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完成工事原価とは?計算方法、未成工事支出金との違い、勘定科目など

  • 完成工事原価ってなに?
  • 普通の原価と何が違うの?
  • 未成工事支出金との関係は?
  • どんな項目が含まれるの?
  • 計算方法は?
  • 施工管理として何を見ればいい?

上記の様な悩みを解決します。

「完成工事原価」は建設業特有の会計用語で、通常の製造業の「売上原価」に相当するものです。施工管理として「自分が回している現場のコストがどう経理に反映されているか」を知っておくと、予算管理・実行予算・原価意識が一段クリアになります。「経理の話だから自分には関係ない」と思いがちですが、実は発注・支払承認・工法選択など、施工管理が日々下す判断がそのまま完成工事原価に反映されている、というのが現場会計のリアルです。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

完成工事原価とは?

完成工事原価とは、結論「完成して発注者に引き渡された工事に対して、その工事を作るためにかかった全ての原価を集計した金額」のことです。

建設業会計(建設業法に基づく会計基準)特有の勘定科目で、製造業の「売上原価」に相当します。「工事が完成し、売上として計上されたタイミング」で、その工事にひもづく原価を完成工事原価として計上します。

→ ざっくり、「製造業の売上原価=建設業の完成工事原価」と読み替えれば、まずは大きく外しません。

基本構造と登場場面

完成工事原価は4つの要素で構成されます。材料費(工事に使った材料の原価)、労務費(工事に従事した自社員の賃金)、外注費(協力会社・下請業者への支払い)、経費(上記以外の工事直接経費・重機リース・運搬費など)、というのが内訳です。

登場する場面は、損益計算書(P/L)(完成工事高の下に表示)、建設業財務諸表(建設業会計特有のフォーマット)、経営事項審査(経審)(完成工事高・原価率が評価項目)、税務申告(法人税の課税所得計算)、原価管理(会社の収益性管理)、と幅広いです。

完成工事高との関係と本質

完成工事高と完成工事原価の関係は、完成工事高=建設業の売上高(完成・引渡しタイミングで認識)、完成工事原価=完成工事高に対応する原価、完成工事高 − 完成工事原価 = 完成工事総利益(粗利)、粗利率(粗利÷売上)が会社の収益性指標、という構造です。

完成工事原価は「実際にいくらかかったか」を表します。実行予算(着工前の見込み)と完成工事原価(実績)を比較することで、予算超過・予算未消化が見える化されます。「予算と実績の差」が現場の管理力の証拠になるため、施工管理にとっても他人事ではない領域です。

施工計画書や発注書類との連携で、原価の発生源は施工管理がコントロールしている部分が多いです。

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完成工事原価の4要素(材料費・労務費・外注費・経費)

完成工事原価は4つの要素で構成されています。「どこにいくら使っているか」を可視化するための基本分類です。

材料費

材料費は工事に使う材料・資材の購入費で、コンクリート・鉄筋・鉄骨・配管材・電線・塗料などすべての材料が含まれます。支給材料(発注者から無償提供)は通常控除、仮設材料(型枠・足場等)の取得・使用分も含まれる、転用可能な材料は資産計上することもあり、というのが扱い。具体例としては鉄筋の購入費、生コンクリートの納入費、配管材、ボルト・ナット・金物、塗料・シーリング材、養生材料・梱包材、などが該当します。

労務費

労務費は工事に従事した自社雇用の作業員の賃金です。直接作業員(現場で実作業を行う社員)、現場管理者(自社の施工管理・現場代理人)、賃金・賞与・法定福利費を含む、協力会社の人員は外注費として別計上、というのが分類。自社直営の電気工事士・配管工の賃金、自社施工管理者の現場手当・残業代、直営工事の社員の賞与按分、社会保険料・労災保険料の会社負担分、というのが具体例です。

外注費

外注費は協力会社・下請業者への支払いで、建設業ではこの外注費が原価の大部分を占めることが多いです。元請から1次下請、2次下請以降への支払いも含まれ、専門工事ごとの発注(とび・大工、鉄筋工、塗装工など)、というのが内訳。鉄筋工事会社・鉄骨工事会社・電気設備工事会社・衛生設備工事会社・塗装工事会社・仮設工事会社への外注費、というのが代表例です。

経費

経費は上記3つに該当しない工事に直接ひもづく経費(間接経費は別途配賦)。重機・リース料(クレーン・バックホー・高所作業車)、運搬費(材料運搬・産業廃棄物運搬)、電力・水道(仮設の動力・水道使用料)、仮設費(仮設事務所・仮設便所・仮囲い)、試験検査費(強度試験・配管試験)、設計費(施工図作成費、外注設計費)、保険料(工事保険・労災上乗せ保険)、動力光熱費、通信費、旅費交通費、というのが代表的な項目です。

構成比目安と計算式

完成工事原価の構成比は建設業の典型例で次のような目安になります。

要素 構成比目安
材料費 20〜40%
労務費 5〜15%
外注費 30〜60%
経費 10〜20%

業種・工種によって構成比は大きく変動します。専門工事(電気・設備)では外注費比率が高くなる傾向があります。

→ 計算式は「完成工事原価 = 材料費 + 労務費 + 外注費 + 経費」が基本ですが、期首・期末の未成工事支出金との関係で調整が入ります(後述)。

材料費に関連する工事内容は施工要領書とも密接です。

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完成工事原価と未成工事支出金の違い

建設業会計で完成工事原価とセットで出てくるのが「未成工事支出金」です。「完成 vs 未完成」の違いをきちんと理解しておきましょう。

未成工事支出金と完成・未成の判定

未成工事支出金は、まだ完成・引渡しされていない工事にかかった原価で、製造業の「仕掛品」に相当し、貸借対照表(B/S)の流動資産として計上され、工事完成・引渡しのタイミングで完成工事原価に振り替えられます。完成 vs 未成の判定基準は、完成工事が発注者への引渡しが完了した工事、未成工事はまだ施工中または完成しても引渡し未了の工事、という分け方です。

完成工事原価と未成工事支出金の流れ

工事に費用が発生 → 未成工事支出金(B/S)として資産計上 → 工事が完成・引渡し → 未成工事支出金が完成工事原価(P/L)に振替 → 損益計算書で完成工事原価として認識、という流れになります。

期間損益の計算は「期首未成工事支出金 + 期中の工事原価発生 − 期末未成工事支出金 = 完成工事原価」という関係式。期首にすでに発生していた工事原価(前期から繰越)、期中に新しく発生した工事原価、期末でまだ完成していない工事の原価(次期に繰越)を差引きして、完成工事原価を出します。

→ 「いつ発生したか」ではなく「いつ完成したか」で原価が認識される、というのが建設業会計の独特なところです。

未成工事支出金が出る場面と完成・進行基準

未成工事支出金が出てくる主な場面は、長期工事(複数年度にまたがる大型工事)、期末時点で施工中の工事、検査未了の工事、引渡し未了の工事、というケース。建設業の収益認識方法には2種類あって、工事完成基準(完成・引渡し時点で売上&原価を一括計上)と工事進行基準(進捗度に応じて売上&原価を期間配分)に分かれます。

工事完成基準の場合は、完成までの原価は未成工事支出金として積上、完成時点で完成工事高と完成工事原価を計上、という流れ。工事進行基準の場合は、進捗度(出来高)に応じて完成工事高と完成工事原価を期間配分、大型・長期工事で多く採用、収益認識会計基準(IFRS連動)で進行基準が原則化、というのが現代の流れ。2021年からの収益認識会計基準で進行基準が原則化されていますが、短期完成工事は完成基準も認められ、企業規模・工事規模で選択基準が変わります。

未成工事受入金との混同注意と振替タイミング

混同しやすいのが未成工事受入金です。未成工事支出金はB/Sの流動資産(自社の未完成工事への支出)、未成工事受入金はB/Sの流動負債(発注者から受け取った前受金)、と正反対の科目なので注意します。

実務的な振替のタイミングは、月末締め・期末締めの会計処理タイミング、完成と引渡しが同月内であれば未成工事支出金を経由しないことも、大型工事の決算期またぎでは未成工事支出金が大きな金額に、というあたり。工事のスケジュール管理と財務管理が直結している建設業ならではの会計処理です。

完成工事原価の勘定科目と仕訳

完成工事原価を会計でどう処理するか、主な勘定科目と仕訳の流れを整理します。

主要な勘定科目と建設業会計の特徴

完成工事原価の主要勘定科目は、材料費(建設業会計)、労務費(建設業会計)、外注費(建設業会計)、経費(建設業会計)の4つを集計したもの。建設業会計と一般会計の対応関係を整理しておきます。

一般会計 建設業会計
売上高 完成工事高
売上原価 完成工事原価
売上総利益 完成工事総利益
仕掛品 未成工事支出金
前受金 未成工事受入金

→ 一般会計の言い方を建設業バージョンに翻訳したもの、と捉えると分かりやすいです。

主な仕訳例

代表的な仕訳パターンをいくつか挙げておきます。

材料の購入時:

(借)材料費 100,000 (貸)買掛金 100,000

外注費の支払い時:

(借)外注費 500,000 (貸)当座預金 500,000

未成工事支出金への振替(期末):

(借)未成工事支出金 300,000 (貸)材料費 100,000
                                   外注費 200,000

完成・引渡し時の振替:

(借)完成工事原価 1,000,000 (貸)未成工事支出金 1,000,000
(借)売掛金 1,200,000 (貸)完成工事高 1,200,000

工事台帳と月次決算

現場別の原価管理(工事台帳)では、工事番号ごとに原価を集計、各工事台帳に材料費・労務費・外注費・経費を計上、1つの工事の原価が複数の伝票・請求書から集まる、施工管理が承認した請求書・支払いが原価に反映、という流れです。月次決算では発生主義で月次に原価計上、月末未払い分は未払金・買掛金で計上、月初の支払いと合わせて期末調整、という処理になります。

実行予算と完成工事原価の対比

実行予算と完成工事原価の対比は施工管理者として最も意識したいポイントで、実行予算(着工前に立てる予算・見込み原価)、発生原価(日々の支払い・発注で発生する実際の原価)、完成工事原価(完成時点の最終原価)、実行予算と完成工事原価の差異分析で現場の管理力が見える、という構造になります。

→ 「実行予算 vs 実績」は施工管理の重要な指標で、赤字工事の早期発見にも直結します。

施工計画書や工事監理での書類管理と、原価管理は表裏一体です。

完成工事原価の原価管理と施工管理の関わり

完成工事原価は経理部門の話に見えますが、現場の施工管理者が日々の発注・支払承認で大きく影響している領域です。

施工管理が原価に与える影響

施工管理が原価に与える影響は、下請会社の選定・発注(外注費の決定)、材料発注(数量・単価・納入先の決定)、施工計画(工法選択による原価変動)、検収・支払い承認(請求書チェック→支払い)、追加発注の判断(当初予算外の支出)、工程遅延への対応(遅延コストの発生)、というあたりです。

押さえるべき原価ポイントは、発注書面の整理(見積書・契約書で単価・数量を確認)、請求書のチェック(発注内容と請求が一致しているか)、追加・変更の管理(当初契約外の発注は別書面で管理)、実行予算との対比(月次の予算消化状況を把握)、原価データの記録(工事台帳・原価管理表に記録)、というのが基本動作です。

実行予算の管理サイクル

実行予算の管理サイクルは、着工前に実行予算書の作成(見込み原価)、施工中は月次で実行予算 vs 実績を確認、完成時は実行予算 vs 完成工事原価の差異分析、赤字工事の早期発見(予算超過のサインを早めに察知)、という流れで回します。

よくあるトラブルと赤字工事の防ぎ方

よくある原価管理のトラブルは、追加変更の請求漏れ(発注者から追加金を取れない)、下請の請求書チェック不足(払い過ぎが発生)、材料の二重発注(在庫管理不足で過剰発注)、工程遅延コスト(仮設費・人件費の超過)、予算外の発注(上司・経理の承認なしの発注)、というあたり。

赤字工事の防ぎ方は、当初契約の精度(見積りでの数量・単価の正確性)、追加変更の必ず書面化(口約束は通用しない)、下請契約の明確化(契約範囲の曖昧さを排除)、月次の予算消化チェック(早期発見・早期対応)、実行予算の精度(見込みが甘いと現場で苦しむ)、というのが王道。

原価意識と完成工事原価率

施工管理の原価意識を高めるコツは、常に「原価率」を意識(見積金額に対していくら使っているか)、下請の単価を覚える(材料・労務の相場感を持つ)、追加発注は必ず承認後(勝手な発注は禁物)、協力会社との交渉(発注時の単価ネゴ)、原価分析の習慣(完成後の振り返り)、というあたり。

完成工事原価率の指標は、原価率=完成工事原価÷完成工事高、健全な原価率は業種・工種で異なるが80〜90%が一般的、粗利率(1 − 原価率)が10〜20%程度、赤字工事は原価率100%超で早期発見が重要、というのが目安です。

経理連携・現場KPI・現場での意識

経理・管理部門との連携では、発注書・請求書の処理(経理に正確に回す)、月次の原価確認(経理から原価データを受け取って確認)、工事完成時の最終確認(完成工事原価の妥当性をチェック)、次回工事への反映(原価分析を次回の見積に活かす)、を進めます。施工管理が現場で見るべきKPIは、予算消化率(実行予算に対する発生原価の割合)、歩掛り(労務の生産性指標)、材料ロス率(材料の使用効率)、下請単価の妥当性(相場との比較)、というあたり。

施工管理として現場を回すと、「請求書がまわってきて初めて原価がわかる」ことが意外と多いです。発注時に「いくらの仕事か」を意識せず作業をスタートしてしまうと、月末に「予算超過の数字」を見て焦るという展開に陥りがち。発注前に必ず「実行予算のどの項目から、いくら出すか」を確認する癖をつけると、原価意識が一段上がります。

施工体制台帳や下請契約の理解も原価管理と直結します。

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完成工事原価の経審・財務諸表での扱い

完成工事原価は経営事項審査(経審)や建設業財務諸表でも重要な指標として扱われます。施工管理としても「自社の財務指標がどう評価されているか」を理解しておくと、会社全体の動きが見えてきます。

経審と主な評価項目

経営事項審査(経審)は、公共工事の入札参加資格を判定する審査制度で、建設業者の客観的な実力を点数化し、完成工事高・自己資本・技術力・社会性などを評価して総合評定値(P点)を算出します。主な評価項目は、X1(年間平均完成工事高)、X2(自己資本額・利益額)、Y(経営状況分析)、Z(技術力)、W(社会性等・CCUS・労働福祉等)、の5つです。

完成工事高(X1)の算定は、直近2年または3年の年間平均完成工事高、工事種別ごとに業種別完成工事高を算定、公共工事入札参加資格のランク(A・B・C・D)を決める基礎数値、という扱い。完成工事原価関連の経営指標としては、完成工事高総利益率(完成工事総利益÷完成工事高)、完成工事原価率(完成工事原価÷完成工事高)、総資本売上総利益率(完成工事総利益÷総資本)、というのが代表的。経営状況分析(Y点)の評価項目は、負債抵抗力(純支払利息比率・負債回転期間)、収益性・効率性(総資本売上総利益率)、財務健全性(自己資本対固定資産比率・自己資本比率)、絶対的力量(営業キャッシュフロー・利益剰余金)、というあたりです。

建設業財務諸表と経営評価への影響

建設業財務諸表の特徴は、完成工事高・完成工事原価が一般会計の売上高・売上原価に相当、未成工事支出金・未成工事受入金が建設業特有の科目、建設業財務諸表(電子申請対応)が国交省の指定様式、建設業許可の更新で5年ごとに財務諸表を提出、というあたり。

完成工事原価が会社の評価に与える影響は、原価率が高い(粗利率が低い→収益性指標で減点)、原価率が低い(粗利率が高い→収益性指標で加点)、完成工事高が大きい(会社規模指標で加点)、赤字工事の累積(自己資本に影響→財務健全性で減点)、という形で経審の点数に直結します。

会社の利益率と業界水準

建設業の完成工事原価率は85〜90%が一般的で、粗利率10〜15%が標準的な水準。施工管理の腕で1〜2%の差が会社全体の利益を左右し、規模・業種で大きな差はあるが原価管理の精度が利益を決める、というのが実態です。

→ 施工管理として意識すべきは、自社の標準原価率を知る、自分の現場の原価率を月次で把握、業界水準との比較で自社の競争力を理解、会社の経営指標と自分の現場の数字が会社のP/Lに直結、という関係性です。

個別工事の利益分析

個別工事の利益分析として、工事1件ごとの完成工事高・完成工事原価・粗利、赤字工事の原因分析(見積精度・追加処理・原価管理)、黒字工事の成功要因(発注精度・効率的な施工)、次回工事への反映(成功・失敗のフィードバック)、を回すと、施工管理の力量が会社全体の収益力につながります。

経審・建設業許可と完成工事原価は連動するので、財務諸表全体の理解も深めておきましょう。

完成工事原価に関する情報まとめ

  • 完成工事原価とは:完成・引渡し済み工事にかかった全原価
  • 4要素:材料費・労務費・外注費・経費
  • 未成工事支出金との関係:未完成は未成工事支出金、完成時に振替
  • 計算式:期首未成工事支出金+期中発生原価−期末未成工事支出金
  • 主要勘定科目:材料費・労務費・外注費・経費
  • 収益認識:工事完成基準・工事進行基準(現代は進行基準が原則)
  • 施工管理の関わり:発注・支払承認・実行予算管理が原価に直結
  • 経審での評価:完成工事高・完成工事原価率が点数化

以上が完成工事原価に関する情報のまとめです。

完成工事原価は「経理部門だけの話」に見えますが、現場の施工管理者が日々の発注・支払承認・施工方法選択で大きく左右している領域です。「実行予算 vs 完成工事原価」の差異分析を月次で意識する施工管理は、自社の収益性に直接貢献できます。「原価意識のある施工管理」は会社にとって貴重な人材であり、経営指標や経審にも好影響を与えます。日々の現場運営で「いくら使っているか」を意識するクセをつけて、原価管理の精度を高めていきましょう。

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