積算とは?見積との違いと工事費を組み立てる流れを施工管理目線で

積算とは、設計図書から必要な材料や作業の数量を拾い出し、単価を掛けて工事費を組み立てる作業で、契約相手に示す価格である見積の前段にあたります。この2つを同じものとして話すと、積算担当との会話がずれやすくなります。積算という語は、確認した法令では定義されておらず、基準類での使われ方に沿って理解する必要があります。ここでは、施工管理が数量を確認するときに迷いやすい点を中心に説明します。

  • 所長に「積算と数量を詰めておいて」と言われたけど、積算部門が何をしているのか実はよく分かっていない
  • 積算と見積って、呼び方が違うだけで同じものじゃないの?
  • 「数量を拾う」って、図面から何をどう数えることなんだろう
  • 歩掛とか労務単価とか、その数字はどこから出てくるの?
  • 共通仮設費・現場管理費・一般管理費、どれがどこまでなのか毎回あいまい
  • 建築の人と土木の人で、費目の呼び方が違って話が噛み合わない
  • 公共工事の予定価格って、積算とどうつながっているの?
  • 積算の数量と、現場で実際に使った量がずれるのはなぜ?
  • 建築積算士って国家資格?取ったら何ができるの?
  • 現場がきついから、内勤の積算職に移るのもありかなと考えている

上記の様な悩みを解決します。

積算は、施工管理にとって「別の部署の仕事」に見えやすいものの、実行予算や原価管理の出発点になる数字を作っている工程です。ところが確かめた範囲の解説記事では、工事費の構成が費目の名前を並べたところで止まり、どの基準のどの版の話なのか、建築と土木で区分の名前と範囲がどう違うのかまでは見当たりませんでした。今回は定義・見積との違い・数量と単価の決まり方といった基本を押さえた上で、国の積算基準を版つきで引き、建築の「共通費」と土木の「間接工事費」の違い、そして施工管理が積算の数字を受け取ったときに確かめるところまで、施工管理の目線で整理しました。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、積算部門と話す機会が増えてきた若手の施工管理の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

積算とは?数量を拾い、単価を掛けて工事費を組み立てる作業

積算とは、結論「設計図書から工事に必要な数量を拾い出し、それぞれに単価を掛けて、工事費として積み上げていく作業」のことです。何をどれだけ使うかを数える仕事と、それをお金に置き換える仕事がひと続きになっていると考えると掴みやすいです。

作業の順番を並べると、おおよそ次のようになります。

  • 設計図書(図面・仕様書)を読み、工事の範囲と内容を確かめる
  • コンクリートの体積、型枠や仕上げの面積、鉄骨の質量などの数量を拾う
  • 歩掛・労務単価・物価資料などをもとに、数量に掛ける単価を決める
  • 数量×単価を工事の種目ごとに集計し、直接工事費をまとめる
  • 共通仮設費・現場管理費・一般管理費等を加え、工事費として組み上げる
  • 工事費内訳書の形に整える

ひとつ押さえておきたいのは、「積算」を定義する条文が見当たらないという点です。建設業法の本文には「積算」という語そのものが出てこず、予算決算及び会計令・会計法を確認した範囲でも、積算を定義する条文は見当たりません。

国の基準類では、目的を説明する文の中でこの言葉が使われています。公共建築工事積算基準は第1で「この基準は、公共建築工事を請負施工に付す場合において、予定価格のもととなる工事費内訳書に計上すべき当該工事の工事費(以下「工事費」という。)の積算について必要な事項を定め、もって工事費の適正な積算に資することを目的とする。」と書いています(公共建築工事積算基準 第1・平成28年改定)。つまり基準の世界での積算は、予定価格のもとになる工事費内訳書の工事費を出す作業、という位置づけです。

なお、ここで引いた基準が定めているのは、発注者が予定価格のもとになる工事費を出すための積算です。受注者側で自社の積算部門がどの基準・どの数量の考え方を使っているかは、会社ごとに確かめてください。施工管理との関わりで言うと、積算で出た数量と工事費は、受注後に現場の実行予算を組むときの土台になりえます。僕は、積算の数字を「積算部門の答え」として眺めるだけでなく、その数量がどの考え方で拾われたのかまで見られると、現場の原価の見通しがかなり立てやすくなると考えています。公共工事に絞った積算の全体像は公共工事の積算を扱った記事で整理しています。

積算と見積の違い:工事費を出す計算と、相手に示す価格

積算と見積の違いは、僕の整理では「積算は工事費を計算する工程、見積書はその結果をもとに会社として価格を決め、契約相手に示す書類」です。確認した範囲では積算を定義する条文が見当たらないため、積算と見積の違いを法令が直接区別しているとは確認できませんでした。ここは用語の使い分けとして捉えておくのが無難だと思います。

一方で、見積書のほうは建設業法に条文があります。現行の第20条第1項(令和6年法律第49号による改正後の文言)はこう書いています。

「建設業者は、建設工事の請負契約を締結するに際しては、工事内容に応じ、工事の種別ごとの材料費、労務費及び当該建設工事に従事する労働者による適正な施工を確保するために不可欠な経費として国土交通省令で定めるもの(以下この条において「材料費等」という。)その他当該建設工事の施工のために必要な経費の内訳並びに工事の工程ごとの作業及びその準備に必要な日数を記載した建設工事の見積書(以下この条において「材料費等記載見積書」という。)を作成するよう努めなければならない。」(建設業法 第20条第1項)

主語は建設業者で、「作成するよう努めなければならない」という努力義務です。中身として求められているのは、工事の種別ごとの材料費・労務費などの内訳と、工程ごとの作業と準備に必要な日数です。積算で拾った数量と単価の積み上げが、そのまま見積書の内訳を支える材料になる、という関係が見えてきます。

同じ条には、見積書の金額と交付についての定めも並んでいます。

  • 第1項:建設業者は、材料費等の内訳と工程ごとの日数を記載した材料費等記載見積書を作成するよう努める
  • 第2項:「材料費等記載見積書に記載する材料費等の額は、当該建設工事を施工するために通常必要と認められる材料費等の額を著しく下回るものであつてはならない。」
  • 第4項:注文者は見積書の内容を考慮するよう努め、建設業者は「建設工事の注文者から請求があつたときは、請負契約が成立するまでに、当該材料費等記載見積書を交付しなければならない。」
  • 第6項:注文者は、材料費等記載見積書を交付した建設業者に対し、材料費等の額を通常必要と認められる額を著しく下回ることとなるような変更を求めてはならない

第4項の交付義務は「注文者から請求があつたとき」に限られる点も、条文どおりに読んでおきたいところです(建設業法 第20条第4項)。

もう一つ、見積りの段階に関わる条文として第20条の2があります。建設業者側については「建設業者は、その請け負う建設工事について、主要な資材の供給の著しい減少、資材の価格の高騰その他の工期又は請負代金の額に影響を及ぼすものとして国土交通省令で定める事象が発生するおそれがあると認めるときは、請負契約を締結するまでに、国土交通省令で定めるところにより、注文者に対して、その旨を当該事象の状況の把握のため必要な情報と併せて通知しなければならない。」と定めています(建設業法 第20条の2第2項)。積算で単価を置く段階で資材価格の動きが気になったら、契約前の通知の話にもつながる、と覚えておくと役に立ちます。

工事費の構成:建築は「共通費」、土木は「間接工事費」

工事費は、工事目的物をつくるための直接工事費と、それ以外の費用に分けて積み上げます。ただし国の基準では、建築は共通仮設費・現場管理費・一般管理費等をまとめて「共通費」とし、土木は共通仮設費と現場管理費を「間接工事費」と呼んで一般管理費等を別に置きます。さらに純工事費に入る範囲も違います。建築の人と土木の人で費目の話が噛み合わないときは、まずここを疑うとよいと僕は考えています。

建築:公共建築工事積算基準(平成28年改定)

建築の区分は、公共建築工事積算基準 第2にあります。「工事費は、直接工事費、共通費及び消費税等相当額に区分して積算する。直接工事費については、設計図書の表示に従って各工事種目ごとに区分し、共通費については、共通仮設費、現場管理費及び一般管理費等に区分する。」(公共建築工事積算基準 第2・最終改定 平成28年12月20日国営積第18号)

それぞれの中身は次のように定められています。

直接工事費は「工事目的物を造るために直接必要とする費用で、直接仮設に要する費用を含み、その算定は次に掲げる各項による。」(同 第5)。共通費のほうは、「共通仮設費は、各工事種目に共通の仮設に要する費用とする。」「現場管理費は、工事施工に当たり、工事現場を管理運営するために必要な費用で、共通仮設費以外の費用とする。」「一般管理費等は、工事施工に当たる受注者の継続運営に必要な費用で、一般管理費と付加利益等からなる。」とされています(同 第6(1)〜(3))。最後に「消費税等相当額は、工事価格に消費税及び地方消費税相当分からなる税率を乗じて算定する。」(同 第7)が乗ります。

同基準 第3の構成図では、純工事費=直接工事費+共通仮設費、工事原価=純工事費+現場管理費、工事価格=工事原価+一般管理費等、工事費=工事価格+消費税等相当額、という積み上がりになっています。建築では、現場管理費は純工事費の外側に置かれている点に注意してください。

土木:土木工事工事費積算要領及び基準の運用(令和8年4月1日適用)

土木は、国土交通省の「土木工事工事費積算要領及び基準の運用」(令和8年2月27日付国官技第455号・令和8年4月1日適用)で構成を確かめます。適用範囲は「国土交通省直轄の河川工事、砂防工事、ダム工事、道路工事等の土木工事を請負施工に付する場合における工事費の積算に適用する。」とされ、「港湾工事や空港工事については、別途の定めによるものとする。」とあります(同 第1章①)。ここで見る構成は国交省直轄工事の積算の決まりで、土木工事全般の決まりではない、という前提で読んでください。

区分は第1章 総則「②請負工事の工事費構成」の1-2に書かれています。直接工事費は「箇所又は工事種類により各工事部門を工種、種別、細別及び名称に区分し、それぞれの区分毎に材料費、労務費及び直接経費の3要素について積算するものとし、…」(1-2(1))。間接工事費は「各工事部門共通の前号以外の工事費及び経費であり、共通仮設費及び現場管理費に分類し、それぞれの構成する費目について積算するものとする。」(1-2(2))。その中身は「共通仮設費は、工事施工にあたって、工事目的物の施工に間接的に係る費用とし、…」「現場管理費は、工事施工にあたって、工事を管理するために必要な共通仮設費以外の経費とし、…」です(1-2(2)イ)・ロ)。一般管理費等は「工事施工にあたる企業の継続運営に必要な費用をいい、一般管理費を構成する各費目及び付加利益について積算するものとし、…」(1-2(3))とされています。

同じく1-1(1)の構成図では、直接工事費と間接工事費(共通仮設費・現場管理費)をあわせて純工事費とし、工事原価=純工事費、工事価格=工事原価+一般管理費等、請負工事費=工事価格+消費税等相当額となっています。土木では現場管理費が純工事費の内側に入るので、建築と同じ「純工事費」という言葉でも中身が違います。

なお、土木の積算では「土木工事標準積算基準書」という名前も出てきますが、この基準書は、本体の公開PDFが無く、関東地方整備局のページでは閲覧予約制とされています。この記事では、公開されている上記の運用で構成を確かめています。運用には「工事費の積算における基準は、原則として、入札時(入札書提出期限日)における最新の基準を適用する。」ともあり、版を確かめる習慣が大事だと分かります。

区分 建築(公共建築工事積算基準) 土木(土木工事工事費積算要領及び基準の運用)
直接工事費以外の呼び方 共通費(共通仮設費・現場管理費・一般管理費等) 間接工事費(共通仮設費・現場管理費)と一般管理費等
純工事費 直接工事費+共通仮設費 直接工事費+間接工事費(共通仮設費・現場管理費)
工事原価 純工事費+現場管理費 純工事費
工事価格 工事原価+一般管理費等 工事原価+一般管理費等
最上位 工事費=工事価格+消費税等相当額 請負工事費=工事価格+消費税等相当額
版・日付 平成28年改定(平成28年12月20日国営積第18号) 令和8年2月27日付国官技第455号(令和8年4月1日適用)
適用範囲 公共建築工事 国交省直轄の河川・砂防・ダム・道路工事等(港湾・空港は別途)

建築の共通費は「率」と「積み上げ」の二本立て

建築の共通費は、全部を一つひとつ拾うのではなく、率で出す部分と、率に含まれないものを積み上げる部分に分かれています。国交省官庁営繕部の「公共建築工事の工事費積算における共通費の算定方法及び算定例」では、次の形で示されています。

  • 共通仮設費:直接工事費に対する比率(共通仮設費率)により算定する費用+共通仮設費率に含まれない内容について、必要に応じ別途積み上げにより算定する費用
  • 現場管理費:純工事費に対する比率(現場管理費率)により算定する費用+現場管理費率に含まれない内容について、必要に応じ別途積み上げにより算定する費用
  • 一般管理費等:工事原価に対する比率(一般管理費等率)により算定する費用

率の掛け元が費目ごとに違う(直接工事費・純工事費・工事原価)ところが、建築の構成図とぴったり対応しています。率の具体的な値は工事の条件で変わるので、使うときは必ずその時点の基準と資料で確かめてください。なお官庁営繕部は、これらの基準を運用するための資料として「公共建築工事積算基準等資料」(令和8年改定・最終改定 令和8年3月11日国営積第16号)をまとめています。

数量と単価の決まり方:3つの数量と、歩掛・労務単価

数量は、公共建築の基準では原則として設計数量で拾い、単価は歩掛や労務単価などから組み立てます(土木の運用では、歩掛の算定に土木工事標準歩掛と物価資料を使うとしています)。積算の数字を読むときは、この「数量がどの種類か」と「単価に何が入っているか」の2つが要になります。

設計数量・計画数量・所要数量

公共建築数量積算基準(令和5年改定・最終改定 令和5年3月29日国営積第8号)は、基本事項(2)で数量の種類を分けています。冒頭は「数量は、原則として設計数量とする。ただし、計画数量及び所要数量を求める場合は、この基準に示す方法に基づいて計測・計算する。」です。3つの定義は次のとおりです。

  • 設計数量:「設計図書に記載されている個数及び設計寸法から求めた長さ、面積、体積等の数量をいう。なお、材料のロス等については単価の中で考慮する。」
  • 計画数量:「設計図書に基づいた施工計画により求めた数量をいう。」
  • 所要数量:「定尺寸法による切り無駄や、施工上やむを得ない損耗を含んだ数量をいう。なお、所要数量であることを明示する。」

(いずれも公共建築数量積算基準 第1編 総則 2 基本事項(2))

ここで見落としやすいのが、設計数量では材料のロスを数量に足さず「単価の中で考慮する」としている点です。切り無駄や損耗を含んだ量が必要なときは、所要数量として計測し、所要数量であることを明示する決まりです。

同じ基本事項には細かい決まりもあります。「端数処理は、四捨五入とする。」((6))、「工事費内訳書の数量は、原則として小数点以下第2位を四捨五入し、小数点以下第1位とする。ただし、100以上の場合は整数とする。」((7))、「数量は、公共建築工事標準単価積算基準における単価に対応したものとする。」((8))。数量と単価が対になるよう決められていることが分かります。なお、この基準は「鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄骨造、壁式鉄筋コンクリート造、木造(軸組構法)等の標準的な建築物に適用する。」とされています(同 第1編 総則 1 適用)。

歩掛

歩掛は、土木の運用では次のように書かれています。「歩掛は、工事を施工するために必要な機械・労務・材料に係る費用とし、その算定は土木工事標準歩掛及び物価資料によるものとする。」(土木工事工事費積算要領及び基準の運用 第2章①直接工事費 2.歩掛)。標準歩掛に無いものは「特別調査又は見積りの取得により歩掛の構成を決定する。」とされ、見積りの場合は「原則として3社以上から徴収し、…」とあります。

建築側では、公共建築工事積算基準等資料(令和8年改定)が「単価の算定に用いる歩掛りは、単価基準 第1編3で規定される標準歩掛りの他に「営繕積算システム等開発利用協議会歩掛り(以下「協議会歩掛り」という。)」による。」と位置づけています。人工の数え方を含めた歩掛そのものの話は、歩掛の意味と使い方をまとめた記事と、単位の考え方を扱った人工の記事に分けています。

公共工事設計労務単価

労務費の単価には、国が毎年決める公共工事設計労務単価が使われます。直近は令和8年2月17日の発表で、「令和7年度に実施した公共事業労務費調査に基づき、公共工事設計労務単価を決定し、令和8年3月から適用します。」とされました。水準は「今回の決定により、全国全職種単純平均で前年度比4.5%引き上げられることになります。」「全国全職種加重平均値が25,834円となり、初めて25,000円を超えました。」です(国土交通省 報道発表資料・令和8年2月17日)。伸び率の4.5%は単純平均、金額の25,834円は加重平均で、物差しが別である点に注意してください。

単価の中身は「公共工事設計労務単価 = 基本給相当額 + 基準内手当 + 臨時の給与 + 実物給与」(所定労働時間内8時間当たり)です。含まれないものとして「① 時間外、休日及び深夜の労働についての割増賃金 ② 各職種の通常の作業条件又は作業内容を超えた労働に対する手当 ③ 現場管理費(法定福利費(事業主負担分)、研修訓練等に要する費用等)及び一般管理費等の諸経費」が挙げられ、「公共工事設計労務単価には、事業主が負担すべき人件費(必要経費分)は含まれていません。」とも書かれています(同)。労務単価は職人さんに支払う日当そのものではない、ということです。職種別の金額や使い方は公共工事設計労務単価の記事で確かめられます。

公共工事の積算は予定価格のもとになる

公共工事では、積算で組み立てた工事費が、発注者が定める予定価格のもとになります。公共建築工事積算基準が目的を「予定価格のもととなる工事費内訳書に計上すべき当該工事の工事費」の積算と書いているのは、このためです(公共建築工事積算基準 第1)。

予定価格については、予算決算及び会計令に条文があります。第79条(予定価格の作成)は「契約担当官等は、その競争入札に付する事項の価格(…)を当該事項に関する仕様書、設計書等によつて予定し、その予定価格を記載し、又は記録した書面をその内容が認知できない方法により、開札の際これを開札場所に置かなければならない。」と定めています。決め方は第80条第2項で、「予定価格は、契約の目的となる物件又は役務について、取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して適正に定めなければならない。」とされています(予算決算及び会計令 第79条・第80条第2項)。

流れを整理すると次のとおりです。

  • 積算:基準に沿って、予定価格のもとになる工事費内訳書の工事費を出す(公共建築工事積算基準 第1)
  • 予定価格の作成:契約担当官等が仕様書・設計書等によって予定し、書面を開札場所に置く(予決令 第79条)
  • 予定価格の決め方:取引の実例価格・需給の状況・履行の難易・数量の多寡・履行期間の長短等を考慮する(予決令 第80条第2項)
  • 落札者の決定:予定価格の制限の範囲内で最高又は最低の価格の申込者を相手方とする。ただし書による例外あり(会計法 第29条の6第1項)

会計法 第29条の6第1項の本文は「契約担当官等は、競争に付する場合においては、政令の定めるところにより、契約の目的に応じ、予定価格の制限の範囲内で最高又は最低の価格をもつて申込みをした者を契約の相手方とするものとする。」です。ただし書があり、国の支払の原因となる契約のうち政令で定めるものについて、申込みの価格によってはその者により契約の内容に適合した履行がされないおそれがあると認められるときなどは、政令の定めるところにより、予定価格の制限の範囲内の価格で申込みをした他の者のうち最低の価格の者を相手方とすることができる、とされています。最低価格で決まる原則には例外がある、という読み方が正確です。

また、労務単価の報道発表資料も、調査の目的を「公共工事の発注に際し必要となる予定価格の決定にあたっては、「予算決算及び会計令」において、取引の実例価格、需給の状況等を考慮して適正に定めることとされている。」と説明しています。積算基準・労務単価・予定価格が一本の線でつながっていることが分かります。

公共建築工事積算基準は公共建築工事を、土木工事工事費積算要領及び基準の運用は国交省直轄の土木工事等を対象にしています。民間工事の積算を考えるときは、この前提を外さないようにしてください。予定価格・最低制限価格・設計書価格の関係は、公共工事の積算の記事で詳しく扱っています。

施工管理が積算の数字を受け取ったら確かめること

施工管理が積算の数字を受け取ったら、僕は「数量の種類」「費用の区分」「単価に含まれないもの」から見るのがよいと考えています。これらが分かると、積算の数字と現場の実行予算のどこがつながり、どこでずれるのかが見えてきます。

  • その数量は設計数量か、計画数量か、所要数量か。設計数量ならロスは単価の中にある
  • 仮設は直接工事費(直接仮設)に入っているのか、共通仮設費に入っているのか
  • 共通費は率だけで出ているのか、率に含まれない内容の積み上げがあるのか
  • 労務単価に含まれない割増賃金や法定福利費(事業主負担分)は、どこで見込まれているのか
  • 使っている基準はどの版か。建築と土木で純工事費の範囲が違う点も踏まえているか

積算の数量と現場の実際の量がずれる理由について、僕はその出どころの一つが数量の種類の違いにあると考えています。基準上、設計数量は設計図書の寸法から求めた数量で、施工計画によって変わる計画数量や、切り無駄や損耗を含む所要数量とは別物です。積算書の数量を現場の発注量と並べるときは、同じ物差しで比べているかを先に確かめると、無駄な議論が減るはずです。

仮設の扱いも、建築の基準では直接工事費が「直接仮設に要する費用を含み」、共通仮設費が「各工事種目に共通の仮設に要する費用」と分けられています。仮設がどちらの区分に入っているかで実行予算のどこに載せるかが変わるので、個人的には最初に確かめておきたいところです。

受注後の実行予算や原価のつけ方とのつながりは、建設業の原価管理の記事で流れを追えます。決算で原価がどう名前を変えるかは完成工事原価の記事、予算と実績の差を読み解く手順は原価差異分析の記事にまとめています。

積算の仕事と資格:建築積算士は民間資格

積算に関わる資格の一つに、公益社団法人日本建築積算協会が認定する建築積算士があります。国家資格ではなく、協会が認定する民間資格です。

協会は建築積算士を「建築生産過程における工事費の算定並びにこれに付帯する業務に関し、高度な専門知識及び技術を有する専門家」と定義しています(公益社団法人日本建築積算協会「(公社)日本建築積算協会の資格認定制度について」)。さらに「資格制度発足当時は、建築数量積算基準にしたがって数量算出を行う資格と考えていた方が多かったようですが、2010年(平成22年)に資格の定義が明確に規定され、数量算出のみならず工事費の算定あるいは概算といった積算業務全般の専門家と位置付けられました。」とも説明しています(同)。数量を拾う人ではなく、工事費を組み立てる人として位置づけられている、ということです。

建築積算士の要点を整理すると次のとおりです。

  • 種別:協会が認定する民間資格(公的資格ではない)
  • 沿革:1979年に協会認定の民間資格として誕生し、1990年に建設省告示による大臣認定の制度(建築積算資格者)となり、2001年に大臣認定が廃止されて協会の民間資格認定制度に引き継がれ、2009年4月1日に「建築積算士」へ称号が変わった
  • 試験:一次試験(学科)は10月頃、二次試験(積算実技等)は1月頃で、毎年度1回以上。受験資格は「受験年度の4月2日現在、満17歳未満のものは受験できない」
  • 登録:登録の有効期間は3年間で、更新講習の修了で更新する
  • 関連資格:上位に建築コスト管理士、下位に建築積算士補がある

(建築積算士制度の概要・資格認定制度について/公益社団法人日本建築積算協会)

協会が資格に求める知識には「建築生産プロセス、工事発注スキーム(入札・発注方式・契約方式他)、設計図書構成、工事費構成、積算業務内容、建築数量積算基準、内訳書標準書式、主要な市場価格、データ分析と積算チェック、施工技術概要、LCC・VE 概要、環境配慮概要」が並んでいます(同)。施工技術概要が入っているあたり、現場を知っていることが積算の側でも求められていると僕は読んでいます。

積算ソフトやAIで積算がどう変わりつつあるかは、AI積算の記事で別に整理しています。

施工管理から積算の仕事に移るかどうかは、働き方をどう変えたいか次第です。現場で数量と原価を見てきた経験は、積算の数字を読む側に回っても土台になると僕は考えています。積算職も含めて職場を見直したいなら、施工管理向けの転職サービスを状況別に比べた記事で、自分に合う相談先を比べられます。

積算に関する情報まとめ

  • 積算とは:設計図書から数量を拾い、単価を掛けて工事費を組み立てる作業。確認した法令に定義は見当たらず、基準では予定価格のもとになる工事費内訳書の工事費を出す作業として使われる
  • 見積との違い:積算は工事費を出す計算、見積書はそれをもとに相手へ示す価格。見積書は建設業法 第20条で建設業者が作成するよう努めるもの
  • 工事費の構成:建築は直接工事費と共通費、土木(国交省直轄)は直接工事費と間接工事費。純工事費の範囲も建築と土木で違う
  • 数量と単価:数量は原則設計数量で、計画数量・所要数量と区別する。単価は歩掛・労務単価などから組み立てる
  • 公共工事と予定価格:積算の工事費が予定価格のもとになり、予定価格は予決令 第79条・第80条第2項、落札は会計法 第29条の6第1項(ただし書あり)による
  • 施工管理が確かめること:数量の種類・費用の区分・労務単価に含まれないもの・基準の版
  • 仕事と資格:建築積算士は日本建築積算協会の民間資格で、積算業務全般の専門家と位置づけられている

以上が積算に関する情報のまとめです。

次に積算部門から数量や内訳書を受け取ったら、まず「この数量は設計数量か所要数量か」「仮設はどちらの区分か」の2つを聞いてみてください。それだけで、積算の数字と現場の実行予算を同じ物差しで並べられるようになり、ずれの理由を一緒に探せる関係に変わっていくはずです。公共工事の予定価格まで掘り下げたいなら公共工事の積算、単価の組み立てを深めたいなら歩掛から読むのがつながりやすいと思います。

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