- このひび、構造的にヤバいやつ?それとも見た目だけ?
- 幅0.3mmってよく聞くけど、何の基準の数字なの?
- ネットの記事ごとに「0.2mm」「0.3mm」「0.5mm」とバラバラで混乱する
- 施主に「欠陥ですよね」と言われたら何て返せばいい?
- 打設して間もなく入ったひびと、何年もたってからのひびは原因が違う?
- さび汁が出ていたら何が起きてる?
- ひびの幅ってどうやって測るの?クラックスケールで足りる?
- 動いているひびかどうかはどう見分ける?
- 上司に「様子見でいい」と言われたけど本当に大丈夫?
- 樹脂注入とUカットって何で使い分けるの?
- 次の現場で同じひびを出さないために打設で何を気をつければいい?
上記の様な悩みを解決します。
現場や引渡し前の建物でひび割れを見つけて、これは構造的にヤバいものか、それとも見た目だけの問題か、判断に迷っていませんか。ひび割れは幅・動き・原因で見れば、補修が必要かどうかと工法の選び方が決まります。この記事では、原因の切り分け方から、判断の基準になっている数字の出どころ、現場で残しておきたい記録、補修方法の選び方、次の打設で減らすための段取りまでを整理しました。
ところが調べてみると、補修業者の宣伝や住宅向けのDIY記事が多く、目安として出てくる数字が「どの資料の・何のための数字なのか」までは書かれていないことが多いんですよね。今回は原因・種類の見方・補修方法といった基本を押さえた上で、他の記事ではまず触れられていない「目的の違う数字を資料ごとに分けた対照」「様子見にするときに残しておく記録」「発注前に確認しておきたい工法の指定の読み方」まで、施工管理の目線で整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、打設後の検査や引渡し前の是正でひび割れの判断を任され始めた方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
コンクリートのひび割れとは?まず幅・動き・原因の3つで見る
コンクリートのひび割れとは、結論「コンクリートの表面や内部に入った割れのことで、補修するかどうかは見た目の怖さではなく、幅・動き・原因の3つで判断するもの」です。
同じように見えるひびでも、構造や耐久性に関わるものと、表面だけで進まないものがあります。写真を見て「ヤバそう」「大丈夫そう」と印象で決めてしまうと、施主や上司に聞かれたときに根拠を答えられません。そこで、次の3つの軸で見ていくのがこの記事の骨組みです。
- 幅:どれくらい開いているか。目分量ではなく、測った数字で見る
- 動き:日を置いて測り直したときに広がっているか、変化が見られないか
- 原因:材料・施工・使用環境・構造や外力のどれに由来しそうか
この順番は、ひび割れの補修指針の考え方とも重なります。『コンクリートのひび割れ調査,補修・補強指針2013』の概要スライドは、指針の中身を「実用的な調査,原因推定,評価,補修・補強の要否の判定,補修・補強の方法,および事例を示すもの」としています(公益社団法人ロングライフビル推進協会(BELCA)サイト掲載の概要スライドPDF P.1・2026年9月確認)。いきなり工法を選ぶのではなく、調べて原因を推定し、評価してから要否と方法を決める流れです。
なお、同じ名前の指針は、公益社団法人日本コンクリート工学会から「コンクリートのひび割れ調査、補修・補強指針 2022」が発表されています(日本コンクリート工学会 公式サイトの紹介ページ・2026年9月確認)。この記事で引く指針の内容は、すべて2013年版の概要スライドに書かれたもので、2022年版の内容として書いているわけではありません(BELCAサイト掲載の2013年版概要スライドPDF・2026年9月確認)。
僕の整理では、上司に「様子見でいい」と言われたときも、この3つの軸で「幅は測った、動きはこれから比べる、原因はこう見ている」と言える状態なら、それは根拠のある様子見です。逆に、どの軸も押さえていない様子見は、ただの先送りになりやすいと考えています。
ひび割れの原因は「材料・施工・使用環境・構造外力」で絞り込む
ひび割れの原因は、結論「材料・施工・使用環境・構造や外力のどこに由来するかで大きく分け、そのうえで時間とともに落ち着く側か、進んでいく側かで読む」と整理できます。
補修指針2013の概要スライドでは、表-3.1「ひび割れ発生原因の分類項目」として、大分類を「A:(材料)」「B:(施工)」「C:(使用環境)」「D:(構造・外力)」「E:その他」に分けています。項目の番号はA1〜A10、B1〜B18、C1〜C8、D1〜D7まであり、A〜Dの中では施工(B)の番号がいちばん先まで振られています(BELCAサイト掲載 同概要スライド P.41〜42・2026年9月確認)。
| 大分類 | 概要スライドに挙がっている項目の例 |
|---|---|
| A 材料 | セメントの異常凝結、セメントの水和熱、セメントの異常膨張、骨材に含まれている泥分、低品質な骨材、反応性骨材(アルカリ骨材反応)、コンクリート中の塩化物、コンクリートの沈下・ブリーディング、コンクリートの乾燥収縮、コンクリートの自己収縮 |
| B 施工 | B12の補足に「かぶり(厚さ)の不足も関与」とある |
| C 使用環境 | 酸・塩類の化学作用、中性化による内部鋼材のさび、塩化物の浸透による内部鋼材のさび |
| D 構造・外力 | 断面・鋼材量不足、構造物の不同沈下、凍上 |
| E その他 | 大分類として「E:その他」がある |
表の項目は、いずれも同概要スライドのP.41〜42、P.45、P.55〜56から抜き出したものです(BELCAサイト掲載 同概要スライド・2026年9月確認)。材料の項目の中の「セメントの水和熱」は、P.45で「外部拘束が主体となるひび割れ(貫通ひび割れ)」「内部拘束が主体となるひび割れ(表面ひび割れ)」の図とともに示されていて、同じ原因の中に表面のひびと部材を貫くひびの両方が描かれています。
原因の見当がついたら、次は「時間で落ち着く側か、進む側か」です。概要スライドは、発生したひび割れに対する評価方法を3つに分類しています(同概要スライド 表紙頁・P.77・2026年9月確認)。
- 評価Ⅰ:「温度ひび割れや乾燥収縮ひび割れなど,打込みから数年の間に収束すると考えられるひび割れを対象とした評価」(P.77)
- 評価Ⅱ:「中性化・塩害などに適用」(表紙頁)
- 評価Ⅲ:「複合的劣化などに適用,補強含む」(表紙頁)
僕の読み方では、評価Ⅰに入る温度ひび割れ・乾燥収縮ひび割れは「落ち着くひび」、評価Ⅱの中性化・塩害は中の鋼材のさびと結びつく「進むひび」として分けて見ると、様子見にしてよいかの感覚がつかみやすくなります(評価の区分は同概要スライド 表紙頁・P.77・2026年9月確認)。ただし、どちらに当たるかは見た目だけでは決まらないので、後の章で見る測定と記録を組み合わせて判断します。
現場目線で言えば、ひびからさび汁が出ているなら、使用環境の分類にある「中性化による内部鋼材のさび」「塩化物の浸透による内部鋼材のさび」を疑う入口になります(分類の項目は同概要スライド P.42・2026年9月確認)。中の鋼材に関わる話なので、表面だけ見て自分の判断で様子見にしない方が安全です。
また、施工の項目には「かぶり(厚さ)の不足も関与」という補足が付いています(同概要スライド P.55〜56・2026年9月確認)。中性化やさびの話とかぶり厚さはつながっているので、原因を読むときは配筋のかぶりも頭に置いておくと見立てが速くなります。
中性化が進む仕組みと鉄筋のさびとの関係は、こちらで整理しています。

かぶり厚さの基本を押さえ直すなら、あわせて読んでおくと原因の見立てがぶれにくくなります。

個人的には、打設して間もなく入ったひびか、何年もたってから出たひびかは、原因を絞る手がかりとして記録に書いておく価値があります。ただ、何日目なら何の原因と日数で決めつけるのではなく、原因の大分類と、落ち着く側か進む側かの2段で読む方が、見立てを外しにくいです。
「0.2mm」「0.3mm」はどこの数字か|目的の違う基準を分けて読む
ネットの記事ごとに目安の数字がバラバラに見えるのは、結論「住宅の紛争処理、補修工法の目安、設計の許容ひび割れ幅という、目的の違う資料の数字が混ざっているから」というのが僕の整理です。
まず3つの資料を並べると、次のようになります。
| 資料 | 出てくる数字 | 何のための数字か |
|---|---|---|
| 住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準(平成12年建設省告示第1653号) | 構造材による仕上げの表で、幅0.3mm以上0.5mm未満のひび割れ=レベル2、幅0.5mm以上またはさび汁を伴うひび割れ=レベル3(壁・柱などはRC造・SRC造住宅の欄、基礎は全構造共通の欄) | 建設住宅性能評価書が交付された住宅の、工事完了から10年以内の事象の紛争処理で、構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性を見る参考(瑕疵の有無を特定するものではない) |
| コンクリートのひび割れ調査,補修・補強指針2013(概要スライド) | ひび割れ被覆工法の対象は「微細なひび割れ(一般に幅0.2mm以下)」 | 補修工法のうち被覆が向く対象の目安 |
| 国総研 技術資料「8章 ひび割れ幅が鋼材腐食に与える影響」 | 各設計基準の許容ひび割れ幅の目安は概ね0.2〜0.4mm | 設計でひび割れ幅をどこまで許すかの目安 |
表の出典は、国土交通省PDF「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」1/13頁・4〜6/13頁・13/13頁、BELCAサイト掲載『コンクリートのひび割れ調査,補修・補強指針2013』概要スライド(指針第6章6.3節相当のスライド)、国土交通省 国土技術政策総合研究所 技術資料「8章 ひび割れ幅が鋼材腐食に与える影響」291頁です(いずれも2026年9月確認)。同じ「幅」の数字でも、紛争処理の参考、工法の目安、設計の目安と、使う場面がまったく違います。
住宅紛争処理の基準に出てくる0.3mm・0.5mm
0.3mmと0.5mmの出どころは、「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」です。平成十二年七月十九日建設省告示第千六百五十三号で、最終改正は平成十八年二月二十三日国土交通省告示第三百八号です(国土交通省PDF「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」1/13頁・2026年9月確認)。この告示の「ひび割れ」の項目は、部位とその仕上げの区分に応じた表で、住宅の種類ごとの不具合事象と「構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性」を対応させています(同PDF 2/13頁)。
部位は「(1) 壁、柱、床、天井、はり又は屋根(パラペット及び庇の部分を除く。)」と「(2) 基礎」に分かれ、仕上げは「イ 乾式の仕上材(布その他これに類する材料を除く。以下同じ。)による仕上げ」「ロ 湿式の仕上材による仕上げ」「ハ 構造材による仕上げ」に分かれています(同PDF 2〜6/13頁・2026年9月確認)。仕上げの区分が違えば見る表も違うので、どの部位のどの仕上げのひびかを先に押さえてから表を読みます。
| レベル | ひび割れの状態(告示の文言) | 構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性 |
|---|---|---|
| レベル1 | レベル2及びレベル3に該当しないひび割れ | 低い。 |
| レベル2 | 幅0.3mm以上0.5mm未満のひび割れ(レベル3に該当するものを除く。) | 一定程度存する。 |
| レベル3 | ①幅0.5mm以上のひび割れ ②さび汁を伴うひび割れ | 高い。 |
この表の文言は、(1)壁・柱などの「ハ 構造材による仕上げ」では鉄筋コンクリート造住宅又は鉄骨鉄筋コンクリート造住宅の欄にあり(同PDF 4〜5/13頁)、(2)基礎の「ハ 構造材による仕上げ」では木造住宅、鉄骨造住宅、鉄筋コンクリート造住宅又は鉄骨鉄筋コンクリート造住宅の1つの欄にあります(同PDF 6/13頁)(いずれも2026年9月確認)。壁や柱の構造材仕上げの表を、木造や鉄骨造の住宅の話として読まないように注意します。
もう1つ大事なのが適用範囲です。この基準の第2 適用範囲は、「新築時に建設住宅性能評価書が交付された住宅で、指定住宅紛争処理機関に対してあっせん、調停又は仲裁の申請が行われた紛争に係るものにおいて発見された事象であること。」と「当該住宅を新築する建設工事の完了の日から起算して十年以内に発生した事象であること。」を挙げています(同PDF 1/13頁・2026年9月確認)。さらに第4の1では、「ひび割れ誘発目地に発生したひび割れ若しくは欠損又はひび割れ誘発目地から連続したひび割れ若しくは欠損」が、この基準を参考としない不具合事象に挙げられています(同PDF 12〜13/13頁)。
そして第4 留意事項には、「この基準は、構造耐力上主要な部分における瑕疵の有無を特定するためのものではないため、レベル1に該当しても構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する場合があり、また、レベル3に該当しても構造耐力上主要な部分に瑕疵が存しない場合もあること。」と書かれています(同PDF 13/13頁・2026年9月確認)。
施主に「欠陥ですよね」と言われたときの説明
ここまでを踏まえると、「0.3mm以上だから瑕疵」「0.3mm未満だから問題なし」とは言えません。告示の数字は、評価書が交付された住宅の紛争処理で参考にする目安で、工事の完了から十年以内の事象が対象で、誘発目地のひびは参考としない対象に挙げられ、しかも留意事項で瑕疵の有無を特定するためのものではないと明記されているからです(国土交通省PDF「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」1/13頁・12〜13/13頁・13/13頁・2026年9月確認)。
現場目線で言えば、施主に「欠陥ですよね」と聞かれたときは、数字1つで白黒をつけるのではなく、「幅を測って記録し、動きと原因を見たうえで、補修の要否と方法を監理者と決めます」と段取りで返すのが誠実だと思います。補修費を誰が持つかも数字1つで決まる話ではなく、契約の内容とひびの原因によるので、その場で約束しない方が安全です。
補修指針の0.2mmと、環境で変わる鋼材腐食への影響
0.2mmは、補修指針の概要スライドにある補修工法の説明に出てきます。ひび割れ被覆工法について「ひび割れのみを被覆」「微細なひび割れ(一般に幅0.2mm以下)上に塗膜を構成」「防水性,耐久性を向上.」とされています(BELCAサイト掲載『コンクリートのひび割れ調査,補修・補強指針2013』概要スライド 指針第6章6.3節相当のスライド・2026年9月確認)。これは瑕疵かどうかの線ではなく、被覆という工法が向く対象の目安です。
同じ概要スライドのP.81には、表-4.2.1「鋼材腐食の観点からのひび割れの部材性能への影響」があり、ひび割れ幅wの区分と環境の組み合わせで影響の大きさを示しています。各欄には「(20年耐久性)」の表記があります(同概要スライド P.81・2026年9月確認)。
| ひび割れ幅 w | 塩害・腐食環境下 | 一般屋外環境下 | 土中・屋内環境下 |
|---|---|---|---|
| 0.5<w | 大 | 大 | 大 |
| 0.4<w≦0.5 | 大 | 大 | 中 |
| 0.3<w≦0.4 | 大 | 中 | 小 |
| 0.2<w≦0.3 | 中 | 小 | 小 |
| w≦0.2 | 小 | 小 | 小 |
表の出典は同概要スライド P.81(2026年9月確認)で、2013年版の概要スライドの表です。同じ幅の区分でも、塩害・腐食環境下と土中・屋内環境下では影響の欄が変わる、という読み方ができます。
設計の許容ひび割れ幅は「概ね0.2〜0.4mm」
設計側の数字は、国土交通省 国土技術政策総合研究所の技術資料「8章 ひび割れ幅が鋼材腐食に与える影響」にまとまっています。この資料は「各設計基準で規定されている許容ひび割れ幅の目安は、概ね 0.2~0.4mm の範囲に収まっている。」としています(同資料 291頁・2026年9月確認)。
同じ資料は道路橋示方書について、「RC 構造では、コンクリート表面のひび割れ幅が 0.2mm 程度以下となることを目安とした鋼材の応力度を許容応力度として示し、具体的な許容ひび割れ幅の規定は行っていない。」と紹介しています(同資料 289頁・2026年9月確認)。
また土木学会のコンクリート標準示方書については、2007年制定版で、3種類の環境条件に応じて、かぶりの関数として鋼材の種類ごとにひび割れ幅の限界値を規定していると紹介されています(同資料 289頁)。この限界値は、2012年制定版の改訂で精度を高めるべく見直されたと、改訂の解説記事に書かれています(前川ほか「土木学会2012年制定『コンクリート標準示方書[設計編]』の改訂について」コンクリート工学 Vol.51 No.6 p.490・2026年9月確認)。2007年制定版の値を、今の限界値として持ち出さないように注意します。
正直なところ、建築の現場で設計の許容ひび割れ幅を直接使う場面は多くないと思います。それでも、設計の目安が1つの数字ではなく幅を持っていて、しかも補修や紛争処理の数字とは目的が違う、と知っているだけで、ネットの数字に振り回されなくなるはずです。
補修が要るかの判断と、クラックスケールでの測り方・記録
補修が要るかどうかは、結論「1回見て決めるのではなく、クラックスケールで幅を測って記録し、日を置いて測り直し、漏水やさび汁の有無と合わせて判断する」のが施工管理としての進め方です。
前の章で見たとおり、幅の数字は資料ごとに目的が違うので、ある1つの数字を超えたら即補修、とは決めない方が安全です。だからこそ、判断の材料を自分で揃えておく必要があります。
漏水やさび汁があるときは一人で様子見を決めない
公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版の4.2.2 ひび割れ部改修共通事項には、「ひび割れ部から漏水している場合又は錆汁がでている場合は、改修方法について事前に監督職員と協議する。」とあります(国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」4.2.2・63頁・2026年9月確認)。これは公共建築の改修工事での規定ですが、漏水やさび汁は現場の判断だけで進めない合図だと読めます。
僕の感覚だと、民間の現場でもこの考え方はそのまま使えます。漏水やさび汁が見えたら、様子見にするかどうかを自分だけで決めず、記録を揃えて上司や監理者に上げる。これだけで、後から「なぜ放置したのか」と言われる余地がかなり減ります。
クラックスケールで幅を数字にする
幅は目分量ではなく、クラックスケールを当てて数字で読みます。ひびに目盛りの線を並べて、幅がいちばん近い線を読み取り、その数字を記録します。同じ位置をあとで測り直せるように、測った場所に印を付けておくと比較が楽になります。
国土交通省の点検支援技術性能カタログ(技術番号BR010020)では、ある点検技術の性能試験でクラックスケールを模擬ひびわれとして使い、「各ひびわれ幅のパネルについて、クラックスケールで計測した値を真値とする。」としています(国土交通省 道路「点検支援技術性能カタログ」BR010020・2026年9月確認)。ただしこれは、その技術の試験でクラックスケールの値を基準として扱った例で、クラックスケールの精度を保証した記述ではありません。
動いているかは、同じ位置を日を置いて測り直して比べる
動いているひびかどうかは、1回の測定では分かりません。印を付けた同じ位置を、日を置いてもう一度同じクラックスケールで測り、幅や長さが変わっていないかを前回の記録と比べます。広がっている、伸びているなら動いている側として扱います。変わっていなければ「この2回の間では広がっていない」と日付つきで記録し、次の測定でも同じ位置で比べ続けたうえで、原因の見立てと合わせて考えます。測り直す間隔は現場の条件で決め、記録には測った日付を必ず残します。
貫通しているかどうかは、反対側の面の同じあたりにひびが出ていないか、ひびから漏水や湿りの跡がないかを観察項目として見ておきます。反対側を見られない場合は、断定せず「未確認」と記録しておく方が、後の説明で困りません。
様子見にするときに残す記録
観察と記録は、次の6点を1枚にまとめておくと抜けが出ません。
- 位置と部位:位置図に落とし、壁・柱・梁・床・基礎・土間のどの部材かを書く
- 幅と長さ:クラックスケールで測った幅の数字と、ひびの長さ・向き
- 裏側と水:反対側の面まで通っていそうか、漏水や湿りの跡があるか
- さび汁:ひびのまわりに茶色い汚れが出ていないか
- 写真:クラックスケールを当てた寄りの写真と、位置が分かる引きの写真
- 日付と環境:発見日・測った日と、屋外か屋内か、水が掛かる場所か
記録を残す意味は2つあります。1つは、あとで施主や監理者、上司に説明するときの材料になること。もう1つは、次に測り直したときに、進んでいるかどうかを比べる基準になることです。クラックスケールで幅を測って記録に残しておけば、上司や施主への説明で「たぶん大丈夫です」ではなく、測った数字と日付で話せます。
実務だと、「様子見」は判断を先送りすることではなく、「何を測り、いつ比べるかを決めて待つこと」だと考えるとぶれません。記録が揃っている様子見なら、上司に言われたときも自分で納得して進められます。
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【PR】ひびの幅、目分量で判断していませんか
そのひび割れ、クラックスケールを使わず目視だけで「大丈夫そう」と判断していませんか。
- クラックスケールが手元になく、幅をいつも目分量で見ている
- 現場で使える道具がどれか分からず、探すだけで時間が過ぎる
- 記録に残す数字に自信が持てず、上司や施主への説明で言葉に詰まる
補修方法の選び方|被覆・注入・充てんと、仕様書の3工法
補修方法は、結論「幅だけで自動的に決まるものではなく、原因と動きの見立てを揃えたうえで、発注の条件に書かれた工法の指定を確認して決める」ものです。
補修指針(2013年版概要)の区分は被覆・注入・充てん
補修指針の概要スライドは、ひび割れの補修を「a. ひび割れ被覆工法(ひび割れのみを被覆)」「b. 注入工法」「c. 充てん工法(鉄筋が腐食していない場合)」に分け、別に表面の被覆として「a. 表面被覆工法(コンクリート表面全面を被覆)」を挙げています(BELCAサイト掲載『コンクリートのひび割れ調査,補修・補強指針2013』概要スライド 指針第6章6.3節相当のスライド・2026年9月確認)。このうちひび割れ被覆工法は「微細なひび割れ(一般に幅0.2mm以下)」の上に塗膜を構成するものとされていますが、注入工法と充てん工法がそれぞれどの幅を対象にするかは、この概要スライドには数字で示されていません(同スライド)。
公共建築改修工事標準仕様書の3工法と「種類は特記による」
公共建築の改修工事では、国土交通省大臣官房官庁営繕部の「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」に工法名が書かれています。令和7年3月21日 国営建技第5号で、最終改定は令和7年5月12日 国営建技第1号です(同仕様書 表紙・2026年9月確認)。
4.1.4 改修工法の種類では、「(1) コンクリート打放し仕上げ外壁は、次による。」として「(ア) ひび割れ部改修工法は次により、種類は特記による。」とし、「(a) 樹脂注入工法」「(b) Uカットシール材充填工法」「(c) シール工法」の3つを挙げています(同仕様書 4.1.4・62頁・2026年9月確認)。タイル張り仕上げ外壁については「(ア) ひび割れ部改修工法は、樹脂注入工法による。」です(同仕様書 63頁)。
ここで押さえたいのは、打放し外壁のひび割れ部改修工法について、この条文には幅によってどの工法を選ぶかが書かれておらず、「種類は特記による」となっている点です(同仕様書 4.1.4・62頁・2026年9月確認)。工法は、幅を測れば自動的に決まるのではなく、特記仕様書で指定されるものとして扱われています。
| 補修指針2013概要スライドの区分 | 仕様書(令和7年版)の工法名 | 読み替えの手がかり |
|---|---|---|
| ひび割れ被覆工法(ひび割れのみを被覆) | シール工法 | ひびの上をシール材で覆う |
| 注入工法 | 樹脂注入工法 | ひびの中に材料を注入する |
| 充てん工法(鉄筋が腐食していない場合) | Uカットシール材充填工法 | 溝を設けて材料を詰める |
この対応は、2つの資料が対応表として示しているものではなく、工法の中身から僕が読み替えたものです(区分は同概要スライド 指針第6章6.3節相当のスライド、工法名は同仕様書 4.1.4・62頁・2026年9月確認)。打合せで指針の言葉と仕様書の言葉が混ざったときに、同じものを指しているかを確かめる手がかりとして使ってください。
仕様書の各工法に出てくる数字
| 工法 | 仕様書に書かれている数字 | 該当箇所 |
|---|---|---|
| 樹脂注入工法 | 注入間隔は特記による。特記がなければ200~300mm間隔/仮止めシール材は幅30mm、厚さ2mm程度/注入圧0.4N/mm2以下 | 4.2.5(3)・64頁 |
| Uカットシール材充填工法 | 電動カッター等を用いて幅10mm程度、深さ10〜15mm程度にU字型の溝を設ける | 4.2.6(2)・65頁 |
| シール工法 | プライマーを塗布した後、シール材を幅10mm、厚さ2mm程度に塗布し、表面を平滑に仕上げる | 4.2.7(2)・66頁 |
表の数字は、すべて公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版の該当箇所から取っています(2026年9月確認)。樹脂注入工法の注入間隔でさえ「特記による」が先に来ていて、200~300mmは特記がない場合の値です(同仕様書 4.2.5(3)・64頁)。業者に頼むときも、まず特記を見てから数字を確かめる順番になります。
別の節の「2mm」「0.2mm以上2.0mm未満」を混ぜない
ひび割れの幅で処理を分ける数字は、同じ仕様書の別の節にも出てきます。3章 防水改修工事の既存下地の処理では、「ひび割れ幅が2mm以上の場合は、Uカットのうえ、ポリウレタン系シーリング材等を充填する。」とされています(同仕様書 3章・22頁・2026年9月確認)。これは防水改修の既存下地の処理の条文です。
また4.7節の外壁用塗膜防水材による改修では、4.7.6(3)で「下地挙動緩衝材を用いる場合は、幅 0.2 mm 以上 2.0mm 未満のひび割れ部」に塗り付けるとし、「ひび割れが 0.5mm 以上の場合は、あらかじめひび割れ部に下地調整塗材 C-1 をすり込む。」としています(同仕様書 4.7.6(3)・102頁・2026年9月確認)。
どちらも、4.1.4の打放し外壁のひび割れ部改修工法を幅で選ぶ条文ではありません(同仕様書 3章・22頁、4.1.4・62頁、4.7.6(3)・102頁・2026年9月確認)。ネットで「2mm以上はUカット」とだけ見かけたら、どの節の話かを確かめるのが安全です。
補修を発注・指示するときの段取り
工法の選び方を段取りに落とすと、次の4つになります。
- 特記仕様書で、工法の種類が指定されていないかを最初に確認する
- 漏水やさび汁があれば、工法を決める前に協議する(公共建築改修工事標準仕様書 令和7年版 4.2.2・63頁では「改修方法について事前に監督職員と協議する」・2026年9月確認)。民間の現場でも、監理者や上司に上げてから決めるのが安全です
- 原因の見立てと、幅・長さ・動きの記録を業者に渡し、同じ前提で工法を相談する
- 補修したあとも、同じ位置を見て記録を続ける
補修してもまた割れたら意味がないのでは、という不安は現場でよく出ます。個人的には、補修は原因そのものを消す作業とは限らないので、動いているひびか、落ち着いたひびかの記録を先に揃え、それを業者と共有することが、やり直しを減らす近道だと見ています。
シール材の種類や施工の流れそのものは、シーリング工事の記事でまとめています。

次の打設でひび割れを減らすために施工管理が押さえる点
次の現場でひび割れを減らすには、結論「原因の分類のうち施工側で手を打ちやすいものを、打設計画と検査の段取りのチェックに置き換える」のが近道です。
先ほど見た原因のうち、施工管理が段取りで関わりやすいのは次のものです。ここでは数字は使わず、どの工程で意識するかだけを整理します。
- 沈下・ブリーディング:打込みと締固めの段取りを打設計画に落とし、当日の打込み順を共有する
- 乾燥収縮:打設後の養生の段取りを、打設計画の段階で決めておく
- セメントの水和熱:部材が厚い箇所は、打込み順や配合の相談を打設前に設計者や生コン工場と済ませる
- かぶり不足:スペーサーの配置と配筋検査で、打設前にかぶりを確認する
僕の考えでは、どれも「これをやれば割れない」というものではありません。ただ、ひびが出たときに原因を読み返す材料として、打設計画と検査の記録が残っているかどうかで、次の現場の対策の立て方が変わります。
打設当日の流れと注意点は、こちらで押さえられます。

打重ねの間隔が空いたときに起きる不具合は、別の記事で掘り下げています。

コンクリートのひび割れに関する情報まとめ
- ひび割れとは:見た目の怖さではなく、幅・動き・原因の3つで補修の要否と工法を考える
- 原因:材料・施工・使用環境・構造や外力で絞り込み、落ち着く側か進む側かを評価の区分で読む(補修指針2013概要スライド P.41〜42・P.77・2026年9月確認)
- 数字の出どころ:0.3mm・0.5mmは評価書が交付された住宅の工事完了から10年以内の紛争処理で、構造材による仕上げの表に出てくる参考、0.2mmは被覆工法の目安、概ね0.2〜0.4mmは設計基準の許容ひび割れ幅の目安で、紛争処理の数字は瑕疵の有無を特定するものではない(告示第1653号 1/13頁・4〜6/13頁・13/13頁、同概要スライド、国総研技術資料 291頁・2026年9月確認)
- 判断と記録:クラックスケールで幅を測り、位置・写真・日付を残して日を置いて測り直す。漏水やさび汁は、公共建築改修工事の仕様書では改修方法を事前に監督職員と協議する対象(公共建築改修工事標準仕様書 令和7年版 4.2.2・63頁・2026年9月確認)
- 補修方法:被覆・注入・充てんの区分と、シール工法・樹脂注入工法・Uカットシール材充填工法を対応させて読み、工法の種類は特記で確認する(同仕様書 4.1.4・62頁・2026年9月確認)
- 次の打設:沈下・ブリーディング、乾燥収縮、水和熱、かぶり不足を、打設計画と検査の段取りに置き換える
以上がコンクリートのひび割れに関する情報のまとめです。
ひび割れは、見つけた瞬間に白黒をつけるものではなく、測って残し、比べて、原因を読んでから補修を決めるものです。次に現場でひびを見つけたら、まずクラックスケールを当てて位置と日付を記録し、漏水やさび汁があれば早めに上に上げる。そこまでできていれば、施主や上司に聞かれても落ち着いて説明できるはずだと、僕は考えています。
打設後に見つかる不具合としてもう一つ押さえておきたい豆板(ジャンカ)は、見つけたあとの報告と記録の流れまで含めてこちらで扱っています。

コンクリートのひび割れで施主や上司から受けがちな質問と答え
Q1:幅0.3mm以上のひび割れは欠陥(瑕疵)ですか?
それだけでは言えません。住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準では、壁・柱など(鉄筋コンクリート造住宅又は鉄骨鉄筋コンクリート造住宅)と基礎の、構造材による仕上げで、幅0.3mm以上0.5mm未満のひび割れを、構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性が「一定程度存する」レベル2としています。ただし適用範囲は建設住宅性能評価書が交付された住宅の紛争処理で、工事の完了の日から十年以内に発生した事象とされ、誘発目地のひび割れは参考としないとされ、留意事項で瑕疵の有無を特定するためのものではないと明記されています(国土交通省PDF「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」1/13頁・4〜6/13頁・12〜13/13頁・13/13頁・2026年9月確認)。
Q2:土間や基礎の表面の細いひび割れも補修が必要ですか?
幅だけでは決めず、クラックスケールで測って記録し、日を置いて測り直して動きを見てから判断します。補修指針2013の概要スライドでは、温度ひび割れや乾燥収縮ひび割れなど「打込みから数年の間に収束すると考えられる」ひび割れを評価Ⅰの対象とし、補修工法のうちひび割れ被覆工法は「微細なひび割れ(一般に幅0.2mm以下)」を対象としています(BELCAサイト掲載 同概要スライド P.77・指針第6章6.3節相当のスライド・2026年9月確認)。落ち着く側に見えても、記録を残しておくことは変わりません。
Q3:樹脂注入とUカットはどう使い分けますか?
公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版では、コンクリート打放し仕上げ外壁のひび割れ部改修工法を樹脂注入工法・Uカットシール材充填工法・シール工法とし、「種類は特記による」としています。タイル張り仕上げ外壁は樹脂注入工法です(同仕様書 4.1.4・62頁、63頁・2026年9月確認)。幅で自動的に決めるのではなく、まず特記仕様書の指定を確認し、原因と動きの記録を添えて工法を相談する流れになります。
Q4:動いているひび割れかどうかはどう見分けますか?
1回の観察では見分けられないので、測った位置に印を付け、日を置いて同じクラックスケールで測り直し、幅や長さが前回の記録から変わっていないかを比べます。変化があれば動いている側として、原因の見立てと合わせて上司や監理者に相談します。
Q5:漏水やさび汁が出ているひび割れはどうすればいいですか?
自分だけで様子見を決めず、記録を揃えて上に上げます。公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版の4.2.2では、漏水や錆汁が出ている場合は「改修方法について事前に監督職員と協議する。」とされています(同仕様書 4.2.2・63頁・2026年9月確認)。補修指針2013の概要スライドの原因分類には「中性化による内部鋼材のさび」「塩化物の浸透による内部鋼材のさび」があり(同概要スライド P.42・2026年9月確認)、さび汁は中の鋼材を疑う入口になります。
