失が数百万〜数千万円のインパクトになる領域なので、若手のうちから習慣化するのが鉄則です。

ネットワーク工程表に関する情報まとめ

  • 定義:作業の前後関係を矢印で結び、所要時間とCPを可視化する工程表
  • 構成要素:イベント(〇)/アクティビティ(→)/ダミー(点線→)の3要素
  • 専門用語:EST/EFT/LST/LFT/TF/FF/IF/CPの8用語
  • 他工程表との使い分け:戸建てはバーチャート、中規模はガント併用、大規模はNW併用
  • 計算手順:前向き(EST/EFT)→後向き(LST/LFT)→フロート→CP特定
  • フロート消費ルール:30%でアラート、50%で対策上申、70%で発注者報告、100%で再計算
  • 複数CP:すべてのCPを赤線で可視化、短縮検討時は別CP発生をチェック
  • 工程会議発言:質問型・確認型・提案型の3型、CPとフロートを数字で語る
  • 遅延発生時:24時間以内に再計算・関係者協議・工程表更新
  • PDM法:FS/SS/FF/SFの4種類、ラグで待ち時間を明示
  • 作成手順:WBS→日数→前後関係→ネットワーク図→時刻計算の5ステップ
  • 試験対策:CP特定が最頻出、表形式での機械的計算で10点以上確保
  • 失敗パターン:ダミー設定ミス/フロート消費見落とし/更新怠り/複数CP見落とし/ソフト鵜呑み

以上がネットワーク工程表に関する情報のまとめです。

ネットワーク工程表は「上級者の工程表」と呼ばれますが、計算手順は足し算と引き算レベル。表形式で機械的に進めれば、試験でも実務でも怖くなくなります。本番では、フロート消費の判断ルールと複数CPの動き方、そして工程会議でCPを聞かれた時の即答フレーズの3点を押さえると、現場の信頼が一気に固まります。バーチャートやガントチャートと併用しながら、場面に応じて使い分けられる現場代理人を目指していきましょう。

ネットワーク工程表に関するよくある質問

Q1:ネットワーク工程表とバーチャート、結局どっちを使えばいいですか?

現場規模と工程数で判断します。戸建て・小規模リフォーム(工程20以下、工期3ヶ月以内)はバーチャートのみで十分、中規模建築(工程20〜50、工期12ヶ月以内)はバーチャート+ガント、大規模建築(工程50〜200、工期12〜36ヶ月)はバーチャート+ガント+ネットワーク、プラント・大規模土木(工程200以上)はネットワーク主・バーチャート補助、が現実的な使い分けです。実務では「マスター工程表はNW、月次はガント、週次配布はバーチャート」のハイブリッド運用が標準です。

Q2:クリティカルパスは1本とは限らないって本当ですか?

本当です。並列に走る複数の経路の合計日数が同一になると、CPが複数並走します。例えば作業A→B→D→Fが11日、A→C→E→Fも11日なら、両方ともCP(TF=0)。複数CPがある場合、片方を短縮しても別CPが11日のままだと全体工期は短縮されません。CP短縮を検討する時は「狙ったCPだけ短縮し、別CPが新規発生しないか」を必ず再計算で確認する必要があります。試験では出題頻度低めですが、実務では中規模以上の現場で頻繁に遭遇する論点です。

Q3:フロートって本当に使っても大丈夫な余裕ですか?

「計画的に使うなら大丈夫」が正解。フロートは保険のような位置づけで、想定リスク(天候不順・他工種待ち・材料納期遅延)の範囲なら使ってOK、想定外リスクのために一部温存するのが現実的です。実務では「30%消費でアラート、50%で対策上申、70%で発注者報告、100%で再計算」のような消費段階ルールを社内で決めておくと判断ブレが減ります。「フロートあるから今日はゆっくり」で無計画消費するのが最悪の運用です。

Q4:ESTとLFTの計算でいつも間違えるんですが、コツはありますか?

表形式で機械的に計算するのがコツです。図上で計算するとミスが多発しますが、表に作業・所要日数・先行・後続・EST・EFT・LST・LFT・TFの列を作って機械的に埋めれば、ミスが激減します。前向き計算の合流点は必ず最大値、後向き計算の分岐点は必ず最小値、というルールを守れば計算ミスはほぼゼロにできます。試験本番でも問題用紙の余白に表を書いてから計算する習慣を、過去問演習の段階から身に付けると本番で詰まりません。

Q5:1級施工管理技士試験でNW工程表は何点くらい配点されますか?

最低でも8点、最大で13点の配点があります。内訳は「CP特定(5点・毎年)」「EST/EFT/LST/LFT計算(3点・毎年)」「TF計算(2点・毎年)」「FF計算(2点・隔年)」「工期短縮検討(3点・隔年)」「ダミー作業(1点・毎年)」が標準。合格ライン60点に対して10点以上を確実に取れれば、他分野の失点をカバーできるサービス問題的な領域です。30〜50問の過去問を表形式で解く反復で、1日30分×2週間で合格レベルに到達できます。

Q6:MS ProjectやANDPADで自動計算されるCPは信用していいですか?

「データ入力が正しい前提で」信用してOKです。ただし手計算で1回は検算する習慣をつけるのが鉄則。データ入力ミス(依存関係の設定ミス、所要日数の入力誤り)があると、ソフトは間違ったCPを表示します。表示結果を鵜呑みにすると「なぜそれがCPか」が分からないまま現場が進み、後で発覚する事故になります。少なくとも初回作成時と大きな計画変更時は手計算で検算するのが安全です。

Q7:工程会議でCPを聞かれた時、何て答えればいいですか?

数字で語るのが正解。「現状のCPはA→B→D→Fで計11日です」「この作業はTF○日あるので全体工期への影響はありません」「この作業はCP上なので1日遅延すると工期も1日延びます」「TF○日を消費したので残○日まで耐えられます」など、数字を入れた定型フレーズを10個ほど頭に入れておくと即答できます。「分かりません」と答えるより「ここのフロート何日ですか?」と質問する方が、論点を可視化できる若手として評価されます。

Q8:ネットワーク工程表は本当に現場で使われているんですか?

中規模以上では使われています。日常的な戸建て・小規模リフォームではバーチャートが圧倒的に主流(実感9割以上)ですが、大規模工事(工期6ヶ月以上・工程50以上)では確実に使われています。発電所建設・プラント・大型マンション・商業施設では、設計変更時の影響分析や発注者への説明で必須のツールです。「現場で使われていない」というより「現場運用はバーチャート、施工管理者が頭で全体整理するツールがNW」と捉えると実態に近いです。

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