- 酸欠の特別教育って、受けさせる義務があるのは会社?本人?
- うちの現場は第一種と第二種のどっち?
- 汚水のマンホールと雨水のピット、同じ扱いでいいの?
- 何時間やればいい?学科だけで足りる?
- 作業主任者を置けば、作業員の教育は省けるんじゃないの?
- 外部の講習に出すのと社内でやるの、どっちでもいい?
- 修了証や記録は何をどれだけ残せばいい?
- やらずに入れたら、誰が罰せられる?
上記の様な悩みを解決します。
酸欠の特別教育は、労働安全衛生法第59条第3項に基づき、酸素欠乏危険場所での作業に労働者を就かせるときに事業者が行う教育で、第一種と第二種があります。科目と時間は酸素欠乏危険作業特別教育規程(昭和47年労働省告示第132号)が「学科教育により」「時間以上」と定めていて、科目の時間を足すと第一種は4時間、第二種は5時間30分です。どちらになるかは作業場所の号で決まります。
ところが調べてみると、検索の上位は講習機関の案内ページが中心で、受講の申し込みと費用の話が先に立ち、自分の現場が第二種に当たるのかを決める条文の「号」や、告示の名前、科目を省ける根拠と記録の保存期間までは、なかなか一続きで読めないんですよね。今回は義務の主体・第一種と第二種の違い・科目と時間といった基本を押さえた上で、講習機関の案内では触れられにくい「第二種を決める別表第六の号」「作業主任者を置いたときの条文の書かれ方」「記録3年と2027年4月の改正」まで、施工管理の目線で整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、マンホールやピットの改修を初めて段取りする方にも追いやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
酸欠の特別教育とは?ピットやマンホールで働かせる前に事業者が行う教育
酸欠の特別教育とは、結論「酸素欠乏危険場所での作業に労働者を就かせる前に、事業者がその労働者に行う学科の教育」のことです。
場面で言うと、既設の汚水マンホールに作業員を降ろして管口を補修する、雨水がたまったピットの底をさらう、ケーブルを収めた暗きょの中で配線を直す、といった作業がこれに当たり得ます。地上から見ると何の変哲もない穴でも、法令はその内部を「酸素欠乏危険場所」として名前を挙げていて、そこに人を入れる側に教育の義務を置いています。
この義務は3つの条文がつながってできています。いちばん上にあるのが労働安全衛生法第59条第3項で、「事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、…当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない」と定めています(労働安全衛生法 第59条第3項)。義務を負うのは事業者で、受ける労働者本人ではありません。
その「厚生労働省令で定めるもの」の一つが、労働安全衛生規則第36条第26号の「令別表第六に掲げる酸素欠乏危険場所における作業に係る業務」です(労働安全衛生規則 第36条第26号)。さらに酸素欠乏症等防止規則(以下、酸欠則)第12条第1項が、第一種酸素欠乏危険作業に係る業務に労働者を就かせるときは、決められた科目について特別の教育を行わなければならないと、科目まで具体的に定めています(酸素欠乏症等防止規則 第12条第1項)。
言葉の定義も押さえておきます。酸欠則第2条は、酸素欠乏を「空気中の酸素の濃度が十八パーセント未満である状態」、酸素欠乏等を「前号に該当する状態又は空気中の硫化水素の濃度が百万分の十を超える状態」と定めています(酸素欠乏症等防止規則 第2条第1号・第2号)。第二種の教育の科目名には「酸素欠乏等」「酸素欠乏症等」と「等」が付き、硫化水素まで含めたこの定義の言葉が使われます。
第一種か第二種かは、作業する場所が別表第六のどの号に当たるかで決まる
第一種と第二種の違いを、硫化水素が出そうかどうかの感覚で決めてしまうと、条文と食い違うことがあります。区分を決めているのは、作業する場所が労働安全衛生法施行令(以下、安衛令)別表第六のどの号に当たるかです。
酸欠則第2条第8号は、第二種酸素欠乏危険作業を「酸素欠乏危険場所のうち、令別表第六第三号の三、第九号又は第十二号に掲げる酸素欠乏危険場所(同号に掲げる場所にあつては、酸素欠乏症にかかるおそれ及び硫化水素中毒にかかるおそれのある場所として厚生労働大臣が定める場所に限る。)における作業」と定めています。そして第7号が、第一種酸素欠乏危険作業を「酸素欠乏危険作業のうち、第二種酸素欠乏危険作業以外の作業」としています(酸素欠乏症等防止規則 第2条第7号・第8号)。
読み方のポイントは、括弧書きの「同号に掲げる場所にあつては」が直前の第十二号にだけ掛かっていることです。第三号の三と第九号には「大臣が定める場所に限る」という限定が付いていません。つまり第二種は、第三号の三・第九号の場所全部と、第十二号のうち大臣が定める場所での作業です。それ以外の号の場所での作業が第一種になります。
別表第六に並んでいる場所を、号ごとに条文の言葉で短くまとめると次のとおりです(労働安全衛生法施行令 別表第六)。
| 号 | 場所(条文の語を短くまとめたもの) | 酸欠則第2条第8号の列挙 |
|---|---|---|
| 第一号 | 次の地層に接し、又は通ずる井戸等(井戸、井筒、たて坑、ずい道、潜函、ピットその他これらに類するもの)の内部(第二号の場所を除く)。地層=上層に不透水層がある砂れき層のうち含水若しくは湧水がなく、又は少ない部分、第一鉄塩類又は第一マンガン塩類を含有している地層、メタン、エタン又はブタンを含有する地層、炭酸水を湧出しており、又は湧出するおそれのある地層、腐泥層 | 挙がっていない |
| 第二号 | 長期間使用されていない井戸等の内部 | 挙がっていない |
| 第三号 | ケーブル、ガス管その他地下に敷設される物を収容するための暗きょ、マンホール又はピットの内部 | 挙がっていない |
| 第三号の二 | 雨水/河川の流水/湧水が滞留しており、又は滞留したことのある槽/暗きょ/マンホール/ピットの内部 | 挙がっていない |
| 第三号の三 | 海水が滞留している(したことのある)熱交換器/管/暗きょ/マンホール/溝/ピット、又は海水を相当期間入れてある(入れたことのある)熱交換器等の内部 | 挙がっている |
| 第四号 | 相当期間密閉されていた鋼製のボイラー/タンク/反応塔/船倉その他内壁が酸化されやすい施設の内部(ステンレス鋼製のもの等を除く) | 挙がっていない |
| 第五号 | 石炭/亜炭/硫化鉱/鋼材/くず鉄/原木/チップ/乾性油/魚油その他空気中の酸素を吸収する物質を入れてあるタンク/船倉/ホッパーその他の貯蔵施設の内部 | 挙がっていない |
| 第六号 | 乾性油を含むペイントで塗装され、乾燥する前に密閉された地下室/倉庫/タンク/船倉その他通風が不十分な施設の内部 | 挙がっていない |
| 第七号 | 穀物若しくは飼料の貯蔵/果菜の熟成/種子の発芽/きのこ類の栽培に使用しているサイロ/むろ/倉庫/船倉/ピットの内部 | 挙がっていない |
| 第八号 | しようゆ/酒類/もろみ/酵母その他発酵する物を入れてあり、又は入れたことのあるタンク/むろ/醸造槽の内部 | 挙がっていない |
| 第九号 | し尿/腐泥/汚水/パルプ液その他腐敗し、又は分解しやすい物質を入れてあり、又は入れたことのあるタンク/船倉/槽/管/暗きょ/マンホール/溝/ピットの内部 | 挙がっている |
| 第十号 | ドライアイスを使用して冷蔵/冷凍/水セメントのあく抜きを行っている冷蔵庫/冷凍庫/保冷貨車/保冷貨物自動車/船倉/冷凍コンテナーの内部 | 挙がっていない |
| 第十一号 | ヘリウム/アルゴン/窒素/フロン/炭酸ガスその他不活性の気体を入れてあり、又は入れたことのあるボイラー/タンク/反応塔/船倉その他の施設の内部 | 挙がっていない |
| 第十二号 | 前各号に掲げる場所のほか、厚生労働大臣が定める場所 | 挙がっている(大臣が定める場所に限る) |
表の右の列は、その号が酸欠則第2条第8号に名前を挙げられているかどうかだけを示しています。1つの場所が2つ以上の号に当たることもあるので、ある現場の区分は、その場所に当てはまる号を全部拾ってから決めることになります。
冒頭の悩みに出てきた汚水のマンホールと雨水のピットを、号の文言に当てはめてみます。第九号は「し尿、腐泥、汚水、パルプ液その他腐敗し、又は分解しやすい物質を入れてあり、又は入れたことのある」槽・管・暗きょ・マンホール・溝・ピットの内部を挙げていて、汚水を入れてある、又は入れたことのあるマンホールはこの文言に入ります。第九号は第2条第8号の列挙に入っているので、そこでの作業は第二種です。
一方の第三号の二は「雨水、河川の流水又は湧水が滞留しており、又は滞留したことのある」槽・暗きょ・マンホール・ピットの内部です。第三号の二そのものは第8号の列挙に入っていません。ただ、雨水を受けるピットだから必ず第一種、と言い切れるわけではなく、同じピットに汚水や腐泥が入っていたことがあれば第九号の文言にも当たります。名前が雨水ピットかどうかではなく、そこに何が入っている(入っていた)かを号の文言に照らす、という順番で見てください。ピットという言葉そのものの整理はピットの解説で確かめられます。
「ちょっと覗くだけでも対象か」という問いには、条文の言葉で答えるしかありません。安衛則第36条第26号が書いているのは「令別表第六に掲げる酸素欠乏危険場所における作業に係る業務」で、範囲を決めているのは場所と、そこでの作業です(労働安全衛生規則 第36条第26号)。迷う作業があれば、まずその場所が別表第六のどの号に当たるかから確かめるのが筋道です。
第一種の教育を受けた人を第二種の現場に入れてよいか、という点も条文で整理できます。酸欠則第12条第2項は、第1項の教育の規定を第二種酸素欠乏危険作業に係る業務に準用し、科目名の「酸素欠乏」を「酸素欠乏等」に、「酸素欠乏症」を「酸素欠乏症等」に読み替えるとしています(酸素欠乏症等防止規則 第12条第2項)。第二種の作業に就かせるときは、この読み替えた科目の教育が要る、というのが条文の組み立てです。科目を省けるかどうかは、次の次の見出しで扱う安衛則第37条の話になります。
科目と時間は告示第132号の表どおり。第一種は計4時間、第二種は計5時間30分
科目ごとの範囲と時間は、酸欠則の本文ではなく告示に書かれています。酸欠則第12条第3項(2026年10月時点の項番号)が「安衛則第三十七条及び第三十八条並びに前二項に定めるもののほか、前二項の特別の教育の実施について必要な事項は、厚生労働大臣が定める」とし、昭和57年6月14日基発第407号(抄)の第12条関係ロが、それは「酸素欠乏危険作業特別教育規程(昭和四七年労働省告示第一三二号)に定められていること」と示しています。第一種は告示の第1条、第二種は第2条です。
第1条は、第一種の特別の教育を「学科教育により、次の表の上欄に掲げる科目に応じ、それぞれ、同表の中欄に掲げる範囲について同表の下欄に掲げる時間以上行うものとする」と定めています(酸素欠乏危険作業特別教育規程 第1条)。表にすると次のとおりです。
| 科目(第一種) | 範囲 | 時間(以上) |
|---|---|---|
| 酸素欠乏の発生の原因 | 酸素欠乏の発生の原因/酸素欠乏の発生しやすい場所 | 30分 |
| 酸素欠乏症の症状 | 酸素欠乏による危険性/酸素欠乏症の主な症状 | 30分 |
| 空気呼吸器等の使用の方法 | 空気呼吸器/酸素呼吸器若しくは送気マスク又は換気装置の使用方法及び保守点検の方法 | 1時間 |
| 事故の場合の退避及び救急そ生の方法 | 墜落制止用器具等並びに救出用の設備及び器具の使用方法並びに保守点検の方法/人工呼吸の方法/人工そ生器の使用方法 | 1時間 |
| その他酸素欠乏症の防止に関し必要な事項 | 労働安全衛生法/労働安全衛生法施行令/労働安全衛生規則及び酸素欠乏症等防止規則中の関係条項/酸素欠乏症を防止するため当該業務について必要な事項 | 1時間 |
第2条は、酸欠則第12条第2項で準用する教育、つまり第二種について、同じ書き方で次の表を置いています(酸素欠乏危険作業特別教育規程 第2条)。
| 科目(第二種) | 範囲 | 時間(以上) |
|---|---|---|
| 酸素欠乏等の発生の原因 | 酸素欠乏等の発生の原因/酸素欠乏等の発生しやすい場所 | 1時間 |
| 酸素欠乏症等の症状 | 酸素欠乏等による危険性/酸素欠乏症等の主な症状 | 1時間 |
| 空気呼吸器等の使用の方法 | 空気呼吸器/酸素呼吸器若しくは送気マスク又は換気装置の使用方法及び保守点検の方法 | 1時間 |
| 事故の場合の退避及び救急そ生の方法 | 墜落制止用器具等並びに救出用の設備及び器具の使用方法並びに保守点検の方法/人工呼吸の方法/人工そ生器の使用方法 | 1時間 |
| その他酸素欠乏症等の防止に関し必要な事項 | 労働安全衛生法/労働安全衛生法施行令/労働安全衛生規則及び酸素欠乏症等防止規則中の関係条項/酸素欠乏症等を防止するため当該業務について必要な事項 | 1時間30分 |
告示の表には合計欄がありません。第一種は30分+30分+1時間+1時間+1時間で4時間、第二種は1時間+1時間+1時間+1時間+1時間30分で5時間30分というのは、科目ごとの時間を足した算出値です。しかも各科目の時間は「時間以上」と書かれた下限なので、社内でカリキュラムを組むときは、合計の4時間や5時間30分に収めるのではなく、科目ごとに表の時間を下回らないように割り付けることになります。
2つの表を並べると、時間が違うのは3つの科目です。発生の原因が30分から1時間に、症状が30分から1時間に、その他の必要な事項が1時間から1時間30分に変わり、空気呼吸器等の使用の方法と事故の場合の退避及び救急そ生の方法は、どちらも1時間で同じです。科目名も、第二種では酸欠則第12条第2項の読み替えどおり「酸素欠乏等」「酸素欠乏症等」になっています。
もう一つ確かめておきたいのが実技の扱いです。告示第1条・第2条はどちらも「学科教育により」と定めていて、実技の科目や時間はこの2つの条の全文に出てきません。告示が決めているのは学科の科目と最低時間までで、空気呼吸器を実際に着けてみる練習などを加えるかどうかは、告示の表の外の判断になります。
誰が教えるか、どこまで省けるか、何を何年残すか
ここからは、社内でやるか外に出すか、すでに受けた人をどう扱うか、何を残すかという運用の話です。根拠になる条文と通達を、強さの違いを崩さずに並べていきます。
教える側と外部の講習
労働安全衛生法第59条第3項の主語は事業者で、教育を「行なわなければならない」のは事業者です。社内でやる場合の講師の選び方については、昭和57年6月14日基発第407号(抄)の第12条関係ロは、教育方法として「酸素欠乏危険作業について十分な知識、技能、経験をもった者を講師として選び、できるだけ一定のテキストを使用して行うよう指導すること」と示しています。これは「指導すること」という行政の指導方針の書き方で、法令の義務として書かれたものではありません。
外部の講習に出す道もあります。厚生労働省のページは「事業者は外部機関が実施する特別教育を受講させることができますが、外部機関は特別教育を実施するのに当たり各都道府県労働局の登録を受ける必要はありません。」と説明しています(厚生労働省「労働安全衛生関係の免許・資格・技能講習・特別教育など」)。外部に出しても、教育を行う義務の主語が事業者であることは変わりません。
科目を省ける2つの経路
省略の根拠は2つです。1つ目は安衛則第37条で、現行(2026年10月時点)の条文は「事業者は、法第五十九条第三項の特別の教育…の科目の全部又は一部について十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該科目についての特別教育を省略することができる」となっています(労働安全衛生規則 第37条)。省けるのは「認められる」労働者の「当該科目」で、教育全体が丸ごと消えるわけではありません。
2つ目は基発第407号(抄)の第12条関係ハで、「労働災害防止団体等が、本条に定める要件を満たす講習を行った場合で、同講習を受講したことが明らかな者については、受講をした当該科目についての特別教育を省略することができること」とあります。条件は、講習が本条の要件を満たしていることと、受講したことが明らかなことの2つで、省けるのはここでも受講した科目だけです。
第一種を修了した人に第二種の教育をするとき、時間を短くできるかという疑問もここで扱います。安衛則第37条は一般の定めで、第一種の修了者を名指しして何時間省けるとは書いていません。読み替えで中身が変わった科目について、その人が十分な知識及び技能を有していると認められるかを、条文の主語である事業者が科目ごとに見る、というところまでが条文から言える範囲です。個人的には、省いた科目と省いた根拠を、次に書く記録の中に一緒に残しておくと、元請に説明を求められたときに話が早いと思います。
記録の保存と、修了証の扱い
安衛則第38条(特別教育の記録の保存)は、「事業者は、特別教育を行なつたときは、当該特別教育の受講者、科目等の記録を作成して、これを三年間保存しておかなければならない」と定めています(労働安全衛生規則 第38条)。残すのは受講者と科目などの記録で、保存期間は3年間です。
修了証については、厚生労働省のよくある質問が「特別教育の修了証については、実施した会社又は機関が任意で発行するものであり、行政では承知しておりません」と答えています(厚生労働省 よくある質問)。元請から求められる「修了を確認できる書類」は、法令で発行が義務づけられた証明書ではなく、教育を行った側が任意で出すものだと押さえておくと、社内で教育したときに何を渡せばよいかの見当がつきます。
一度やれば終わりか、という点について、基発第407号(抄)の第12条関係ニは「特別教育は、繰り返し行うことにより一層効果を定着させることができることから、酸素欠乏危険作業に労働者を就かせた後も繰り返し行うよう指導すること」としています。ここも「指導すること」という行政の指導方針の書き方で、再教育の周期を定めた条文ではありません。
2027年4月1日施行の改正
この節の条文には、近く変わる部分があります。2027年4月1日施行の改正で、安衛則第37条は「特別教育の対象業務に係る免許を受け、又は技能講習を修了している等十分な知識及び技能を有していると認められる労働者」と改められ、作業従事役員等についての第2項が新設されます。安衛法第59条には第4項として「作業従事役員等は、労働者と同一の場所において前項の業務に就くときは、同項に規定する教育を受けなければならない」が加わり、酸欠則第12条にも新しい第3項が入って、現行の第3項は第4項に繰り下がります。改正後の第37条も「等…認められる労働者」の形のままで、技能講習を修了しただけで省略が決まるとは書かれていません。
特別教育の記録や省略の扱いは、ほかの特別教育でも同じ安衛則第37条・第38条を使います。告示の異なる別の特別教育と見比べたい方は、石綿の特別教育の整理を並べて読むと、どこが共通でどこが業務ごとに違うのかが見えやすくなります。
作業主任者を置いても、作業者への教育が要らなくなるとは書かれていない
ペルソナの悩みでいちばん判断が割れやすいのが、作業主任者を置けば作業員の特別教育を省けるのか、という点です。まず作業主任者の側から条文を見ます。
酸欠則第11条第1項は、第一種酸素欠乏危険作業では「酸素欠乏危険作業主任者技能講習又は酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習を修了した者」のうちから、第二種酸素欠乏危険作業では「酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習を修了した者」のうちから、酸素欠乏危険作業主任者を選任しなければならないと定めています(酸素欠乏症等防止規則 第11条第1項)。第一種の現場ならどちらの技能講習の修了者でも選任でき、第二種の現場では後者に限られます。
選任された主任者がやることは、第11条第2項に4つ並んでいます(酸素欠乏症等防止規則 第11条第2項)。
- 作業に従事する労働者が酸素欠乏の空気を吸入しないように、作業の方法を決定し、労働者を指揮すること
- その日の作業を開始する前、全員が作業場所を離れた後に再び作業を開始する前、労働者の身体や換気装置等に異常があったときに、空気中の酸素の濃度を測定すること
- 測定器具・換気装置・空気呼吸器等その他の器具や設備を点検すること
- 空気呼吸器等の使用状況を監視すること
第二種の主任者には第11条第3項でこれが準用され、測定の対象が「酸素及び硫化水素」に、「酸素欠乏」が「酸素欠乏等」に読み替えられます(酸素欠乏症等防止規則 第11条第3項)。
一方、第12条は「業務に労働者を就かせるとき」の教育で、主任者の選任とは別の条として立っています。作業主任者を選任すれば作業者の特別教育が不要になる、という記載は、酸欠則第11条・第12条、安衛則第36条〜第38条、基発第407号(抄)を確認した範囲にはありません。科目を省く道として条文と通達に書かれているのは、前の見出しの安衛則第37条と基発第407号の第12条関係ハだけです。
正直なところ、測定や換気の意味を知らないまま作業者が穴の底にいる状態は、地上に主任者が1人いても埋まらないと感じます。主任者の技能講習の受講資格や日数、費用といった話は、この記事では扱わずに酸素欠乏危険作業主任者の記事に任せます。
教えた5科目は、作業当日の測定・換気・人員点検・監視につながる
告示の第五科目「その他酸素欠乏症の防止に関し必要な事項」の範囲には、「酸素欠乏症等防止規則中の関係条項」が入っています。教育で扱う条文が、作業の当日にどこで出てくるかを並べると次のとおりです。
| 作業当日の場面 | 酸欠則の条文の要点 | 告示の科目・範囲で関係する語 |
|---|---|---|
| 作業を始める前の測定 | 事業者は、その日の作業を開始する前に、空気中の酸素(第二種の作業場は酸素及び硫化水素)の濃度を測定しなければならない(第3条第1項) | その他の必要な事項/酸素欠乏症等防止規則中の関係条項 |
| 換気 | 酸素の濃度を十八パーセント以上(第二種は加えて硫化水素の濃度を百万分の十以下)に保つように換気しなければならない。爆発・酸化等の防止で換気できない場合や、作業の性質上著しく困難な場合はこの限りでない(第5条第1項) | 空気呼吸器等の使用の方法/換気装置の使用方法及び保守点検の方法 |
| 入場と退場 | 労働者を作業場所に入場させ、及び退場させる時に、人員を点検しなければならない(第8条第1項) | その他の必要な事項/酸素欠乏症等防止規則中の関係条項 |
| 作業中の監視 | 常時作業の状況を監視し、異常があったときに直ちに作業主任者等に通報する者を置く等、異常を早期に把握するために必要な措置を講じなければならない(第13条第1項) | 事故の場合の退避及び救急そ生の方法/救出用の設備及び器具の使用方法 |
| 呼吸用の器具を着けた作業 | 作業主任者は空気呼吸器等の使用状況を監視する(第11条第2項第4号) | 空気呼吸器等の使用の方法/空気呼吸器・酸素呼吸器・送気マスクの使用方法 |
表の条文は、どれも主語が事業者(最後の行は事業者が主任者に行わせる事項)で、作業者に向けた義務ではありません(酸素欠乏症等防止規則 第3条・第5条・第8条・第11条・第13条)。それでも、測定、換気、入場・退場の人員点検、異常の早期把握は、いずれも作業者が穴に入る前後と、中にいる間の話です。教育で条文の意味を教えておくと、その場で何が行われているのかを作業者自身が分かった上で動けるようになります。
監視の第13条は、読み違えやすいので補足します。義務の中身は「異常を早期に把握するために必要な措置」で、「通報する者を置く」はその措置の例として「置く等」と書かれています。監視人を置くことそのものが義務と書かれているわけではなく、異常を早く把握する仕組みを講じることが求められている、という読み方になります。
現場目線で言えば、教育のテキストを作るときは科目の表をなぞるだけでなく、自分の現場の測定の順番や換気の止め方をこの表の行に当てはめて話すと、5つの科目が当日の段取りと結び付きます。入場前に作業者を送り出すときの教育との役割の違いは、送り出し教育の進め方と見比べておくと書類の準備がぶつかりません。
教育をせずに就かせたときの罰則と、2023年の酸欠・硫化水素の災害件数
特別教育を行わずに酸素欠乏危険場所の作業に就かせた場合、安衛法第59条第3項の違反になります。安衛法第119条は、同条第1号に第五十九条第三項を挙げ、「当該違反行為をした者は、六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する」と定めています(労働安全衛生法 第119条第1号)。
罰せられるのが違反行為をした人だけとは限りません。安衛法第122条は、法人の代表者や従業者がその法人の業務に関して第119条などの違反行為をしたときは、「行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する」と定めています(労働安全衛生法 第122条)。
公式の災害の数も確認しておきます。厚生労働省の「令和5年に発生した酸素欠乏症等の労働災害発生状況について」(基安労発0725第1号 令和6年7月25日)は、休業4日以上の労働災害を対象に、2023年の酸素欠乏症による労働災害を「3件(前年比1件減)であり、被災者は4人(前年比2人減)、うち死亡者は4人(前年比1人減)」、硫化水素中毒による労働災害を「2件(前年比2件減)であり、被災者は2人(前年比3人減)、うち死亡者は0人(前年比2人減)」としています。同じ資料の表から、直近5年を並べると次のとおりです。
| 年 | 酸素欠乏症(件数/被災者/死亡者) | 硫化水素中毒(件数/被災者/死亡者) |
|---|---|---|
| 2019年 | 4件/5人/5人 | 5件/5人/1人 |
| 2020年 | 10件/12人/8人 | 6件/9人/6人 |
| 2021年 | 3件/3人/2人 | 6件/6人/2人 |
| 2022年 | 4件/6人/5人 | 4件/5人/2人 |
| 2023年 | 3件/4人/4人 | 2件/2人/0人 |
資料の備考には「被災者数は死亡者数を含む。」とあります(基安労発0725第1号 令和6年7月25日)。2023年の酸素欠乏症は、被災者4人のうち4人が亡くなっています。2024年分の同じ資料は、この記事を書いた時点では確認できていないので、最新は2023年分として載せています。
酸欠の特別教育に関する情報まとめ
- 酸欠の特別教育とは:安衛法第59条第3項・安衛則第36条第26号・酸欠則第12条に基づき、酸素欠乏危険場所の作業に就かせる労働者へ事業者が行う学科の教育
- 第一種と第二種:別表第六の第三号の三・第九号・第十二号(第十二号は大臣が定める場所に限る)の場所が第二種、それ以外が第一種。場所に当たる号を全部拾って決める
- 科目と時間:告示第132号の第1条・第2条。科目ごとの時間以上で、足すと第一種4時間・第二種5時間30分。告示の規定は学科教育
- 省略と記録:確認した範囲では、省けるのは安衛則第37条と基発第407号ハの範囲の科目だけ。記録は受講者・科目等を3年間保存。修了証は任意発行。2027年4月1日に第37条などが改正
- 作業主任者との関係:主任者の選任で作業者の教育が不要になるという記載は、確認した範囲には無い
- 当日の条文と罰則:教育は測定・換気・人員点検・異常の早期把握の条文につながる。違反は六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金で、法人にも罰金刑
以上が酸欠の特別教育に関する情報のまとめです。
マンホールやピットの改修が決まったら、最初にやるのは講習の申し込みではなく、作業場所が別表第六のどの号に当たるかを拾い、第一種か第二種かを決めることです。区分が決まれば告示の表で科目と時間が決まり、省く科目があればその根拠を、教育をしたら受講者と科目の記録を3年残す。この順番で書類をそろえておけば、元請から修了の確認を求められても、何をどこまでやったかを自分の言葉で説明できる状態になると僕は考えています。
