完成工事原価とは?計算方法、4費目、未成工事支出金との違いなど

  • 完成工事原価って結局なに?普段の「原価」と何が違う?
  • 経理が言う完成工事原価と、自分がつけてる原価管理表は別物なの?
  • 「完成工事原価=売上原価」って言われてもピンとこない
  • 材料費・労務費・外注費・経費の4つ、現場だと線引きが曖昧
  • 外注の応援や一人親方に払った常用、これ外注費でいいの?
  • 現場代理人(自分)の給料は労務費に入る?入らない?
  • 未成工事支出金って言葉、毎期聞くけど結局なに?
  • 期をまたぐ工事の費用ってどう処理されてるの?
  • 間接費(共通でかかった経費)はどう各現場に割り振るの?
  • 工事完成基準と工事進行基準、今はどっちが主流?
  • 未成工事支出金が膨らむと銀行や経審の評価に響くって本当?
  • 結局、現場の自分は何を意識して原価をつければいい?

上記の様な悩みを解決します。

完成工事原価は、建設業会計でしか出てこない用語なので、現場の施工管理にとっては「経理の言葉」に聞こえがちです。ところが中身を分解すると、現場で毎月つけている実行予算や原価管理表と地続きで、施工管理が日々動かしているお金そのものだったりします。今回は定義・4費目・未成工事支出金との違い・計算方法といった基本を押さえた上で、現役の施工管理目線で「現場の原価管理と完成工事原価のつながり」「労務費と外注費の現場での線引き」「未成工事支出金が経営に与える影響」など、会計ソフトの宣伝記事では拾われない実務のハマりどころまで整理しました。

なるべく簿記の知識がなくても分かる表現でまとめていくので、経理が苦手な人にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

完成工事原価とは?

完成工事原価とは、結論「その期に完成して引き渡した工事に、直接かかった費用の総額」のことです。一般の会社でいう「売上原価」を、建設業会計の言葉に置き換えたものだと考えると分かりやすいです。

建設業は、商品を仕入れて売る業種ではなく、注文を受けて何ヶ月も何年もかけて建物や構造物を作る業種です。そのため一般の会計(商業簿記)とは別に、建設業会計という独自のルールが用意されていて、その中で「売上原価」にあたる科目を完成工事原価と呼びます。売上にあたる科目も「売上高」ではなく「完成工事高」と呼びます。

ポイントは「完成して引き渡したもの」だけが対象という点です。まだ工事中の現場にかかった費用は、完成工事原価ではなく後述の未成工事支出金という別の科目で一旦ストックしておき、引き渡した期に完成工事原価へ振り替えます。ここが建設業会計が独特と言われる一番の理由です。

完成工事原価は、決算書の中でこういう関係になっています。

  • 完成工事高(売上高にあたる)
  • − 完成工事原価(売上原価にあたる)
  • = 完成工事総利益(いわゆる粗利・売上総利益にあたる)

僕の感覚だと、完成工事原価は「現場でかかったお金のうち、引き渡しが済んで売上と対になった分」と覚えておくと、後の話が一気に整理しやすくなります。現場の原価管理で追いかけている数字が、決算で名前を変えて出てくるだけ、という見方ができると経理アレルギーがかなり減ります。

積算や予定価格との関係を整理したい場合は、こちらも参考になります。

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完成工事原価と未成工事支出金の違い

完成工事原価と未成工事支出金の違いは、結論「その費用が引き渡し済みの工事のものか、まだ工事中のもの��」という点です。同じ現場でかかった費用でも、決算日時点で完成しているかどうかで入る科目が変わります。

未成工事支出金とは、まだ完成・引き渡しが終わっていない工事にかかった費用を、いったん資産として貯めておく科目です。製造業でいう「仕掛品(製造途中の在庫)」にあたります。決算をまたいで続く現場では、その時点までにかかった材料費・労務費・外注費・経費を未成工事支出金に積んでおき、引き渡しが完了した期に、まとめて完成工事原価へ振り替えます。

比較項目 完成工事原価 未成工事支出金
対象 引き渡し済みの工事の費用 工事中(未完成)の工事の費用
決算書の区分 損益計算書の費用(売上原価相当) 貸借対照表の資産(仕掛品相当)
計上タイミング 完成・引き渡しした期 費用が発生した期にいったんストック
一般会計での呼び方 売上原価 仕掛品

なぜこんな分け方をするかというと、売上と費用の時期を合わせるためです。例えば3月決算の会社で、2月に着工してまだ完成していない現場に材料費を払っても、その現場の売上(完成工事高)はまだ立っていません。費用だけ先に計上すると、その期だけ不自然に赤字に見えてしまいます。だから売上が立つまで費用を未成工事支出金で待たせておく、というのが建設業会計の考え方です。

現場目線で言えば、「引き渡しが済んだ現場=完成工事原価」「動いてる最中の現場=未成工事支出金」と押さえておけば十分です。経理がどちらに振っているかを意識すると、月末に原価資料を求められたときに何を渡せばいいか分かりやすくなります。

完成工事原価を構成する4費目

完成工事原価は、次の4つの費目で構成されます。建設業会計では、原価をこの4つに分けて集計するのが基本ルールです。

費目 中身 現場での具体例
材料費 工事に直接使った材料の費用 生コン、鉄筋、型枠、電線、配管、ボルト類
労務費 工事に直接関わった作業員の賃金 自社の現場作業員の給料・手当
外注費 工事の一部を外部に発注した費用 専門工事会社への下請発注、加工委託
経費 上記3つ以外で工事にかかった費用 重機リース料、現場の電気代、設計費、現場事務所費

材料費は、その工事に直接使った材料の費用です。複数現場で共用する消耗品や小道具は「間接材料費」として、使った分を各現場に割り振ります。

労務費は、現場で直接作業した自社作業員の賃金・手当です。注意点として、現場代理人や現場事務所の事務員の給料は労務費には入らず、後述のとおり経費(または販管費)扱いになります。

外注費は、工事の一部を専門工事会社などに発注した費用です。建設業は外注比率が高いので、完成工事原価の中で外注費の割合が大きくなりやすいのが特徴です。

経費は、材料費・労務費・外注費のどれにも入らない費用の受け皿です。重機のリース料・減価償却費、現場の水道光熱費、設計費、保険料、現場事務所の費用などが入ります。

僕の整理では、4費目で一番つまずくのは材料費や経費ではなく、労務費と外注費の境目です。ここは現場の払い方次第で科目が変わるので、次の2つの見出しで掘り下げます。

現場の原価管理と完成工事原価はどうつながっているのか

ここが多くの施工管理が一番モヤっとするところです。結論から言うと、現場で毎月つけている原価管理(実行予算と実績の管理)が、決算で名前を変えたものが完成工事原価です。別物ではなく、同じお金の流れを「現場の言葉」で見るか「経理の言葉」で見るかの違いです。

施工管理の現場では、ざっくり次の流れでお金を管理しています。

  • 受注時:請負金額が決まる
  • 着工前:実行予算を組む(材料・労務・外注・経費の予算配分を決める)
  • 工事中:発注・支払いが発生し、原価管理表に実績を積み上げる
  • 月末:実行予算と実績の差異(予実差)をチェックする
  • 完成・引き渡し:その現場の原価が確定する

この「完成・引き渡しで確定した現場の原価」を、決算でまとめて費用計上したものが完成工事原価です。つまり、現場代理人がつけている原価管理表の4費目(材料・労務・外注・経費)と、完成工事原価の4費目はそのまま対応しています。

逆に言えば、決算日時点でまだ完成していない現場の原価管理表の数字は、完成工事原価ではなく未成工事支出金として資産に積まれている、ということになります。現場の原価管理をきちんとやっておけば、経理はその数字をほぼそのまま完成工事原価・未成工事支出金に振り分けられる、という関係です。

実行予算の組み方や予実管理の考え方は、建設業の財務諸表側の記事も合わせて読むと立体的に理解できます。

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個人的には、「自分の原価管理表=完成工事原価の素材」という意識があると、月末の原価集計が単なる事務作業ではなく、会社の利益を確定させる仕事に見えてきます。ここが分かると、原価をいい加減につけることのリスクも腹落ちします。

労務費・外注費・労務外注費の線引き

完成工事原価で現場が一番迷うのが、人に払ったお金を労務費にするか外注費にするかです。結論、判断軸は「自社が雇っている人か」「材料も含めて任せたか」の2点です。ここを間違えると、消費税の処理や経審の評点にも影響するので、押さえておく価値があります。

ざっくり整理すると次のようになります。

払い方 科目 考え方
自社の作業員に払う賃金 労務費 自社が雇用している人への支払い
工事も材料も含めて外部に発注 外注費 仕事の結果に対する請負代金
材料は自社持ちで作業だけ外注 労務外注費(労務費の一部) 実質的に労働力だけを借りた形
応援・常用で人だけ来てもらう 労務外注費 人工(にんく)での精算が多い

例えば、専門工事会社に「材料も手配して、この工事一式やってください」と発注すれば外注費です。一方、材料はこちらで用意して「人だけ出してください」「常用で応援に来てください」という場合は、外注費ではなく労務外注費(労務費の中の区分)として処理するのが一般的です。

一人親方に常用で来てもらった場合も、材料を自社持ちで作業だけお願いするなら労務外注費に寄っていきます。ここはインボイス制度(適格請求書)や消費税の仕入税額控除にも絡むので、相手が適格請求書発行事業者かどうかも含めて、最終判断は会社の経理・顧問税理士に確認するのが安全です。

もう一つ、間違えやすいのが現場代理人(施工管理)自身の人件費です。直接作業をする作業員の賃金は労務費ですが、現場を管理する立場の現場代理人や現場事務員の給料は、労務費ではなく経費(現場管理費)や販管費として扱われます。「現場にいる人=全員労務費」と思い込みやすいので注意が必要です。

労務単価そのものの考え方や、設計労務単価との違いを知りたい場合はこちらが詳しいです。

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僕の考えでは、現場の人間がここを完璧に仕訳まで判断する必要はありません。ただ「この支払いは労務費か外注費か微妙だな」と気づいて経理に一言確認できるかどうかで、後の手戻りが大きく変わります。

完成工事原価の計算方法

完成工事原価の計算は、結論「工事ごとに4費目を積み上げて、完成した工事の分だけを合計する」のが基本です。会社全体でドンブリ勘定にするのではなく、現場単位で原価を集計するのが建設業会計の肝になります。

計算のステップは、ざっくり次のとおりです。

  • 工事ごとに原価を集計する(工事台帳・原価管理表で材料・労務・外注・経費を現場別に積む)
  • 直接費はその現場にそのまま計上する(特定の現場でしか使わない材料・外注など)
  • 間接費は各工事に按分する(複数現場で共通の費用を一定の基準で割り振る)
  • 完成・引き渡し済みの工事の原価を合計する=完成工事原価
  • 未完成の工事の原価は未成工事支出金に残す

ここで出てくる「按分」が分かりにくいポイントです。例えば、複数現場をまたいで使う重機のリース料や、本社で一括契約している保険料などは、特定の1現場の費用とは言い切れません。こうした間接費は、各工事の請負金額や直接費の割合、稼働日数などを基準にして、各現場へ割り振ります。これを原価の按分(配賦)と呼びます。

按分の基準は会社ごとにルールが決まっていることが多く、現場代理人が毎回ゼロから判断するものではありません。ただ、自分の現場に乗ってくる間接費があること、その分だけ実行予算に対して原価が膨らむことは知っておくと、予実差を見たときに「なぜ予算より原価が増えたのか」を読み解きやすくなります。

実務だと、この集計をエクセルの原価管理表でやっている会社もあれば、原価管理システムや施工管理アプリで自動集計している会社もあります。どちらにせよ、現場が日々の発注・支払いを正確に原価管理表へ入れていることが計算の前提になります。入力が雑だと、決算で完成工事原価が合わず経理が苦労する、という構図です。

建設業会計の勘定科目(一般会計との対応)

完成工事原価を理解するには、建設業会計の勘定科目が一般会計とどう対応しているかを押さえておくと早いです。結論、名前が違うだけで中身は一般会計と対応しているので、対照表で覚えてしまうのが一番効率的です。

一般会計 建設業会計 内容
売上高 完成工事高 完成・引き渡した工事の売上
売上原価 完成工事原価 完成工事高に対応する原価
売上総利益 完成工事総利益 いわゆる粗利
売掛金 完成工事未収入金 引き渡し済みで未回収の代金
仕掛品 未成工事支出金 工事中の現場にかかった費用
買掛金 工事未払金 外注・材料などの未払い
前受金 未成工事受入金 完成前に受け取った代金(前受け)

この対応表を頭に入れておくと、決算書や完成工事原価報告書を見たときに「これは一般会計でいう何の科目か」がすぐ分かります。特に未成工事支出金(仕掛品)と未成工事受入金(前受金)は名前が似ていて取り違えやすいので、片方は資産(こちらが払った分)、もう片方は負債(先にもらった分)と区別しておくと混乱しません。

正直なところ、現場の施工管理がこれらの科目を仕訳できる必要はありません。ただ、所長や経理との会話で「完成工事未収入金がまだ回収できていない」「未成工事支出金が増えている」といった言葉が出たときに、それが何を指しているか分かるだけで、現場と経営の会話がかみ合うようになります。

工事完成基準・工事進行基準と収益認識基準

完成工事原価とセットで語られるのが、売上(完成工事高)をいつ計上するかという「収益認識」の考え方です。結論、かつては工事完成基準と工事進行基準の2つがありましたが、現在は収益認識に関する会計基準に整理されています。

それぞれの考え方は次のとおりです。

  • 工事完成基準:工事が完成・引き渡しされた時点で、売上と原価をまとめて計上する方法。会計処理はシンプルだが、長期工事だと完成まで売上が立たない
  • 工事進行基準:工事の進捗度に応じて、売上と原価を各期に分けて計上する方法。期ごとの業績は見やすいが、進捗の見積もりが必要

ここで押さえておきたいのが、2021年4月以降に適用された「収益認識に関する会計基準」によって、従来の工事会計基準(工事完成基準・工事進行基準を定めていたルール)は廃止されたという点です。現在は「履行義務を充足した時点で収益を認識する」という考え方に統一されていて、一定期間にわたって履行義務を満たす工事は進捗に応じて収益を認識する、という点では工事進行基準に近い処理が続いています。

ただし、数日〜数ヶ月で終わる短期の工事などは、完成時点でまとめて完成工事高と完成工事原価を計上することも認められています。このあたりは会社の規模(上場・大会社かどうか)によって適用ルールが変わるので、自社がどの基準で処理しているかは経理に確認するのが確実です。

僕の感覚では、収益認識の基準が何であっても、現場がやること(正確に原価を集計し、進捗を把握する)は変わりません。むしろ進捗に応じて売上を立てる処理が主流になったぶん、現場が報告する出来高や進捗率の正確さが、会社の決算の正確さに直結するようになった、という理解で十分です。

未成工事支出金が膨らむと経営に何が起きるか

未成工事支出金は、ただの会計科目ではなく、会社の資金繰りや対外的な評価に効いてくる数字です。結論、未成工事支出金が大きく膨らんでいる状態は「お金は出ていったのに、まだ売上として回収できていない工事が多い」というサインで、注意が必要です。

未成工事支出金が膨らむと、主に次のようなことが起きます。

  • 資金繰りが苦しくなる:材料費や外注費は先に払うのに、入金は引き渡し後なので、立替が積み上がる
  • 黒字でも現金が足りない状況が起こる:利益は出ていても手元資金が薄くなる、いわゆる黒字倒産リスク
  • 銀行の評価に影響する:未成工事支出金が異常に大きいと、回収が遅れている・採算の悪い現場を抱えていると見られることがある
  • 決算分析で見られる:完成工事原価率や未成工事の残高は、金融機関や取引先がチェックする指標になっている

特に手持ち現場が多い時期や、大型工事が決算をまたぐときは、未成工事支出金が一時的に大きくなります。これ自体は工事の進み方として自然なことなので、膨らんでいる=即危険というわけではありません。ただ、引き渡しや入金が遅れて未成工事支出金が「滞留」している場合は、現場の進捗遅れや請求漏れが原因になっていることもあります。

現場目線で言えば、引き渡しを予定どおり進めて、出来高請求や完成後の請求を遅らせないことが、未成工事支出金を膨らませないための一番の貢献になります。現場の進捗管理と会社の資金繰りは、未成工事支出金という科目を通じてつながっている、ということです。

完成工事原価報告書と経営事項審査の関係

完成工事原価は、決算のたびに「完成工事原価報告書」という形でまとめられ、これが経営事項審査(経審)にも関わってきます。結論、原価の付け方は経審の評点に影響するので、特に公共工事を取る会社では軽視できない数字です。

完成工事原価報告書は、その期の完成工事原価を材料費・労務費・外注費・経費の4費目に分けて記載する書類で、建設業の決算変更届(事業年度終了届)の一部として提出します。この数字は経営事項審査の経営状況分析や、完成工事高の確認にも使われます。

経審との関係でよく問題になるのが、外注費と労務費(労務外注費)の付け方です。同じ支払いでも外注費に寄せるか労務費に寄せるかで、完成工事原価の内訳が変わり、結果として経営指標の見え方が変わることがあります。だからといって評点目的で実態と違う付け方をするのは不適切で、税務調査でも問題になり得ます。あくまで実態どおりに付けた上で、自社の数字を正しく把握することが大切です。

経営事項審査そのものの仕組みや評点項目は、こちらで詳しく解説しています。

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僕の感覚だと、現場の施工管理がここまで意識する必要は普段ありません。ただ、自分がつけた原価が、巡り巡って会社が公共工事を取れるかどうか(経審の点数)にも関わっている、という全体像を知っておくと、原価管理へのモチベーションが少し変わってきます。

現場の施工管理が原価で意識すべきこと

ここまで会計の話を整理してきましたが、最後に現場の施工管理として何を意識すればいいかをまとめます。結論、難しい仕訳を覚える必要はなく、「正確に・タイムリーに・実態どおりに」原価をつけることに尽きます。

現場が意識したいポイントは次のとおりです。

  • 発注・支払いをためずに原価管理表へ入れる(後でまとめてやると漏れる)
  • 労務費か外注費か微妙な支払いは経理に確認する(自己判断で固定しない)
  • 実行予算と実績の差異を月次で必ず見る(差が出たら原因を早めに潰す)
  • 出来高請求・完成後の請求を遅らせない(未成工事支出金の滞留を防ぐ)
  • 現場代理人の人件費は労務費ではない、を覚えておく

完成工事原価は、決算で経理が作る数字ではありますが、その素材を作っているのは現場の施工管理です。日々の原価管理が雑だと、決算で完成工事原価が合わず、経営も正確な利益が見えません。逆に現場が正確に原価をつけていれば、会社は早く正確に利益を把握でき、次の現場の実行予算の精度も上がります。

実務だと、原価管理は「やらされる事務作業」と捉えられがちですが、見方を変えれば、現場の頑張りを会社の利益という形で見える化する仕事です。完成工事原価という言葉の中身が分かると、月末の原価集計が少し違って見えてくるはずです。

完成工事原価に関する情報まとめ

  • 定義:その期に完成・引き渡しした工事の費用総額。一般会計の売上原価にあたる建設業会計特有の科目
  • 未成工事支出金との違い:完成済み=完成工事原価、工事中=未成工事支出金(仕掛品相当)
  • 4費目:材料費・労務費・外注費・経費の4つで構成される
  • 現場とのつながり:現場の原価管理(実行予算と実績)が、決算で完成工事原価・未成工事支出金になる
  • 労務費と外注費の線引き:自社雇用なら労務費、材料込み発注なら外注費、人だけ借りるなら労務外注費
  • 注意点:現場代理人や現場事務員の人件費は労務費ではなく経費・販管費
  • 計算方法:工事ごとに4費目を集計し、間接費は各工事に按分、完成分だけを合計
  • 勘定科目:完成工事高・完成工事未収入金・工事未払金・未成工事受入金など、一般会計と対応
  • 収益認識:2021年から収益認識基準に統一、従来の工事完成基準・工事進行基準を定めた工事会計基準は廃止
  • 経営への影響:未成工事支出金の膨張は資金繰り・銀行評価に影響、原価の付け方は経審にも関わる

以上が完成工事原価に関する情報のまとめです。

完成工事原価は、経理の専門用語のように見えて、実は現場の施工管理が日々動かしているお金そのものです。材料・労務・外注・経費の4費目をきちんと現場別に積み上げ、引き渡しが済めば完成工事原価、工事中なら未成工事支出金になる、という流れさえ押さえておけば、決算書や原価会議の話にもついていけます。労務費と外注費の線引き、現場代理人の人件費の扱い、未成工事支出金の意味、この3つを現場感として持っておくと、原価管理の質が一段上がるはずです。なお、具体的な仕訳や税務上の判断は会社の経理・顧問税理士に確認するのが確実です。

完成工事原価に関するよくある質問

Q1:完成工事原価と工事原価は何が違うんですか?

工事原価は「工事にかかった費用」全般を指す広い言葉で、その中で完成・引き渡しが済んだ工事の分が完成工事原価、まだ工事中の分が未成工事支出金です。つまり、工事原価という大きなくくりが、決算のタイミングで「完成工事原価」と「未成工事支出金」に振り分けられる、というイメージで捉えると分かりやすいです。日常会話では「原価」とまとめて呼ぶことも多いですが、決算書の上ではこの2つは別の科目になります。

Q2:完成工事原価の4費目で、一番間違えやすいのはどこですか?

労務費と外注費の線引きです。自社で雇っている作業員の賃金は労務費、工事を材料込みで外部に発注したら外注費、材料は自社持ちで人だけ借りた(常用・応援・一人親方など)場合は労務外注費、というのが基本の考え方です。さらに、現場代理人や現場事務員の人件費は労務費ではなく経費(現場管理費)扱いになる点も間違えやすいので注意してください。微妙なケースは自己判断せず経理に確認するのが安全です。

Q3:現場代理人の自分の給料は完成工事原価に入りますか?

完成工事原価には入りますが、労務費ではなく経費(現場管理費)として入るのが一般的です。労務費は現場で直接作業する作業員の賃金を指し、現場を管理する立場の現場代理人や現場事務員の人件費は別区分になります。会社によっては販売費及び一般管理費に計上することもあるので、自社がどう処理しているかは経理に確認してください。「現場にいる人は全員労務費」と思い込むと間違えるポイントです。

Q4:未成工事支出金は完成工事原価に含めてもいいですか?

含めてはいけません。完成工事原価は「完成・引き渡しが済んだ工事」の費用だけが対象です。まだ工事中の現場にかかった費用は未成工事支出金として貸借対照表に資産計上しておき、引き渡しが完了した期に完成工事原価へ振り替えます。未完成の費用を完成工事原価に混ぜてしまうと、売上が立っていないのに費用だけ計上されて、その期の利益が実態とずれてしまいます。

Q5:工事完成基準と工事進行基準、今はどちらを使うんですか?

2021年4月以降は「収益認識に関する会計基準」に統一され、従来の工事完成基準・工事進行基準を定めていた工事会計基準は廃止されています。現在は「履行義務を充足した時点で収益を認識する」という考え方で、長期にわたる工事は進捗に応じて収益を認識するため、実質的に工事進行基準に近い処理が続いています。ただし短期工事は完成時にまとめて計上することも認められており、適用ルールは会社の規模によって変わるので、自社の処理は経理に確認してください。

Q6:未成工事支出金が増えていると言われました。問題ですか?

手持ち現場が多い時期や大型工事が決算をまたぐときは、未成工事支出金が一時的に大きくなるのは自然なことです。ただし、引き渡しや請求が遅れて未成工事支出金が滞留している場合は、資金繰りを圧迫したり、銀行や取引先から「回収の遅い現場を抱えている」と見られたりすることがあります。現場としては、予定どおり引き渡しを進め、出来高請求や完成後の請求を遅らせないことが、未成工事支出金を膨らませない一番の対策になります。

Q7:完成工事原価率はどれくらいが目安ですか?

完成工事原価率(完成工事原価 ÷ 完成工事高)は、工種や会社の規模、元請か下請かによって大きく変わるため、一概に「何%が適正」とは言えません。一般的には原価率が低いほど粗利が厚いことになりますが、無理な原価圧縮は品質や安全に跳ね返ります。自社の過去の原価率や、同規模の同業他社と比べて極端にずれていないかを見るのが現実的な使い方です。具体的な目標値は会社の経営方針によるので、所長や経理と認識を合わせるのがよいです。

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